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『戦略→組織? 組織→戦略?』、経営陣と人財部門の責務とは?

総務の森』コラムをご覧のみなさま


こんにちは! 合同会社5W1Hの高野潤一郎と申します。

プロフィールとバックナンバーは、こちらからご覧いただけます。
http://www.soumunomori.com/profile/uid-97755/


本コラムでは、弊社配信の無料ニューズレター第182号(2015年12
月19日配信)で公開した記事の一部をシェア差し上げます。
今回のタイトルに興味をお持ちいただけた方は、是非、お役立てく
ださい。

<以下、抜粋記事となります。その旨、予めご了承くださいませ。
 なお、システム上、本コラムでご紹介できない『図表』などを含
 めた『全文』は、『後述のリンク先』より、無料で、何の登録手
 続きもなく、ご覧いただけますので、ご安心ください。>

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(前略)


前号では、「なぜ『戦略的人財マネジメント』への関心が高まって
いるのか? 経営陣が『人財部門の戦略』に意識を向ける理由とは?
」といった内容をお届けしていました。

そして、終わりの方では、「従来『管理的業務』が主だった人財部
門にも、『戦略的役割』(個別事業にとどまらず、企業自体に競争
優位性を持たせる役目)を果たすことで、『企業の成長や持続的な
繁栄に貢献すること』が求められるようになってきている」と書い
ていました。

これは人財部門の従来の業務内容を否定しているのではなく、「も
ちろん『管理』は大切だけれども、それだけでは主に『守り』でし
かないので、今後は、『攻め』に相当する『戦略』(の立案・実行)
に携わっていくこと(戦略的人財マネジメント)が、人財や組織を
扱う部門に求められているのだ」という主張だとご理解いただけれ
ば幸いです。

この流れを受けて、今回は、「自社にとって適切な戦略とは?」
「戦略と組織の関係とは?」「人財は育てる?育てない?」といっ
た内容について、弊社の基本的な考え方を紹介していこうと思いま
す。


■『正解』があるなら、『みんなの戦略は同じ』はずだが…

他社の「ベスト・プラクティス」から「戦略」を学ぼうとする企業
も多いと思います。 確かに、「他社ならではの特殊事情が含まれ
ている」という部分を差し引いたとしても、「ベスト・プラクティ
ス」から学べるところは多いと思います。

しかし、それらは、「過去のビジネス環境において、その時点から
始めたある取り組みが、最近になって結実した事例」であって、
「今から、自社がそのままマネして同じ成果が得られる保証はない
し、逆効果になる場合もある」ということに注意する必要がありま
す。

企業研修の導入を検討する場合に、「自社の状況や課題を見極める
ことが大切」であって、「流行を追ってばかりいても、望ましい成
果が得られない」のと同じく、「戦略」を検討する場合にも、「有
名企業や同業他社と同じこと」を単にマネしていても仕方ありませ
ん。

「自社は、現在、高い収益が見込める産業に進出しているのか?」
「寡占状態を生み出すための手が打てるか?」といった『製品やサ
ービスの市場構造に関する視点』から戦略を検討することが有効な
ステージの企業もあれば、「自社の持続的な競争優位性を実現する
には、どういった人財を獲得・育成し、どういった技術力やブラン
ド力を高めていくことが大切なのか?」といった『他社が模倣困難
な、独自の組織能力に関する視点』から戦略を検討することが有効
なステージの企業があるなど、市場や自社の状況に応じて「適切な
戦略」は異なりますし、変わっていきます。

第43回の『教養醸成の会』テキストの、アン・マクズラック著
『細菌が世界を支配する』には、「順調に機能している生態系は、
静止することなく、遷移と呼ばれるプロセスを経て常に進化する」、
「進化とは、種の生き残りに有利な、ほんのわずかな個々の適応に
よって、個体群全体にある変化が生じることだ」といった表現もあ
りましたが、やはり、経営戦略や事業戦略を検討する際にも、「適
応や進化といったダイナミクスの視点」に配慮する必要があるので
はないでしょうか?


■「戦略 ? 組織」と方向転換できる「懐の広さ」を持てています
か?

