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働く人の健康管理の日本歴史(100年以上の経緯と蓄積)

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 産業医として化学工場、営業事務所、IT企業、電力会社、小売企業等で勤務し、厚生労働省において労働行政に携わり、臨床医として治療を行った複数の健康管理の視点で情報発信をしております。
 さらに、文末のように令和元日(5月1日)に、「令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法」を出版し、今まで高価であった産業医が持つ情報を、お手頃な価格にすることができました。
http://hatarakikatakaikaku.com/
 今回は、「働く人の健康管理の日本歴史(100年以上の経緯と蓄積)」について作成しました。
 労働衛生の取組を行うことで、従業員に培われる「技術」「経験」「人間関係」等の財産を、企業が安定して享受するためにご活用ください。
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働く人の健康管理の日本歴史(100年以上の経緯と蓄積)
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  日本の労働安全衛生の歴史について、令和元年12月22日は100周年の節目であったので、紹介いたします。(本文は、令和元年12月に作成しましたが、社会的コロナウイルス禍により、公開が遅れました。また、一部表現の修正のため、読みづらい点がありましたら、申し訳ありません。)
 
○労使の歴史(家内制手工業)
 労使関係と言える最初の人間関係は、家内制手工業の師匠と弟子、商店の番頭と年期奉公者、農業の地主と小作人、といった技術、市場、生産設備(田畑)等のインフラを所有している師匠等に従うことで、衣食住が得られ、良い物作り競争で結果を出した場合、ステップアップにつながるという仕組みでした(インフラ所有者になるにはハードルが高かった歴史的事実も多いですが。)。
 この場合、インフラ所有者とそれに従う者の距離は近いため、インフラが破壊されたり、インフラ所有者の生命が損なわれる危険があったことから、インフラ所有者は序列を明確化しつつも、一定の協調を行う必要がありました。
 
○労使の歴史(工場・機械による工業)
 蒸気機関、製鉄、銀行業等の技術やシステムが成長したことで、工場や機械といった新たなインフラを所有するインフラ所有者が生まれ、インフラで勤務する労働者も生まれました。工場や機械のインフラを活用することで、多量生産によりインフラ所有者は良い物作り競争で市場を寡占することができました。一方、インフラ所有者と労働者の距離は物理的に社会的に離れることになり、労働者がインフラ所有者を脅かすリスクが低下したことで、序列を強化し協調が相対的に不要となってきました。
 労働者から受けるリスクが低減しましたが、インフラ所有者には、良い物作り競争で敗北した場合、別の者に市場が寡占され、インフラ所有者の地位を奪われるという新たなリスクが登場しました。
 独占禁止法等で市場を寡占されることに対して一定の防波堤を作ることができましたが、他のインフラ所有者や多くの非インフラ所有者がライバルとして良い物作り競争に参加した場合、数の力に負けるおそれがあります。そこで、良い物作り競争を否定した共産主義に対して投資を行いました。銀行業や石油業のインフラ所有者が共産主義を主張する者に投資した事実背景もあります。

○労使の歴史(共産主義と関連する主義)
 共産主義は、「資本主義の発達により貧富の差が拡大し、和解は不可能」を軸とする考えになります。その統治方法は、良い物作っても作らなくても待遇は変わず、上司に従順であることが待遇の向上につながるものでした。従って、インフラ所有者にとっては良い物作り競争の脱落者を作るという意味で都合の良い思想でした。
 共産主義が広がることで、共産主義国家ではインフラ所有者が国家により排斥され、最終的に真空管から卒業出来ない等の事例の様に良い物作り競争に負けることにつながっていきました。
 一方、共産主義のリスクに気づき、共産主義を受け入れない国家がありました。その国家に対しては、「既存の権威等の存在を望ましくないと考え、調和的な社会結合を目指す政治思想」という政治哲学により、重篤な場合は大きく社会を混乱させ、時に無秩序な政権が誕生しました。
 しかし、インフラ所有者は、自身に従順であり所在地となる国家も必要でした。そこで、修正主義理論「労働者層の生活改善と中産層の発生を根拠に権威等否定の不要説」を登場させ労使協調の概念を構築します。この3種類の主義主張を組み合わせることで、インフラ所有者に有利な労使関係及び社会環境を構築していきました。

○労使の歴史(日本)
 日本は、明治維新を迎え、富岡製糸場や八幡製鉄所に代表されるように、わずか数十年で家内制手工業から工場・機械による工業に移行する必要がありました。従って、家内制手工業の文化であった住み込み労働、主従の序列、自業自得等の中で工場・機械のインフラ所有者に都合の良い文化が流用されました。
 このため、過労による体調不良、結核等の集団感染、作業環境不良による大規模災害等の構造的に避けられない多くのハザードに苛まれることになりました。
 そこで、明治を通して議論を重ね、「工場の繁盛に伴って発生する諸所の事故を防制し、国民の健康を保全し、秩序ある工場の発達を企図するためにこの種の法律を要する」(工場法案議会提出時の内閣総理大臣等文書より)や「国の工業の発達に伴って工場及び職人の数が増加するにいたりたるをもって、これに従事する一部労働者の労働を節制し、その他工業に伴う危害を防止する等工業の発達を永遠に確保する制度を立てる必要あり、これ本案を提出するゆえんなり。」(工場法案理由書より)といった理由により、明治44年に工場法を制定しました。
 さらに、工場法制定時の貴族院議長であった徳川家達を会長として、床次竹二郎内相の私的諮問機関資本労働問題協議会を元に、大正8年12月22日(令和元年12月22日で100年)に財団法人協調会を設立しました。副会長には渋沢栄一、清浦奎吾、大岡育造が名を連ね、修正主義理論を根拠に「労使協調の促進」を目的としていました。
 その後、財団法人協調会は戦前の厚生省に吸収され、戦後労働省から厚生労働省と歴史を歩んでいます。
 日本は全ての野党を含め、民主主義を主張している国家ですので、共産主義に係る3種類の主義主張のうち、修正主義理論を軸として議論されています。日本国憲法第13条及び第31条に係る個人の生存権、第29条の財産権、第27条第2項の労働に係る法律を駆使しして、身体的・精神的・社会的により良い健康が得られるようにすることが重要です。

○まとめ
 財団法人協調会は、およそ100年前に「明日が待って居る 眠れ十分!飲食八分」といった啓発ポスターを作成する等、現在、健康経営で主張されている同様の内容が既に発信されています(健康経営は1992年に提唱されたものであるため、歴史的厚みが薄く、それが社内トラブルの原因になっている事案は報道でも散見されます。)。労働に関する法律は、先人達の働きと議論により汗が凝縮されたものであり、特に労働安全衛生法労災死亡等の発生に伴い繰り返し議論がされてきていますので、文字通り血と汗が染みこんだ唯一の法律です。その法律を無視することは新たな血と汗が流れることは想像に易いです。
 社会的新型コロナウイルス禍により、身体的に守られても、精神的・社会的に不健康であれば意味がなく、身体的に健康(生命)を維持したものの、精神的に不健康にした医師には、最高裁判例で損害賠償が発生しています。新型コロナウイルスのような死亡率のウイルスで精神的・社会的に不健康にならないために、温故知新は繰り返し行うことが重要です。

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令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法
http://miraipub.jp/books/%E3%80%8C%E4%BB%A4%E5%92%8C%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9-%E9%83%A8%E4%B8%8B%E3%81%8C%E3%81%84%E3%82%8B%E5%85%A8%E3%81%A6%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE-%E5%83%8D/

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