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【レジュメ編】 行政法(その4〔1〕)

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     ★★★ 新・行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-22 ★★
            【レジュメ編】 行政法(その4〔1〕)

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■■■ 行政基準
■■■ 行政計画
■■■ 行政行為(1)

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■■■ 行政基準
■■ 法規命令
・行政機関が定める法規
→ 国民の権利義務に関する一般的な定めなので、行政機関による立法といえる。
→ 行政機関のみならず、国民も拘束し、裁判規範としても機能する。

■ 法規命令の特色
・法律による授権が必要。

・憲法
第四十一条 国会は、国権の最高機関であって、国の唯一の立法機関である。
→ ただし、一切の委任立法を認めない趣旨ではない。

●● 最高裁判例「食糧管理法違反」(刑集第4巻2号73頁)
【理由】憲法七三条六号但書においては、内閣の制定する「政令には、特にその法律の
    委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない」と規定しているの
    であって、これを裏から言えば、特に法律の委任がある場合においては、政令
    で罰則(すなわち犯罪構成要件及び刑を定める法規)を設けることができるこ
    と及び法律は罰則を設けることを政令に委任することができることの趣旨を表
    明していることは、一点の疑いを挿む余地がない。

(1)委任命令
・国民の権利義務の内容を定める命令
→ 法律の委任が必要(原則として、個別具体的な事項毎に必要)

(2)執行命令
・国民の権利義務の内容を実現する手続を定める命令
→ 法律の委任を必要としない。なお、法規である以上、委任は必要とする考えもある
  (ただし、一般的な授権で足りるとする。)。

■ 委任立法の限界
【1】委任の方法:国会による内閣等への委任の合憲性の問題
法律の所管事項を命令(行政機関の制定する法)に委任することはできるが(⇒委任
法)、憲法41条に反する委任は違憲となる。

●● 最高裁判例「国家公務員法違反」(刑集第12巻7号1272頁)
【要旨】人事院規則一四-七は国家公務員法第一〇二条第一項に基づき、一般職に属す
    る国家公務員の職責に照らして必要と認められる政治的行為の制限を規定した
    ものであり、委任の範囲を逸脱したものではない。
★ 国家公務員の禁止される政治的行為を広範に人事院規則に委任していることの合憲
  性が争われたが、最高裁は合憲とした。

●● 最高裁判例「損害賠償請求控訴、同附帯控訴」(民集第47巻5号3483頁)
【理由】文部大臣が、学校教育法八八条の規定(「この法律に規定するもののほか、こ
    の法律施行のため必要な事項で、地方公共団体の機関が処理しなければならな
    いものについては政令で、その他のものについては監督庁が、これを定め
    る」)に基づいて、右審査の内容及び基準並びに検定の施行細則である検定の
    手続を定めたことが、法律の委任を欠くとまではいえない。
★ 教科書の検定基準について、法律に規定がなく、文部省令や文部省告示に委任され
  ていたが、最高裁は合憲とした。

・再委任は可能(政令に委任している一部を府省令に委任すること)。

【2】委任命令の内容:法律の委任を受けて制定された命令(⇒委任命令)が、委任
   た法律に抵触していないかの問題(法律の優位の原則の問題)

●● 最高裁判例「農地売渡処分取消等請求」(民集第25巻1号1頁)
【要旨】農地法施行令二八条が、自作農創設特別措置法三条による買収農地につき、農
    地法八〇条の認定をすることのできる場合を、農地法施行令六条四号所定の場
    合に限ることとし、当該買収農地自体、社会的、経済的にみて、すでにその農
    地としての現況を将来にわたって維持すべき意義を失い、近く農地以外のもの
    とすることを相当とするもののような、明らかに農地法が売払いの対象として
    予定しているものにつき、同法八〇条の認定をすることができないとしたこと
    は、法の委任をこえるもので、無効というべきである。
★ 法律が認めていることを命令で制限することはできない。

●● 最高裁判例「市町村長の処分不服申立審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗
   告事件」(民集第57巻11号2562頁)
【要旨】戸籍法施行規則60条に定める文字以外の文字である「曽」の字は,社会通念
    上明らかに常用平易な文字であり,子の名に用いることができる。
★ 人名漢字として「曽」の字を定めなかったことは、法による委任の範囲を逸脱して
  いる。

