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メルマガタイトル・リンクと商標の使用

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報

石下雅樹法律・特許事務所 第68号 2011-09-06
http://www.ishioroshi.com/
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事務所概要
http://www.ishioroshi.com/btob/lawyer_officeb.html

弊所取扱分野紹介(英文契約書翻訳・英語法律文書和訳)
http://www.ishioroshi.com/btob/jisseki_honyakub.html
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1 今回の判例 メルマガタイトル・リンクと商標の使用
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知財高裁平成22年4月14日判決

 食品メーカーであるH社は、「CLUBHOUSE/クラブハウ
ス」という商標商標権者でした。当該商標の指定商品は「加工食
料品」等でした。

 この商標に対し、特許庁が不使用取消審判において取消を認める
審決をしたため、H社が、その取消しを求めました。

 問題となったH社による使用態様は、H社が、メールマガジンと
読者限定ウェブサイトに「クラブハウス」という標章を表示するも
ので、これらメールマガジン・当該限定サイトに貼られた多数のリ
ンクによって、直接、加工食料品等H社の商品を詳しく紹介するH
社のウェブサイトの商品カタログ等のページが閲覧でき、そのペー
ジで、商品写真や説明を閲覧することができる仕組みになっていま
した。

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2 裁判所の判断
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知財高裁は、H社の請求を認め、審決を取り消しました。

● 商標の使用があるとするためには、当該商標が、必ずしも指定
商品に付されて使用されていることは必要ではないが、その商品と
の具体的関係において使用されていなければならない。

● 「クラブハウス」の標章が付されたメールマガジン及び当該限
定サイトが、H社の商品を宣伝する目的で配信され、多数のリンク
により、直接加工食料品等のH社の商品を詳しく紹介するH社のウ
ェブサイトの商品カタログ等のページにおいて商品写真や説明を閲
覧することができる仕組みになっていることに照らすと、メールマ
ガジン及び当該限定サイトは、H社商品に関する広告又は原告商品
を内容とする情報ということができ、そこに表示された『クラブハ
ウス』標章は、H社の加工食料品との具体的関係において使用され
ているものということができる。

● したがって、『クラブハウス』標章は、加工食料品を中心とす
るH社商品に関する広告又は原告商品を内容とする情報に付されて
いるものということができる。

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3 解説
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(1) 商標の使用の意味

 商標権者は、商標権を維持するためには、当該商標を使用してい
る必要があります。そうでないと、他者から不使用取消審判を起こ
され、取り消されてしまうおそれがあります。

 そして、裁判例で争われてきた多くの事案で、ある具体的使用方
法がその商標の「使用」といえるのかが問題となってきました。

 この点、商標の使用があると判断されるためには、当該商標は、
必ずしも指定商品に付されて使用されていることまでは必要ありま
せん。しかし、その商品との「具体的関係において」使用されてい
なければならないとされています(最二小判昭43.2.9民集2
2巻2号159頁)。


(2) メルマガなどからのリンクと商標の使用

 本件では、判決のとおり、メルマガのタイトルなどに使用された
「クラブハウス」という標章について、そのメルマガなどからの多
数のリンクを通じて閲覧できるウェブサイトにH社の加工食品の紹
介・宣伝があり、そのため、「クラブハウス」という標章が、その
ウェブサイト上の商品との「具体的関係において」使用されている
、すなわち、指定商品である加工食品等に使用されていると判断さ
れたものでした。

 この点に関連して、裁判所は、判決理由の中で、「商標法2条3
項1号所定の使用とは異なり、同項8号所定の使用(*)においては、
、指定商品に直接商標が付されていることは必要ではないところ、
リンクを通じて原告のウェブページの商品カタログに飛び、加工食
料品たる原告商品の広告を閲覧できること、そして、そのような広
告はインターネットを利用した広告として一般的な形態の一つであ
ると解されること」からすると、H社のメールマガジン等の表示が
、H社商品に関する広告に当たらないということはできない、と述
べました。

 この点の裁判所の判断については、インターネットという、広告
宣伝の変化の実態に即したものであるという評価が多いように思わ
れます。

   (*)商標法2条3項8号で、商標の使用の一態様
    として「商品に関する広告に標章を付して頒
    布し、又はこれらを内容とする情報に標章を
    付して電磁的方法により提供する行為」と規
    定されているものですものです。

(3)商標の維持の観点から
 
 もっとも、本件は、いったん特許庁で不使用取消審判がなされた
とおり、商標が指定商品に使用されたことが明明白白であったとま
ではいえないように思われます。

 それで、ある商標を維持するための方策として、本件判決を根拠
に、ある商標をメールマガジンのタイトルに使用し、そのリンク先
にその指定商品の宣伝を置く、という方法だけを取れば大丈夫、と
いった見方はあまりお勧めはしにくいところです。

 本件でも、結果として不使用取消は免れましたが、不使用取消審
判や審決取消訴訟への対応について結果的に多くのコストをかけて
いるという点を見ても企業経営上はプラスとはいえなかったのでは
ないかと思われます。

 少なくとも、現実の宣伝広告の運用においては、インターネット
上で商標を使用するのであれば、当該指定商品の宣伝の同一ページ
に当該商標を表示するといった方法など、商標法2条3項8号によ
り直接に即し、争いに巻き込まれる余地を少なくすることがより好
ましいのではないかと考えられます。


(4)メルマガタイトルの選択と他社商標との関係

 他方、本件の判決は、他社商標の侵害について考慮する場合に、
ひとつの考慮しなければならない要素を増やすものといえるかもし
れません。

 例えば、「X」というタイトルで発行する自社のメールマガジン
などで、自社の商品宣伝(例えば文房具とか)のサイトにリンクす
るといったケースがあるとします。

 他方、たまたま、他社が、「X」というメルマガタイトルと同じ
(または類似の)標章について、文房具を指定商品とする商標を持
っていた場合、自社が選んだメルマガタイトルが、実はその他社の
商標権を侵害している、といった事態も起きないではありません。

 したがって、自社メルマガを発行する場合、そのタイトルの使用
が、商標の使用として判断される余地がないか、また、他社の商標
に抵触していないか、そういったことに注意を払うことも考慮に入
れるべきではないかと思われます。そして、タイトルの使用が「商
標の使用」といえるか判断が難しい場合、商標の専門家の意見を聞
くなどの事前策はマイナスにはならないでしょう。

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