• HOME
  • コラムの泉

コラムの泉

このエントリーをはてなブックマークに追加

専門家が発信する最新トピックスをご紹介(投稿ガイドはこちら

特許発明該当性~自然法則の利用

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士法人クラフトマン 第98号 2013-04-04
(旧 石下雅樹法律・特許事務所)

-------------------------------------------------------
弊所取扱分野紹介(契約書作成・契約書チェック・英文契約
http://www.ishioroshi.com/btob/jisseki_keiyakub.html
(弁護士費用オンライン自動見積もあります)

弊所取扱分野紹介(英文契約書翻訳・英語法律文書和訳)
http://www.ishioroshi.com/btob/jisseki_honyakub.htm
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1 今回の判例 特許発明該当性~自然法則の利用
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

知財高裁平成25年1月21日判決

 A氏は、発明の名称を「推進装置」とする特許を出願しましたが、
拒絶査定を受け、拒絶査定不服審判においてもその判断が変わるこ
とはありませんでした。それで、知財高裁に審決取消訴訟を提起し
ました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 判決の内容
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

● 本願推進装置は運動量保存の法則に反するものであり、本願推
進装置は、自然法則を利用したものではなく、特許法2条にいう「
発明」に該当しない。

● 本願推進装置が発明に該当しない以上、審決に取り消されるべ
き違法はない。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3 解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


(1)特許が付与されるための要件

 「発明」と考えられるもののすべてに特許が付与されるわけでは
ありません。この点、ある「発明」が特許として登録されるために
は、以下のような実体的要件を満たしている必要があります(ただ
し、そのほかに手続的要件もあります)。
 
 (a) 特許法上の「発明」であること
 (b) 産業上の利用性を有すること
 (c) 新規性を有すること
 (d) 進歩性を有すること
 (e) 先願の発明であること
 (f) 出願後に公開された先願の明細書に記載された発明でない
   こと
 (g) 公序良俗または公衆の衛生を害するおそれがないこと


(2)特許法上の「発明」とは何か

 今回の判例で問題となったものの一部は、前記 (a)の要件(特許
法上の「発明」の該当性)でした。ではこの、特許法でいう「発明」
とは何をいうのでしょうか。この点特許法では、「自然法則を利用
した技術的思想の創作のうち高度のもの」(特許法2条第1項)と
定義されています。
  
 そしてこの「自然法則」とは、自然界において一定の原因によっ
て一定の結果をもたらす科学的な法則を意味するとされています。
それで、ゲームのルール自体や計算方法といった人為的な取り決め
とか、経済法則といった自然法則以外の法則を利用したものは、特
許法上の発明とは認められません。また、自然法則に反すると考え
られる発明(「永久機関の発明」など)も同様です。


(3)ビジネス上の留意点

 事業を行っている際に、新しい技術を開発する場合には、特許
上の「発明」に該当することが多いと思われます。他方で、新しい
ビジネスの方法や、ビジネスのプロセスを効率化する画期的な仕組
みなどを発案することもあるかもしれません。そしてこうした新し
い方法・仕組みを第三者に真似されないよう、特許による保護を思
い浮かべるのは自然な発想であるといえます。

 しかしながら、前記のとおり、自然法則の利用を伴わない単なる
人為的な方法論にとどまる場合には、基本的には特許法上の発明と
はいえないという点に留意する必要があるように思われます。
  
 ただし、この場合もすぐにあきらめる必要がないこともあります。
例えば、ある新規なビジネスの仕組を、コンピュータ、ソフトウェ
ア、ネットワーク、その他の装置を協働させた具体的手段として実
現し、全体として自然法則を利用していると認められる場合、特許
の対象になりえます。

 例えば、特許庁は、以下のような発明は、特許法上の発明に該当
するとしています(もちろん他の要件が充足されているか否かは別
問題です)。


   種々の商品の売上げを予測するためにコンピュータを、
   売上げを予測しようとする日を入力する手段、
   予め過去の売上げ実績データを記録しておく売上げデータ記
  録手段、
   予め変動条件データを記録しておく変動条件データ記録手段、
   予め補正ルールを記録しておく補正ルール記録手段、
   過去数週間の予測しようとする日と同じ曜日の売上げ実績デ
  ータを売上げデータ記録手段から読み出し平?して第1の予測
  値を得る手段、
   変動条件データ記録手段から商品の売上げを予測しようとす
  る日の変動条件データを読み出し、該変動条件データに基づき
  補正ルール記録手段に記録された補正ルールの中から適用すべ
  き補正ルールを選択する手段、
   適用すべき補正ルールに基づき第1の予測値を補正して第2
  の予測値を得る手段、及び
   第2の予測値を出力する手段、
  として機能させるための商品の売上げ予測プログラム。
 
 その理由は、種々の変動条件と補正ルールに基づいて売上げ実績
を予測するという処理が、ソフトウエアとハードウエア資源とが協
働した具体的な手段により実現されているからであると説明されて
います。

 それで、新しいビジネスの方法や仕組みを考えた場合、コンピュ
ータ、ソフトウェア、ネットワーク等を組み合わせた手段として実
現可能か否かを考えてみることができるかもしれません。あるいは
この点で弁理士に相談するならば、よいヒントを貰える場合もある
ことでしょう。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4 お知らせ 弊所ウェブサイトリニューアルのお知らせ
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 今般弊所は、ウェブサイトを全面リニューアルいたしました(な
お従前と同様外注はせず、代表弁護士石下の手作りです)。

 今回のリニューアルにより、全般的に読みやすくなり、多くの皆
さんにさらに有用なサイトになったと自負しております。

 また、会社法務・ビジネス法務・知的財産関係・国際法務の各法
律についてポイントを解説したページ

 http://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/

も情報が満載です。ぜひ一度ご訪問ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本稿の無断複製、転載はご遠慮ください。

ただし、本稿の内容を社内研修用資料等に使用したいといったお申
出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原則とし
て無償でお受けしています(これまで数社からお申し出をいただい
たことがあり、すべて承諾させていただきました)。

この場合、遠慮なく下記のアドレス宛、メールでお申出ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【編集発行】
弁護士法人クラフトマン (旧 石下雅樹法律・特許事務所)

横浜主事務所
〒221-0835 横浜市神奈川区鶴屋町3-32-14 新港ビル4階
ラフトマン法律事務所
TEL 045-276-1394(代表) 045-620-0794 Fax 045-276-1470

新宿オフィス
〒160-0022 東京都新宿区新宿4-2-16
パシフィックマークス新宿サウスゲート 9階
弁護士法人クラフトマン新宿特許法律事務所
TEL 03-6388-9679 FAX 03-6388-9766

mailto:info@ishioroshi.com

弊所取扱分野紹介(リーガルリサーチ・法律調査)
http://www.ishioroshi.com/btob/jisseki_legalresearchb.html

顧問弁護士契約顧問料)についての詳細
http://www.ishioroshi.com/btob/komon_feeb.html

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本稿に対するご意見、ご感想は mailto:info@ishioroshi.comまで
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

絞り込み検索!

現在22,930コラム

カテゴリ

労務管理

税務経理

企業法務

その他

≪表示順≫

※ハイライトされているキーワードをクリックすると、絞込みが解除されます。
※リセットを押すと、すべての絞り込みが解除されます。

スポンサーリンク

経営ノウハウの泉より最新記事

スポンサーリンク

労働実務事例集

労働新聞社 監修提供

法解釈から実務処理までのQ&Aを分類収録

注目のコラム

注目の相談スレッド

スポンサーリンク

PAGE TOP