●● 最高裁判例「刀剣登録拒否処分取消」(民集第44巻2号369頁)
【理由】銃砲刀剣類登録規則が文化財的価値のある刀剣類の鑑定基準として、美術品と
    して文化財的価値を有する日本刀に限る旨を定め、この基準に合致するものの
    みを我が国において前記の価値を有するものとして登録の対象にすべきものと
    したことは、銃砲刀剣類所持等取締法一四条一項の趣旨に沿う合理性を有する
    鑑定基準を定めたものというべきであるから、これをもって法の委任の趣旨を
    逸脱する無効のものということはできない。
★ 外国製の刀剣については、登録を受けられなくなったが、法の委任の趣旨を逸脱す
  るものとはいえない。

■ 法規命令の形式
(1)国:政令、内閣府令、省令、外局規則、会計検査院規則、人事院規則等
→ いかなる形式であっても、法規命令が発効するには、公布が必要

(2)地方公共団体:長の定める規則、委員会の定める規則等

■ 授権法の廃止と委任命令の効力
授権法が廃止された以上、別段の規定がない限り、委任命令は失効する。

●● 昭和57. 2.19 大阪地裁「近鉄特急料金認可処分取消等請求事件」
【主文】被告大阪陸運局長が、昭和五五年三月八日付でした近畿日本鉄道株式会社の特
    別急行料金改定の認可処分は、違法である。
【事実】措置法は、本件認可処分当時、その効力がなかったから、措置法を受けて制定
    された措置令も、その効力を肯定することができないことに帰着する。したが
    って、被告陸運局長が本件認可処分をする権限を根拠づける法令上の根拠はな
    い。
★ ただし、最高裁では、原告適格が否定されたため、最終的な判断は示されなかった。

■■ 行政規則
・行政機関が策定する一般的な規範のうち、法規としての性質を有していないもの
→ 国民の権利義務に関係する法規としての性質を有さないため、法律の授権を必要と
  しない。

・重要事項留保説(本質性理論)
行政権が行う本質的に重要な決定については、すべて立法権による授権が必要であると
する考え。侵害留保説(行政機関が国民の自由や財産を侵害する場合にのみ、法律の授
権が必要)を克服するための理論。

(1)解釈基準:法令の解釈を統一するため、上級行政機関が下級行政機関に対して発
   する基準(通達という形式が多い。)
→ 通達は行政機関の内部関係における規範を定めたもので、裁判所や国民を拘束しない。

●● 最高裁判例「法律解釈指定通達取消請求」(民集第22巻13号3147頁)
【要旨】昭和三五年三月八日付都道府県等衛生主管部局長あて厚生省公衆衛生局環境衛
    生部長通知は、宗教団体の経営する墓地の管理者は埋葬等を請求する者が他の
    宗教団体の信者であることのみを理由としてその請求を拒むことはできないか
    らこの趣旨にそって事務処理をすべき旨を求めた行政組織内部における命令に
    すぎず、従来の法律の解釈、事務の取扱を変更するものではあるが、墓地の管
    理者らにあらたに埋葬の受忍義務を課する等これらの者の権利義務に直接具体
    的な法律上の影響を及ぼすものではなく、墓地の経営者からその取消を求める
    訴を提起することは許されない。

●● 最高裁判例「物品税課税無効確認並びに納税金返還請求」(民集第12巻4号624
   頁)
【理由】論旨は、通達課税による憲法違反を云為しているが、本件の課税がたまたま所
    論通達を機縁として行われたものであっても、通達の内容が法の正しい解釈に
    合致するものである以上、本件課税処分は法の根拠に基づく処分と解するに妨
    げがなく、所論違憲の主張は、通達の内容が法の定めに合致しないことを前提
    とするものであって、採用し得ない。
★ 判例は、租税に関して「通達による課税」ではなく、法律に基づく課税であり、通
  達は法律の解釈を明確にしたに過ぎないとしている。

(2)裁量基準:行政庁の作成する内部基準であり、裁量権の行使についての基準を定
   めたもの
→ 行政手続法では、審査基準や処分基準の作成や公表が求められている(5条、12
  条)。

●● 最高裁判例「行政処分取消請求」(民集第25巻7号1037頁)
【要旨】道路運送法に定める一般乗用旅客自動車運送事業である一人一車制の個人タク
    シー事業の免許にあたり、多数の申請人のうちから少数特定の者を具体的個別
    的事実関係に基づき選択してその免許申請の許否を決しようとするときには、
    同法六条の規定の趣旨にそう具体的審査基準を設定してこれを公正かつ合理的
    に適用すべく、右基準の内容が微妙、高度の認定を要するものである等の場合
    は、右基準の適用上必要とされる事項について聴聞その他適切な方法により申
    請人に対しその主張と証拠提出の機会を与えるべきであり、これに反する審査
    手続により免許申請を却下したときは、公正な手続によって免許申請の許否に
    つき判定を受けるべき申請人の法的利益を侵害したものとして、右却下処分は
    違法となるものと解すべきである。
★ 法律の根拠がなくても、裁量基準の設定が求められる場合がある。ただし、行政手
  続法により、こうした問題は解消されている。

