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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
石下雅樹法律・
特許事務所 第35号 2008-04-07
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法律相談のお申し込みは
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契約についての詳細は
http://www.ishioroshi.com/btob/komon_firstb.html
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1 東京メトロ事件と
商標の不使用取消
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
知財高裁平成19年9月27日判決
X社は,第16類「新聞・雑誌」を指定商品として,「東京メ
トロ」という標準文字の
商標の出願を,平成14年1月18日
に行ないました。そして,この
商標は,平成14年10月4日
に,設定登録されました(登録第4609287号
商標)。
この登録
商標に対して,東京メトロを運営するY社が,平成1
7年10月26日,上記
商標が使用されていないとして,本件
商標の登録取消を求める審判(不使用取消審判)を請求しまし
た。
特許庁は,平成18年12月5日,この
商標の登録を取り消す
旨の審決を行ないましたが,X社はこれを不服としてこの審決
の取消を求める裁判を起こしました。
なお,判決によれば,X社は,平成17年4月29日から5月
にかけて,世田谷区内において,「とうきょうメトロ」の表題
が付された印刷物約8000部を無料で配布し,その後もその
新聞は,継続して,創刊号から少なくとも第4号まで同一の商
標を付して発行されていました。
しかし,
特許庁は,この新聞は,広告の収入により事業展開を
行っているものであるから,他人の広告を掲載し,頒布するた
めに用いられる印刷物にすぎないものであって,市場において
独立して商取引の対象として流通に供されたものとは認められ
ないから,指定商品「新聞,雑誌」のいずれにも含まれない商
品である,よって,この
商標は使用されていないと判断してい
ました。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 判決の概要
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【結論】
審決を取り消す。
【理由】
商標法上の「商品」は,商取引の対象であるから,商品が対価
と引換えに取引されるのが一般的である。しかし,「商取引」
は,営利を目的として行われる様々な
契約形態による場合が含
まれ……取引を全体として観察して,「商品」を対象にした取
引が商取引といえるものであれば足りる。
この新聞のような無料紙は,配布先の読者からは対価を得てい
ないが,広告については,広告主から広告料を得ており,これ
により,利益が得られるようにしている。したがって,読者と
の間では対価と引換えでないとしても,無料紙を広告主に納品
し,あるいは読者に直接配布することによって広告主との間の
契約の
履行となる。このように全体として観察するならば,商
取引に供される商品に該当するということができる。
よって,この
商標については,3年以内に日本国内において,
指定商品につき
商標を使用したことが認められる。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3 解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【
商標の不使用取消審判】
商標の不使用取消審判とは,ある登録
商標が一定期間使用され
ていない場合,これを理由として,第三者が,その登録
商標の
取消を請求することができる
特許庁の審判をいいます。
商標権者は,不使用取消審判の請求を受けたときは,請求に
ついての
商標を,この
商標の指定商品・指定
役務について,そ
の審判の請求の登録(予告登録)前3年以内に,日本国内にお
いて,使用していることを証明しなければ,取消を受けること
になります。なお,自ら使用していなくても,通常使用権者,
専用使用権者が使用した事実でも足ります。
したがって,特に重要な
商標である場合,他社から不使用取消
審判を起こされる場合があります。そのため,登録
商標を使用
していることを立証できるよう,取引書類,広告といった書類
を証拠として保存しておくことは重要であると思われます。
また,出願登録したものの,何らかの社内の事情で使用されて
おらず,しかし,権利を保持していたい,といった
商標がある
場合も,十分注意が必要です。
【
商標を使用する商品】
今回ご紹介した判決は,
商標を使用する対象たる「商品」の意
味を明らかにしており,参考になります。他方,
特許庁は,X
社が「東京メトロ」の題号を「無料配布の新聞」に使用したこ
とについて,「新聞,雑誌」という指定商品への使用とはいえ
ないと判断しましたが,これは妥当とはいえないでしょう。