続けて「戦略と組織(特定の考え方に賛同する人財の集合体)」と
いう切り口から見ていきましょう。

「戦略と組織」に関しては、大きく分けると、『組織は戦略に従う』
と『戦略は組織に従う』という2つの有名な考え方があります。 

『組織は戦略に従う』という表現で知られる、経営史研究者のアル
フレッド・D・チャンドラーJr.さんは、「目的や戦略、中長期の業
績目標などを定めてから、それらを達成するために必要な人財など
の経営資源を計画的に配備することが重要である」という考え方を
提唱され、

『戦略は組織に従う』という表現で知られる、戦略経営論創始者の
イゴール・アンゾフさんは、「実現可能な戦略は、組織能力に規定
される。他社との差別化を図るには、組織の特性を活かした戦略立
案が重要である」という考え方を提唱されました。

これらについては、「真逆の対立する考え方である。どちらか一方
だけが正しいはずだ。」と捉えるのではなく、市場や自社の状況に
応じて、「戦略→組織」の取り組みに軸足を置く場合と「組織→戦
略」の取り組みに軸足を置く場合を「柔軟に切り替えていく」こと
が大切だと、弊社では考えています。

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●プロ棋士の将棋は、
 攻めとか受けとか色わけできるほど単純ではない

十五世名人・永世十段・永世王位・永世棋聖・永世王将といった5
つの永世称号を獲得された将棋棋士の大山康晴さんは、『勝負のこ
ころ』という著書の中で、「私の場合、受けといっても、単なる守
勢を意味するものではない。相手に踏みこまれてから、やむなく受
けに廻るというのは、ほんとうの受けではない。それは、後退と同
じことで、正しい意味での防御という役を果たしていない。相手が
踏みこんできたとき、いつでも反撃できる態勢を整えておく。十分
な準備のうえに立って、あくまでも攻めを前提として守りを固める
のが、ほんとうの『受け』である。」と述べておられます。
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ただし大まかな傾向としては、コンビニエンス・ストアがドリップ・
コーヒー(カフェ市場)やドーナツ(おやつ時間市場)、スムージ
ー(健康・美容市場)の取り扱いを始めた例などで見られるように、
産業間の境界線は曖昧となって、伝統的な産業構造を適用して戦略
を考えること(「戦略→組織」のアプローチ)は難しくなってきて
おり、逆に、「組織→戦略」のアプローチ(図表1の右側で示した
「創発的なアプローチ」)に意識を向ける企業が増えてきていると、
弊社では捉えています。

図表1:4つの戦略
(「創発的・機械論的」×「ヴィジョン・価値観」版)

一方、最近盛んな「戦略的人財マネジメント」の話では、「戦略→
組織」を前提とした、「戦略が実現できる人財の獲得・育成」とい
った表現が非常に多く、「インベンション(発明)」や「イノベー
ション(創新普及)」の促進に重要な、「組織→戦略」を前提とす
る表現に出会う機会が少ないように感じています。

環境変化に応じて『攻めつつ守り、守りつつ攻める』という『懐の
深い、複眼的な戦略活動』の実現という切り口があることも踏まえ、
あなたは「戦略」についてどのように考え、所属組織でどういった
取り組みをしていくのが良さそうでしょうか?


■改めて、人財部門として揺らいではいけない『戦略』とは?

企業にとっての「戦略」と言っても、『全社戦略』(事業領域の決
定、それぞれの事業への資源配分など)、『事業戦略』(既存事業
の拡大、新規事業への取り組みなど)、『機能戦略』(組織・人財
戦略、研究開発戦略、マーケティング戦略など)をはじめ、さまざ
まな切り口のものがあります。 

そこで、ここでは、人財育成と組織開発に関係の深い「戦略」とし
て「人財は育てるのが良いのか?育てなくても良いのか?」を検討
する際のヒントになりそうな話をご紹介しようと思います。

『エッセンシャル・キャンベル生物学』(Campbell Essential
Biology 4th Edition), Eric J. Simonほか著によると、生態学で
は「生存曲線」(survivorship curve)という概念があるそうです
(図表2)。 

ヒトや多くの大型哺乳類のように「少数の子を産んで、子の世話を
よくして、成熟するまでの生存率を増加させる」という生存戦略を
採るものは「Ⅰ型」と呼び、カキをはじめ多くの無脊椎動物や一部
の魚のように、「多数の子を産み、ほとんどあるいはまったく子の
世話をしない」ものは「Ⅲ型」と呼び、一部の無脊椎動物、トカゲ
やげっ歯類などは、「生存率が生涯を通して一定」な「Ⅱ型」と呼
ばれていると紹介されています。

図表2:理想化した生存曲線の型

また、小さな体で短い寿命の動物の多くは、(栄養素などの制約が
少なく、競争が少ないといった)生存に適した環境の下であれば、
「指数関数型成長」を遂げて、生育地を素早く占有します(図表3)。

一方、ほとんどの環境では個体群成長に必要な資源に制限があるた
め、個体の成長率は環境収容力に近づくにつれて減少します(「ロ
ジスティック型成長」)。資源をめぐる競争は、環境収容力に近づ
いた環境で激しいため、子供の生存より自分の生存にエネルギーを
投資する生物が生き残ります。

図表3:指数関数型成長とロジスティック型成長の比較


ここで、「組織=個体群、個人=個体」として、企業の「人財・組
織戦略」について考えてみましょう。

図表2の生存曲線については、例えば、次のようなことが言えそう
です。 

「Ⅲ型」の生存戦略は、「個人が自力で生きる」ことを前提とし、
「個人を大切にすることよりも、組織が生き延びることを重視する」
という戦略です。そのため、「生命力あふれる少数の個人だけが長
生きする」という結果が生じやすくなります。 