★★ 裁量基準から逸脱した処分は、違法になるか?
●● 最高裁判例「在留期間更新不許可処分取消(マクリーン事件)」(民集第32巻
   7号1223頁)
【理由】在留期間の更新事由が概括的に規定されその判断基準が特に定められていない
    のは、更新事由の有無の判断を法務大臣の裁量に任せ、その裁量権の範囲を広
    汎なものとする趣旨からであると解される。
★ 逸脱が一切認められないということはなく、合理的な理由がある場合には、当該裁
  量基準を適用しないことも許される。

(3)指導要綱:主として地方公共団体が作成(宅地開発やゴルフ場建設等に際して行
   われる行政指導方針を示したもの)
→ 法律上の根拠を要しない行政規則


■■■ 行政計画
■■ 意義
行政活動は、計画→実施→評価のマネジメントサイクルの下に行われるべき→実際に
は、評価は軽視されてきた→政策評価法を制定

■ 政策評価法
政策:行政機関が、その任務又は所掌事務の範囲において、一定の行政目的を実現する
ために企画及び立案をする行政上の一連の行為についての方針、方策その他これらに類
するものをいう(2条2項)

■■ 行政計画の分類
■ 地域による分類
全国計画、地域ブロック単位、都道府県計画、市町村計画、市町村内の地域の計画等

■ 対象行政部門による分類
単一の行政部門(河川整備、介護事業等)のみを対象とする計画、複数の行政部門を包
括する総合計画

■ 期間による分類
長期計画、中期計画、年次計画等

■ 計画体系による分類
・トップダウン型:広域計画に従い狭域計画が策定される(例 国土利用計画法)。
・ボトムアップ型:狭域計画が先行し、それを積み上げて調整する広域計画が策定され
 る。

■ 機能による分類
・先行目標達成機能計画(外在的に設定された目標を効率的に達成するための計画)
・指針的情報提供機能計画(企業等の自立的な活動を前提としつつ、その指針となる情
 報を提供するための計画)
・調整計画(目標設定と手段選定の過程で諸利害の調整を行うための計画)

■ 法的効果による分類
・拘束的計画:国民に対して規制効果を持つもの。例:都市計画
・給付効計画:当該計画に適合した私人の活動に対して、補助金、租税優遇措置、特例
 的融資等を与えることで国民を誘導するもの
(*)外部効果:行政計画のなかには、行政機関のみならず、国民も拘束し、裁判規範
   として機能する効果を持つものもある(例:都市計画法に基づく都市計画。都市
   計画区域内部での開発には法の定める手続が必要になる。)。

■ 法律の根拠による分類
・法定計画:法律の根拠を有する計画
・事実上の計画:法律の根拠を有しない計画

■■ 行政計画の統制
■ 計画策定手続
行政手続法は、計画策定手続についての規定は置かず、これを将来の課題としている。

■ 計画策定手続に関する近時の動き
(1)アカウンタビリティの強化 
国民の納得を得る手段および国民の参加にも寄与している。
(2)パブリック・インボルブメントをより直接に認める動き
都市計画に定める地区計画等の案は、その案の区域内の土地所有者の利害関係人の意見
を求めて作成する(都市計画法16条2項)。
(3)計画策定を私人の側から要請する制度の創設
市町村は、住民又は利害関係人から地区計画等に関する都市計画の決定若しくは変更又
は地区計画等の案の内容となるべき事項を申し出る方法を条例で定めることができる
(都市計画法16条3項)。
(4)環境影響評価法の制定
一定の公共事業等の事業実施計画の段階における環境面からの評価が住民参加のもとで
行われることになった。
(5)政策評価法の制定
9条:一定規模以上の公共事業については事前評価を義務付けている。
時のアセス:公共事業等の計画を途中で見直すことであり、政策決定後5年経過しても
未着手のもの、10年を経過しても未了のものについては、行政機関の長が毎年作成す
る実施計画に記載することを義務付け、政策評価の対象とすることとしている(7条)。
(6)行政にかかる基本的な計画を地方自治法96条2項に基づき、議会の議決すべき
   事件とすることによって、透明性の高い行政を計画的に推進することを目的とす
   る条例が制定されていること

