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今さら聞けない!働き方改革って具体的に何をすればいいの?

少子高齢化、グローバル化、AIやデジタル技術の進歩など、現代社会はめまぐるしい変化の時代を迎え、これに伴い、働く環境やライフスタイルにも大きな焦点が当てられるようになりました。

近年、特に重要なテーマとして取り上げられているのが「働き方改革」です。従来の日本社会では、長時間労働、非効率な業務、サービス残業の慣習、終身雇用制度など、時代にそぐわない多くの課題が指摘されていました。そのため、「働き方改革」に積極的に取り組むことで、個々の能力を最大限に発揮し、生産性と創造性を高め、ワークライフバランスを実現できる働き方への変革が求められています。

そこで今回は、働き方改革の意義や具体的な取り組み、そして未来の働き方に向けた展望について詳しく探求していきます。


~働き方改革とは何なのか~
そもそも、働き方改革とは、一体何を表す言葉なのでしょうか。

働き方改革とは、2018年6月に成立し、2019年4月1日から順次施行されている「働き方改革関連法」という法律に基づいた、労働者の働き方に関する改革です。

厚生労働省では、働き方改革を『働く方々が、個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で「選択」できるようにするための改革』と定義しています。
分かりやすくいうと、「働く人全員が、もっと自由に、自分らしく働けるようにする」ための取り組みを表します。


~なぜ働き方改革に取り組んでいるのか~
それにしてもなぜ政府は、新たに法律を制定してまで、働き方改革に積極的に取り組んでいるのでしょうか。
その理由は、主に以下の3つが挙げられます。

1.労働人口減少への対策
少子高齢化の影響により、日本の労働人口は年々減少しています。

総務省が発表した「令和4年 情報通信に関する現状報告の概要」によると、日本の生産年齢人口(15~64歳)は1995年をピークに減少しており、2050年には労働人口が約5200万人(2021年から約3割減)に減少すると見込まれています。これにより、労働力不足や国内需要の減少など、様々な社会的・経済的な課題の深刻化が懸念されています。

そのため、働き方改革により多様な人材が働きやすい環境を整えることで、潜在的な労働力を引き出し、労働人口の減少を補うことが期待されています。

2.労働生産性の向上
日本は欧米諸国と比較すると、労働生産性が低い傾向がみられます。
公益財団法人「日本生産性本部」が発表した「労働生産性の国際比較2022」によると、OECD(経済協力開発機構)のデータに基づく日本の2021年の労働生産性は、OECD加盟国38カ国中27位と低迷している様子がうかがえます。
そのため、時間管理や業務効率化を徹底し、成果主義の導入などを通じて、労働生産性を向上させることを目指しています。

3.国民の幸福度向上
長時間労働や過度なストレスによる健康被害、そしてワークライフバランスの悪化など、日本の労働環境は様々な課題に直面しています。
そこで働き方改革により多様な働き方を可能とし、仕事とプライベートの両立を支援することで、国民の健康と幸福度を向上させることを目指しています。


~働き方改革の具体的施策について~
「働き方改革関連法」の制定に伴い、様々な法改正が行われ、大きく分けて8つの規定が設けられました。それぞれの規定について順にみていきましょう。

厚生労働省では、働き方改革に関してより詳しく説明した資料を公表していますので、そちらも併せてご参考にしていただければ幸いです。

▼参考資料
働き方改革関連法に関するハンドブック(出典:厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/001140961.pdf

1.時間外労働の上限規制を導入
残業時間の上限を法律で規制することは、1947年に制定された「労働基準法」において、初めての大改革となります。
今回の改革により、法律による残業時間の上限が定められ、これを超える残業が不可能となりました。

時間外労働時間の上限>
・月45時間
・年360時間

突発的な業務など特別な事情がある場合、労使間での合意があればこのかぎりではありませんが、その場合でも下記の用件をすべて満たす必要があります。

時間外労働が年720時間未満
時間外労働休日労働の合計が月100時間未満
・月45時間を超える時間外労働が1年のうち6ヶ月以内
・連続する「2ヵ月」「3ヵ月」「4ヵ月」「5ヵ月」「6ヵ月」の時間外労働休日出勤の平均がすべて80時間以内

特にこれまで、建設事業や医師など、一部の職種において時間外労働の上限規制が猶予・除外されていたケースがありました。しかし、2024年4月1日からは、「新技術・新商品等の研究開発業務」を除き、すべての業務においてこの上限規制が適用されることになります。
したがって、時間外労働時間に留意して業務を遂行する必要があります。

2.年次有給休暇の確実な取得
2019年4月から全ての企業において、1人1年あたり5日間の有給休暇の取得が義務付けられています。
違反した企業には、1人あたり30万円以下の罰金という罰則規定も設けられています。

