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中小企業診断士【第2次試験突破のノウハウ】
第48号
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このメールマガジンでは、新試験制度移行後の中小企業診断士【第2次試験】
の過去問題を中心に、解答作成のプロセスを詳細に解説していきます。
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当メルマガと連動する形で「事例構造化」資料を作成し、ホームページに掲載
しております。ここでの分析・解説の参考資料としてご覧ください。
※ホームページ
http://www.geocities.jp/lazybird_jp/
「事例構造化資料」の「平成14年度」から「事例 III」のリンクをクリッ
クしてください。
前回は「平成14年度:事例 III」の第2問(設問1)の分析・解説を行いま
した。
いくつかの受験対策校の模範解答を見てみたところ、基本的な提案の方向性と
しては、生産計画立案サイクルの短期化としているようです。納期が短いので
注文が入った時点で即座に生産計画に組み込んでおきましょう、といった趣旨
のようです。こうしておくことで「短納期注文の特急品化」を減らしましょう
ということでしょうか。具体的な中身については生産部門の問題点を織り交ぜ
ながら書かれていました。生産計画を実態に即したものにして、生産計画を精
緻化しましょう、といった趣旨の解答が多いと感じました。中には設備保全に
ついて触れているものもありました。200字って結構いろいろ書けるんです
よね。長文の場合は与件文の「引き込み具合」が難しかったりします。与件文
からの「引き込みバランス」の落としどころって、センスの良し悪しにもよる
ような気がします。訓練すれば誰でも同じように出来るのかな?
それでは、「平成14年度:事例 III」の第2問(設問2)の分析・解説を始
めます。
<<<<<<<<<< 分 析・解 説 >>>>>>>>>>
┏━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┓
┃ ┃
┃ 平成14年度 事例 III(生産・技術戦略) ┃
┃ ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
【第2問(設問2)】/////////////////////////
C社の生産性・
収益性を向上させるため、あなたは前工程、本工程、後工程の
うち、どの工程を重点的に改善・強化すべきであると考えるか。(a)改善・
強化すべき工程を1つ選び、(b)その工程を選んだ根拠を列挙せよ。
///////////////////////////////////
【題意の把握】----------------------------
この設問の題意は
「生産性・
収益性を向上させるため、重点的に改善・強化すべき工程」
の選択と
「その工程を選択した根拠」
の列挙になります。解答用紙を見るとわかるのですが列挙する数は「4つ」で
す。つまり、なぜその工程を改善・強化しなければならないのか、と問われた
場合に与件文から根拠を4つ見つけられるということでしょう。
そして、設問文に「生産性・
収益性を向上させる」と書かれているため、この
2点について改善の余地がある工程を選ばなければなりません。
与件文を一通り読めば「本工程」にかなりの問題があることは明白ですが、一
応その他の工程についても、次の【与件文との関連】で生産性や
収益性悪化の
要因などの観点から確認はしておきたいと思います。
【与件文との関連】--------------------------
まずは「前工程・本工程・後工程」それぞれの生産性について確認していきた
いと思います。一応与件文から生産性算出の前提条件を書き出しておきます。
稼働日数 :週5日
所定内労働時間:週40時間
→ 1日あたりの
所定内労働時間は8時間
【1週間の受注量】
多い週 :40,000部(8,000部/日)
少ない週:24,000部(4,800部/日)
最近は小ロット化が進み、500~2,000の注文が大半を占める
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【1日あたりのロット数】
┌──────┬──────┬──────┐
│ │ 500 │ 2000 │
├──────┼──────┼──────┤
│ 多い週 │ 16.0 │ 4.0 │
├──────┼──────┼──────┤
│ 少ない週 │ 9.6 │ 2.4 │
└──────┴──────┴──────┘
※この表の意味ですが、1日あたりの受注量が最大/最小の場合と、小ロ
ット注文のロットサイズの最小/最大でマトリクスを作って見ました。
1日あたりのロット数とは段取り替えの回数になります。つまり、最も
多いときで16回、最も少ないときで2.4回の段取り替え作業が発生
する可能性があるということになります。実際はこの中間の回数に収ま
ることが多いんでしょうね。というか、この表。せっかく作ったのです
があまり意味ないですね。段取り替えの最大の回数だけ把握しておけば
良さそうな気がしてきました。
要するに、1日8,000部作ります、ロットサイズは全て500部で
す、という最悪シナリオの場合には段取り替えが16回発生しますね、
ということを表す表です。
社内のおおよその生産能力は1日8時間として8,000部が基準
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
この前提条件をもとに各工程の生産性を見ていきます。始めに、前工程の生産
性ですが、与件文には以下のように記述されています。
【折り・裁断】
・作業者は12名
・約2時間で2,000部を生産可能(1,000部/時間)