■■ 行政計画の合理性
●● 最高裁判例「損害賠償」(民集第38巻2号53頁)
【要旨】改修計画に基づいて現に改修中である河川については、右計画が、全体とし
    て、過去の水害の発生状況その他諸般の事情を総合的に考慮し、河川管理の一
    般水準及び社会通念に照らして、格別不合理なものと認められないときは、そ
    の後の事情の変動により未改修部分につき水害発生の危険性が特に顕著とな
    り、早期の改修工事を施行しなければならないと認めるべき特段の事由が生じ
    ない限り、当該河川の管理に瑕疵があるということはできない。
★ 行政計画(本事案では、河川の改修計画)が合理的であるか、次いで、当該計画に
  よることに特段の事由が生じていないかを審査し、生じていないのであれば、当該
  行政計画に瑕疵はないと判断した。

●● 最高裁判例「伊方発電所原子炉設置許可処分取消」(民集46巻7号1174頁)
【要旨】原子炉施設の安全性に関する被告行政庁の判断の適否が争われる原子炉設置許
    可処分の取消訴訟における裁判所の審理、判断は、原子力委員会若しくは原子
    炉安全専門審査会の専門技術的な調査審議及び判断を基にしてされた被告行政
    庁の判断に不合理な点があるか否かという観点から行われるべきであって、現
    在の科学技術水準に照らし、右調査審議において用いられた具体的審査基準に
    不合理な点があり、あるいは当該原子炉施設が右の具体的審査基準に適合する
    とした原子力委員会若しくは原子炉安全専門審査会の調査審議及び判断の過程
    に看過し難い過誤、欠落があり、被告行政庁の判断がこれに依拠してされたと
    認められる場合には、被告行政庁の右判断に不合理な点があるものとして、右
    判断に基づく原子炉設置許可処分は違法と解すべきである。
★ 本事案は、行政基準が定められている場合の判決(基本的には、上記行政計画に関
  する判決と同様に、行政基準は合理的か、次いで、行政庁の判断に看過し難い過
  誤、欠落がないかを審査した。)。

●● 最高裁判例「給水契約上の地位確認等」(民集53巻1号13頁)
【要旨】水道事業を経営する町がマンション分譲業者からの四二〇戸分の給水契約の申
    込みに対し契約の締結を拒んだことは、当該町が、全国有数の人口過密都市で
    あり今後も人口の集積が見込まれ、認可を受けた水源のみでは現在必要とされ
    る給水量を賄うことができず、認可外の水源から取水して給水量を補っている
    が当該取水は不安定であり、多額の財政的負担をして種々の施策を執ってきて
    いるが容易に右状況が改善されることは見込めず、このまま漫然と新規の給水
    申込みに応じていると近い将来需要に応じきれなくなり深刻な水不足を生ずる
    こが予測されるという判示の事実関係の下においては、新たな給水申込みのう
    ち、需要量が特に大きく、住宅を供給する事業を営む者が住宅を分譲する目的
    であらかじめしたものについて給水契約の締結を拒むことにより、急激な水道
    水の需要の増加を抑制するためのやむを得ない措置であって、右の措置には水
    道法一五条一項にいう「正当の理由」があるものというべきである。
★ 本事案では、行政計画の合理性が問われた。

■■ 計画担保責任
●● 最高裁判例「損害賠償」(民集35巻1号35頁)
【要旨】地方公共団体が定めた一定内容の継続的な施策が、特定の者に対して右施策に
    適合する特定内容の活動をすることを促す個別的、具体的な勧告ないし勧誘を
    伴うものであり、かつ、その特定内容の活動が相当長期にわたる右施策の継続
    を前提としてはじめてこれに投入する資金又は労力に相応する効果を生じうる
    性質のものである場合において、右勧告等に動機づけられて右活動又はその準
    備活動に入った者が右施策の変更により社会観念上看過することができない程
    度の積極的損害を被ることとなるときは、これにつき補償等の措置を講ずるこ
    となく右施策を変更した地方公共団体は、それがやむをえない客観的事情によ
    るのでない限り、右の者に対する不法行為責任を免れない。
★ 本事案は、村長が熱心に工場誘致を行い、議会も村有地の譲渡の決議を行い、企業
  も敷地の整備工事を行い、機械設備も発注したところで、反対派の尊重が当選した
  ため、最終的に当該企業が工場の進出を断念し、生じた損害の賠償を求めたもので
  ある。

