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コラムの泉

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派遣の労使協定で使う令和3年度の一般賃金通達が公表されました

 本年4月から始まった派遣労働者にかかる同一労働同一賃金に関し、労使協定方式の場合に令和3年度から適用される一般賃金の額が10月21日午後に厚生労働省のHPにアップされました。本来は7月上旬に公表されるはずでしたが、新型コロナの影響を考慮し、発表が延び延びになっていたものです。

◎同種の業務に従事する一般労働者賃金水準(令和3年度適用)で、全体版なら賃金表まで含みます。リンク先はこちら↓
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077386_00001.html
同じページの下の方に「労使協定方式に関するQ&A(第3集)(令和2年10月21日公表)」も同時公表されてます(あまり役立ちませんが)。

 内容だけ見れば、基本的な構成は昨年7月の局長通達とほぼ同じですが、通達本文の4ページの5の項目が今回のキモになります。
今年発表が遅れたのは、まさにこの取り扱いをどうするかの検討に時間を要し、最終的には労働政策審議会において次の内容を諮ったためと思われます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_14114.html

 細かいいきさつはともかく、昨今のコロナの影響で雇用情勢が急速に悪化・賃金もダウンしているはずですが、本来使用すべき令和元年の統計にはコロナの影響がまだ反映されておらず、今回は特例的な措置を設けようとの趣旨です。

 その内容を非常にざっくり言えば、
「原則は、今回通知した直近の統計数値を使ってね。但し、特定の要件を満たせば去年通知した数値を使ってもいいよ。」
ということです。

 統計数値をざっと眺めると、ばらつきはあるものの今回の通知の方が高めとなっているようです。なので、そのまま今回の通知で新たな協定となれば、賃金コストはかなりアップすると思われ、この文だけさらりと読めば「助かった」と思われる事業主の方も多いかと思います。
 しかし、今回の措置はお上のお慈悲でも何でもありません。文を熟読すればわかりますが、(2)の要件のハードルがかなり高めです。

 簡単に整理すると、
労使協定に派遣労働者雇用維持・確保を目的とする旨を記載(具体的な方策まで検討要)
②コロナの影響をどの地域・どの職種で受けたか、及び今後も受けると見込まれる影響を、それぞれ具体的に(数値を挙げて)示して労使で協議した経過を残し
③協定の中に、前年の数値を使う旨、及びその理由として②の協議で用いた具体的な影響(恐らく数値は必須)を記載
④上記①の具体策、②の具体数の根拠書類と前年数値を適用する労働者数について、事業報告の提出時期に労働局に提出する
との4条件の全てを持たす必要があります。

 基本的には、コロナの影響を受けた地域・職種に限り前年の数値を使ってもいい、というスタンスなので、コロナの影響がなかった職種や地域(言い換えればコロナの影響を証明できない場合)は原則通り今回発表された数値を使うことになります。
 上記の要件に関し今後Q&Aが出るかどうかは不明ですが、うかつに飛びつくのは危険に思います。

 更に現場実務で見ると、この措置を選択した場合はかなりの重作業になるはずです。原則通りであっても、再度職種の適合性の確認や地域指数等の再調整、更には合算方式の場合は通勤費の増額に伴う協定賃金とのすり合わせが必須なのに加え、前年数値を選択する場合は特定の地域と職種を抽出し前年と今回との比較も必要となり、作業量は途方もない数となるでしょう。

 それ以外にも、この措置を選択すればその旨の報告書が労働局に提出されるため、指導に入られる確率は飛躍的に高まるはずです。当局として、おとなしく原則通りやってる事業所よりも例外措置を利用した事業所に対する関心の方が高いのは当然です。もし指導に入られれば、協定内容だけにとどまらず、労働者代表の選出方法等、そもそも論に発展する可能性もあります。
 
 私としては派遣会社の状況にもよりますが、わずかなコスト削減のために貴重な時間を投じたりリスクを負うより、その分を営業開拓に向けた方が得策ではないかと考えます。

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