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公益法人会計の収支計算書の解りにくさ -マイナスの資金とは?

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          ~得する税務・会計情報~         第58号
             
           【税理士法人-優和-】   http://www.yu-wa.jp/
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公益法人会計の収支計算書の解りにくさ -マイナスの資金とは?-

公益法人会計に関わって30年以上たちますが、会計のプロ同士では話が通じても、
そうでない方に理解していただくのは苦労します。
最近、実際に経験した話をさせていただきましょう。

前半の公式回答は、会計のプロでない方には理解できないかもしれませんが、
とにかく読んでいただき、後半で補助解説を試みます。

会計のプロでない方は、後半の「3、会計を職業としていない方への説明」を
読んでからまた最初に戻っていただいた方がいいかもしれません。

主務官庁からの質問の内容

短期借入金は「内部管理事項」において「財務活動収支の部」に収入・返済支出を
表示することになっている。
短期借入金収入・短期借入金返済支出を財務活動収支の部に記載すべきではないか。
記載されていない理由は

回答
1、収支計算書に表示されない理由 

収支予算書並びに収支計算書の作成にあたり、
短期借入金を「資金の範囲」に含めている場合、
短期借入金の増減による現金預金の増減は、
資金同士の取引であることから収支予算書には表示されません。

「公益法人会計における内部管理事項について」
の別表の雛型の(財務活動収支の部)には

短期借入金収入が財務活動収入に掲載されていますが、
この短期借入金は非資金の短期借入金であるがゆえに
この収支計算書に例示として掲載されています。
 
会計方針を変更して短期借入金を資金の範囲から除外すれば、
つまり非資金とすれば短期借入金の増減による現預金の増減は
収支計算書の財務活動収支の部に表示されることにはなります。

2、資金の範囲に関する会計方針の変更の妥当性について

1)借入金の性格からの判断

「公益法人会計における内部管理事項について」にも記載されているとおり、
資金の範囲は原則として現金預金及び短期金銭債権債務となります。

したがって未収入金も現金預金ではありませんが、プラスの資金となり、
未払金、預り金等短期債務も、マイナスの資金となります。

同じように短期借入金も殆どの場合マイナスの資金となります。
資金の範囲は法人の意思により変更できますが、

その変更の理由は妥当なものでなければならず、変更した場合は、
その旨、及び変更による影響額を注記することになります。

短期の借入金をあえて非資金にする場合は、
特定の事業とのひも付き関係がありその事業のボリュームを

収支計算書の収入・支出に記載することが望ましいような場合に
限定されると考えます。  

つまり短期借入金を資金の範囲に含めた場合、
収支計算書の収入・支出欄には表示されないこととなります。

2)予算準拠主義からの実務上の不便さの回避
 
短期借入金を非資金とすると、
当然に予算書に年間借入予定と返済予定を予算化することになります。
借入と返済とが常に同じであれば実務的には問題が生じませんが、

数千万円の残高がある現状では、返済額が予定された予算を超過する場合も考えられ、
この場合には予算超過支出を避けるためには予算の補正も考えなければならなくなり、
社団運営がきわめて硬直化する事態となります。 

また返済額が予定された予算を大幅に超過する場合、
大幅なマイナスの次期繰越収支差額となり、
収支決算書が一見極めて不健全な姿となります。

3)資金残高急増の説明の困難性

短期借入金の残高が仮に一億円あるとします。
資金の範囲に関する会計方針の変更をして、このマイナスの資金が、
非資金となると1億円の資金増加となります。
 
実態は変化がないにも関わらず、
急激に財政が豊かになったような錯覚に陥りやすく、

利害関係人にその説明をするのは、
公益法人会計に余程熟知していないと理解が得られないかもしれません。

よって短期借入金を非資金とし、収支計算書に借入金収入、
借入金返済支出とするような変更は当法人の場合には薦められません。

3、会計を職業としていない方への説明

以上の説明はなかなか理解しにくいと思います。
まず、
短期借入金を資金の範囲から除外すれば、
つまり非資金とすれば短期借入金の増減による現預金の増減は
収支計算書の財務活動収支の部に表示されることにはなります。」

の部分が解りづらいですね。
 
普通預金を取り崩して、現金にしても収支計算書には、
普通預金取崩収入とは記載されません。

現金も普通預金も同じ資金同士ですから、
資金同士の移動は収支計算書には載らないのです。
 
次に解りづらいのは「マイナスの資金」という考え方です。
当座借越契約がある場合は当座預金の残高がマイナスとなることはあります。

「マイナスの資金」とは「当座預金残高がマイナス」と同じようなものと考えてください。
短期借入金を資金の範囲に含めるということ、

すなわちマイナスの資金と考えるということになれば、お金を短期的に借りても、
資金同士の取引(マイナスの資金である借入金の増加と預金というプラスの資金の増加)
ですから収支計算書には載りません。

では非資金の借入金の場合はなぜ、収支計算書に借入金収入として載せるのですか?
と問われれば答えに窮しますが、
「当分返済しなくてもいいお金だから、収支計算書の収入の部に載せるのです。」
とでもお答えします。
 
つまり非資金としての長期借入金というお金が、
資金として入ってきたからなんですが、余計に解らなくなりましたか? 

会計のプロ同士だと「非資金と資金間の取引だから収支計算書に載るんです。」
という会話で済んでしまうので、

この会話を聞いている一般の方には全く理解できないのでしょうね。
会計の世界にはこのような事例が沢山あります。

会計をより解って頂くためにはこのような会話をしてはいけないんだと深く反省します。

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