■■■ 行政行為(1)
■■ 意義
行政行為:直接具体的に国民の権利利益に影響する行政作用の行為形式の代表的なも
の。私人間には見られないもので、行政庁に認められた行政固有の行為形式。

■ 行政行為の規律力
行政行為は、当事者間の合意によって効力が発生するのではなく、法令に基づく行政庁
の一方的な行為によって法効果が発生し、よって相手方の意思に反しても一方的に相手
方の権利を制限したり、相手方に義務を課したりすることができる。これは、行政行為
が国民(住民)代表議会の定める法律・条例に基づくものであり、行政行為を用いるこ
とについて、国民・住民の事前の同意を擬制できるため。

●● 最高裁判例「農地売渡処分取消等請求」(民集25巻1号1頁)
【要旨】買収農地を自作農の創設等の目的に供しないことを相当とする事実が生じた場
    合には、その旧所有者は、農地法八〇条一項に基づく農林大臣の認定の有無に
    かかわらず、直接、農林大臣に対し当該土地の売払いを求めることができる。

■ 行政行為の性質
行政行為と契約解除:契約解除にも行政行為と同様の規律力はあるが、その通用力に差
がある。
→ 行政行為とは、行政庁が法令に基づく一方的な認定に基づく行為で私人の法律関係
  を具体的に規律する行為形式であって、取消訴訟の排他的管轄に服する結果とし
  て、その規律力の通用力が認められるもの

■ 行政行為が用いられる行政活動
行政行為は、規制行政(許可制、認可制、下命制、禁止制)において用いられることが
多いが、給付行政(例・生活保護法24条1項)、誘導行政(課徴金納付命令)、行政
資源取得行政(課税処分、権利取得裁決等)等においても用いられうる行為形式である。

■ 行政契約による代替の適否
行政行為という行為形式が法定されている場合に、行政契約という行為形式を用いるこ
とが認められるかは場合による。
例 土地収用法(48条)権利取得裁決→ 売買契約による任意買収が原則であって、
  収用は例外的措置。

■ 行政行為と行政処分
法令上では「行政行為」に相当する概念として、「行政処分」が使われている(例 地
方自治法242条の2第1項2号、銀行法49条1項5号、金融庁設置法20条1項
等)。
(※)「処分」という言葉が使われている場合もあるが、これは法律行為である行政行
   為のみではなく、一定の事実行為も含む。

行政手続法2条2号 処分:行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為をいう。
 行政不服審査法2条1項 この法律にいう「処分」には、各本条に特別の定めがある
 場合を除くほか、公権力の行使に当たる事実上の行為で、人の収容、物の留置その他
 その内容が継続的性質を有するもの(以下「事実行為」という。)が含まれるものと
 する。

・行政事件訴訟法3条2項 この法律において「処分の取消しの訴え」とは、行政庁の
 処分その他公権力の行使に当たる行為(次項に規定する裁決、決定その他の行為を除
 く。以下単に「処分」という。)の取消しを求める訴訟をいう。

■■ 行政行為の分類
■ 申請に対する処分と不利益処分(行政手続法
(1)申請に対する処分:申請に対して行政庁が行う、諾否の応答としての処分
(2)不利益処分:行政庁が法令に基づき、特定の者を名あて人として、直接に、これ
   に義務を課し、またはその権利を制限する処分。不特定の者を名あて人とする一
   般処分および行政上の執行強制や即時強制のような事実上の行為は含まない。

■ 二重効果的処分
直接の名あて人にとっては不利益処分であっても、別の者にとってはその処分が利益を
与える場合もしくは直接の名あて人にとっては利益になるが、他のものにとっては不利
益である場合の行政行為→ 可能である。

■ 命令行為・形成行為・確定行為
(1)命令行為:国民に対し作為(建築物改修等)または不作為(営業停止等)を命ず
   るもの
(2)形成行為:国民に対し法的地位を付与したり、付与を拒否するもの(営業免許、
   営業免許拒否等)
(3)確定行為:租税の更正・決定のように法律関係を確定したり、確定を拒否する効
   果をもつもの

■ 一般処分 
具体的な事実に関わるものであって、名あて人が不特定の場合(行政行為の一種)