・作業のないときは、後工程の応援にまわる
→ 1日の最大生産量は約8,000部(1,000部×8時間)
次に本工程の生産性ですが、こちらは以下のように記述されています。
・段取り替え時間は1回につき45分間(とみている)
・45分は750部の加工時間に相当する
・1日3回の段取り替えがある場合は
8,000-(750×3)=5,750部となる
最後は後工程の生産性です。以下のように記述されています。
【カバー掛け・帯掛け】
・作業者は16名(正社員1名+臨時社員15名)
・1名につき8時間で約500部仕上げが可能
→ 1日の最大生産量は約8,000部(16名×500部)
各工程の生産性を比較してみると明らかに「本工程」の生産性が低いことが分
かります。ザ・ゴールで有名になった「ボトルネック」に相当している可能性
が高そうです。
しかも、与件文の「前工程」に関する記述の中で
「本工程のラインに投入されるまで通常1~2日倉庫で保管されている」
とあります。前工程のほうが早く終わってしまっているので本工程での加工を
待っている「仕掛在庫」ということでしょうか。本工程終了後の
「適度な圧力をかけて12時間程度置くことによる品質の安定化」
とは意味合いが違うように思われます。今後、小ロット化の進展で段取り替え
が多くなり生産性が落ちれば、さらに上記の「仕掛在庫」が多くなることが懸
念されます。
では、その「本工程」でどのような問題が起きているのか、について見ていき
たいと思います。すでに前回のメルマガでも挙げたので重複している部分もあ
りますが、以下の点が問題であると言えそうです。
1.各ロットの仕様によって段取り替えに要する時間や生産スピードにバラ
ツキがあるのに加え、飛び込みの注文や設備の不調によるラインの停止
によって、生産計画通りに生産が進まないことが週に2日程度ある
2.生産計画との乖離を残業によって対応しており、コストアップの大きな
要因になっている
3.重要な得意先からの飛び込みの注文を優先することによって工程が混乱
し、他の注文について納期遅れが生じる
以上で本工程の問題点が出揃いましたので要約して挙げてみます。
1.ロット仕様の違いや不測の事態の発生により、生産計画通りに生産が進
まないことがある
2.生産計画の遅れをリカバリーするための
残業代が発生している
3.優先度の高い注文への対応が工程の混乱と他の注文の納期遅れを招いて
いる
4.他の工程との生産性の差が大きいうえ、仕掛在庫が滞留している
といったところでしょうか。ただし、1.については既に前回の設問1で指摘
しており重複しているのと、計画面での改善点であるため「工程の改善・強化」
とは少し視点がズレている感じがします。
そこで改善・強化の余地があるか、といった観点でもう一度与件文を見てみる
と以下の記述
「本工程の作業者は10名で、ライン稼動時には印刷物の投入作業やライン
の監視に従事し、段取り替えは全員で対応する」
から作業者の作業状況が非効率的であることがうかがえます。何だか段取り替
えのためだけに10名を配置しているように感じますね。段取り替えが終われ
ば10名も必要ないのでは?といった疑問が生じます。負荷や余力のバランス
を調整することができそうです。
それから、
収益性を悪化させる要因についてですが、これも上記の点から指摘
できそうです。2.の人件費に関する点がそれに該当すると考えられます。
他の工程についても一応考えてみましたが、C社の生産能力(8,000/日)
に見合った人員数となっているため、人件費等の問題は無いと考えられます。
与件文を見る限りでは、他の工程について
収益性に悪影響を及ぼしているよう
な記述は無いですしね。
以上の検討内容をもとに「参考解答」を作成してみたいと思います。
【使用可能なキーワード】-----------------------
上記の【与件文との関連】で問題点を要約した部分で解答が作れてしまいそう
ですが、一応キーワードらしきものを挙げておきます。
・本工程担当者の非効率的な作業状況
・負荷や余力のバランス調整
・生産計画の遅れ回復のための残業
費用
・工程の混乱が引き起こす納期遅れ
・他工程との生産性の差
・仕掛在庫の滞留
これらのキーワードをもとにして「参考解答」を作っていきたいと思います。
【文章構成の設計】--------------------------
文章構成と言っても根拠を列挙するパターンですので、構成力よりも要約力が
必要な設問ですね。前回、前々回とは異なる文章作成力が求められています。
解答スペースを見た感じだと、1つにつき約30~40字程度でまとめれば良
いのではないでしょうか。40字はちょっときついかな。いづれにしても問題
点をそのまま転記したのではスペースが足りなくなりますので、うまく要約し
て書いてみたいと思います。
「参考解答」=============================
(a)
本工程
(b)
・作業負荷や余力を調整することで生産性の向上を図れる可能性がある
・生産計画の遅れ回復のための残業を減らしてコストを抑制する必要がある
・飛び込み注文時の工程の混乱をなくして納期遅れを防止する必要がある
・前工程との生産性の差をなくして仕掛在庫を減少させる必要がある
===================================
1番目に挙げた根拠が何だかわかりにくい表現になっているような気がします。
言いたいことは「ライン稼動時」の作業に10人も必要ないのでは?って言う
ことなんですが...その分、次の段取りが始められるのでは?と考えたため
根拠に入れておきました。次の設問との関連も少し視野に入れた内容にしたか
ったというのもあります。それにしてもわかりにくい。この辺が「要約力」と
言うことなんでしょうね。短い文章でも言いたいことがわかりやすくキチンと
伝わる。訓練あるのみなのか?それともセンスの問題なのか?
今回はここまでとさせていただきます。
次回は「平成14年度:事例 III」の第2問(設問3)から分析・解説します。