『
総務の森』コラムをご覧のみなさま
こんにちは!
合同会社5W1Hの高野潤一郎と申します。
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本コラムでは、弊社配信の無料ニューズレター第171号(2015年1月
12日配信)で公開した記事の一部をシェア差し上げます。
今回のタイトルに興味をお持ちいただけた方は、是非、お役立てく
ださい。
<以下、抜粋記事となります。その旨、予めご了承くださいませ。
なお、システム上、本コラムでご紹介できない『図表』などを含
めた『全文』は、後述のリンク先より、無料で、何の登録手続き
もなく、ご覧いただけますので、ご安心ください。>
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(前略)
もし、あなたの目の前に、英語学習を苦手だと感じる社内教育担当
者がやってきて、英語学習に関する悩みについて相談を持ちかけて
こられたら、あなたはどのような対応をされるでしょうか?
12月28日の「コーチング漬け体験」で登場したこの話題を、1
月7日の「変化促進研究会」で扱った切り口も踏まえて共に振り返
ってみることで、あなたが日常的に行っておられるコミュニケーシ
ョンや思考法について、改めて認識するきっかけとしていただけれ
ば幸いです。
(中略)
■「社内教育担当者は、TOEICで高得点を取らなきゃダメだ」
→どうしよう?
「コーチング漬け体験」でクライアント役(…コーチングを利用す
る人の役)を務められたYさんが、コーチ役(…コーチングを実施
する人の役)を務められたHさんに語られた話の概要(コーチング
で扱って欲しい話の概要)は、下記のようなものでした。
------------------------------------------------------------
a)某大手企業のグループ会社にお勤めのYさんは、学生時代から
英語が苦手で、入社の際に高い英語運用能力が求められない部署を
選んだという経緯もお持ちの方らしい。
b)Yさんは、コンピューターのシステムや
ソフトウェアの設計等
に携わる技術者として活躍されてきて、現在は社内教育担当者と
して従事されている。
c)会社のグローバル化の流れを受け、社員教育担当部署としても、
英語の運用能力向上に向けた施策に力を入れるようになってきて
いる(…半年に一度、全社でTOEICを受験する; 2015年から会議
を英語で実施することを検討しているほか)。 ただし、現在の
Yさんの業務で英語を活用する場面はほとんどない。
d)「英語学習を推奨する部署の担当者としては、TOEICでは高得点
を取得していることが望ましい」といった方針が会社から示され
たり、周囲から「英語ができなきゃいけないよね!」といった無
言の圧力を感じたりしている。
e)「この苦しみはいつまで続くんだろう?」と感じている。 本当
に苦手なモノをどう克服すればよいのかについて、ヒントが得た
い。 苦手な英語学習が続かない状況を何とかしたい。
------------------------------------------------------------
さて、上記 a)~ e)の情報を伝えていただいた場合、あなたがコ
ーチ役だとしたら、どういった形でコーチング(…弊社では『協創
対話』とも呼ぶ)を進めていきそうでしょうか? 数十秒でも構わ
ないので、ちょっと考えてみてください。
もちろん、唯一絶対解というのはないでしょうし、本来は、双方向
の対話や図解などを用いてクライアントの考えや氣持ちを整理した
り、コーチからの質問をきっかけにして、新たな解決策を協創して
いったりするのが(少なくとも弊社流の)コーチングですので、こ
こでは、あくまでも「軽い頭の体操」と捉えていただいて、楽しく
妄想してみてください。
■与えられた問題を効率的に解く「
デフォルト思考」
さて、あなたはどんな話の進め方をイメージされたでしょうか?
今回、「コーチング漬け体験」に初参加のHさんは、お仕事の関係
上、日常的に相談事を持ちかけられて話をすることに慣れていらっ
しゃる方でした。
コーチング経験に関しては、書籍を読んだり、単発のセミナーに参
加したりしたことはあるけれど、「ビジネス系の、こんなにガチ
(ンコ)のコーチングを体験するのは初めてです」(…本人談)と
のことでした。
そして、Hさんが進められたコーチングは、Yさんの発言の内、特
に d)の内容に着目され、「Yさんはどうなりたいのですか?」
「TOEICの目標点数は?」「読む、聴く、書く、話すの内、苦手な
ものは?」「英語学習に割ける時間は?」「その時間の中で、効率
的に学習するには?」…といった事柄について尋ね、「TOEICの高
得点習得を目指す効率的な英語学習方法・学習計画」に関する話を
とてもスムーズに進めていらっしゃいました。
あなたが想像されたアプローチは、Hさんのアプローチと似ていた
でしょうか、それとも、かなり異なるアプローチだったでしょうか?