■■ 行政裁量
■ 意義
立法者が法律の枠内で行政機関に認めた判断の余地のこと。

・行政事件訴訟法30条 行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲を超え又はその
 濫用があった場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。
→ 行政事件訴訟法の下においても「裁量の範囲内」であれば、当不当の問題を生ずる
  にとどまり、違法の問題は生じない。裁判所は、行政庁の行為の当不当の問題には
  介入できない。

■ 行政裁量が認められる根拠
行政裁量が認められる。
→ 訴訟になった場合、裁判所の介入よりも行政庁の判断を優先させるべきであると立
  法者が定めたことを意味する。

(1)教育に関する専門的判断の尊重の必要性がある場合
●● 最高裁判例「放学処分取消請求」(民集8巻7号1501頁)
【理由】懲戒権者たる学長が学生の行為に対し懲戒処分を発動するに当り、その行為が
    懲戒に値するものであるかどうか、懲戒処分のうちいずれの処分を選ぶべきか
    を決するについては、当該行為の軽重のほか、本人の性格および平素の行状、
    右行為の他の学生に与える影響、懲戒処分の本人および他の学生におよぼす訓
    戒的効果等の諸般の要素を考量する必要があり、これらの点の判断は、学内の
    事情に通ぎょうし直接教育の衝に当るものの裁量に任すのでなければ、適切な
    結果を期することができないことは明らかである。

(2)政治的判断の尊重の必要性がある場合
●● 最高裁判例「在留期間更新不許可処分取消」(民集32巻7号1223頁)
【理由】法務大臣は、在留期間の更新の許否を決するにあたっては、外国人に対する出
    入国の管理及び在留の規制の目的である国内の治安と善良の風俗の維持、保
    健・衛生の確保、労働市場の安定などの国益の保持の見地に立って、申請者の
    申請事由の当否のみならず、当該外国人の在留中の一切の行状、国内の政治・
    経済・社会等の諸事情、国際情勢、外交関係、国際礼譲など諸般の事情をしん
    しゃくし、時宜に応じた的確な判断をしなければならないのであるが、このよ
    うな判断は、事柄の性質上、出入国管理行政の責任を負う法務大臣の裁量に任
    せるのでなければとうてい適切な結果を期待することができないものと考えら
    れる。

(3)科学技術に関する専門組織による判断の尊重の必要性がある場合
●● 最高裁判例「温泉掘さく許可取消請求」(民集12巻11号1612頁)
【理由】温泉源を保護しその利用の適正化を図る見地から許可を拒む必要があるかどう
    かの判断は、主として、専門技術的な判断を基礎とする行政庁の裁量により決
    定さるべきことがらであって、裁判所が行政庁の判断を違法視し得るのは、そ
    の判断が行政庁に任された裁量権の限界を超える場合に限るものと解すべきで
    ある。

●● 最高裁判例「伊方発電所原子炉設置許可処分取消」(民集46巻7号1174
   頁)
【理由】規制法(核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律が、内閣総理
    大臣は、原子炉設置の許可をする場合においては、同条一項三号(技術的能力
    に係る部分に限る。)及び四号所定の基準の適用について、あらかじめ原子力
    委員会の意見を聴き、これを尊重してしなければならないと定めているのは、
    右のような原子炉施設の安全性に関する審査の特質を考慮し、右各号所定の基
    準の適合性については、各専門分野の学識経験者等を擁する原子力委員会の科
    学的、専門技術的知見に基づく意見を尊重して行う内閣総理大臣の合理的な判
    断にゆだねる趣旨と解するのが相当である。

(4)全国一律の基準を定めることが適当でなく、地域の特性や地域住民の意見を斟酌
   して決定すべき事項
(5)予測が困難な状況の変化に迅速かつ臨機応変に対応することが特に必要な分野
→ 法令で予め具体的に規定しつくすことができないため、行政機関に判断の余地を与
  えておく必要性がある。

■ 行政裁量の統制
行政裁量が認められる場合であっても、行政機関による統制の場合には、裁量事項につ
いての審査を妨げられない。

行政不服審査法1条 この法律は、行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の行使
 に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを開くこと
 によって、簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図るとともに、行政の適正
 な運営を確保することを目的とする。
2 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に関する不服申立てについては、他
  の法律に特別の定めがある場合を除くほか、この法律の定めるところによる。

