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TOP > 記事一覧 > 人事・労務 > 副業許可は企業にどんなメリット・デメリットがある?副業規定の作り方も【まとめ】
副業解禁

副業許可は企業にどんなメリット・デメリットがある?副業規定の作り方も【まとめ】

2022.04.21

2017年頃から政府による働き方改革の推進、また新型コロナウイルス禍による働き方の変化に伴って、企業の副業解禁が進み始めてきました。昔は従業員の副業を禁止とする企業が多かったですが、現在の法律的には原則として企業は社員の副業を禁止・制限はできません。

本記事では、副業解禁のメリット・デメリット、副業をはじめた社員への対応、コロナ禍により増加傾向の副業現場から届いた相談など、参考にしたい副業記事をまとめました。

副業解禁とは?

2018年1月、厚生労働省は、企業におけるモデル就業規則を改定しました。その内容は、労働者の遵守事項の「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定の削除が盛り込まれたもので、これによって、より本格的に副業の推進が叫ばれるようになりました。

急激にすすむ少子高齢化により生産年齢人口の減少に歯止めがかからないことが確実となっている我が国では、様々な手段を尽くして国全体の生産性を向上させていく必要があるためです。

また、理論上は、本業の労働生産性を高めなければ副業をする余裕もないはずですので、本業と副業の生産性を高めるインセンティブ効果も期待できます。

メリットとデメリットを踏まえて、まずは“条件付き容認”という解禁形態を目指すのが良いでしょう。

【もっと詳しく】副業・兼業解禁へ。企業がうまく活用していく方法・メリットとは

副業のメリット・デメリット

会社が副業を許可するメリット

メリットは下記のようなことが挙げられます。

・社員の定着率の向上(離職率の低下)につながる
・リフレッシュ効果により社内の活性化が期待できる
・社外で獲得した知識・スキルを、社内に活かせる
・社員が能動的に動けるようになる
・多様な人材採用が可能になる

企業が副業を許可するデメリット

少し前のデータになりますが、独立行政法人『労働政策研究・研修機構の調査』(2018年9月11日公表)によると、「副業・兼業の許可する予定がない」と回答した企業の副業・兼業を許可しない理由(複数回答)は、下記の通りです。

「過重労働となり、本業に支障をきたすため」82.7%
「労働時間の管理・把握が困難になる」45.3%
「職場の従業員の業務負担が増大する懸念があるため」35.2%

その他企業が副業を許可しない理由として、「情報漏えいの心配」や「問題が起こった場合のブランドき損」も考えられます。

よく問題になる点としては、時間外・休日労働の命令、労働時間管理、職務専念義務の確認、情報管理の徹底などです。副業を許可する場合には、“許可申請手続”、“許可基準”をはじめ、“報告義務”、“許可の取消し”といった規程が必要になってくるでしょう。

【もっと詳しく】社員に「副業できますか?」と聞かれたら…副業解禁のメリット・デメリットと企業が許可する場合の注意点

企業が知るべき副業のリスク

副業の原則禁止はできませんが、労働者の労働時間を適切に管理するために、副業する際には会社への届け出をしてもらうように“許可制”にするなど規定を設けることは可能です。しかし、本業の会社に副業の届け出をしても「不許可にされそうだからこっそりやろう……」と“伏業”で副業を行われるケースも少なくありません。

“伏業”では副業の内容・状況が見えないため、かえって企業利益を毀損するリスクがあり、しかも、企業がとり得るのは事前予防ではなく事後対応となってしまいます。何をやっているのかよくわからない状況では、懲戒処分を行っても、不許可事由にあたらない限り懲戒処分は無効となります。

“伏業”でのトラブルを避けるために、副業については、事前申請、許可制度、取消制度といったルール整備が重要です。副業制度を明確化し、企業と労働者で認識の齟齬を生じさせないために、“誓約書の提出”も行いましょう。誓約書には下記のような内容を含め、採用時の誓約書のみならず、副業にあたっても、再度誓約させておくことが望ましいです。

・不許可事由に該当する副業は、企業の利益を害するものであるので、この点の表明・保証を得ておく
・申請内容が真実であることの表明・保証
・情報漏洩禁止を再確認
・副業先が反社でないことの誓約、その他

【もっと詳しく】副業禁止は原則できません!企業が知るべき「副業」のメリットとリスク対策

副業に伴う労働時間管理

前提として、従業員の労働時間は本業と副業を通算する必要があります。これは、厚生労働省が労基法第38条第1項の解釈通達によるものです。『改訂副業・兼業ガイドライン』においては、所定労働時間については“労働契約の先後”で、所定労働時間外については“労働の先後”の順でそれぞれ足し合わせ、法定時間外に労働させたほうが法的責任を負って割増賃金を支払う責任があるとされています。

