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「雅」商標と「MIYABI」商標との類否

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士法人クラフトマン 第218号 2018-08-14

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1 今回の事例 「雅」商標と「MIYABI」商標との類否
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 知財高裁平成30年1月25日判決

 A社は「雅」の文字を含む商標(指定商品 第30類「洋菓子、
和菓子、食パン」)を出願しました。


 特許庁は、この出願に対し、「MIYABI」を含む登録商標
指定商品 第30類「食パン」)を引用商標として、引用商標との
類似を理由に登録を拒絶し、不服審判においてもその結論は変わり
ませんでした。

 そのため、A社は、当該審決の取消を求めて訴訟を提起しました。
 なお、A社商標引用商標商標の画像は、以下のURLをご覧
ください。

 www.ishioroshi.com/biz/mailmag/topic/topic20180814/




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2 裁判所の判断
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 裁判所は以下のように判断し、A社の主張を認めませんでした。

・ 「雅」と「MIYABI」を対比すると、漢字とローマ字とい
う外観上の違いがあるものの、その称呼(ミヤビ)と観念(優美で
上品なこと)は完全に同一である。

・ 外観についても、ローマ字と漢字等の間で文字種の変換はごく
普通に行われており、これら文字種の違いは、両商標の類否判断の
上でさしたる相違とはいえない。

・ むしろ両者は似たような筆文字風の書体であり、需要者に対し
近似する印象を与える。

・ 「食パン」は、パン屋やスーパーマーケット等で販売される日
用の食品であって、通常、注意深く商品を観察した上で購入された
りするものではない。

・ 以上を考慮すれば、A社商標引用商標の外観上の相違は大き
くなく、称呼と観念の共通性や取引の実情等を踏まえれば、A社商
標と引用商標とは、出所について誤認混同を生ずるおそれがあり、
類似の商標である。




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3 解説
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(1) 登録済商標と類似の商標の出願

 商標はどんなものでも登録されるわけではなく、商標法3条と4
条は、法律上登録を受けることができない商標について定めていま
す。

 そのうちの一つが、商標法4条1項11号に定められている、他
者がすでに登録した商標と類似の商標です。つまり、ある商標につ
いて出願しても、同一・類似の商品やサービスに関して、同じ・類
似の商標が先に出願され登録されていると、自分の商標は登録され
ません。

 この点、ある商標と別の商標が類似といえるのか否かの判断は必
ずしも簡単ではありませんが、基本的な考え方を知っておくことは
重要かと思います。


(2)商標の類似の3大判断要素

 一般に商標の類否の判断は、以下の三要素を比較します。

(a)外観(商標の見た目)
(b)称呼(商標から導かれる発音)
(d)観念(商標から想起される観念)

 さらに、その商標や指定商品に関する取引状況に照らし、需要者
にとって、誤認や混同のおそれが生じるか否かで決められます。

 今回の判例は、「雅」と「MIYABI」の両商標は、外観は相
違するものの、称呼と観念が同一であることから、外観の印象の類
似性と取引の実情も考慮しつつ、両商標は類似していると判断され
ました。

 例えば、過去の裁判例・審決例などから、称呼の同一性が主に問
題となった例をご紹介します。

 (類似)「菊正宗」と「金盃菊正宗」 
 (類似)「関ノ孫六」と「六孫/孫六煎餅」 
 (類似)「シエーン」と「紫苑」
 (類似)「開拓百年」と「開拓百年/風雪の里」(二行で構成)

 (非類似)「アヴィアス」と「マビアス」
 (非類似)「LANCEL」と「ラッセル/RUSSEL」
 (非類似)「LANCEL」と「ラッセル/RUSSEL」


(3) ビジネス上の留意点

 新たな商品名や店舗名などを選択する場合、他社の登録商標を調
査し、極力他社商標を含まない標章を選択することが望ましいとい
えます。

 この点、筆者に相談に見えられる方の中で少なからぬ方は「音は
同じでも、文字が違うのだから類似ではないのではないか」とおっ
しゃる方が少なくありません。

 確かに音が同じでも、外観といった他の要素が著しく異なる場合
には商標登録が認められることがないわけではありませんが、取引
の実情も踏まえてよっぽど工夫する必要があります。安易に「文字
が違うから法律上も大丈夫だろう」と考えるのは危険が高いと思い
ます。

 それで、ネーミングの選定の前に、弁護士や弁理士に、法的観点
から登録可能性などについてアドバイスをもらうことは、いざとい
うときに登録が認められず、ネーミングの変更をしなければならな
くなるといった大きな損失を避けるためには有益であり、必要なコ
ストと考えることができるのではないかと思われます。




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