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中小企業診断士【第2次試験突破のノウハウ】
第43号(2005/08/22)
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このメールマガジンでは、新試験制度移行後の中小企業診断士【第2次試験】
の過去問題を中心に、解答作成のプロセスを詳細に解説していきます。
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当メルマガと連動する形で「事例構造化」資料を作成し、ホームページに掲載
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前回は「平成14年度:事例II」の第4問(設問1)の分析・解説を行いまし
た。
いくつかの受験校の模範解答を見てみたところ、顧客属性と購買履歴を顧客カ
ードやPOSシステムを通じて収集する点についてはほぼ共通しているようで
す。が、接客時の会話から顧客ニーズの収集を含めている模範解答はほとんど
見受けられませんでした。一番重要だと思うんですけどね。顧客属性と購買履
歴を分析すればニーズはわかる、ということなのでしょうか。あと、活用方法
についてですが、販促や提案により固定客化といった方向性が多いようです。
中小小売店の定石と言えるのでしょうが、2005年版の中小企業白書に「既
存顧客に固執することのリスク」が書かれているのを思い出しました。第2部
第1章の第4節あたりがそれに該当します。新規顧客開拓の必要性や常連客を
利益率によって選別することなどが書かれています。そうは言っても、中小小
売店にとってまずは固定客を増やすことが第一であることは間違いないでしょ
うね。その上で「固定客がいるからと言ってその上にあぐらをかいていてはダ
メですよ」と言うことなのでしょう。
それでは、「平成14年度:事例II」の第4問(設問2)の分析・解説を始め
ます。
<<<<<<<<<< 分 析・解 説 >>>>>>>>>>
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┃ ┃
┃ 平成14年度 事例II(マーケティング・流通戦略) ┃
┃ ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
【第4問(設問2)】/////////////////////////
B社が新規に開業する小売店のその他の重要な戦略について、以下の質問に答
えよ。
B社の新しい小売店がターゲットとする顧客層へのプロモーション戦略につい
て100字以内で述べよ。
///////////////////////////////////
【題意の把握】----------------------------
この設問で問われていることは
「プロモーション戦略」
です。もちろん、これだけでは正解者多数になってしまいますので解答記述の
際の制約が付いています。
「B社の新しい小売店の」
「ターゲットとする顧客層への」
の部分がそれに当たります。つまり、これから展開するプロモーション戦略は
・B社の新しい小売店に適したものであること
・ターゲットとする顧客層に適したものであること
でなければいけません。まぁ普通に設問文を解釈すればこうなりますね。改め
て力説するほどではなかったかも知れません。
上記の点に注意しながら【与件文との関連】でプロモーション戦略を検討して
いきたいと思います。
それと、これも改めて記述するほどではないと思いますが、プロモーション戦
略とは何ぞやといったところを少し書いておこうと思います。
マーケティングの神様、コトラー氏によるとプロモーション戦略を構成する要
素として以下のものが挙げられています。
1.広告
2.販売促進
3.パブリック・リレーションズ(パブリシティ)
4.人的販売
5.ダイレクト・マーケティング
ただし、プロモーション戦略とは呼ばず「マーケティング・コミュニケーショ
ン」と定義しているようです。これらの要素のうち、どれをどのように適用し
ていくかについては、やはり与件文からヒントを得ていく必要があるのでない
でしょうか。
【与件文との関連】--------------------------
ここで、プロモーション戦略を考えるに当たって次のことを確認しておきたい
と思います。
1.B社小売店の業態
2.ターゲット顧客層
1.については与件文などから次のように確認することができます。
・高級食材を中心とした買回品的な商品を扱う専門店
また、2.についてはこれまでも再三に渡って取り上げてきた
・日常的なクッキングはなるべく簡便化したい消費者
・非日常的な場面で趣味的なクッキングをしたい消費者
が該当すると考えられます。さらに、もう一つの切り口として
・店舗に直接来店して購入する顧客層
・遠方から(WEBなどの)カタログを利用して購入する顧客層
なども考えられます。上記のニーズ面から見た切り口と購入場所(チャネル)
から見た切り口をクロスさせて整理してみます。
┌────────┬─────────────┐
│ チャネル │ ニーズ │
├────────┼─────────────┤
│店舗で購入 │クッキングの簡便化ニーズ │
│ ├─────────────┤
│ │趣味的クッキングのニーズ │
├────────┼─────────────┤
│カタログで購入 │クッキングの簡便化ニーズ │
│ ├─────────────┤
│ │趣味的クッキングのニーズ │
└────────┴─────────────┘
