【2022年4月大幅改正】廃止するコースも!キャリアアップ助成金の変更点チェックリスト
2022年に入り、雇用保険関係助成金の改正が次々と公表されてきます。そのうちのひとつがキャリアアップ助成金です。制度見直しによる2022年4月1日以降の大幅な改正点をご紹介していきます。
目次
キャリアアップ助成金とは
「キャリアアップ助成金」は、有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった、いわゆる非正規雇用労働者の企業内でのキャリアアップを促進するため、正社員化、処遇改善の取組を実施した事業主に対して助成する制度です。有期雇用労働者の採用や有効活用を考えている企業におすすめの助成金です。
正社員コース・障害者正社員コースの変更点チェックリスト
2022年4月1日以降の変更点の概要をおさらいします。
変更点(1)有期→無期のコース廃止(正社員化コースのみ)
正社員化コースで有期契約労働者等を正規雇用労働者等に転換した場合に57万円から72万円の助成が企業にあります。有期雇用労働者から無期雇用労働者への転換のコースが廃止されます。変更後の助成は以下の通りです。
1)有期→正規:1人当たり57万円
2)無期→正規:1人当たり28万5千円
3)有期→無期:1人当たり28万5千円(廃止)
変更点(2)正社員定義の変更(両コース共通改正事項)
正社員の定義が厳格化され、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」のある正社員への転換が必要になります。2022年10月1日以降の適用です。
現行:同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者
改正後:同一の事業所内の正社員に適用される就業規則が適用されている労働者。ただし、「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」が適用されている場合に限る。
変更点(3)非正規雇用労働者定義の変更(両コース共通改正事項)
正社員と非正規雇用労働者の違いが明確化されます。「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」が適用されている非正規雇用労働者の正社員転換が必要になります。
現行:6か月以上雇用している有期または無期雇用労働者
改正後:賃金の額または計算方法が「正社員と異なる雇用区分の就業規則等」の適用を6か月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者
例として、契約社員と正社員とで異なる賃金規程(基本給の多寡や昇給額の違い)などが適用されるケースが挙げられています。
助成金が支給されるパターンとされないパターン
今回の改正を受け就業規則の見直しが必要になります。正社員には「賞与または退職金の制度」かつ「昇給」があることがわかる就業規則が必要になります。契約社員就業規則などの適用を6か月以上受けて雇用している有期または無期雇用労働者が非正規雇用労働者となるため、10月1日以降の正社員転換予定の従業員は、正社員と同じ賃金額や賃金計算方法で給与を支給していると助成金の対象外となります。
具体例は、下記の通りです。
パターン1:契約社員で基本給のみ月給→正社員に転換し基本給のみ月給=助成金不支給
パターン2:契約社員で基本給のみ時給→正社員に転換し基本給のみ月給=助成金支給
パターン3:契約社員で基本給のみ月給→正社員に転換し基本給+諸手当=助成金支給
その他の変更点もチェック
賃金規定等共通コースの変更点
有期雇用労働者等に関して、正社員と共通の職務等に応じた賃金規定等を新たに作成し、適用した場合に助成するコースです。対象労働者(2人目以降)に係る加算を廃止します。
賞与・退職金制度導入コースの変更点
有期雇用労働者等を対象に賞与・退職金制度を導入し、支給または積立てを実施した場合に助成するコースです。旧制度の家族手当、住宅手当、健康診断制度は、廃止となりました。新制度では、賞与と退職金の非正規雇用者に対する制度新設で助成される制度に変更となります。正社員との共通化は、必須ではありません。
短時間労働者労働時間延長コースの変更点
有期雇用労働者等の週所定労働時間を延長し、新たに社会保険を適用した場合に助成されるコースです。支給要件の緩和及び時限措置の延長となりました。社会保険の適用拡大をさらに進めるため、以下の措置が取られます。
・延長すべき週所定労働時間の要件を緩和(週5時間以上→週3時間以上)
・助成額の増額措置等を延長(2022年9月末→2024年9月末(予定))
キャリアアップ助成金を活用するために「申請の流れ」
キャリアアップ助成金の申請のためには、原則、下記のステップを踏むことが必要になります。計画は期間内に実施しなければなりません。
(1)キャリアアップ計画書の作成・提出
(2)導入するべきコースの実施(正社員化コースなどは、就業規則の策定・届出も必要)
(3)実施後申請・審査
>>>申請様式のダウンロードはこちらから
再度キャリアアップ計画書を提出する場合は、改廃止されたコースなど改正点を踏まえた計画書であるか確認することが必要です。新しく計画書を提出すると、新旧の計画書があることになります。実施時期や申請時に、旧の制度(有期→無期)を選択しないように注意して下さい。
今回ご紹介した変更内容は、一部を除き2022年4月1日以降の取り組みを実施した場合に適用となります。例えば、2022年9月30日までの正社員転換であれば旧制度となり、10月1日以降正社員転換であれば新制度となります。正社員転換制度は、社員からのヒアリングを行い、面接・試験など行う期間が必要なため移行期間が必要です。どのタイミングで、どのコースを申請するか、よく検討した上で、取組をお願いいたします。また、今後の制度変更の可能性もありますので、厚生労働省など最新の情報を確認することをおすすめいたします。
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