このとき、Hさんが採られたコーチングのアプローチ(考え方、話
の進め方)の基盤となっているものは、1月7日の「変化促進研究
会」で扱った内容でいうところの、「
デフォルト思考」(Default
Thinking)と呼ばれているものだと感じました。
「
デフォルト思考」というのは、「合理的に、線型的に(※1)考
えて、問題解決しようとする考え方」のことを指していて、「生産
性の向上、効率性の向上、複雑な運用手続きの削減、資源・製品群
の最適配分、最短で最大の対価が見込める投資など」を行うのに力
を発揮する思考法です。
私なりの解釈では、
デフォルト思考というのは、「事象の捉え方の
適否について考慮するプロセスは省き、与えられた問題を効率的に
解こう」とする際に威力を発揮する思考法を指すのだと認識してい
ます。
※1 線型的に
(数学的な厳密性は別として)大雑把に言うと、「『変化は、直線
的・連続的に予測できる』『働きかけの大きさに応じて結果が予測
できる』『想定外の大変化は起こらない』という前提に則って」と
いう意味。
これまで弊社のニューズレターをお読みくださっている方であれば、
弊社でお伝えしているコーチングでは、「課題の(再)設定」を重視
していることを覚えてくださっているかもしれませんね。
…「東京からベルリンに行きたい人が、サンフランシスコに早く効
率的に到着しても目的達成したとは見なせない」のと同様、「目的
や課題が適切に設定されていないうちに、さまざまな取り組みを効
率的に進めても、間違った結果や成果をもたらすだけ」と考えてい
るため、弊社では、
デフォルト思考で省略している「事象の捉え方
の適否」について確認するプロセス、あるいは、「課題の(再)設定」
を重視しています。
では、「コーチング漬け体験」では、「
デフォルト思考」を基盤と
するアプローチ以外に、どういった切り口から「振り返り」(…
「コーチング漬け体験」では、グループ内振り返り→グループ間振
り返り→高野による全体振り返り→当事者グループ振り返り→他の
グループ・メンバーによる振り返り→高野による2度目の全体振り
返りといった形で、通常、合計6回の振り返り:メタ
認知学習を実
施)があったのでしょうか?
■与えられた問題の適否を検討するのに役立つ「センスメイキング」
「コーチング漬け体験」の「振り返り」で、YさんとHさんのセッ
ションについて、私が指摘したことの中には、例えば、次のような
事柄がありました。
●Yさんの e)の発言では、「本当に苦手な英語を…」という表現
ではなく、「本当に苦手なモノを…」という表現が選ばれていま
した。
つまり、英語学習に伴う苦痛の話からスタートしているのは確か
だけれど、話をしているうちに、Yさんの頭/心の中で、「英語
と同様に苦手な他の対象物(仮に、Xとしましょう)」が思い出
され、「英語学習とX」をひっくるめて、「本当に苦手な ”モ
ノ”」という表現が選ばれた可能性がある。→確認(適切な質問
によって、推論あるいは仮説の検証を行うこと)を推奨
●同じく、e)の発言では、「この苦しみはいつまで続くんだろう?
