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不使用取消審判と商標としての使用

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士法人クラフトマン 第267号 2023-12-19

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1 今回の事例 
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知財高裁令和4年2月9日判決

 A社は、「知本主義」の商標登録(指定商品:新聞、雑誌、書籍)を有していましたが、他社が当該登録商標について不使用取消審判請求をしました。そして特許庁が当該商標の登録を取り消す審判をしたため、A社は知財高裁に審決取消訴訟を提起しました。

 A社は、書籍のサブタイトル、帯又は掲載文章の記述の中に、「知本主義」の文字が記載されている例などをもって、登録商標の使用事実として主張しました。

 裁判所は、「知本主義」の文字などに触れた需要者は、書籍の副題の一部、記載内容、宣伝文句、著者の主張等であると認識するにとどまり、これらの文字等が当該書籍について自他商品識別機能を果たすと認識するとは考え難い、と述べ、A社の主張を認めませんでした。




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2 解説
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(1)商標の不使用取消審判

 商標の登録制度は、権利者がその商標を使用することを前提としています。それは、使用されず、また使用の意思もない商標について、商標権という独占的権利を認めることは誰の利益にもならないからです。
 
 それで、商標法は、一定期間(3年間)使用されていない登録商標について、第三者が、特許庁に対し、その登録の取消の審判を請求することができる、という制度(「不使用取消審判」)を設けています。


(2)登録商標と実際の使用例が異なる場合

 不使用取消審判を請求された商標権者が取消を免れるためには、その登録商標を使用していたことを証明する必要があります。この点で問題となることが多いのは、登録されている商標と、実際に使用している商標とが少し異なる場合ですが、今回のように、使用方法が「商標としての使用」といえるのか否か、という点が争点となることがあります。

 それは、商標の主な機能が、自己の商品を他の商品と区別するための「目じるし」としての機能(自他商品識別機能、出所表示機能)であると認められているからです。それで、「目じるし」としての機能を有しない使用方法は、商標としての使用とはいえないということになります。

 以下は不使用取消審判のケースだけでなく侵害訴訟での事例ですが、「商標としての使用」が否定されたケースとしては以下のようなものがあります。

 ・書籍の題号・音楽CD等のタイトル
   登録商標:「朝バナナ」(指定商品 雑誌、書籍、ムック)
   使用行為:「朝バナナダイエット成功のコツ40」という
        題号の書籍

 ・商品の品種名・内容等の表示であると判断された例
   登録商標:「ドーナツ」(指定商品 クッション)
   使用行為:中央に穴の開いた輪形の形状をしたクッションに
       「ドーナツクッション」を使用

 ・売り場の名称の表示であると判断された例
   登録商標:「おもちゃの国」(指定商品:玩具等)
   使用行為:「おもちゃの国」を玩具・人形の売場に表示

 ・キャッチフレーズとしての使用と判断された例
   登録商標「オールウエイ」(指定商品 飲料) 
   使用行為:コカコーラに「ALWEYS」を含む図柄を使用


 なお、上の文字そのものが常に商標としての使用にあたらない、というわけではなく、実際の事例では一切の使用状況が考慮される、という点についてはご留意いただきたいと思います。

 いずれにせよ、自社が登録を受けている商標で、きちんと権利を確保しておきたいものについては、自社において、商標法上「商標としての使用」と認められるような使用がされているかについてチェックすることは重要といえます。




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3 お知らせ:The Best Lawyers in Japan 2024に選出されました
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Best LawyersによるThe Best Lawyers in Japan 2024において、弊所代表石下雅樹弁護士が、"Intellectual Property Law(知的財産法)部門"に選出されました。

https://www.bestlawyers.com/current-edition/Japan

Best Lawyersによれば、同アワードは、"The Best Lawyers Purely Peer Review"(同地域・同じ法律分野内の弁護士による選出意見を集約して選出する調査手法)によって選出しているとされています。

なお、同部門で選出された他の事務所には、弁護士法人イノベンティア、森・濱田松本法律事務所、西村あさひ法律事務所などが含まれています。





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【執筆・編集・発行】
弁護士・弁理士 石下雅樹(いしおろし まさき)

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