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~得する税務・
会計情報~ 第16号
【
税理士法人-優和-】
http://www.yu-wa.jp
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「ライブドア監査人の告白」の読後感 その2
今回は前回に引き続いて、「ライブドア監査人の告白」という書籍の読後感の後半をお送りします。
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書籍名 ライブドア監査人の告白 ― 私はなぜ粉飾を止められなかったのか ―
著 者 田中慎一 (ダイヤモンド社 2006年5月 1600円)
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第15号(18年8月17日発行)
目次
1、はじめに
2、著者の立場
3、この本を読んでもらいたい人達
4、
粉飾決算のスキームと旧来型粉飾との違い
第16号(18年8月18日発行)
目次
5、
公認会計士監査と期待ギャップ
6、監査技術の限界と良好な監査環境の醸成
7、おわりに
5、
公認会計士監査と期待ギャップ
著者は「あとがき」の中で述べている。
「、、、、私はライブドアの監査責任者として、自らの社会的責任を果たすべく、なぜ堀江
氏、宮内氏らの暴走を止めることができなかったのか、また、どのようにして彼らと対峙
してきたのか、といったことに関して、“監査人”の立場から、著書にして説明を行う必要
があると考えていました。
、、、中略 、、、医療ミスを犯した医師が自らの医療チームの過失を馬鹿正直に世間に対
して逐一説明することと同じで、タブーそのものであり、同業者に言わせれば愚の骨頂と
いう指摘を受けるかもしれません。 、、、 後略 、、、」
記述されていることが真実であるという前提で感想を述べさせていただければ、「愚の骨
頂という指摘」をする
公認会計士はいないでしょう。「よくぞここまで詳しく書いてくれ
た。」と申し上げたい。
我々の業界には「エクスペクテーションギャップ」という言葉がある、不正の摘発の為
に
公認会計士に監査を頼んでいるのに、期待したとおりの結果がでていないではないかと
のお叱りを受ける。つまり「期待ギャップ」である。
「「不正の摘発」が監査の第一目標ではないんです。」と言ってみたところで、監査論を学
び、骨の髄まで、
財務諸表作成の二重責任の原則が染み込んでいる
公認会計士にしか、そ
のことは理解できない筈。
監査をしている会社から
報酬をもらっていること自体がおかしいのではとの指摘は常に
つきまとう。
公認会計士としては、「会社から
報酬をもらっているのではなく、
株主からもらっている
んです。」といっても監査の本質論から説いていかないと、理解できない人が多いでしょう。
6、監査技術の限界と良好な監査環境の醸成
しかしこの本は「監査の限界」について、適切にクローズアップしている感じがする。
ファンドの正体を「盗み見」(経理
請負会社への往査での目的外資料の入手)という「禁じ
手」の
監査手続きでその実態を解明せざるを得なかったと、著者は言っている。
法律違反に基づく強制捜査や、税務当局による査察等の手段が使えない、言葉を換えれ
ば、
監査手続きに限界のある
公認会計士監査の場合は、監査会社との信頼関係がないと監
査の実効性は失われる。
すべての事象について事前に相談いただき、駄目なものは駄目といった指導ができる環
境が前提になるのかもしれない。(当局指導型から自己管理型に変わった金融検査の「マニ
ュアル」でも
会計監査人による厳正な外部監査が前提で、常に事前指導ということが金融
監査マニュアルに色濃く表現されている。)
それは経営者と監査責任者及び監査実施グループとのよき人間関係から生じる監査受入
環境が重要と感じている。その前提として、監査人自身の人格と独立性と倫理観に確固た
るものが存在していなければいけない。
それにしても、ロイヤル信販等に対する
架空売上取引は、騙されていたとはいえ、本に
記述されている部分まで迫りながら、何故もう一歩の踏み込みがなされなかったのだろ
うかとの疑念は沸いてくる。
7、おわりに
著者はライブドアのことを「監査対応の悪い会社つまり監査軽視の負の遺産が出来上が
ってしまった会社」と捉えている。
いずれにせよどのような監査環境であろうが、
公認会計士監査の社会的役割とその公共性
を考慮するならば、
財務諸表作成の二重責任論や期待ギャップ論、監査の限界論云々を持
ち出すのではなく、与えられた使命をまっとうするしかないといえる。
著者は結果的に逮捕ということにはならなかったにせよ、事件を未然に防げなかったとい
う事実を重く受け止め、この事件を契機に
公認会計士の資格を
返上したという。
当然といえば当然であるが、正義感あふれ、豊富で様々な経験を有する著者であれば、ま
た別の世界で活躍できる資質を持っているものと拝察する。身近にいても仕事の中身が分
からず不安な思いだけを抱き続けていたであろう奥様の心労は如何ばかりであったのだろ
うか。なお私と著者は面識が一切ないことを付言しておく。
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購読解除は下記URLから
http://www.yu-wa.jp/mail.htm