3.中小企業の月60時間時超の時間外労働に対する割増賃金率引上げ
今までの法律では、月60時間を超える時間外労働に対する割増賃金率は、大企業が50%、中小企業が25%となっていました。
しかし、2023年4月1日からは、大企業・中小企業ともに残業割増賃金率が50%となりました。

4. 「フレックスタイム制」の拡充
フレックスタイム制は、労働者が一定期間(1ヶ月等)の総労働時間を遵守すれば、日々の始業・終業時間を自由に決められる勤務制度です。

労働者が所定の労働時間を超過または未達した場合、以前は1ヶ月までの期間で行われていた精算を、法改正により最大3ヵ月まで延長することが可能となりました。

これにより、子育てや介護などの生活上のニーズに応じて労働時間が調整され、より柔軟な働き方が実現されることが期待されます。

5. 「高度プロフェッショナル制度」を創設
1の「時間外労働の上限規制を導入」の例外対象となる「高度プロフェッショナル制度」が新設されました。

この制度は、自律的で創造的な働き方を望む方々が、高い収入を確保しながら、メリハリのある働き方を実現できるように、本人の希望に合わせた自由な働き方の選択肢を提供することを目的としています。

6. 産業医・産業保健機能の強化
産業医とは、労働者の健康管理などにおいて、専門的な立場から指導や助言を行う医師のことです。

労働安全衛生法では、労働者数が50人以上の事業場では、産業医の選任が事業者の義務となっています。一方、労働者数が50人未満の事業場では、産業医の専任は義務付けられていませんが、労働者の健康管理を医師等に行わせるよう努めなければならないと定められています。

働き方改革を契機に、産業医の制度が改正され、その活動環境が整備されました。これにより、労働者の健康管理に必要な情報を適切に産業医に提供することが規定されています。

7. 勤務間インターバル制度の導入促進
「勤務間インターバル制度」とは、1日の勤務終了後から翌日の出社までに一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組みのことです。

今回の働き方改革による法改正により、この制度を導入することが企業の努力義務となり、従業員の十分な生活時間や睡眠時間を確保することを目的としています。

8. 正社員と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の禁止
政府が進める働き方改革のなかで、雇用形態に関わらず公正な待遇を確保することが重要な方針として掲げられています。

これまでは、「短時間労働者雇用管理の改善等に関する法律」(通称:パートタイム労働法)により、パートタイム労働者に対する不合理な待遇差や差別的な取り扱いが禁止されていました。
しかし今回、新たに有期雇用労働者も対象に拡大され、同一企業内において、正社員と非正規雇用労働者との間で基本給賞与など、あらゆる待遇に不合理な差を設けることが禁止されるようになりました。


~働き方改革を実施している中小企業はなんと約8割!~
政府が積極的に推進している「働き方改革」ですが、どのくらいの企業が実際に取り組んでいるのでしょうか?

レバレジーズ株式会社が運営する「ハタラクティブ」が、中小企業の働き方改革担当者300名を対象として、働き方改革の実態を調査した結果によると、働き方改革に関する施策を「実施している」と回答した企業は全体の79%に達しました。
この結果から、多くの中小企業が何らかの就労・処遇改善を実施していることが分かります。

▼参考URL
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000589.000010591.html


~働き方改革への取り組みは離職率の防止にもつながる~
厚生労働省の発表によると、働き方改革を目的とした取り組みを行っている企業と行っていない企業を比較すると、従業員の離職率、新入社員の定着率、求人募集の充足率のいずれにおいても、行っている企業の方が改善していることが示されています。

▼参考資料
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/roudou/19/backdata/2-2-35.html

この結果から、働き方改革は企業と従業員の双方にとってポジティブな影響を与えているといえるでしょう。
そして、働き方改革が単なる組織内の業務プロセスの変革だけでなく、従業員のワークライフバランスの向上や働きやすい環境の整備にも関連していることが示唆されています。

今や離職率の低下は、どの企業においても重要な課題のひとつとなっています。
そのため、働き方改革は企業にとって単なる制度の変更だけではなく、従業員の満足度向上や労働条件の改善を含む、包括的なアプローチが求められています。

また、働き方改革に伴う法改正への対応には、従来の管理方法や賃金規定就業規則などを見直す必要があります。このような法改正は今後も続く可能性があるため、常に最新の情報を入手し、適切な対策を講じていけるとよいでしょう。


~まとめ~
働き方改革は、単なる労働時間や休暇の規定だけではなく、個々の事情に合わせた多様な働き方を可能とし、個人の能力と幸福度を最大限に発揮できる社会を目指す取り組みです。
中小企業においても、約8割が働き方改革に取り組んでおり、離職率の低下など、その効果が徐々に表れています。

しかし、働き方改革はまだ始まったばかりです。
今後、ますます進化する働き方に柔軟かつ前向きに対応し、持続可能な社会の構築に向けて協力し続けることが重要となるのではないでしょうか。

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