■■ 行政裁量の認められる判断過程
■ 要件裁量
行政裁量の判断過程において、要件該当性の判断に行政裁量を認める場合

●● 最高裁判例「懲戒免職処分等取消請求」(民集15巻4号928頁)
【要旨】教育委員会法(昭和二三年法律第一七〇号)第三四条第四項但書にいう「急施
    を要する場合」とは付議すべき事件の性質が、同条本文に定める三日の期間経
    過後に議決するのでは議決の実効を収め得ない程度に緊急性を有する場合にか
    ぎると解すべきではなく、会議の招集権者は、この点の判断についてはその当
    時における客観的情勢その他諸般の事情から、その事件が行政措置上急施を要
    するかどうか等の点をも考慮し、その裁量判断によりこれを決することができ
    るものと解すべきである。

■ 効果裁量
処分をするか否かについて行政裁量が認められる場合、これを行為裁量という。また、
処分をする場合にいかなる処分を選択するかに裁量が認められる場合、これを選択裁量
という。
→ 行為裁量と選択裁量を併せて効果裁量という。

●● 最高裁判例「行政処分無効確認等、附帯」(民集31巻7号1101頁)
【理由】懲戒権者は、懲戒事由に該当すると認められる行為の原因、動機、性質、態
    様、結果、影響等のほか、当該公務員の右行為の前後における態度、懲戒処分
    等の処分歴、選択する処分が他の公務員及び社会に与える影響等、諸般の事情
    を考慮して、懲戒処分をすべきかどうか、また、懲戒処分をする場合にいかな
    る処分を選択すべきか、を決定することができるものと考えられるのである
    が、その判断は、右のような広範な事情を総合的に考慮してされるものである
    以上、平素から庁内の事情に通暁し、部下職員の指揮監督の衝にあたる者の裁
    量に任せるのでなければ、とうてい適切な結果を期待することができないもの
    といわなければならない。
★ 懲戒権者の裁量権の行使に基づく処分が、社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権
  を濫用したと認められる場合に限って違法となる。

■ 時の裁量
処分をいつするかについての裁量

●● 最高裁判例「損害賠償」(民集36巻4号727頁)
【要旨】道路法四七条四項の規定に基づく車両制限令一二条所定の道路管理者の認定が
    約五か月間留保されても、判示の事実関係のもとにおいては、道路行政上比較
    衡量的判断を含む合理的な行政裁量の行使として許容される範囲内にとどま
    り、国家賠償法一条一項にいう違法性を欠くものと解すべきである。

■ 事実認定の裁量
事実認定については行政裁量は認められないのが原則
→ 高度な科学技術的問題について専門的行政機関が判断を行った場合、裁量を承認す
  る判例もある。

■■ 裁量権の限界と司法審査
■ 裁量権の踰越濫用
・行政事件訴訟法30条 行政庁の裁量処分については、裁量権の範囲をこえ又はその
 濫用があった場合に限り、裁判所は、その処分を取り消すことができる。
・裁量権の踰越:法の許容する裁量の範囲を逸脱すること
・裁量権の濫用:表面的には法の許容する裁量の範囲内であるものの法の趣旨に反して
 裁量権を行使すること
→ 判例は、両者を一括して、裁量権の限界の問題としている。具体的には、法律の目
  的違反、不正な動機、平等原則違反、比例原則違反等がある。

■ 法律の目的違反、不正な動機
●● 最高裁判例「行政処分取消請求」(民集27巻8号925頁)
【要旨】地方公務員法二八条に基づく分限処分は、任命権者の純然たる自由裁量に委ね
    られているものではなく、分限制度の目的と関係のない目的や動機に基づいて
    された場合、考慮すべき事項を考慮せず、考慮すべきでない事項を考慮して処
    分理由の有無が判断された場合、あるいは、その判断が合理性をもつものとし
    て許容される限度を超えた場合には、裁量権の行使を誤ったものとして違法と
    なる。

●● 最高裁判例「損害賠償」(民集32巻3号689頁)
【要旨】個室付浴場業の開業を阻止することを主たる目的として原判示の事実関係のも
    とにおいてされた知事の児童遊園設置認可処分は、たとえ右児童遊園がその設
    置基準に適合しているものであるとしても、行政権の著しい濫用によるものと
    して、国家賠償法一条一項にいう公権力の違法な行使にあたる。