なぜなら,無料であっても営利目的で新聞や雑誌や印刷物を配
布するケースは多数あるわけで,これらの無料の新聞等が「商
品」に該当しないとするならば,多くのビジネスが
商標上保護
されず不都合な結果が生じることになってしまうからです。
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【編集発行】石下雅樹法律・
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横浜東口ビル4階
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知財高裁平成19年9月27日判決
X社は,第16類「新聞・雑誌」を指定商品として,「東京メ
トロ」という標準文字の商標の出願を,平成14年1月18日
に行ないました。そして,この商標は,平成14年10月4日
に,設定登録されました(登録第4609287号商標)。
この登録商標に対して,東京メトロを運営するY社が,平成1
7年10月26日,上記商標が使用されていないとして,本件
商標の登録取消を求める審判(不使用取消審判)を請求しまし
た。
特許庁は,平成18年12月5日,この商標の登録を取り消す
旨の審決を行ないましたが,X社はこれを不服としてこの審決
の取消を求める裁判を起こしました。
なお,判決によれば,X社は,平成17年4月29日から5月
にかけて,世田谷区内において,「とうきょうメトロ」の表題
が付された印刷物約8000部を無料で配布し,その後もその
新聞は,継続して,創刊号から少なくとも第4号まで同一の商
標を付して発行されていました。
しかし,特許庁は,この新聞は,広告の収入により事業展開を
行っているものであるから,他人の広告を掲載し,頒布するた
めに用いられる印刷物にすぎないものであって,市場において
独立して商取引の対象として流通に供されたものとは認められ
ないから,指定商品「新聞,雑誌」のいずれにも含まれない商
品である,よって,この商標は使用されていないと判断してい
ました。
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2 判決の概要
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【結論】
審決を取り消す。
【理由】
商標法上の「商品」は,商取引の対象であるから,商品が対価
と引換えに取引されるのが一般的である。しかし,「商取引」
は,営利を目的として行われる様々な契約形態による場合が含
まれ……取引を全体として観察して,「商品」を対象にした取
引が商取引といえるものであれば足りる。
この新聞のような無料紙は,配布先の読者からは対価を得てい
ないが,広告については,広告主から広告料を得ており,これ
により,利益が得られるようにしている。したがって,読者と
の間では対価と引換えでないとしても,無料紙を広告主に納品
し,あるいは読者に直接配布することによって広告主との間の
契約の履行となる。このように全体として観察するならば,商
取引に供される商品に該当するということができる。
よって,この商標については,3年以内に日本国内において,
指定商品につき商標を使用したことが認められる。
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3 解説
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【商標の不使用取消審判】
商標の不使用取消審判とは,ある登録商標が一定期間使用され
ていない場合,これを理由として,第三者が,その登録商標の
取消を請求することができる特許庁の審判をいいます。
商標権者は,不使用取消審判の請求を受けたときは,請求に
ついての商標を,この商標の指定商品・指定役務について,そ
の審判の請求の登録(予告登録)前3年以内に,日本国内にお
いて,使用していることを証明しなければ,取消を受けること
になります。なお,自ら使用していなくても,通常使用権者,
専用使用権者が使用した事実でも足ります。
したがって,特に重要な商標である場合,他社から不使用取消
審判を起こされる場合があります。そのため,登録商標を使用
していることを立証できるよう,取引書類,広告といった書類
を証拠として保存しておくことは重要であると思われます。
また,出願登録したものの,何らかの社内の事情で使用されて
おらず,しかし,権利を保持していたい,といった商標がある
場合も,十分注意が必要です。
【商標を使用する商品】
今回ご紹介した判決は,商標を使用する対象たる「商品」の意
味を明らかにしており,参考になります。他方,特許庁は,X
社が「東京メトロ」の題号を「無料配布の新聞」に使用したこ
とについて,「新聞,雑誌」という指定商品への使用とはいえ
ないと判断しましたが,これは妥当とはいえないでしょう。
なぜなら,無料であっても営利目的で新聞や雑誌や印刷物を配
布するケースは多数あるわけで,これらの無料の新聞等が「商
品」に該当しないとするならば,多くのビジネスが商標上保護
されず不都合な結果が生じることになってしまうからです。
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