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中小企業診断士【第2次試験突破のノウハウ】
第52号
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このメールマガジンでは、新試験制度移行後の中小企業診断士【第2次試験】
の過去問題を中心に、解答作成のプロセスを詳細に解説していきます。
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当メルマガと連動する形で「事例構造化」資料を作成し、ホームページに掲載
しております。ここでの分析・解説の参考資料としてご覧ください。
※ホームページ
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「事例構造化資料」の「平成14年度」から「事例IV」のリンクをクリック
してください。
前回は「平成14年度:事例IV」の与件文の構成、および事例テーマ分析・解
説を行いました。
ここ2、3年の財務戦略事例に比べると与件文の文章量がとても少なく感じま
す。しかし、問題数は多いですね。経営分析から始まってキャッシュフロー、
為替リスク、リターンとリスク、IT関連と幅広い範囲からの出題がなされて
います。この平成14年度の財務戦略事例でなんといっても「ビビった」のが
ヨーロピアン
オプションです。全く知りませんでした。とはいえ、キャッシュ
フロー計算の結果が現
預金の増減値と一致するという検算も知らずに受験して
いたんですから、ヨーロピアン
オプションどころではありません。かなり無謀
な挑戦であったことは否めません。あのときから比べればずいぶんと成長した
なぁと思います。この事例も一応すべての解答欄を埋めた記憶はあります。何
を書いたんですかね~。やっつけで何とか埋めた程度だと思うんですが...
それでは、「平成14年度:事例IV」の第1問の分析・解説を始めます。
<<<<<<<<<< 分 析・解 説 >>>>>>>>>>
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┃ ┃
┃ 平成14年度 事例IV(財務戦略) ┃
┃ ┃
┗━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━┛
【第1問】//////////////////////////////
平成13年度
貸借対照表および
損益計算書を用いてD社の経営分析せよ。そし
て、X社と比較した場合、D社の総
資本経常利益率を圧迫している原因として、
特に重要と思われる問題点を3つ挙げ、その解決策を示せ。
解答用紙には問題点1)、2)、3)ごとに、それぞれ問題点の根拠を最も的確に示
す経営指標を1つだけ挙げて、(a)欄にその名称を示し、(b)欄にD社の
経営指標値(小数点第3位を四捨五入すること)を記入せよ。また、(c)欄
には問題点を40字以内で、(d)欄にはその問題点の解決策を40字以内で、
それぞれ述べよ。
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【題意の把握】----------------------------
財務戦略事例、恒例の経営分析です。今回は「問題点を3つ」挙げなさい、と
のことです。ただし、問題点の選択に関しては以下の制約条件を考慮しなけれ
ばなりません。
1.X社との比較を根拠とすること
2.総
資本経常利益率を圧迫している原因であること
制約条件の1.については、当然の考慮点ですよね。何かと比較しなければ良
いとも悪いとも言えません。設問文の箇所にX社とD社のB/S、P/Lを並
べて記載されているので比較も行いやすそうです。
もうひとつの制約条件である2.についてですが、これには気を付けなければ
いけません。前回のメルマガでも書きましたが、D社はX社と比較した場合、
ほとんどの経営指標で劣っています。
しかし、ここでは「総
資本経常利益率を圧迫」している指標を選らばなければ
なりません。つまり、「総
資本経常利益率を構成する指標」から選びなさい、
と言われているようです。
要するに短期・長期の支払能力や財務の健全性に関する指標を挙げても点数は
もらえない、ということなんでしょうね。指標の選択については次の【与件文
との関連】で行っていきます。
この設問では経営指標の選択と計算のほかに、選択した指標に対する
・問題点
・解決策
を記述しなければなりません。問題点についてはできるだけ
「真因追求」
した結果を、解決策については一般論的ではなく
「事例に即した」
内容を記述することが求められていると考えられます。
この問題点および解決策については、両者とも与件文の範囲から飛躍した内容
にならないように気を付けなければなりません。
各指標の改善策はある程度パターン化することが可能ですが、パターン化され
た改善策は一般論的な側面が強いため、採点者からあまり高い評価を得られな
いのではないか、と考えています。それどころかパターン化されたものを覚え
ていたばっかりに、与件文とはまったく関連の無い改善策を挙げてしまう、と
いった危険性も考えられます。
財務戦略事例は他と比べて与件文が短いですが、やはり「与件文重視」である
点は忘れないようにしなければならないですね。
【与件文との関連】--------------------------
ここで前回のメルマガに書いた
「与件文、設問文に指標選択の根拠を求める」
に活躍してもらおうと思います。まずはホームページに掲載してある「事例構
造化」資料から「総
資本経常利益率」を構成する指標のうち、D社のほうが劣
っているものを挙げてみます。
・
売上高対
経常利益率 :- 2.84p
・
売上高対
営業利益率 :- 2.29p
・
売上高対販売管理費比率:+ 2.67p
・
売上高対人件費比率 :+ 3.48p
・
売上高対
営業外費用比率:+ 0.46p
・総
資本回転率 :- 0.30回
・
売上債権回転率 :-10.18回
・商品回転率 :- 1.40回
・
固定資産回転率 :- 2.30回
・
有形固定資産回転率 :-17.86回
数値はX社との差になります。ほとんどですね...比較で勝っていたのは売
上高対売上総利益率ぐらいです。ここからもわかるように
財務諸表の数値のみ
に頼って問題のある経営指標を選択するのは非常に困難であると思われます。
したがって、上記に書いた
「与件文、設問文に指標選択の根拠を求める」
のほうがより出題者の意図に即したものを選択でき、結果として採点者のより
高い評価が得られるのではないでしょうか。
ではここでもう一度、前回のメルマガで挙げた「財務面で気になること」を確
認しておきます。
1.駅前に保有している自社ビルを店舗および倉庫として使用
2.