」「苦手な英語学習が続かない状況を何とかしたい」という2つ
の表現で、共に「継続」に関する話をされていることに氣づきま
す。
ここから、英語学習を開始することはできるし、その経験もある
のだけれど、「英語学習を継続できないために、望ましい成果が
得られていない」というYさんなりの見解をお持ちなのではない
か?という推論/仮説が成り立ちます。
今回のコーチング目的に合わせて表現を変更すると、例えば、
「『英語学習を継続できさえすれば、望ましい成果が得られる』
とお考えなのでしょうか?」といった質問フレーズが浮かんでき
ます。
(…背景にあるのは、Yさんは、「英語学習の習慣などが身につ
きさえすれば、成果は上がる」「英語を学習する能力自体への不
安はない」などといった考えをお持ちなのではないか?という推
論/仮説です。)→確認を推奨
●上記の2つを整理すると、「TOEICの高得点習得を目指す効率的
な英語学習方法・学習計画」を探求するのではなく、「実務を行
う上での緊急性が高いと言えず、興味が持てない取り組み(…例
として、今回の話に出てきているのが ”英語学習” )を継続さ
せるには、どうすればよいのか?」というのが、Yさんがお持ち
の、より本質的な問題意識のようだ、という話の全体像が見えて
きます。→確認を推奨
●クライアントの話をしっかり聴くことは、もちろん非常に重要で
すが、コーチがクライアントとまったく同じように考えていては、
クライアントと同じ迷宮に入り込み、同じように悩んで終わり
(…「あなたの氣持ち、よくわかりますよ」と共感し、クライア
ントの感情解放を手伝って終わり)になってしまいます。
また、「
自転車操業的に、さまざまな問題症状への対症療法を繰
り返すだけ」というのも、満足度の高いコーチングとは言えない
と考えています。
やはり、「緊急対応が求められる問題症状を扱うことと、より本
質的な問題解決を行うことの2段構えで臨む」のが適切で、満足
度の高い効果が得られるのが、実施したいコーチングではないで
しょうか? このような認識の下、弊社流のコーチングでは、コ
ーチはクライアントの「事象の捉え方の適否について考慮する」
ための働きかけを実施するのが望ましいと考えています。
●上記方針に則って、例えば、次のような質問をYさんに投げ掛け
てみるというのはどうでしょう?
------------------------------------------------------------
例1)
もし、同業他社に先駆けて、英語で発信されている人財育成関連の
情報を入手することができるようになったり、そういった情報提供
者に英語で質問を投げかけることを通して、頼れる社外人財ネット
ワークが構築できたりすると、グローバル化に向かう会社の社員教
育担当者としてのYさんの仕事には、どんな変化がありそうでしょ
うか?
最初はシンプルな質問を投げかけるといった形で構わないので、
世界中に存在する人財育成の専門家、あるいは、Yさんと同様に社
内教育担当者として、類似の悩みや課題をお持ちの方と情報/意見
の交換を始めること、そして、今までと異なる情報源から得られた
知見を自社の同僚と共有したり、社内の取り組みに活かしたりする
ことで、Yさんの実務に、どのような変化や影響がもたらされそう
でしょうか?
『そういったやり取りを行うのに必要な、実践的な英語の学習を続
ける』というのは、市販の英語学習教材を通して一人で英語を学ぶ
場合と何が違いそうでしょうか? そういった取り組みを続けた結
果として、TOEICの点数が上がっているという状況は非現実的でし
ょうか?
------------------------------------------------------------
例2)
現状の英語力や各種翻訳ツールなどを最大限に活かすことによって、
英語で発信されていた情報を活用したり、英語圏に住む専門家や知
り合いになった人から協力を得たりして、自社に効果的/効率的な
人財育成の仕組みを構築することなどに注力する!というのはどう
でしょう?
そうした取り組みによって、自社の教育コストを大幅に低減できた!
などといった実務上の成果を上げることによって、『TOEICの高得
点を目指させようという自社の教育方針』は誤っているのではない
か? 代わりに、『○○といった方針によって自社に適したグロー
バル人財の育成を目指す』という施策を提案します!と社内教育担
当の同僚や上司、経営陣に訴えかけることもできるのではないでし
ょうか? どう思われます?
------------------------------------------------------------
例1)は、「英語の学習教材を順々にマスターしていく」といった
取り組みと異なり、「Yさんの業務の一部を英語でこなしていく」
というように「取り組む事柄の変更」(…課題の再設定)を行った
状態の想像を促しています。
そして、「TOEICの高得点取得」を「目標」とせず、「副産物」
(間接的効果のひとつなど)とすることで、「興味が持てない、苦
手な事柄に継続的に取り組まなければならないという心理的負担」
(
モチベーション上の問題)に向き合わなければならないという
「思い込み」を払拭するのにも役立つかもしれません。
例2)は、「『周囲からの無言の圧力」を自分で勝手に感じて、ク
ヨクヨ悩んでいることは、自分にとって、あるいは所属組織にとっ
て、本当に有益な状態なのだろうか?
