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始業前の準備作業は労働時間

◆事例:始業前の準備作業は労働時間

 当社はメーカーですが始業時刻を8時としています。8時ジャストに製造開
始のため、作業服への着替えや始動点検、材料の投入は8時前に終了させるよ
う指示しています。
 先般出入りの派遣業者から、これらの作業時間は労働時間になるとの指摘が
ありました。就業規則上の「始業時刻」は「製造を開始できる状態」と定めて
あるので問題ないはずですが。

◇回答----------------------------------------------------------------
 作業開始前の準備作業が会社の指揮監督下にある場合は労働時間とされます。
少なくとも、始業時点検や材料準備に要する時間は労働時間として取り扱うべ
きです。そのためには、始業時刻を早めるか又は準備時間に対して割増賃金
支払わなければなりません。なお、作業服への着替えは厳密に考えなくても良
さそうです。

■解説----------------------------------------------------------------

 実際の作業開始前の準備段階として、特に製造業種においては、作業服や保
護具の装着、機械設備の点検、原材料の数量調べや投入の作業を行うことが多
くあります。
ここで、「使用者の指揮監督下にあるかどうか」は、明示的であることは必ず
しも必要ではなく、現実に作業に従事している時間の他、事例のような作業前
に行う準備等であっても会社が明示又は黙示の指揮命令下に行われていれば、
これも労働時間となります。

 この中でも疑義が多いのが作業服や安全靴の着用時間です。この問題は実は
判例も真っ二つに分かれています。

 「作業服等の着用が常に業務性を有するとは限らないが、業務上の災害予防
の観点から義務付ける場合があり、会社側からも作業能率や生産性の向上、職
場秩序の維持等管理上の見地から義務付ける場合には、作業服の着用は業務開
始の準備行為として業務に含まれる」(S59.10.31東京高裁、S62.11.27長崎地
裁)という判例と、
「作業服着用が不可欠なものであっても労働力提供のための準備行為であって、
労働力の提供そのものではなく、また会社の直接の支配下にあるわけでもない
ことから一律に労働時間とするのは使用者に不当な犠牲を強いるものであり、
労働時間に含めるか否かは就業規則の定めに従うことで足りる」(S56.7.16最
高裁、他)となっています。

 実務屋の立場としては、こういう判例が一番困ります。特に、S62.11.27の長
崎地裁のケースは、結局最高裁まで争われ、最高裁が原判決を支持してます。
同じ最高裁で意見が分かれています。

 会社の立場からすれば、着替えの時間まで労働時間というのは確かに厳しい
気もしますので、就業規則に「始業時刻までに着替えを済ますこと」との一文
を入れて、後者の立場を取っておく方がベターでしょうね。全てが訴訟になる
わけではないですが、まかり間違うと、こういう判決もあり得るということは、
頭に入れておくべきです。

 なお、この考え方は、始業時刻に限らず終業時刻についても当てはまります。
事前又は事後準備が不可欠なら、これに要する時間も含めて就業時間を見直す
ことも必要となります。もちろん、原則8時間労働の枠も考慮しなければなり
ません。これを超えると割増賃金の対象となり、放ったらかしておくと監督署
のお世話にもなりかねません。


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