ニーズについては店舗、WEBともに基本的には同様であると考えています。
上記の表のうち、チャネルについては
認知度の向上が、ニーズについては実際
の購入を促進させることがプロモーションを行ううえで重要になってくるので
はないでしょうか。
そこで、B社の小売店やWEBサイトの存在を知ってもらう「
認知段階」のプ
ロモーション手段として
・広告
・パブリック・リレーションズ(パブリシティ)
などが有効な手段となりそうです。いわゆるプル戦略ですね。
次は実際に購入してもらう「行動段階」のプロモーション手段ですが
・販売促進
・人的販売
・ダイレクト・マーケティング
などが有効な手段になり得ると考えられます。こちらはプッシュ戦略にあたる
と考えられます。
コトラー氏の著書によると、この「
認知段階」と「行動段階」の間には「情動
段階」というものが存在すると書かれています。この「情動段階」とは、感心
から欲求へと消費者の心理が変化していく段階のことのようですが、ここでは
・店舗でのコンサルティング・セールス
・WEBサイトでの詳細な商品説明やレシピ紹介
などによってカバーできると考えており、この設問への解答に「情動段階」に
対する取組みを含める必要はないと考えています。なぜなら、これらの取組み
については第3問(設問2)の参考解答に含まれているためです。ここでまた
取り上げてしまうと「ダブリ」が生じてしまうと考えました。
続いて、ここで確認した内容に最も適したプロモーション戦略の具体的な中身
を考えていきたいと思います。
まず、「
認知段階」に対する具体的な手段としては
・料理雑誌への広告やパブリシティの掲載
が考えられます。B社の小売店の業態を考えると新聞チラシのような媒体はあ
まり相性が良くないと思われます。また専門店であるがゆえ、前回の小売業進
出時と同様、都心への立地が考えられますので、ますます新聞チラシは難しい
と考えられます。
それと、ターゲットとなる顧客層への適合度についてですが、掲載媒体を「料
理雑誌」に限定することで効率的かつ効果的な
認知度の向上が期待できます。
ターゲット顧客層は「料理をしたくない人達」ではないですからね。基本的に
は料理が好きな人達ばかりなはずです。
次に「行動段階」に対する具体的手段ですが、
・電子メール等による新商品紹介やメニュー提案
が考えられます。これは上記であげた手段のうち、ダイレクト・マーケティン
グに該当すると考えられます。もちろんですが、このプロモーションの対象は
既に顧客属性を収集済みの既存顧客になります。顧客情報を収集・活用するこ
とは第4問(設問1)で問われていますので、この設問でそれらの活用を提案
することは可能であると考えられます。
やはり新規顧客の開拓よりも既存顧客のリピート購入率を上げるほうが効率的
であるため、上記のような電子メール等を活用したDMによるプロモーション
は必要になると思われます。
それ以外の手段については、今回の事例企業にはあまり相応しくないと考えて
います。
【(狭義の)販売促進】
消費者に対するノベルティやプレミアムと流通業者向け販売支援活動
【人的販売】
店頭や個別訪問などでの実演販売
これで一通りプロモーション戦略に関する検討ができましたので、この内容を
もとに参考解答を作成してみたいと思います。
【使用可能なキーワード】-----------------------
これまでの検討から参考解答に含めることができそうなキーワードを抽出して
おきます。
【
認知段階】
・プル戦略
・店舗やWEBサイトの
認知度向上
・料理雑誌への広告やパブリシティの掲載
【行動段階】
・プッシュ戦略
・既存顧客のリピート購入の促進
・電子メール等によるダイレクト・マーケティング
【文章構成の設計】--------------------------
文章構成としては
「プロモーション戦略は~」
で始めたいところですが、これだけで10字も使ってしまうということと、今
回の場合「結論先出し」型の文章にはならないという理由から、このような書
き出しは
採用しないことにしておきます。
したがって、ここまでの検討で出てきた「プル戦略」と「プッシュ戦略」を文
章の切り口として使用し、それぞれについて
「目的+方法」
といった形で書いてみようと思います。
文章の締めについては、設問文で「述べよ」と問われていることから
「~である」
とするのが望ましいと考えています。今回の場合は「目的+方法」で文章が構
成される予定ですので、
「~を実施すべきである」
のような締め方が妥当ではないでしょうか。
「参考解答」=============================
店舗やWEBサイトの存在を
認知させるための料理雑誌への広告やパブリシテ
ィの掲載、既存顧客のリピート購入を促進させるための顧客情報を活用した電
子メール等によるダイレクト・マーケティングを実施すべきである。
===================================
第3問(設問3)でMシェフをプロモーションに活用すると言っておきながら、
ここでは特に言及していません。ま、プロモーション戦略を述べる設問ですの
で方向性を示せば良いとは思うのですが...解答スペースが100字しかな
いので具体的な内容に触れるのも難しいような気がします。それと、やや一般
論的な内容になってしまった感がありますが、「料理雑誌」とか第4問(設問
1)で問われていた「顧客情報」といったキーワードを入れることで、この事
例に沿った内容になっていると思うのですが、如何でしょうか。
今回はここまでとさせていただきます。
次回は「平成14年度:事例II」の第4問(設問3)から分析・解説します。