そもそも、グローバル人財育成を目指す取り組みとして、TOEICの
得点という指標を用いることが、自社にとって適切なのか? どこ
からそんな方針/判断基準の話が出てきたのか、精査しないうちに
鵜呑みにしていて良いのだろうか?』という視点に立った質問とな
っています。
「英語の苦手な個人」という単一の視点で考える姿勢から離れ、
「社内教育担当者」という「組織が期待する役割」という視点にも
配慮し、「現時点における英語力を最大限に活用することで本業で
の成果を挙げて見せ、グローバル人財としての働き方と英語力の関
係について、自分なりの実績/根拠を示せるようにする。
その上で、社内教育に関して、適切な問題提起や施策の提案を行う
ことが、組織にとって大切ではないだろうか?」と考えることを促
進しています。
「コーチング漬け体験」で私が紹介した例1)例2)のアプローチ
は、「フレームワーク質問力(R)」や「
合同会社5W1H流コーチ
ング学習プログラム」でお伝えしている、「課題の適切な設定を重
視」する内容に沿ったものです。
「
デフォルト思考」の話と対比させるため、先ほどと同様に、1月
7日の「変化促進研究会」で扱った内容で表現し直そうとすると、
ここでご紹介したアプローチは、「センスメイキング」
(Sensemaking)と呼ばれる内容と関連性が深そうだと思っていま
す。
「センスメイキング」というのは、
デフォルト思考に比べ、より
「人間科学」(人類学、社会学、心理学、芸術、哲学、文学など)
志向の観点から、「当事者がその事象をどのように体験したか?」
といった切り口に焦点を当てる思考法です。
当事者が、その事象を体験する「特定のコンテクスト」(状況、背
景、前後関係、文脈)を重視し、暗黙の前提条件をあぶり出そうと
するため、根本的に従来と異なる解決策を案出するのに優れた思考
法だと認識しています。(※2)
※2
「
デフォルト思考」と「センスメイキング」が焦点を向ける先の例
デフォルト思考→「この家には8つの部屋があり、あちらの家には
6つの部屋がある。」(…定量的、客観的な「前景」情報)
センスメイキング→「6つの部屋の内、彼女は黄色の部屋が一番の
お氣に入りです。黄色の部屋には、彼女が祖母と過ごした懐かしい
思い出がたくさんあるからです。」(…定性的、主観的な「背景」
情報)
[ 出典:Christian Madsbjerg 著『The Moment of Clarity:
Using the Human Sciences to Solve Your Toughest Business
Problems』を基に、
合同会社5W1Hにて改変・補足]
いかがでしょうか? Yさんがコーチング・セッションで話した内
容をそのまま掘り下げ、「TOEICの高得点習得を目指す効率的な英
語学習方法・学習計画」に関する話を進めていくアプローチもあれ
ば、「本当に、TOEICの高得点習得を目指すのでいいの?」という
アプローチもあるということ、そして、取り扱う問題に応じて、
「
デフォルト思考」と「センスメイキング」をうまく組み合わせて
用いるのが、「対症療法の繰り返しだけで終わらず、本質的問題解
決を行う」上で重要そうだと感じていただけたでしょうか?
今回ご紹介したような、弊社流のアプローチ(考え方、話の進め方
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冒頭でご案内差し上げましたように、本記事の『全文』は、下記
よりご覧いただけます。上記抜粋記事をご覧になった上で、詳細
についてお知りになりたい方は、是非ご活用くださいませ。
●ニューズレター第171号
目の前に「英語学習を苦痛に感じる、社内教育担当者」がやって
きたら?
→
http://5w1h.hatenablog.jp/entry/171(ブログ版)
→
http://www.5w1h.co.jp/newsletter/no171.pdf(PDF版)
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出典を明記していただき、『著作権法』で認められる『引用』の
範囲を超えなければ、許可なしで部分引用可能です。
また、内容を改変せず、元のままの形(あるいは上記リンク先)
であれば、お知り合いなどに転送していただいて構いません。
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以上、何か少しでも、『
総務の森』コラムをご覧のみなさまの
お役に立てることがあれば幸いです。
お忙しいところ、目を通していただき、ありがとうございました!
高野潤一郎@
合同会社5W1H
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合同会社5W1H流「コーチング学習プログラム」
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