一方、「Ⅰ型」の生存戦略は、「関係者が個人を育成するために充
分な働きかけを行う」ことを前提とし、「放置しておくだけで、自
発的に一定確率の優秀な人財が生まれるのを待つのではなく、長期
間に渡り、環境を整え、愛情を注ぎ、ストレッチを促し、組織の方
向性と個人の価値観の整合性を図るなどして、個人を育成すること
によって、優秀な人財が発生する確率を高める」という戦略です。
結果として、「組織や仲間への愛着が生じる」といったことが起こ
りやすくなります。

図表3の成長曲線比較については、例えば、次のようなことが言え
るかもしれません。 

イノベーションを興し、競争のない未開拓市場を切り開いていく戦
略(ブルー・オーシャン戦略; Blue Ocean Strategy)が採れる間
は、「指数関数型成長」を遂げるのかもしれませんが、複数のイノ
ベーションを次々と興していけるかどうかはわかりません。

また、自社が競争の激しい既存市場(レッド・オーシャン; Red
Ocean)にあり、環境収容力の限界に近ければ、後継者や若手を育
成するよりも、短期的視野に立った生き残りに必死になりがちかも
しれません。

もちろん、図表2, 3は単純化したモデルでしかありませんので、
今後の組織や個人の方向性を検討する際の出発点くらいに捉えれば
よいと思いますが、経営者・経営陣は、(例えば、人財育成にしっ
かり取り組む会社なのか、それとも、短期間かもしれないけれど即
戦力に対して高額の報酬を提供する会社なのかなど)自分たちの方
針を定め、全社で意識共有を図っておくことが大切ではないでしょ
うか? 

「柔軟にアプローチを変えるべきルール」も数多くあると思います
が、「人財をしっかり育成するかしないかといった方針は、人財部
門の担当者の異動などによってコロコロ変わるようではマズイ性質
の基本方針」だと、弊社では考えています。

前号では、「『人財獲得競争』が激化してきている」という内容に
ついて、5つの観点から解説していました。 既に『優秀な人財が
働きたいと思う企業』として認知されているのであれば、「(個人
には、主体的に能力開発に取り組むかどうかを選ぶ自由があると考
え)組織として人財を育てたりはしない」という選択肢も成り立つ
のかもしれません。

しかし、総務省「平成24年経済センサス」によれば、産業の種類に
よらず、日本の企業のおおよそ99%は中小企業であり、その大多
数は、『優秀な人財が働きたいと思う企業』として広く認知されて
いないのかもしれません。 このような視点に立って考えると、ほ
とんどの企業は、「人財を育てる道」を選ぶのではないでしょうか?

『各部門』の収益向上に日々邁進している人々は、『目先の目標を
達成する』ために『部門最適』の視点でモノを考えがちになること
は不思議ではありません。

しかし、だからこそ、『経営陣と人財・組織部門に属する人々』は、
『全社戦略』『事業戦略』『機能戦略』などを統合した視点から捉
え、『現有能力で可能なことを実施する』だけではなく、『組織能
力を伸ばし、市場競争力を高めていくために必要・有効・妥当と思
える取り組みを立案し、実施する』ことが責務であると、弊社では
考えています。

人財育成と組織開発に関係の深い「戦略」について、あなたの所属
組織では、今後どういった方針を持ち、具体的にどんな活動をして
いくのが良さそうでしょうか?

(後略)

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冒頭でご案内差し上げましたように、本記事の『全文』は、下記
よりご覧いただけます。上記抜粋記事をご覧になった上で、詳細
についてお知りになりたい方は、是非ご活用くださいませ。

●ニューズレター第182号
 『戦略→組織? 組織→戦略?』、経営陣と人財部門の責務とは?
 → http://5w1h.hatenablog.jp/entry/182(ブログ版)
 → http://www.5w1h.co.jp/newsletter/no182.pdf(PDF版)
============================================================
出典を明記していただき、『著作権法』で認められる『引用』の
範囲を超えなければ、許可なしで部分引用可能です。
また、内容を改変せず、元のままの形(あるいは上記リンク先)
であれば、お知り合いなどに転送していただいて構いません。
============================================================


以上、何か少しでも、『総務の森』コラムをご覧のみなさまの
お役に立てることがあれば幸いです。

お忙しいところ、目を通していただき、ありがとうございました!

               高野潤一郎@合同会社5W1H

P.S.1
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 「自律共栄の納得人世」の実現に向け、
 「人財と組織の育成を支援」する 合同会社5W1H

         代表 高野 潤一郎 [ 博士(先端科学技術) ]

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