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退職年度の有給休暇の買上げ

◆事例:退職年度の有給休暇の買上げ

 3月末で退職する者がおり、残っている有給休暇を全て使い切りたいと言っ
てきています。年度末でもあり多少のお金を払ってでも働いて欲しいのですが、
退職時でも休暇の買上げはできませんか。

◇回答------------------------------------------------------------
 有給休暇を行使しないまま退職により消滅した場合、残日数に応じて金銭を
支払うことは事前の買上げとはなりませんが、あくまでも本人自身が休暇を行
使しなかった場合に限られます。事例の場合は、休暇行使の意思表示があるた
め買上げは困難です。
 
■解説------------------------------------------------------------
 有給休暇の買上げは、基本的には違法とされています。基準法第39条に「休
暇を与えなければならない」と規定されており、休暇を取らない日に金銭を給
付しても休暇を与えたことにはなりません。
 また、休暇の権利については一般的に、本人が請求しない限り会社は与えな
くて良いと思われがちですが、最高裁(S48.3.2)は、「何日休めるかという休
暇の権利そのものは請求の有無にかかわらず基準法の要件を満たせば当然に発
生しており、いつ休むかという時季の指定だけが請求の対象となる」旨の判示
をしています。

 有給休暇の買上げについて、行政解釈では「休暇の買上げの予約をし、これ
に基づいて法により請求しうる日数を減じたり与えないことは違法である」と
されており、原則として買上げはできないこととなっています。
 但しこれは基準法に定められた日数のことであり、「法定日数を超えた部分
についての買上げは違法でない」との行政解釈もあります。そんな太っ腹な会
社は少ないでしょうけど。
 いずれにしろ、あらかじめ買い上げる旨の約束をし、休暇を放棄させること
はできないこととなります。

 ところで、本人が休暇を残したまま退職する場合には、休暇の権利は消滅し
ます。この場合、残日数に応じて調整的に金銭を支払うことは、事前の買上げ
とは異なるので必ずしも違法とはいえません。(休暇取得を抑制するのは好ま
しくないとの意見もありますが。)
 もちろん「休暇を取らなければ後で買い上げる」という交渉ごとがあれば事
前買上げとなってしまいますが、「退職時、休暇の残日数があったときはいく
らを支給する」等の規程を定めての運用であれば、何とかクリアできるはずで
す。

 有給休暇は、本人自ら行使しないことまでは問われません。元々買上げ義務
もありません。
 職場で退職直前は休まないような風土づくりも一つの方法ですが、最近は連
合が目をつけているのでリスキーな手段となっています。

 事例の場合では、本人が既に休暇を使い切ると表明していますので、真正面
から買上げで対抗することは不可能です。前記の買上げ制度があれば、やんわ
りと「結果としての買上げ制度もあるよ」と教示するまでが限度でしょう。間
違っても「買い上げるから休むな」と言ってはなりません。

 できれば事前に計画付与等の制度を活用し、特定時期に集中しない方策を考
えるべきです。

 なお、ある会社の社長は「退職日以降に時季変更権をずらしている」と言っ
ていました。基準法に少々詳しいようですが監督署に踏み込まれたらアウトで
すね。

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【あとがき】
 有給休暇に関してのトラブルは多く耳にします。結構多いのが、パートやア
ルバイトなら付与しなくてよい、という考え方です。
 私が短期間在籍していた会社で、パートが休暇を取ったので賃金を控除した
ところ監督署に駆け込まれ、後々面倒なことになったことがあります。トップ
に進言はしましたが聞く耳持たずの方でしたので、ヤバいなとは思いましたが。
 当然のことですが、監督署は賃金不払いに関して特に監視の目を強めている
ようです。先般のサービス残業で逮捕の事件も、賃金不払いが直接の容疑です。
有給休暇を与えない、休むと賃金を差し引く、というのも賃金不払いに該当し
てしまいます。
 特に、退職間近のトラブルは、労働者からすれば怖いものなしなので要注意
です。
 ありきたりですが、日ごろからの信頼関係を保っていくことが何より大切で
す。


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