しかし、本業と副業の労働状況は多数のパターンがあり、非常に複雑です。この原則に忠実に従い、従業員の多様な働き方に沿って本業と副業についての労働時間を計算するのは企業にとって大きな負担となります。

そこで厚生労働省は、『改行副業・兼業ガイドライン』において“管理モデル”という簡便な労働時間の管理方法を提示しています。

従業員が主業としてA社、副業としてB社に勤務した場合、“使用者Aの1か月の法定外労働時間”“使用者Bの1か月の労働時間(所定内+所定外)”の合計が単月100時間未満、複数月平均80時間以内となる範囲で、A社とB社それぞれにおける労働時間の上限を設定します。そして、時間外労働が発生した場合は、A社は自社における法定外労働時間の労働について割増賃金を支払い、B社は自社における労働時間の労働について割増賃金を支払います。

具体的には、従業員はA社での労働時間に上限設定を行い、B社に対して“管理モデル”の了承を得て労働時間の上限設定を行います。次に従業員はA社に対してB社が“管理モデル”を了承したことを伝えることでこの管理方法が成立します。これによってB社は従業員がA社で設定時間の上限を働いたとみなし、実際の労働時間をすべて把握する必要がなくなります。ただし、この管理モデルによる労働時間管理は、法的責任を免除しているわけではありません。

【もっと詳しく】副業に伴う労働時間管理、企業の法的責任は?企業が知るべき労働時間の管理方法【弁護士が解説】

副業規定に具体的に記載すべきこと

1:許可基準の明確化

副業の許可基準を明確化することで、副業を考えている従業員にとってその副業が可能かどうかの基本的な判断が可能となり、副業の推進にもつながります。

2:事前申請の義務づけ

副業の事前申請は、主として不許可事由の有無を確認するために行うものです。不許可事由とは、企業の利益を毀損する可能性があるため、許可基準に沿っていたとしても例外的に禁止できるとされています。企業利益を守るためにも極めて重要な要素です。

3:誓約書の提出

法的に必須というわけではありませんが、副業がまだまだ一般的な働き方となっていない以上、従業員が「何をしていいのか、よくないのか」といったことを明確に認識させるために誓約書の提出は必要だと考えています。これによってトラブルを事前に防ぐことにつながります。

4:事後的な報告の義務づけ

副業が許可された従業員に参照されるべき副業規定として、まずは事後的な報告の義務づけが挙げられます。これは、副業において注意すべきポイントの中の“労働基準法の遵守”、“事後的な不許可事由の発生”、“健康確保(安全配慮義務)”に対処するための規定です。

5:許可の取消

副業が許可された従業員から事後報告を受けたとき、不許可事由が発生していることが発覚した場合、即座に対応しなければ会社の利益が毀損される可能性があります。そのために事後的に副業許可の取消についても定めておくべきでしょう。

6:管理モデルを活用する場合の手続

管理モデルにはメリットとデメリットがありますが、それを踏まえた上で活用する場合には、規程に明記することが必要です。また管理モデルの通知書を用意して副業先に連絡できるようにしておくこと、管理モデルによる副業の合意書などを規程に盛り込んでおくことが必要となります。

【もっと詳しく】
副業のトラブル回避!企業が「副業規程」に盛り込むべき内容とは?(前編)

副業のトラブル回避!企業が「副業規程」に盛り込むべき内容とは?(後編)

副業に関するよくある質問

1.何をもって「副業」とする?会社のルール作りの参考に。二重就労(副業)について教えてください。

2.入社後、副業をしていることが発覚。副業を理由に解雇できる?

3.副業で自営業を行う場合、健康保険はどうなる?(サラリーマンが副業で社長を務める場合の健康保険の取り扱い)

4.会社が副業を承認する際に気を付けるべきことは?(副業の承認に際し留意すべきこと)

「総務の森 相談の広場」に寄せられた副業に関するお悩みや質問と返信一覧は下記の記事からご確認ください。

【もっと詳しく】【会社のルール作りの参考に】コロナ禍により増加傾向の「副業」現場から届いた相談まとめ

 

企業が知っておくべき従業員の副業に関する対応と質問について解説しました。内容についてもっと知りたい場合は、各内容の【もっと詳しく】から詳細の記事を読むことができます。ぜひ参考にしてみてください。

※この記事は『経営ノウハウの泉』の過去掲載記事をもとに作成しています。

*タカス、bee、USSIE、CORA / PIXTA(ピクスタ)