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弁護士
法人クラフトマン 第163号 2015-12-15
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http://www.ishioroshi.com/btob/soudan_firstb.html
顧問弁護士
契約(
顧問料)についての詳細
http://www.ishioroshi.com/btob/komon_feeb.html
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~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
前書き
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
本年も残すところあと半月となりました。皆様ご多忙のことと存
じます。本稿を執筆しております弁護士の石下(いしおろし)です。
年末というのは、多くの人が「紛争を抱えたまま年を越さずすっ
きりしたい」という心理に至るからか、実は紛争解決の機運が高ま
る時期です。
実際弊所で取り扱っている案件の中にも、ここ2ヶ月くらいで和
解で終結したものが何件もあります。その中には4年以上も続いて
いたシステム開発の紛争もあります。
全く論理的な話ではありませんが、解決の適切なタイミングとい
うのは逃さないようにしたいと思うところです。
では、本論にまいります。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1 今回の判例 「湯~とぴあ」
商標と
商標の識別力
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
知財高裁平成年11月5日判決
A社は、「ラドン健康パレス」と「湯~とぴあ」の二段構成の商
標の
商標権者です。
そして、A社は、「湯~トピアかんなみ」という標章で入浴施設
を運営する地方公共団体B町に対し、
商標権侵害を主張しました。
なお、A社
商標とB町標章の具体的な画像は、以下をご覧くださ
い。
http://www.ishioroshi.com/biz/topic/topic2015-12-15/
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 裁判所の判断
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
裁判所は、以下のとおり判断し、
商標権侵害を認めた一審判決を
取り消し、請求を認めませんでした。なお、以下の要約は分かりや
すさを重視しています。
● 「ゆうとぴあ」との語は、「湯」の漢字を含むか否かを問わず、
全国的に、入浴施設というサービスに広く使用されている。
● A社
商標のうち、下段の「湯~とぴあ」の部分は識別力が弱く、
需要者がサービスの「印」として強く支配的な印象を受けないため、
この部分だけを抽出したB町標章との比較はできない。
● 上段の「ラドン健康パレス」も、「ラドンを用いた健康によい
温泉施設」という一般名称的な意味であり識別力が弱い。
● そうすると、A社
商標は、上段と下段が結合してはじめて「ラ
ドンを用いた健康によい温泉施設であって、理想的で快適な入浴施
設」であることが明確になるから、「ラドン健康パレス」と「湯~
とぴあ」は不可分一体として理解される。
● したがって、A社の
商標は、全体として一体的に観察して、B
町の標章との類否を判断すべきである。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3 解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)
商標の識別力と権利の範囲
複数の語で構成される登録
商標について、他社がその一部の語を
その標章に使っているという場合、
商標権侵害は成立するのでしょ
うか。
この点、ある登録
商標と、問題となる標章を比較する場合、通常
は全体どうしを比較しますが、ある場合には「要部」を抽出して、
これらを対比するという作業を行うことがあります。
それは、ある標章を構成する語のうち、出所識別機能を有する部
分とそうではない部分があるからです。
例えば、飲食店の
商標として「レストランABC」とあれば、通
常「レストラン」の部分は出所識別機能を有さないため、出所識別
機能を有する「ABC」の部分が要部になります。
本件では、A社の
商標は「ラドン健康パレス」と「湯~とぴあ」
で構成される
商標であり、前者が一般的な用語であることを考える
と、一見「湯~とぴあ」が要部ともなりそうに思える、微妙なケー
スだったように思います。
(2)
商標の希薄化とその原因
商標として登録された名称であっても、その後、その
商標やその
一部の語が広く使われるようになると、その識別力が希薄化し、さ
らには普通名称となってしまうことがあります。
つまり、登録時には、ある名称が、特定の企業が提供する商品を
識別する「印」としての機能を有していたところ、徐々にその機能
が弱まって消失し、需要者の間で、その商品やサービスを表すあり
ふれた、または一般的名称として意識されるに至ることがあります。
それで、
商標が取れたとしても、放っておくと、その識別力が弱
くなってしまいますので、きちんとした
商標の管理が必要です。
識別力が弱くなる原因にはいくつかありますが、そのひとつは、
商標権者がブランド管理を怠った場合です(なお、これは本件につ
いて言っているわけではなく、一般論です)。
つまり、ある
商標が広く知られたり、もともとその言葉が多くの
人に思いつきやすい言葉の場合、知ってか知らずかこれを同種の商
品やサービスに使用しようとする
事業者が多く出現するようになり
ます。
このときに、
商標権者が、適切な警告などの措置をせずに放置す
ると、多数の
事業者がその
商標を広範囲に使用するようになり、消
費者などから見ればその
商標を見ても特定の会社の提供する商品の
名称であるという認識を持たないようになり、
商標が識別力を失う
ということがあります。
そして、
商標の識別力が弱まると、その権利範囲も狭くなるため、
他者の使用が止められず、その
商標権を保有していた企業にとって
は、少なからぬ財産的損失となることがあります。
それで、
商標権者は、自社
商標の価値を維持するために不断の努
力を払う必要があります。つまり、同業者等が自社
商標やその重要
なキーワードを無断で使用していないか、また、市場において自社
の登録
商標が商品やサービスの慣用的な名称として使用され始めて
いないか、等を常に監視します。
そして、他社の使用や不適切な慣用的名称としての使用が発見さ
れた場合には、適切な対処をする必要もあります。
具体的には、適宜に警告を発したり、不適切な慣用的名称に対し
ても、使用を中止してもらう、表現を改めてもらう、この名称が自
社の
商標であることを明示してもらう、といったことを求めていけ
るかもしれません。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4 弊所ウェブサイト紹介~
商標法 ポイント解説
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弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企
業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。
例えば本稿のテーマに関連した
商標法については
http://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/shouhyou/index/
