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給与明細書と上昇

【2023年10月から】最低賃金の引き上げにどう対策する?補助金も紹介

2023.10.12

2023年10月より、最低賃金の引き上げが都道府県ごとに実施されます。不透明な経済情勢の中、最低賃金引き上げの影響が重なり、企業に対して一定の負担がかかることが想定されます。

今回は、資金繰りに苦労されている経営者に向けて最低賃金の概要や企業側がどのように対応していくか、そして対策の後押しに役立つ補助金制度について、順を追って解説していきましょう。

2023年最低賃金引き上げの内容は?いつから?

最低賃金とは?

会社が社員に対して支払う最低ランクの給料です。地域によって商品の価格相場などが異なることから、都道府県ごとに金額が決められています。最低賃金は、労働者が安心して日常生活や仕事をするために必要となる賃金を確保するために設けられています。

もし、最低賃金制度がなかった場合、給料額の設定は会社の裁量に任せられてしまいます。労働の対価としてそぐわない低額となり、労働者が生活できなくなる危険性があります。そのような状況を防ぐため、国では「最低賃金法」という法律を定め、毎年最低賃金の見直しを行っているのです。

最低賃金の引き上げはどう決まるの?

最低賃金は、まず「中央最低賃金審議会」という専門家が集まる会議により決定されます。そこで決定した賃金額は、各都道府県に設置されている「地方最低賃金審議会」により審議され、都道府県労働局長の判断により正式に金額が決定されます。そのため、都道府県により最低賃金の決定時期が若干異なることに特徴があります。

なお、2023年は7月末に「中央最低賃金審議会」により最低賃金額改定の目安について審議が行われ、同年の10月初旬から中旬にかけて都道府県別に正式な額が公表される予定です。

時給・月給が最低賃金を下回る場合の対応事項

最低賃金を下回る給料を支払うことは、一言でいえば「法律違反」です。たとえ、労使間で合意していたとしても、その合意は無効と扱われ、最低賃金以上の給料を支払う必要があります。

つまり、最低賃金に満たない給料額しか支払っていない会社は、最低賃金との差額を支払わなければなりません。差額の支払いがなかった場合、法律違反として50万円以下の罰金刑に処せられる可能性があります。

【参考】最低賃金制度とは/厚生労働省

【こちらもおすすめ】「給料が低いので辞めます」どう対応する?給与を理由に退職する社員への接し方と注意点

最低賃金を下回っているかの確認方法

自社の給料額が最低賃金を下回っているか否かの確認方法としては、会社の所在地がある都道府県で設定されている最低賃金額を調べる必要があります。

都道府県別の最低賃金は、厚生労働省のホームページ内に掲載されている「地域別最低賃金の全国一覧」で確認することができます。注意しなければならないのが、最低賃金には会社の状況に応じて2種類の賃金が設定されているという点です。具体的には「地域別最低賃金」と「特定(産業別)最低賃金」の2種類になります。

(1)地域別最低賃金

地域別最低賃金とは、業種・職種に関係なく、その都道府県が所在となるすべての会社で働く従業員に対して保証される賃金のことです。

(2)特定(産業別)最低賃金

特定最低賃金とは、特定の産業に対して設定されている賃金で、地域別最低賃金よりも高く設定されているケースが多くみられます。対象の産業は都道府県ごとに異なり、たとえば北海道では乳製品、東京都では鉄鋼業、愛知県では染色整理業などが挙げられます。自社が該当するか否かは、下記の特定(産業別)最低賃金全国一覧から確認することができます。

自社で保障する必要がある最低賃金額が把握できたら、次は実際に支払っている賃金との照らし合わせをしていきます。時給の場合は、最低賃金額と直接照らし合わせます。日給制や月給制の場合は、時給単価に換算して照らし合わせます。その上で、最低賃金額以上の金額が保障されていれば問題ないということになります。

また、最低賃金の対象となるのは、基本給と諸手当(※)のみとなります。割増賃金などには当てはまらないことも把握しておくとよいでしょう。詳細は厚生労働省のページをご参照ください。

【参考】地域別最低賃金の全国一覧 令和4年度地域別最低賃金改定状況特定(産業別)最低賃金全国一覧最低賃金の対象となる賃金/厚生労働省

最低賃金引き上げの企業側のデメリット

最低賃金額を引き上げた場合、まずは当然ながら企業内の人件費が増加します。それにより利益が減り、設備投資が抑制される傾向があります。その結果、新たな社員を雇おうとする意識が縮小され、同時に既存の社員の業務負担が増加します。この傾向が強まると、労働時間が長くなり、長時間労働問題へと発展するケースも危険視されています。

企業側の取るべき対応策

最低賃金引き上げに伴う企業側の懸念点について述べてきましたが、最低賃金は国で定められている決まりであり、引き上げられた場合には各企業で対応する必要があります。具体的には、労働者の賃上げや提供する商品の値上げ、設備投資などのコスト削減などの内容が挙げられますが、いずれも会社側には何らかの負担がかかるという事実は否めません。

そこで、国では最低賃金の引き上げに対応する企業に向けて、助成金や低金利での融資を打ち出しています。状況に応じて活用を検討してみてはいかがでしょうか。

(1)業務改善助成金

生産性向上に資する設備投資を行い、最低賃金を一定額引き上げた企業に対して、その費用の一部を助成する制度です。

(2)キャリアアップ助成金「賃金規定等改定コース」

有期雇用者の基本給を3%以上増額改定した会社に対して一定額の助成を行う制度です。

(3)中小企業向け賃上げ促進税制

前年度より給与などを一定額増加させた中小企業を対象とした制度で、増加した給与額の一部を法人税より税額控除することができます。

(4)働き方改革推進支援資金

最低賃金の引き上げに対応する卸売業・小売業・飲食サービス業・その他サービス業・不動産賃貸業などに対し、日本政策金融公庫が資金の融資を低金利で行う制度です。

【こちらもおすすめ】その給与、適切?給与体系を可視化する「モデル賃金」の作り方

【参考】
業務改善助成金
キャリアアップ助成金/厚生労働省
中小企業向け賃上げ促進税制/中小企業庁
働き方改革推進支援資金/日本政策金融公庫

* ELUTAS,花咲かずなり,bluet,taa,CORA / PIXTA(ピクスタ)