• HOME
  • コラムの泉

コラムの泉

このエントリーをはてなブックマークに追加

専門家が発信する最新トピックスをご紹介(投稿ガイドはこちら

契約上の競業禁止義務と契約終了後の効力

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報

石下雅樹法律・特許事務所 第32号 2008-02-18
-------------------------------------------------------
http://www.ishioroshi.com/
法律相談のお申し込みは
http://www.ishioroshi.com/btob/soudan_firstb.html
顧問弁護士契約についての詳細は
http://www.ishioroshi.com/btob/komon_firstb.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1 契約上の競業禁止義務と契約終了後の効力
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
東京地方裁判所平成19年12月26日判決

これは,前回(31号)と同じ判決を取り上げたものです。

生ゴミ処理機を製造,販売するX社が,同様に生ゴミ処理機を
製造,販売するYに対し訴訟を起こしました。本号と関係のあ
る事実関係を少し取り上げると,事案は以下のとおりです。

Y社は,平成5年8月ころから,生ゴミ処理機等製造,販売し
ていました。そして平成9年2月,Y社とX社の代表者Z氏は,
代理契約を結び,X社の代表者Z氏はY社製品の販売代理
となりました。

そして,Z氏は,Y社に対し,以下の内容を含む誓約書を提出
していました。

「弊社は,貴社製品の生ゴミ消滅装置『ゴミサー』の販売又は
様々な技術資料/見学などの提供を受けてからも決して同じよ
うな製品を製造したり/他者にさせたりする事なく,あくまで
代理販売又は貴社に損害を与えるような行為は一切致しませ
ん。」

その後,この代理契約は平成14年4月ころ終了し,X社は,
独自の生ゴミ処理機の開発を行なって独自製品の販売を開始し
ました。これに対し,Y社は,X社は代理契約終了後も,前
記誓約書に書かれた競合製品製造禁止の義務を負うから,X社
の製品の製造販売は前記誓約書の内容に反すると主張しました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 判決の概要
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

裁判所は,上記誓約書に含まれる競業禁止の効力を認めた上で,
以下のように判断しました。

「しかしながら,本件誓約書上の上記義務は,本件代理契約
が終了した後も継続するとは解されず,同契約終了後は,本件
誓約書による合意も終了し,上記義務は効力を失うと解するの
が相当である。

すなわち,このような不作為義務を代理店に負わせることは,
代理契約の当事者間では,有効であると解されるものの,代
理店契約を締結している代理店が,競合する商品によって利益
を得ることを制限し,それにより契約の他方当事者である本人
の利益を確保する意味を有するものであり,また,代理店とな
る者による競業を禁止し,職業選択を制限するものであるから,
その効力は,代理契約終了後も存続することが明確に示され
ていない以上,同契約終了後は認められないというべきである。

そして,本件誓約書の文面では,上記義務が,契約終了後も存
続することは明記されていない上,上記義務が契約終了後も存
続する旨の合意やそれをうかがわせる事情も認められないから,
原告は,本件代理契約の終了後,本件誓約書上の義務を負わ
ないと解される。」

以上の判断から,X社の生ゴミ処理機の製造販売には契約違反
の事実はないとしました。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3 解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

代理契約その他の契約において,製造元等が代理店に対し,
競合製品を製造・販売しない義務を課すことはよくあることで
す。

この義務自体は,特に独占的代理店の場合には,契約の目的を
達成する上で必要かつ重要ですが,この義務だけを取り出せば,
本質的に製造元等の利益のために代理店の利益を制限する条項
である以上,その効力は,契約条項に記載されている以上に広
く解されることはなく,むしろ場合によって狭く解される可能
性があります。

例えば,この判決が示したように,契約終了後の競業の禁止義
務も,契約条項に定めれば効力が認めらる場合がありますが,
契約条項に定められていない場合には認められないのは当然で
しょう。

また,契約終了後の競業の禁止について,例えば永久かつ全世
界という範囲を明示した場合に,これが有効かというと極めて
疑問であり,結局この条項自体が無効になるリスクがあります。
この場合,製造元等でも,競業の禁止の目的から合理的な範囲
(年数の制限,地域の制限)にとどめるほうが結果的には自社
の利益を守るものとなります。

公正取引委員会も,「供給業者が契約終了後において総代理店
の競争品の取扱いを制限することは,総代理店の事業活動を拘
束して,市場への参入を妨げることとなるものであり,原則と
して独占禁止法上問題となる。ただし,秘密情報(販売ノウハ
ウを含む。)の流用防止その他正当な理由があり,かつ,それ
に必要な範囲内で制限するものである場合には,原則として独
占禁止法上問題とはならない。」という立場を取っています
(流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針 / 第3部 総
代理店に関する独占禁止法上の指針)。

何が合理的かの範囲は非常に難しい問題であり,過去の判例や
商法,独禁法に照らした検討のためには事前の弁護士への相
談は重要でしょう。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本マガジンの無断複製,転載を禁止します。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【編集発行】石下雅樹法律・特許事務所
〒220-0011 神奈川県横浜市西区高島2-10-13
 横浜東口ビル4階
mailto:info@ishioroshi.com
法律相談のお申し込みは
http://www.ishioroshi.com/btob/soudan_firstb.html
顧問契約についての詳細は
http://www.ishioroshi.com/btob/komon_firstb.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本マガジンに対するご意見,ご感想は
mailto:info@ishioroshi.com まで
-------------------------------------------------------
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

絞り込み検索!

現在22,927コラム

カテゴリ

労務管理

税務経理

企業法務

その他

≪表示順≫

※ハイライトされているキーワードをクリックすると、絞込みが解除されます。
※リセットを押すと、すべての絞り込みが解除されます。

スポンサーリンク

経営ノウハウの泉より最新記事

スポンサーリンク

労働実務事例集

労働新聞社 監修提供

法解釈から実務処理までのQ&Aを分類収録

注目のコラム

注目の相談スレッド

スポンサーリンク

PAGE TOP