■ 平等原則違反
●● 最高裁判例「産米供出個人割当通知取消請求」(民集9巻7号930頁)
【要旨】産米供出個人割当額決定の方法につき法令上具体的の定めがない場合でも、右
    決定に当る村長は、この点につき一部落内の特定の生産者を何等いわれがなく
    他の生産者と区別して取り扱う裁量権を有するものではないが、判示の事実関
    係の下では、一部落内の特定の生産者をこの点につき他の生産者と区別して取
    り扱ったとしても、これをもって、違法の裁量権の行使ということはできない。
【理由】供出個人割当通知が行われた当時の食糧管理法では、何等具体的な定めがなか
    ったことは明らかである。従って、これらの点についてどのような措置をとる
    かは、一応、行政庁の裁量に任されていたものと解さざるを得ない。もっと
    も、かような場合においても、行政庁は、何等いわれがなく特定の個人を差別
    的に取り扱いこれに不利益を及ぼす自由を有するものではなく、この意味にお
    いては、行政庁の裁量権には一定の限界があるものと解すべきである。
(*)「食糧管理法」は、平成7年11月1日に施行された「主要食糧の需給及び価格の
   安定に関する法律」(いわゆる食糧法)により廃止されている。
(*)「食糧」と「食料」の違いは、主食かどうかです。即ち、前者が主食の食べ物
   (本邦では、当然にお米)のことであるのに対して、後者は主食以外の食べ物
   (小麦、野菜等)のことです。

■ 手続的司法審査
●● 最高裁判例「一般旅券発給拒否処分取消等」(民集39巻1号1頁)
【要旨】一般旅券発給拒否処分の通知書に、発給拒否の理由として、「旅券法一三条
    一項五号に該当する。」と記載されているだけで、同号適用の基礎となった事
    実関係が具体的に示されていない場合には、理由付記として不備であって、右
    処分は違法である。

行政手続法の制定→ 処分庁により、審査基準・処分基準が公にされることによっ
 て、当該基準が不合理でないか、審査基準適合性の判断に不合理な点はないかという
 司法審査が可能になるのみならず、当該基準を適用しなかったことに合理性がある
 か、当該基準を適用することが不合理な結果をもたらさないかという司法審査も可能
 となる。
→ 手続的司法審査が拡充する契機となった。

■ 効果裁量と不作為の違法
行政機関がある行為を行う場合についてのみならず、行うべき行為を行わない場合にも
裁量権の限界が問題になる。
→ 多くの場合行政機関に規制権限を与える法律は、効果裁量を認めていると解される
  (行政便宜主義)。

●● 最高裁判例「損害賠償」(民集43巻10号1169頁)
【理由】知事が宅地建物取引業者に対し宅地建物取引業法六五条二項による業務停止処
    分ないし同法六六条九号による免許取消処分をしなかった場合であっても、知
    事の右監督処分権限の不行使は、具体的事情の下において、右権限が付与され
    た趣旨・目的に照らして著しく不合理と認められるときでない限り、右業者の
    不正な行為により損害を被った取引関係者に対する関係において国家賠償法
    条一項の適用上違法の評価を受けない。
★ 効果裁量が認められる規定であっても、不作為が違法になる場合もあり得る。

・行政事件訴訟法3条6項1号 この法律において「義務付けの訴え」とは、次に掲げ
 る場合において、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟を
 いう。
 一  行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に
掲げる場合を除く。)。

■■ 行政行為の瑕疵
■ 意義
行政行為に瑕疵がある場合
→ 通常は行政行為が違法であることを意味する。
→ 瑕疵ある行政行為は原則として取り消されるべき。

■ 行政行為の瑕疵の分類
(1)内容の瑕疵:行政行為の内容が不明確であること、内容に誤りがあること
(2)主体の瑕疵:権限を有しない主体が行政行為を行うこと

●● 最高裁判例「村長解職投票無効確認請求」(民集14巻13号2972頁)
【要旨】村長解職賛否投票の効力に関する訴は、右村が吸収合併によってなくなった後
    においては、その利益がなくなったものと解すべきである。
【理由】上告人は、本訴において賛否投票の無効が宣言されるときは、右判決の効力は
    既往に遡及し、後任村長の関与した村の奈良市への合併の効力にも影響を及ぼ
    す旨主張するけれども、たとえ賛否投票の効力の無効が宣言されても、賛否投
    票の有効なことを前提として、それまでの間になされた後任村長の行政処分は
    無効となるものではないと解すべきであるから、右上告人の主張は採用するこ
    とができない。

(3)手続の瑕疵
行政行為を行う場合に踏むべき手続がとられていないか、不十分な手続しかとられてい
ない場合

(4)判断過程の瑕疵:行政庁が錯誤によって行政行為を行った場合、詐欺により欺瞞
   されて行政行為を行った場合、権利が濫用された場合等


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 マガジンタイトル:新・行政書士試験 一発合格!
 発行者:行政書士 太田誠   東京都行政書士会所属(府中支部)
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