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発行者
税理士法人優和 東京本部 渡辺俊之(
公認会計士・
税理士)
優和HP:
http://www.yu-wa.jp
E-MAIL:
tokyo@yu-wa.jp
TEL:03(3455)6666/ FAX:03(3455)7777
〒108-0014
東京都港区芝4-4-5三田KMビル
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「ライブドア監査人の告白」の読後感 その2
今回は前回に引き続いて、「ライブドア監査人の告白」という書籍の読後感の後半をお送りします。
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書籍名 ライブドア監査人の告白 ― 私はなぜ粉飾を止められなかったのか ―
著 者 田中慎一 (ダイヤモンド社 2006年5月 1600円)
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第15号(18年8月17日発行)
目次
1、はじめに
2、著者の立場
3、この本を読んでもらいたい人達
4、粉飾決算のスキームと旧来型粉飾との違い
第16号(18年8月18日発行)
目次
5、公認会計士監査と期待ギャップ
6、監査技術の限界と良好な監査環境の醸成
7、おわりに
5、公認会計士監査と期待ギャップ
著者は「あとがき」の中で述べている。
「、、、、私はライブドアの監査責任者として、自らの社会的責任を果たすべく、なぜ堀江
氏、宮内氏らの暴走を止めることができなかったのか、また、どのようにして彼らと対峙
してきたのか、といったことに関して、“監査人”の立場から、著書にして説明を行う必要
があると考えていました。
、、、中略 、、、医療ミスを犯した医師が自らの医療チームの過失を馬鹿正直に世間に対
して逐一説明することと同じで、タブーそのものであり、同業者に言わせれば愚の骨頂と
いう指摘を受けるかもしれません。 、、、 後略 、、、」
記述されていることが真実であるという前提で感想を述べさせていただければ、「愚の骨
頂という指摘」をする公認会計士はいないでしょう。「よくぞここまで詳しく書いてくれ
た。」と申し上げたい。
我々の業界には「エクスペクテーションギャップ」という言葉がある、不正の摘発の為
に公認会計士に監査を頼んでいるのに、期待したとおりの結果がでていないではないかと
のお叱りを受ける。つまり「期待ギャップ」である。
「「不正の摘発」が監査の第一目標ではないんです。」と言ってみたところで、監査論を学
び、骨の髄まで、財務諸表作成の二重責任の原則が染み込んでいる公認会計士にしか、そ
のことは理解できない筈。
監査をしている会社から報酬をもらっていること自体がおかしいのではとの指摘は常に
つきまとう。
公認会計士としては、「会社から報酬をもらっているのではなく、株主からもらっている
んです。」といっても監査の本質論から説いていかないと、理解できない人が多いでしょう。
6、監査技術の限界と良好な監査環境の醸成
しかしこの本は「監査の限界」について、適切にクローズアップしている感じがする。
ファンドの正体を「盗み見」(経理請負会社への往査での目的外資料の入手)という「禁じ
手」の監査手続きでその実態を解明せざるを得なかったと、著者は言っている。
法律違反に基づく強制捜査や、税務当局による査察等の手段が使えない、言葉を換えれ
ば、監査手続きに限界のある公認会計士監査の場合は、監査会社との信頼関係がないと監
査の実効性は失われる。
すべての事象について事前に相談いただき、駄目なものは駄目といった指導ができる環
境が前提になるのかもしれない。(当局指導型から自己管理型に変わった金融検査の「マニ
ュアル」でも会計監査人による厳正な外部監査が前提で、常に事前指導ということが金融
監査マニュアルに色濃く表現されている。)
それは経営者と監査責任者及び監査実施グループとのよき人間関係から生じる監査受入
環境が重要と感じている。その前提として、監査人自身の人格と独立性と倫理観に確固た
るものが存在していなければいけない。
それにしても、ロイヤル信販等に対する架空売上取引は、騙されていたとはいえ、本に
記述されている部分まで迫りながら、何故もう一歩の踏み込みがなされなかったのだろ
うかとの疑念は沸いてくる。
7、おわりに
著者はライブドアのことを「監査対応の悪い会社つまり監査軽視の負の遺産が出来上が
ってしまった会社」と捉えている。
いずれにせよどのような監査環境であろうが、公認会計士監査の社会的役割とその公共性
を考慮するならば、財務諸表作成の二重責任論や期待ギャップ論、監査の限界論云々を持
ち出すのではなく、与えられた使命をまっとうするしかないといえる。
著者は結果的に逮捕ということにはならなかったにせよ、事件を未然に防げなかったとい
う事実を重く受け止め、この事件を契機に公認会計士の資格を返上したという。
当然といえば当然であるが、正義感あふれ、豊富で様々な経験を有する著者であれば、ま
た別の世界で活躍できる資質を持っているものと拝察する。身近にいても仕事の中身が分
からず不安な思いだけを抱き続けていたであろう奥様の心労は如何ばかりであったのだろ
うか。なお私と著者は面識が一切ないことを付言しておく。
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