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デリバティブ取引と取締役の責任

■Vol.14(Vol.150) 2007-12-19 毎週水曜日配信                  
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□□■    経営に生かせる人事労務・法律の知識 
■■■  ― 経営者、起業準備の方必見です!―
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■■■  「 デリバティブ取引取締役の責任 」
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 枡添氏が年金の解明の公約が果たせなくなったという記者会見をして話題
 になっています。最後の1円まで解明すべきだというのは本当でしょうか。

 仮に、2兆件の手書き台帳を全て照らし合わせたとすると、データを1件当
 たり1分で1000人で照合したとすると、5952年掛かる計算になります。
    2兆件÷(1分×60×7時間×20日×12ヶ月×1000人)=5952年
 生きている人はいませんね。


 マスコミでは、「ほうっとけない!」などと騒がれていますが、そこに掛かる
 経費と労力を考えると頭の痛い問題です。
 なにより、私の老後はどうなるの!



 少し、熱を冷まして・・
 今回は、デリバティブ取引に関して問われた取締役の責任についてです。
 
 
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     「 デリバティブ取引取締役の責任 」
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弁護士の緒方義行です。

今回は、3年ほど前に世間を賑わせた事件の判決を振り返って、「デリバティ
ブ取引と取締役の責任」について考えます。

極めて大まかに事件の概要を紹介します。

株式会社は乳酸菌飲料等の製造販売を主たる業とする株式会社です。
そのA社では、資金運用業務の担当取締役(副社長)に任せて余裕資金の運用
を行っていましたが、その指示によって行われたデリバティブ取引によって多
額の損害が発生しました。
そこで、A社の株主は、担当取締役と当時の取締役及び監査役を被告として、
A社に発生した損害の賠償を求める株主代表訴訟を提起しました。


 裁判で争点となったのは、次の4点です。
 (1)個々のデリバティブ取引は担当取締役決済で行ってよいか。取締役
会の承認が必要ではないか。
 (2)デリバティブ取引を行うことは定款の目的の範囲から逸脱している定
款違反の行為ではないか。
 (3)デリバティブ取引はリスクの高い取引であるが、これを行った担当取
締役は取締役としての注意義務に違反していたか。
 (4)担当取締役に任せていた他の取締役監査役は、監視義務違反ではな
いか。


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1 個々のデリバティブ取引について取締役会の承認は必要か
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裁判所(東京地方裁判所)は、次のような理由で、個々の取引は取締役会の承
認事項ではないと判断しました。
(1)適時の判断が求められるデリバティブ取引について逐一取締役会に付議する
ことは非現実的であること
(2)A社の総資産額と個別取引のリスク相当額とを比較すれば、必ずしも多額な
いし重要な業務執行とはいえないこと
(3)A社の決裁規程ではデリバティブ取引は担当取締役の決裁事項となっている
こと


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2 デリバティブ取引定款の目的の範囲内か
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  裁判所は、「本件取引は、一般的に資金運用の手段として是認されている
方法により、余裕資金を運用する目的で行われたものであって、会社の目的遂
行とまったく無関係な取引であるとはいえないから、A社の定款には違反しな
い。」と判断しました。


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3 担当取締役取締役としての注意義務に違反していたか。
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裁判所は、「会社の余裕資金の運用を任せられた取締役は、必要なリスクの管
理を行い、会社の財務内容等に著しい悪影響を及ぼすことがないように配慮し
なければならず、これを怠って会社に損失を与えた場合にはその損失について
善管注意義務違反による賠償責任を負う。」と言い、「取締役は、リスクが会
社に与える影響を把握し、それに見合った必要なリスク管理体制を構築し、こ
れに基づいて個々の取引を行う必要がある」としましたが、「これらは、会社
の経営としての専門的かつ総合的判断であるから、経営判断の原則が妥当する。
」としました。
そして、問題となった期間のうち最初に損失が拡大した2年間については、当

時の水準としてはA社のリスク管理体制は相応の水準のものと評価でき、担当
取締役は一応合理的といえる情報収集・分析、検討をして本件取引を開始して
いるとして、担当取締役の判断に善管注意義務違反はないと判断しました。
次の2年間についても、A社では内部でデリバティブ取引に関する制約事項を
定め、個別取引の報告書を他の取締役および監査役がチェックする体制を整え、
代表取締役および監査役が本件取引の含み損の額を把握するようにしていたか
ら、本件取引の危険性に相応するだけのリスク管理体制は構築されていた評価

できるとして、このようなリスク管理体制のもとで行った本件取引について善
管注意義務違反はないと判断しました。
  
しかし、それ以降については、担当取締役は、A社で定めた制約事項に違反し
て本件取引を行っていたから、善管注意義務に違反しているとして、この期間
に生じた損害について担当取締役の賠償責任を認めました。


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4 他の取締役監査役には注意義務違反(監視義務違反)はないか。
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  裁判所は、上記のように担当取締役善管注意義務違反をA社で定めた制
約事項に違反して取引を行っていた期間についてだけ認めましたが、その「担
取締役による制約事項の違反は、金融取引の専門家でなければ発見できない
ような態様で行われているから、他の取締役監査役が担当取締役の違法行為
に気付かなかったことについて監視義務違反は認められない」と判断しました。


                    (弁護士 緒方 義行)
                 URL http://www.fuso-godo.jp/


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