
会社のホームページはこのままでいい?失敗しない作成手順と業者の選び方
「会社のホームページを作るのに良い業者を紹介して欲しい」という相談を、筆者もコンサルタントとしてしばしばお受けします。
それに対して「どんな目的でホームページをご用意されるんですか?」と伺うと、「会社を宣伝するために」であったり、時には「あったほうがいいと思って」であったり、「補助金が出るらしいから」というお答えもよく聞きます。実はこの目的の整理が本当に重要です。
本日はそんなお客様に対して筆者がどのようにホームページ作り方のお手伝いをしているか、直近の事例をご紹介しながらご説明します。
目次
ホームページ作成の手順
企業によっては、すべからく全ての段取りが必要とは限りません。すでに整っている部分は割愛しても影響はありませんが、本来的にあるべきステップは以下になります。
ステップ1:ホームページのステークホルダーおよび目的の設定
ステップ2:ホームページで打ち出す事業としての価値観の確認
ステップ3:ステップ1、2で定めた方針に沿ったデザイン/構成の選定
大きくはこの3つのステップになります。では、早速具体的な事例も添えて各ステップを説明してまいります。
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ステップ1:ホームページのステークホルダーおよび目的の設定
最初はホームページのステークホルダー(関係者および関わって欲しい人)と目的の設定です。ここをしっかりやらないと”なんとなく会社紹介をしている”ホームページができあがってしまい、営業マンが企業情報を調べるだけの参照元としてのみ機能することになってしまいます。今回事例として紹介させていただくのは、島根県にある介護向け食品製造・配食事業を営んでいる『モルツェル株式会社』です。
ホームページを刷新する前の旧ホームページの記録を取っておかなかったことが今となっては残念なのですが、以前のホームページはまさに”なんとなく会社紹介をしている”ホームページでした。筆者がコンサルタントとして関わり、経営陣/部長級のみなさんとディスカッションを重ねながら、このホームページをリニューアルしました。『モルツェル株式会社』の魅力をダイレクトに伝えられるホームページになったと自負しています。
手順としては、各ステークホルダーに向けたメッセージ(何を伝えたいのか)について確認します。もっと言えば、メッセージが伝わった後にどういうアクションを起こしてほしいのかまで決めることでホームページの目的整理が完結します。
数回に渡って社長/専務と議論をした結果、同社としてのホームページのステークホルダーと目的は、以下の3点となりました。
・取引先および潜在顧客に会社のサービス、およびサービスが優れていることを知ってもらいたい
・学生/求職者に方にとって働きたい会社だと思ってもらいたい、そして応募してもらいたい
・社員にとって誇りたくなる会社でありたいと思っているし、それを体現したホームページにしたい
特に1、2点目は用意すべきコンテンツやホームページ内の設計に大きく影響します(どのように情報を辿れる設計にすべきか、表示するコンテンツの優先度どうするかなど)。また、3点目はホームページに載せるべきメッセージ性や、画像などについてどのようなものを採用すべきかについて大きく影響します。
ステップ2:ホームページで打ち出す事業の価値観を確認
ステップ1でステークホルダーと目的を定義しました。続いて、ホームページのデザインイメージのベースとなる事業としての価値観を明確にします。
『モルツェル株式会社』では、まず事業として最も大切にしている価値観を整理しました。議論では合計で300以上の価値観が列挙され、全てが事業をすすめるにあたって貴重なものでした。ただ、そのままでは内容が多すぎて受け取る側には伝わらないので、ステップ1で定義した3つのステークホルダーや目的をもとに集約して一つの企業理念と4つの共有価値観のコーポレートビジョンにまとめあげました。
その結果として産み出された『モルツェル株式会社』のコーポレートビジョンがこちらです。
【事業理念】
毎日の「おいしさと思いやり」は、誰にも負けない【仕事の軸となる価値観】
社会に優しく、笑顔溢れる。
1「安全」と「味」に投資します。(全力です!)
