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無断加工と商標権侵害

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報

石下雅樹法律・特許事務所 第9号 2006-01-05
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1 今回の判例  無断加工と商標権侵害
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H17.12.20 東京地裁 平成17(ワ)8928 商標権 民事訴訟事件

貴金属輸入販売会社(A社)が,有名ブランド「カルティエ」の正規代理店や並
行輸入業者などから腕時計やブレスレットなどを買い取って,それにダイヤ埋込
などの加工を行い,「アフターダイヤ」などと広告し販売していました。

これに対して,カルティエが,このA社の行為は商標権侵害であるとして,製品
の販売の中止等と損害賠償を求め,訴訟を起こしました。

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2 判決の概要
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【結論】 裁判所は,A社の行為をカルティエの商標権を侵害するものと認め,
差止,損害賠償ともに請求を認めました。

裁判所の判断の要旨は次のとおりです。

被告製品は,原告製品を加工したものであるが,原告製品の品質にも影響を及ぼ
す改変を施したものであり,原告商標の出所表示機能及び品質保証機能を害する
ものといわざるを得ない。

また,被告製品の広告には,「アフターダイヤ」などの表示があるが,真正な原
告製品として,ダイヤモンドを付したものが販売されており,被告製品がこれと
混同を生じるおそれのある形態であることに照らせば,上記表示があるとしても,
原告商標の出所表示機能及び品質保証機能を害することに変わりはない。


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3 解説
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1)商標とその機能

ある商品について登録された商標については,第三者は,この商品と同じ又は類似の
商品に,商標として付することはできません。例えば,「コカコーラ」という名前を
付けて,自分で清涼飲料水を売り出すことはできないわけです。このような行為は
商標の冒用」といわれています。

しかし,商標の侵害行為となる行為はそれだけではありません。

商標には,出所表示機能(商標を見ると,この商品の出所がどこかが分かる機能),
品質保証機能(評判の高い商標がついている商標は,品質が高いと消費者に思って貰
うことができる機能),広告機能,という機能があります。

それで,このような商標の機能を害する行為は,侵害になる場合があります。

2)こんなケースは侵害になる?

例えば,こんなケースについてはどうなると思われますか?

あるX商店は,ある調味料Yが,市場では1kg単位でしか売っていないため,これ
を顧客がもっと少ない単位で買うことができれば便利だろうと考えました。それで,
X商店は,1kgの袋に入った調味料を,これを100g単位の小袋に小分けして,
その調味料Yの登録商標と全く同じ商標のラベルを印刷して貼り付け,店頭に並べて
販売しました。中身は本物そのものですし,何の加工もしてありません。また,Yの
商標であることを示しています。

以上のようなケースで,裁判例で争われたケースがあります。最高裁昭和46年7月
20日判決(ハイミー事件)などです。裁判所は,上記のような行為は,商標の侵害
に当たると判断しています。その理由は,商標権者は,自分の商品を製造して流通過
程に置くわけですが,その商品が,流通過程に置いたときと同じ状態で,最終消費者
のもとに渡ることを期待する利益があるからである,と説明されています。

以上のように,商標権の侵害行為には色々なものがありますが,まとめてみると,

A 本物(真正商品といいます。)を,小分け,加工,改変して当該商標を付して売
ること
B 真正商品を,再包装して当該商標を付して売ること
C 真正商品から,表示されている商標を抹消して売ること
D 無印の真正商品に,商標を付して売ること
E いったん顧客に販売された商品を買い戻して,新品のように装って売ること
F 商標権者が廃棄することを予定した商品を売ること

といったものがあります。

ですから,新しいビジネス手法を立ち上げる!という際,商標権侵害に当たらないか
どうか,チェックすることは重要ではないか,と思われます。

また,意外なものに商標登録がされている場合もあります。「阪神優勝」のような怪
しげなものもありましたが,例えば,京都新聞Web版2004年2月21日号では,「ネーミ
ングに商標権の“壁” ドラマ「新選組!」関連の酒商品」という記事がありまし
た。ドラマ「新撰組」にあやかって京都市内に続々と新撰組に関連したを付した日本
酒やワインが出回りましたが,その多くが登録商標となっていたというものです。


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