2021年6月3日、国会にて「育児・介護休業法」の改正案が可決され、この2022年4月から段階的に施行されることとなっています。日本ではまだまだ男性が育休を取得することにあまりいい顔をしない企業や組織も少なくありません。今回新たに施行される育児・介護法案は、働き方改革も推進されつつあるこのニューノーマルな社会において、日本の職場に古くからある慣習や、そこに属する従業員の意識を変化させるきっかけとなる可能性もあります。
そこで今回は、富田社会保険労務士事務所所長であり、特定社会保険労務士の富田朗氏を講師に迎え、Webセミナー「経営に必須!4月から続く法改正!育児・介護休業法の大改正に会社が対応するための必須知識!」を開催し、改正に備えて中小企業が押さえておくべき「育児・介護休業法」のポイントについて解説していただきました。
ここでは、Webセミナーで解説された内容を4回に分けて連載していきます。当記事では、第1回として「2022年4月以前の育児・介護休業法の概要」について掲載します。
第1回:2022年4月以前の「育児・介護休業法」の概要
第2回:「育児・介護休業法」に含まれる代表的な義務規定
第3回:2022年4月からの法改正への対応ポイント
第4回:2022年10月と2023年4月の法改正への対応ポイント
【登壇者】
富田朗(とみた・あきら)
特定社会保険労務士/富田社会保険労務士事務所 所長/東京都社会保険労務士会 研修委員/東京都社会保険労務士会新宿支部 役員/社会保険労務士駿台会 副事務局長
日々、規模・職種等を問わず、多くの企業様の労務相談、経営労務に関するコンサルティング等をしている。特に、労務に関するコンプライアンスの観点から、社内で労働社会保険諸法令等に合致した労務管理が行われているかを精査し、必要があれば改善指導をすることを得意としている。また、開業当初より、「わかりやすく」をモットーに法令や制度等を解説するセミナーを多数行っており、現場目線でわかりやすく解説することに定評がある。
育児・介護休業法とその改定
「育児・介護休業法」は10年ほど前に改正され、施行されました。今回の「育児・介護休業法」の改定は、“大改正”レベルの大きな変更です。それを踏まえて、自社に足りない規定があればここで確認していきながら改めて見直していく姿勢が必要になるでしょう。
それではまず、現状の育児・介護休業制度について、その概要を確認しましょう。
1991年に「育児休業法」が成立し、その後1995年に今回のテーマである「育児・介護休業法」になりました。つまり「育児・介護休業法」は、施行されてからまだ30年ほどしか経過していない新しい法律ということになります。1922年からある「健康保険法」や1947年からある「労働基準法」などと比較すれば、歴史の浅い法律です。そのため、ベテランの従業員ほどこの法律を軽視する傾向にあります。
しかし今、優秀な人材を採用し、定着させたいと考えるなら、この「育児・介護休業法」は非常に重要です。たとえ現在、対象となる人材がいないとしても、将来的にそういう社員を採用する可能性はあります。また、現在の社員がいつ育児や介護の対象となるかは予測もつきません。整備しておいて「弊社は育児・介護制度が充実しいてます」とアピールする方が、良い人材が集まるのは間違いありません。
また、現状でも多くの義務規定があるにも関わらず、近年の社会情勢に合わせるようにより制度が拡充している法律でもあります。今回は2022年4月から、3回に分けて制度が拡充されていくことになりました。
現在の主な義務規定
現在の主な「育児・介護休業法」における義務規定は上の図のようになります。
「育児休業」「介護休業」については、中小企業のみなさんにおいてもすでに多くの企業が規定していると思います。しかし、その他の規定については、大企業はともかく中小企業で規定されていないという現状があります。
「子の看護休暇」は、従業員の子どもが病気になったときに休暇をとれるという規定です。「介護休暇」も同様です。「残業や深夜業の制限」は、育児や介護のために残業等を軽減しなければならないという規定です。「ハラスメントへの対応」は、休業や休暇をとる従業員に対してハラスメント行為をしてはいけない、「労働時間の短縮等の措置」は育児や介護に関わる従業員の労働時間を短縮していく義務がある、そういう規定です。
どうでしょう? 現状でもこれらの義務規定があるわけですが、自社でこれらの制度は整備していますか? まずはこの点を確認していただきたいと思います。
まずは改正前に現状の「育児・介護休業法」がどのようになっているか、概要を知っていただけたと思います。次回は、それぞれの義務規定について、もう少しずつ詳しく確認していきます。
*にしやひさ / PIXTA(ピクスタ)
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