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身障者、不屈のへら絞り職人松井三都男氏の挑戦志向!

       ◆◆コンピテンシーを磨けば仕事のできる人になれる◆◆

     <第211回>できる人のコンピテンシーをベンチマークする!

   ==■「身障者、不屈のへら絞り職人松井三都男氏の挑戦志向!」■==

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人は誰でも能力を保有しています。しかし、せっかくの保有能力が宝の持ち腐れと
なり、成果に結び付けられない人が実に多いのです。

「できる人のコンピテンシーをベンチマークする!」と題して事例を解説していき
ます。

コンピテンシーを磨けば誰でも仕事のできる人に自己変革できます。経営トップ・
管理者・社員の皆様、そして求職中の離職者の方や就職を目指す学生さんにも是非
ともお読みいただきたいと思います。

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<今回のメニュー>
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【1】不遇の少年時代!
【2】社長のあのときの一言が目覚めさせてくれた!
【3】プロとはどんなときでも逃げないで挑戦し続けることや!
【4】今日のまとめ
【5】編集後記

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幼年時代から少年時代にかけて不遇な境遇にあった人が将来偉人になった話には共
感を覚える。例えば松下幸之助翁もそんな一人だ。

だが、今回採り挙げるのはモノ作りの職人。それも近代的モノ作りではなく古くか
らある「へら絞り」というモノ作りだ。東京都大田区の京浜島にあるとある小さな
町工場。ここが日本一のへら絞り職人、松井三都男氏が44年間働いてきた工場だ。

ろくろという回転させる機械に金属の板を取り付けて金属の棒(へら)を当て、型
に倣って少しずつ変形させていって皿状、おわん状などさまざまな形状の製品を作
る工法だ。へらの先端の形状の工夫とへらに加える力加減が難しい。それを松井氏
は100分の3ミリの精度で加工してしまう。

この町工場には全部で19人の職人がいるがだれも松井氏に勝てるものはいない。
なぜなら松井氏は日本一だからだ。

不遇の少年時代をすごした松井氏がなぜ日本一のへら絞り職人になったのか、そこ
にはあくなき挑戦志向なるコンピテンシーがあった。



【1】不遇の少年時代!

高知県の農家の三男として生まれた松井氏は小学校時代、原因不明の難聴を患い3
年間学校へ行けなかった。回復して学校へ行ってみるともう授業は分からない。最
悪だった。

当然のことながら高校受験に失敗。そして夜間の定時制高校に入学したが勉強が嫌
いであっさり中退してしまう。

17歳のとき先輩に誘われて東京で働くことになった。それがいまの会社である。
だが当時松井氏は長く東京で働くつもりはなかったという。入社して半年後、また
しても不幸が訪れた。プレス機で左手の指3本を飛ばす大怪我に襲われ、絶望の淵
に追いやられた。

先輩たちが病院にお見舞いに来てくれた。うれしかった。退院して出社してみると
みんな温かく迎えてくれ、いつものように仕事を教えてくれた。



【2】社長のあのときの一言が目覚めさせてくれた!

社長は毎日自宅でご飯を食べさせ「ずっといていいんだよ」と言ってくれた。涙が
流れた。そのとき松井氏は「恩は仕事で返すしかない」と心に決めた。

逃げていた10代。学校を休んで遅れてしまって勉強が大嫌いになったから・・・。

こんな体になったんだからやるしかないと妙に踏ん切りがついた。

へら絞りは力仕事だ。だが左手の指3本を失った松井氏は力が思うように入らない。
そこでワザで対抗しようと考えた。金属一つひとつの個性を見極めれば力ずくでな
くともうまく絞れるのではないかと考えた。そしてへらの先端の形状をいろいろ研
究しながら工夫した。力ずくでなくとも一気に絞るワザが身についていった。

3年が経ち5年が経ち、そして10年が経ったころ松井氏は日本一のへら絞り職人
になっていた。H2Aロケットからパラボラアンテナ、日用品に至るまでこれまで
1万種以上の製品を作ってきたことは誇りだ。社長のあの一言以来、挑戦志向なる
コンピテンシーがいつの間にか磨かれていた。

この会社には内外から高い技術力を頼って難しい部品の加工が今日も舞い込む。



【3】プロとはどんなときでも逃げないで挑戦し続けることや!

松井氏はもう62歳。定年間近だ。残された時間で自分のワザを伝承して若手を育
てるという重要な任務がある。

へら絞りの会社にも若者が入ってくることがある。若者といっても入社9年目の2
7歳、三宅心海氏だ。彼は一通りへら絞りの技術は身に付けたが難しい製品は経験
が浅い。

松井氏は三宅氏にワザを教えようと必死だ。必死と言っても手取り足取りでは教え
ない。まず自分でやらせる。ミスするのを後ろで手を出さずにただじっと見守る。
次に一つアドバイスする。何とか形ができた。一応は製品になったようだ。しかし
松井氏に言わせれば全く物足りない。

次に松井氏は三宅氏の前で小べらを使って最高の仕事を見せ付けた。三宅氏はすぐ
さま小べらを使ってトライした。出来栄えはいい。松井氏のワザが一つ伝わった。

だがまだまだ伝えなければならないことは山ほどある。三宅氏は素直さなるコンピ
テンーを持ち合わせていた。「満足した職人は終わりや」と松井氏の檄が飛ぶ。三
宅氏が松井氏のコピーになる日は近い。



【5】編集後記

私は職人という言葉が好きだ。仕事の達人というイメージが浮かぶ。教科書やマニ
ュアルで手取り足取り教えられて覚えた人は職人のレベルには到達しにくい。

自分で創意工夫し、ワザを編み出していった人こそが達人だ。学歴がなくともあく
なき挑戦志向なるコンピテンシーがあればできる。その挑戦志向は何かのきっかけ
で芽生える。松井氏の場合、社長の「ずっといていいんだよ」というあの一言だっ
た。

<この記事は平成20年11月にNHKで放送された「プロフェッショナル仕事の
流儀」も参考にしています。>



次回に続く

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        彩愛コンサルピア代表 下山明央

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