労働実務事例
[ 質問 ]
長時間労働発生時の代替休暇ですが、従業員が代替休暇の意向を示したのち、業務上災害に遭って休業したとします。代替休暇を取得できなくなったので賃金を清算しますが、平均賃金を算定する際、この清算分の扱いはどうなるのでしょうか。
【兵庫・O社】
[ お答え ]
1カ月の時間外労働が60時間を超えると、「5割以上」の割増賃金を支払わなければなりません(中小企業除く)。しかし、労使協定を結べば、有給の代替休暇を与える代わりに、割増賃金率を2割5分まで下げることが可能です。
代替休暇取得(予定)時には、「60時間を超えた月の賃金支払い日に2割5分増し以上の割増賃金を支払う」「休暇を取得できないと確定したときはその月の賃金支払い日に差額(法定どおりなら5割― 2割5分)を清算する」というルールが適用されます(平21・5・29・基発第0529001号)。
代替休暇を与えることができる期間は、「60時間を超えた月の賃金支払い日の翌日から2カ月以内」です(労基則第19条の2)。
従業員が代替休暇取得の意向を示しても、業務上災害で長期休職となれば、予定どおり休暇を消化できません。
業務上災害の休業補償については、「事故発生の日または疾病発生確定日」(労基則第48条)が平均賃金算定事由の発生日となります。「事由発生日以前3カ月間の賃金総額」が算定ベースとなりますが、賃金には「算定事由発生時において、労働者が現実に受け、または受けることが確定した賃金」(昭23・8・2基収第2934号)が含まれます。
傷病発生により代替休暇を取得できない場合、その月の賃金支払い日に差額を清算します。平均賃金を算定する際は、事由(傷病)発生の直前の賃金締切日から起算して3カ月の賃金を用います。
しかし、「代替休暇の清算賃金」が「受けることが確定した賃金」に該当すれば、前記の3カ月の賃金に上乗せして平均賃金を調整する必要が生じます。この問題について、厚生労働省のQ&Aでは、「清算賃金はその賃金支払い日(傷病発生後の支払い日)に支払われる賃金として平均賃金を計算する」という見解を示しています。ですから、調整の必要はありません。
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