2「個」への対応力を大切にしながら生産性を向上します。
3 取引先/地域社会/従業員すべてモルツウェルの大切なパートナーです。
4 高齢化社会の様々な問題に対して解決策を生み出します。
『モルツェル株式会社』の場合は、地域や人に対して伝えたい理念が大変広く、かつ熱い内容が多かったために、しっかりと事業の思いを伝えるためにこのような作業が必要でした。企業によっては、ステップ1を元にもっとシンプルに一つの価値観で簡潔に定義できることもあります。
ステップ3:ステップ1、2で定めた方針に沿ったデザイン/構成の選定
ステップ1、2でホームページの方向性を定めたら、それをもとにデザインおよび構成を検討していきます。まずは、ステップ2で定めた価値観を前提に、発注者である『モルツェル株式会社』の経営陣/担当者とホームページを作成するデザイナーで、デザインおよび構成を一緒に検討してもらいました。後述しますが、全体としての方向性を定めることで、各コンテンツに統一感を出すことができます。
そして、どのようなページ・コンテンツを用意するかについては、ステップ1で定義した目的それぞれに対応する物を用意します。『モルツェル株式会社』の場合、目的に合わせて以下のようなコンテンツを作成しました。
目的1: 取引先および潜在顧客に会社のサービス、およびサービスが優れていることを知ってもらいたい
この目的に叶うように、それぞれ利用者(ステークホルダー)が異なるサービスごとに事業紹介のページを分けて紹介するようにしました。そして問い合わせのページには問い合わせの中で最も多い“試食”を申し込みフォームの選択肢として埋め込んでしまいました。”試食を申し込んでもいいものだろうか”とためらう方が多いために”試食申し込みできます”というのを見て直感的にわかるようにするためです。
これまでは各サービスの担当者ごとに雰囲気やトーンにばらつきが見られましたが、ステップ2で企業理念や価値観を社内で議論・整理したため、サービスごとの紹介ページで伝わるイメージ・雰囲気に統一感が出ています。
目的2:学生/求職者に方にとって働きたい会社だと思ってもらいたい、そして応募してもらいたい
これまではリクルート情報サイトに情報を提供して掲載サイトのURLを”お知らせ”欄に掲載するようなやり方などを取っていましたが、明確な求人の理念と合わせて自社サイトの中にカテゴリを用意しました。そして目的の3点目とも関係してくるのですが、現役スタッフ達の紹介ページを厚く充実させました。
目的3:社員にとって誇りたくなる会社でありたいと思っているし、それを体現したホームページにしたい
この目的はページ全体の構成に大きく影響しました。これまでは簡素に企業情報を紹介するようなホームページで、目立っているのは社長一人といったよくあるホームページだったのですが、刷新後のホームページでは、『モルツェル株式会社』のスタッフが活き活きと躍動するような、働きがい・働く楽しさを全面に打ち出してもらいました。『モルツェル株式会社』の求人活動が最近は輪をかけて好調というお話を耳にして、このホームページの影響も少なからずあるのではないかと筆者としても嬉しく思っています。
このようなステップを経て、『モルツェル株式会社』のホームページは刷新されました。現在、事業成績も堅調に伸ばされていらっしゃっており、求人についても大変強い競争力を発揮されていらっしゃいます。
ホームページ作成を依頼する業者の選び方
業者選びが、これがまた一つ大変重要な段取りです。
一般的にはすでに取引のある業者から選んだりすることが多いと思います。数多くの業者がホームページ作成を請け負っていますがクリエイティブな成果物としてしっかりとしたデザイナーを揃えてホームページ作成を行っている業者が全てではありません。可能な限り自社の思いをデザインにもしっかり汲み取って反映してくれる業者を選びたいものです。
筆者が気に入ったWebデザイナーを探す方法は、すでに付き合いがあって技術がしっかりしたデザイン関係者に紹介してもらう方法と、良いと思ったホームページの制作者をそのホームページの所有者に問い合わせて紹介していただく方法です。これだと自身が”良い仕事”だと思うホームページを作った方に直接つながることができます。
そこまで大胆にコンタクトするのは気が引けるという方には、デザイナーのクラウドソーシングサイトやマッチングサービスなどもありますのでそちらから良さそうなところに打診してみるのもおすすめです。ただしそのときにそのデザイナーが手掛けたホームページを教えてもらい、実際にそのホームページが自分にとって”良い”と思えるかどうか必ず現物を確認してみてください。コミュニケーション可能なら自分の希望を伝えて、そのイメージに近いホームページを作ったことがあるかどうかを教えてもらうことができればより確実だと思います。
最後に:ホームページ作成に絶対の正解はない
最後になりますが、ホームページ作りに”これが絶対の正解”というものはありません。みなさんのニーズがあって初めて存在価値を発揮するものです。ホームページはこうあるべき、こうでなくてはいけないといったお仕着せの営業トークに引きずられずに、自社の本当のニーズを設定しその目的に叶ったちょうどよいホームページ作成が本当に重要なポイントです。
筆者にも同じようなご相談が定期的に舞い込んでまいりますが、もしも相談相手もいないから困ったという際にはいつでもお声がけください。
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* yoshimi、maroke、kikuo、takeuchi masato / PIXTA(ピクスタ)