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同一労働同一賃金 最高裁 判例

どうする? 中小企業の「同一労働同一賃金」制度~2020年10月の最高裁3つの事例から見えたこと~

2021.01.08

2021年4月からいよいよ中小企業でも同一労働同一賃金制度がスタートします。

同一労働同一賃金制度に対応するために現に動いている会社も多くあるかと思います。

とはいえ、「賞与・退職金の取扱いはどうすれば良いのか」「諸手当の取扱いを分けて良いのか」「休暇などの待遇は同じに取り扱わなければならないのか」……などなど、どこまでは認められて、どこからがダメなのか頭を悩ませている方も多いかと思います。

もちろん、判断はケースバイケースで一律の決まったラインはありませんが、ここでは、2020年10月に出た3つの最高裁の判断を元に、今後、中小企業がとるべき施策を考えていきましょう。

「同一労働同一賃金」が問われる4つの基準

今回の裁判例だけに限らず共通することですが、同一労働同一賃金制度の判断に際して問われるのが、以下の項目です。

    1. 各支給物・手当の性格や趣旨
    2. 職務内容
    3. 職務内容・配置の変更の範囲
    4. その他の事情の内容

上記の2~4の項目はいわゆる正社員と非正社員の同一性の確認の際に用いる基準です。

これらの判断基準を用いて、正社員と非正社員の各待遇差が不合理な待遇差に至っているかどうかを判断することとなります。

合理的な理由があれば待遇差は認められる

『大阪医科薬科大学事件』(2020年10月13日 最高裁)では、1年間の有期雇用契約を締結し秘書業務に就いていたアルバイト職員に対して、正職員には支給されている賞与を支給しなかったことについて判断を示しています。

結論としては、賞与を支給しなかったことは不合理な待遇差とまではいえないとの判断が示されています。

まず、今回支給されている賞与は「正職員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から」支給されている性格のものとした上で、上記2~4の事情について、正社員と非正社員の差異を認め、アルバイト職員に対する賞与不支給については不合理とまでは言えないとしています。

会社の中で、各待遇について検討を行う際には、「正社員と非正社員の待遇差について合理的な理由付けができるかどうか」という点について検討する必要があります。理由付けができないということであれば、それは不合理な待遇差であるということになりますので、非正社員にも働き方に応じた待遇を与える必要があります。

ここでの判断においては、賞与に「正職員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的」があることを見ていますが、それは反対に、アルバイト職員であっても正社員への登用が見込まれていて、実際にそれに向け正社員と同じような働き方を長期に亘って継続していたということであれば、賞与支給の必要ありと判断される可能性があるということでしょう(全くの同額とは言わなくても)。

功労報償を理由にすると反対意見もある

同様の判断が同じ日に(2020年10月13日 最高裁)で、『メトロコマース事件』の退職金についてされています。こちらも正社員に対しては支払われている退職金が契約社員である原告には支給されなかったことの適法性が争われました。

判断の中で、「退職金は、職務遂行能力や責任の程度などを踏まえた労務の対価の後払いや継続的な勤務に対する功労報償などの複合的な性質を有するものであり、正社員としての職務を遂行し得る人材の確保やその定着を図るなどの目的から、さまざまな部署で継続的に就労することが期待される正社員に対して支給するものとした」とされており、人財の確保や定着、継続的な就労への期待を考慮して、結論として契約社員である原告に対して支給しなかったことは不合理ではないとしています。

ただ、こちらの裁判では、功労報償的な性質から考えると不支給は不合理であるとする反対意見もあり、待遇差の合理性については、慎重に判断していく必要があります。

ここまで見た2つの判例では、非正社員に対する賞与の不支給、退職金の不支給について、不合理な待遇差ではないと判断されましたが、それは必ずしも「非正社員には賞与・退職金を支給する必要はない」との結論には直結しません。

冒頭述べましたように、判断はケースバイケースです。そのため、「アルバイトには賞与・退職金は一律支給無し」とすることは会社にとってリスクになりえます。同じアルバイトであっても、“継続雇用の可能性がないAさんは支給しなくても良いが、長期雇用が継続していて正社員登用が見込まれているBさんには支給する必要がある”、となる可能性もあります。会社個々の事情も判断に当たっては加味されます。

時給契約でも正社員と同じ手当の支給が必要な場合も

一方で、『日本郵便事件』(2020年10月15日 最高裁)では、年末年始勤務手当などの各種手当に対して、正社員と非正社員の待遇差が不合理であるとの判断が下されています。

例えば、年末年始手当で言えば、その性格・趣旨を以下のように判断しました。

①最繁忙期であり、多くの労働者が休日として過ごしている上記の期間において、同業務に従事したことに対し、その勤務の特殊性から基本給に加えて支給される対価としての性質を有する

②正社員が従事した業務の内容やその難度等に関わらず、所定の期間において実際に勤務したこと自体を支給要件とするもの

正社員と非正社員の差異を認めつつ、それを考慮した上でも

年末年始勤務手当の性質や支給要件及び支給金額に照らせば、これを支給することとした趣旨は、郵便の業務を担当する時給制契約社員にも妥当する

との判断を示しました。

各種手当について検討する際も、正社員と非正社員の取扱いに差異があるのであれば、その差異に納得感のある合理的な理由付けができるかについて検討が必要です。

同一労働同一賃金精度について注意すべき点

その他、社内での検討の際は、以下も考慮する必要があります。

    1. 有期雇用契約者の契約が自動更新になっていないか(自動更新だと労働者の雇用継続への期待が強くなる)
    2. 限定正社員などの雇用形態の検討(明確に通常の正社員との区別を行う)
    3. 社内制度の整備(上記判例では、その他の事情として、「正社員への登用制度」があることを考慮しています)

繰返しになりますが、各待遇についてはあくまで個々の事案ごとの判断ですので、裁判例の結論だけを見て、「アルバイトだから、契約社員だから」という理由だけで正社員と異なる取扱いをしないよう注意する必要があります。

「生活保障」という観点も必要

なお、余談になりますが上記裁判例と同じく10月に下級審判決ですが、再雇用後の賃金の減額について判断を示したものがあります。

事案としては、定年前は基本給16~18万円であったにも関わらず、定年後に職務内容が同一であるのに基本給が7~8万円に減額されたというものです。

結論としては、「年功的性格があることから将来の増額に備えて金額が抑制される若い正社員の基本給すら下回っており、生活保障の観点からも看過しがたい水準に達している」とし、再雇用後の賃金が定年前の基本給の6割を下回るのは不合理との判断を示しています。また、減額することに対して労使間の同意がなかったことも考慮されています。

絶対的なラインではありませんが、ひとつの目安として6割と示しています。上記判断においては生活保障の観点からの判断がありますので、金額如何によっては6割のラインはもちろん上下することになるかと思われますが、今後の判断の目安にはなる可能性はあります。

不合理な「待遇差」はなくしていくべき

どの裁判でも共通する点ですが、差異があるのであればそこに納得できる合理的な理由があるかという点は常に問われます。

まだ同一労働同一賃金制度の施行に際して、社内で特に検討をしていないということであれば、今回の裁判例を参考に不合理な待遇差がなくなるよう検討を進めてみてもらえればと思います。

*NOV / PIXTA(ピクスタ)

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