労働実務事例
[ 質問 ]
最近、出産育児一時金を対象として「医療機関等への直接支払制度」がスタートしました。それ以前に、高額療養費の「現物給付化」が実施されたと記憶します。どちらも、被保険者の窓口負担を軽減する仕組みと理解していますが、どこが異なるのでしょうか。
【千葉・D生】
[ お答え ]
高額療養費から、先にご説明しましょう。
70歳未満の高額療養費の現物給付化は、平成19年4月に実施されました。
従来、被保険者は医療機関に対し自己負担額(原則3割)を全額支払い、後から保険者に請求して高額療養費(窓口で払った自己負担額-自己負担限度額)を受け取る仕組みとなっていました。被保険者にとってみれば、後から高額療養費の請求が可能といっても、先に窓口で数十万円にも達する金額を支払うのは大変です。そこで、19年以降、被保険者は医療機関に対し自己負担限度額だけを支払い、高額療養費分は医療機関が審査支払い機関に請求する仕組みに改められました。被保険者からみれば、高額療養費はすべて現物給付(医療の給付)という形で受け取ることになります。
出産育児一時金に関しては、平成21年10月から新制度がスタートしています。
従来、被保険者は医療機関に分娩に伴う医療費を全額支払い、後から保険者に請求して出産育児一時金を受け取る仕組みとなっていました。これも、先に支払って後から給付を受け取るパターンで、被保険者の負担が小さくありません。そこで、新制度では、被保険者は窓口で医療費を支払う代わりに、病院と一時金の申請・受取りに関する代理契約を結び、一時金は医療機関が審査支払い機関に直接請求します。仮に「医療費-出産育児一時金=自己負担額」と置き替えて考えると、ご質問者の指摘されるとおり両者の仕組みは似ています。
しかし、細かくみると異なる点もあります。医療費が出産育児一時金より多いときは、差額を後から被保険者が医療機関に支払います。一方、医療費が出産育児一時金より少ないときは、医療機関は少ない金額を支払い機関に請求します。この場合、被保険者は差額を保険者に請求することができます。
「医療費-出産育児一時金」の差額がプラスのときは、出産育児一時金はすべて現物給付(医療の給付)という形で支給されます。しかし、差額がマイナスのとき、被保険者は医療機関を飛び越えて、保険者に請求する形となります。この場合、被保険者は、出産育児一時金の一部を現物給付(医療の給付)、残りの一部(差額分)を現金で受け取ります。同じ窓口負担の軽減といっても、清算の考え方に若干の違いがあります。
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