において解説しています。必要に応じてぜひご活用ください。
なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイト
において解説に加えることを希望される項目がありましたら、メー
ルでご一報くだされば幸いです。
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本稿の無断複製、転載はご遠慮ください。
ただし、本稿の内容を社内研修用資料等に使用したいといったお申
出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原則とし
て無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアドレス宛、
メールでお申出ください。
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【編集発行】
弁護士
法人クラフトマン
代表弁護士・弁理士 石下雅樹
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弁護士
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きりしたい」という心理に至るからか、実は紛争解決の機運が高ま
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実際弊所で取り扱っている案件の中にも、ここ2ヶ月くらいで和
解で終結したものが何件もあります。その中には4年以上も続いて
いたシステム開発の紛争もあります。
全く論理的な話ではありませんが、解決の適切なタイミングとい
うのは逃さないようにしたいと思うところです。
では、本論にまいります。
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1 今回の判例 「湯~とぴあ」商標と商標の識別力
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知財高裁平成年11月5日判決
A社は、「ラドン健康パレス」と「湯~とぴあ」の二段構成の商
標の商標権者です。
そして、A社は、「湯~トピアかんなみ」という標章で入浴施設
を運営する地方公共団体B町に対し、商標権侵害を主張しました。
なお、A社商標とB町標章の具体的な画像は、以下をご覧くださ
い。
http://www.ishioroshi.com/biz/topic/topic2015-12-15/
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 裁判所の判断
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
裁判所は、以下のとおり判断し、商標権侵害を認めた一審判決を
取り消し、請求を認めませんでした。なお、以下の要約は分かりや
すさを重視しています。
● 「ゆうとぴあ」との語は、「湯」の漢字を含むか否かを問わず、
全国的に、入浴施設というサービスに広く使用されている。
● A社商標のうち、下段の「湯~とぴあ」の部分は識別力が弱く、
需要者がサービスの「印」として強く支配的な印象を受けないため、
この部分だけを抽出したB町標章との比較はできない。
● 上段の「ラドン健康パレス」も、「ラドンを用いた健康によい
温泉施設」という一般名称的な意味であり識別力が弱い。
● そうすると、A社商標は、上段と下段が結合してはじめて「ラ
ドンを用いた健康によい温泉施設であって、理想的で快適な入浴施
設」であることが明確になるから、「ラドン健康パレス」と「湯~
とぴあ」は不可分一体として理解される。
● したがって、A社の商標は、全体として一体的に観察して、B
町の標章との類否を判断すべきである。
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3 解説
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(1)商標の識別力と権利の範囲
複数の語で構成される登録商標について、他社がその一部の語を
その標章に使っているという場合、商標権侵害は成立するのでしょ
うか。
この点、ある登録商標と、問題となる標章を比較する場合、通常
は全体どうしを比較しますが、ある場合には「要部」を抽出して、
これらを対比するという作業を行うことがあります。
それは、ある標章を構成する語のうち、出所識別機能を有する部
分とそうではない部分があるからです。
例えば、飲食店の商標として「レストランABC」とあれば、通
常「レストラン」の部分は出所識別機能を有さないため、出所識別
機能を有する「ABC」の部分が要部になります。
本件では、A社の商標は「ラドン健康パレス」と「湯~とぴあ」
で構成される商標であり、前者が一般的な用語であることを考える
と、一見「湯~とぴあ」が要部ともなりそうに思える、微妙なケー
スだったように思います。
(2)商標の希薄化とその原因
商標として登録された名称であっても、その後、その商標やその
一部の語が広く使われるようになると、その識別力が希薄化し、さ
らには普通名称となってしまうことがあります。
つまり、登録時には、ある名称が、特定の企業が提供する商品を
識別する「印」としての機能を有していたところ、徐々にその機能
が弱まって消失し、需要者の間で、その商品やサービスを表すあり
ふれた、または一般的名称として意識されるに至ることがあります。
それで、商標が取れたとしても、放っておくと、その識別力が弱
くなってしまいますので、きちんとした商標の管理が必要です。
識別力が弱くなる原因にはいくつかありますが、そのひとつは、
商標権者がブランド管理を怠った場合です(なお、これは本件につ
いて言っているわけではなく、一般論です)。
つまり、ある商標が広く知られたり、もともとその言葉が多くの
人に思いつきやすい言葉の場合、知ってか知らずかこれを同種の商
品やサービスに使用しようとする事業者が多く出現するようになり
ます。
このときに、商標権者が、適切な警告などの措置をせずに放置す
ると、多数の事業者がその商標を広範囲に使用するようになり、消
費者などから見ればその商標を見ても特定の会社の提供する商品の
名称であるという認識を持たないようになり、商標が識別力を失う
ということがあります。
そして、商標の識別力が弱まると、その権利範囲も狭くなるため、
他者の使用が止められず、その商標権を保有していた企業にとって
は、少なからぬ財産的損失となることがあります。
それで、商標権者は、自社商標の価値を維持するために不断の努
力を払う必要があります。つまり、同業者等が自社商標やその重要
なキーワードを無断で使用していないか、また、市場において自社
の登録商標が商品やサービスの慣用的な名称として使用され始めて
いないか、等を常に監視します。
そして、他社の使用や不適切な慣用的名称としての使用が発見さ
れた場合には、適切な対処をする必要もあります。
具体的には、適宜に警告を発したり、不適切な慣用的名称に対し
ても、使用を中止してもらう、表現を改めてもらう、この名称が自
社の商標であることを明示してもらう、といったことを求めていけ
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4 弊所ウェブサイト紹介~商標法 ポイント解説
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例えば本稿のテーマに関連した商標法については
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