従業員数50名(昨年度も同数)
3.現在の事業は店舗での販売のみで、文芸書、実用書、学術書、文庫・新
書、雑誌など、ほとんどの種類の書籍を扱っている
4.駅前の持つ特徴で客層は曜日、時間帯で大きく異なっている
まず、1.については前回のメルマガに書いたようにD社とX社では店舗投資
の方針が異なっているようです。D社は自社ビルを保有。しかも倉庫としても
利用しています。それに比べX社は賃借。方針が異なっていること自体は問題
ではないと考えられますが、指標値を見てみると結果的にD社のほうが固定資
産全体の回転率が低く、売上を作り出す「効率性」で劣っていると言えます。
次に2.の
従業員数についてですが、D社はX社に比べて
従業員が10人少な
い、なのに人件費の額が多いんですね。D社のほうが
売上高は小さいですから、
必然的に
売上高に占める人件費の割合が大きいということになります。これに
ついても指標値を見てみると約3.5ポイントの差が生じていることが確認で
きます。
そして、3.の取り扱い書籍についてはX社のそれが与件文からは読み取るこ
とができないため、
「D社は取り扱い書籍の種類が多すぎる」
とは言い切れませんが、こちらも商品の回転率が劣っていることが確認できま
す。また、D社のB/Sの「商品」の前年比増減額を見ても急激な増え方をし
ており、何か問題があることを示唆していると考えて差し支えないでしょう。
4.については、人員や商品、POPなどの配置と関係がありそうです。人件
費や商品に関しては既に2.と3.で触れているのと、第5問(設問1)との
関連が強そうな感じがしていますので、ここでは一旦置いておきます。
以上が
「与件文、設問文に指標選択の根拠を求める」
方法で選んだ問題の「ありそうな」経営指標になります。指標値の差だけみる
と「
売上債権回転率」なども問題がありそうに見えますが、
・金額がほぼ同じである
・前年度よりは減っている
・既に約48回転もしている
などなど...問題のある指標として挙げるには根拠が薄いのではないか、と
考えられます。したがって、D社の「総
資本計上利益率」を圧迫している原因
と考えられる経営指標は
・
売上高対人件費比率
・商品回転率
・
固定資産回転率
としてこのあとの「問題点」「解決策」を考えていきたいと思います。
【使用可能なキーワード】-----------------------
今回は指標を挙げるだけにしておきますので、特にキーワードといったものは
ありません。ですが一応、今回挙げた「商品回転率」について
「
棚卸資産回転率」
と間違えないように気をつけて下さい、ということだけ付け加えておきます。
B/Sに「商品」と書いてあるのでわざわざ「
棚卸資産」と置き換えることは
無いと思いますが...念のために書いておきます。
【文章構成の設計】--------------------------
「問題点」「解決策」については次回にさせていただきますのでこちらも特に
書くことはありません。こちらも一応ですが、指標値の計算を間違えないよう
にして下さい。
D社の「
売上高」をX社の「商品」で割ってしまう、とか。いわゆる「ポカミ
ス」が無いようにしたいですね。
「参考解答」=============================
1)
(a)
売上高対人件費比率
(b)11.99%
2)
(a)商品回転率
(b)3.83回
3)
(a)
固定資産回転率
(b)5.91回
===================================
上記の通り、今回は経営指標を挙げるだけ留めておきます。問題点と解決策の
解答ロジックまで記述すると、メルマガに相応しくない文章量になってしまい
そうなので...与件文重視で選択した指標なので変更することは無いと思い
ますが、もしかすると次回のメルマガを書いている最中に別の指標のほうが妥
当かも?と変えてしまうかも知れませんが、その点はご了承ください。
今回はここまでとさせていただきます。
次回は「平成14年度:事例IV」の第1問(続き)から分析・解説します。