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【レジュメ編】 民法(その12)

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     ★★★ 新・行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-31 ★★
           【レジュメ編】 民法(その12)

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■■■ 民法 ■■■
■■■ お願い ■■■
■■■ 編集後記 ■■■

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行政法が連続10回続いたことから、今回は、民法の復習をかねて、最近の最高裁判決を
中心に眺めてみることにしました。そして、束の間の気分転換を図ってください。

【1】賃貸借契約終了時の賃借人の原状回復義務
■ 民法の規定
使用貸借の規定の準用
第六百十六条 第五百九十四条第一項、第五百九十七条第一項及び第五百九十八条の規
定は、賃貸借について準用する。

・借用物の返還の時期
第五百九十七条 借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。

・借主による収去
第五百九十八条 借主は、借用物を原状に復して、これに附属させた物を収去すること
ができる。

(1)「原状に復して」の内容
(ア)賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗
   (手垢の汚れ、畳の日焼けによる変色等)(これを「通常損耗」という。)は、
   賃貸人が負担すべきである。
   →「原状に復して」とは、賃借した物件を、契約締結時とまったく同じ状態(原
    状) に回復するということではなく、退去時に、経年変化等の通常損耗では
    なく、借主の故意・過失や通常の使用方法に反する使用等、賃借人の責任によ
    って生じた損耗やキズなどを復旧することをいう。
   ★ 解答編の関係図を参照のこと。
(イ)ただし、これと異なる通常損耗補修特約等の特約がある場合には、この限りでは
   ない。

●● 最高裁判例「敷金返還請求事件」(平成17年12月16日)
【裁判要旨】
賃借建物の通常の使用に伴い生ずる損耗について賃借人が原状回復義務を負う旨の特約
が成立していないとされた事例
【理由】
(ア)賃借人が賃貸借契約終了により負担する賃借物件の原状回復義務には、特約のな
   い限り、通常損耗に係るものは含まれず、その補修費用は、賃貸人が負担すべき
   であるが、これと異なる特約を設けることは、契約自由の原則から認められる。
(イ)賃借人は、賃貸借契約が終了した場合には、賃借物件を原状に回復して賃貸人に
   返還する義務があるところ、賃貸借契約は、賃借人による賃借物件の使用とその
   対価としての賃料の支払を内容とするものであり、賃借物件の損耗の発生は、賃
   貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。それゆえ、建物の賃
   貸借においては、賃借人が社会通念上通常の使用をした場合に生ずる賃借物件の
   劣化又は価値の減少を意味する通常損耗に係る投下資本の減価の回収は、通常、
   減価償却費や修繕費等の必要経費分を賃料の中に含ませてその支払を受けること
   により行われている。そうすると、建物の賃借人にその賃貸借において生ずる通
   常損耗についての原状回復義務を負わせるのは、賃借人に予期しない特別の負担
   を課すことになるから、賃借人に同義務が認められるためには、少なくとも、賃
   借人が補修費用を負担することになる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体
   に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃
   貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容と
   したものと認められるなど、その旨の特約(「通常損耗補修特約」という。)が
   明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である
   ★ 本件判決では、上告人(賃借人)は、「本件賃貸借契約を締結するに当た
     り、通常損耗補修特約を認識し、これを合意の内容としたものということは
     できないから、通常損耗補修特約の合意が成立しているということはできな
     いというべきである」と判示された。そして、原判決は破棄され、大阪高等
     裁判所に差し戻された。


☆☆ ところで、最高裁判所のホームページのアドレスが更新されています。詳しく
は、
http://www.courts.go.jp/ をご覧ください。また、判例検索システムも変更されてい
ます。詳しくは、ホームページ→裁判例情報→最高裁判所判例集からどうぞ。なお、
「各判例について」および「使い方」を事前に読んでおくと、便利です。


☆☆ こうした消費者に関する法的事案については、独立行政法人国民生活センターの
   情報が便利です。特に、実際に発生した事案に関する裁判による解決策が掲載さ
   れているので、「街の法律家」としての行政書士業務に関する情報収集にとても
   便利です。
詳しくは、ホームページ http://www.kokusen.go.jp/ncac_index.html からメニュー→
くらしの判例集でどうぞ。


【2】不法行為による損害賠償請求権の期間の制限
■ 民法の規定
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損
害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行
為の時から二十年を経過したときも、同様とする。

(1)「損害及び加害者を知った時」
●● 最高裁判例「損害賠償請求」(民集第27巻10号1374頁)
【裁判要旨】
被疑者として逮捕されている問に警察官から不法行為を受けた被害者が、当時加害者の
姓、職業、容貌を知つてはいたものの、その名や住所を知らず、引き続き身柄拘束のま
ま取調、起訴、有罪の裁判およびその執行を受け、釈放されたのちも判示の事情で加害
者の名や住所を知ることが困難であつたような場合には、その後、被害者において加害
者の氏名、住所を確認するに至つた時をもつて、民法七二四条にいう「加害者ヲ知りタ
ル時」というべきである。
【理由】
上告人(被害者)は、昭和一七年初め頃軍機保護法違反の容疑で逮捕され、大泊警察署
に留置されて取調中、同年四月一五日夜から翌一六日未明にかけて本件不法行為による
被害を受けたが、その当時加害者である上告人が「A」なる姓の同署警部補であること
およびその容貌を知つてはいたものの、その「A」の名と住所は知らず、逮捕後引き続
き身柄拘束のまま取調、起訴、有罪の裁判およびその執行を受け、昭和二〇年九月四日
頃終戦後の混乱の収まらない状況の中においてようやく釈放された。
その後、昭和三六年一一月八日頃、札幌法務局人権擁護部から、上告人が秋田県本荘市
から東京に移転したとの回答を受けたので、更に調査の結果、その頃東京における住所
を突きとめ、加害者本人に間違いないことを知つたというのであつて、被上告人は、こ
の時に加害者を知つたものというべく、それから三年以内である昭和三七年三月七日に
本訴を提起したものであるから、上告人主張の消滅時効は未だ完成していないとした原
審の判断は、正当である。
★ 本件は、戦争中に受けた拷問につき、加害者である警部補の姓を手掛かりに、長い
  年月を掛けてようやく本人を突き止め、加害行為後19年余り後になって、訴訟を提
  起した事案である。

●● 最高裁判例「損害賠償請求事件」(民集第56巻1号218頁)
【裁判要旨】
民法724条にいう被害者が損害を知った時とは、被害者が損害の発生を現実に認識した
時をいう。
【理由】
(ア)民法724条は、不法行為に基づく法律関係が、未知の当事者間に、予期しない
   事情に基づいて発生することがあることにかんがみ、被害者による損害賠償請求
   権の行使を念頭に置いて、消滅時効の起算点に関して特則を設けたのであるか
   ら、同条にいう「損害及ヒ加害者ヲ知リタル時」とは、被害者において、加害者
   に対する賠償請求が事実上可能な状況の下に、その可能な程度にこれらを知った
   時を意味するものと解するのが相当である。
(イ)民法724条の短期消滅時効の趣旨は、損害賠償の請求を受けるかどうか、いか
   なる範囲まで賠償義務を負うか等が不明である結果、極めて不安定な立場に置か
   れる加害者の法的地位を安定させ、加害者を保護することにあるが、それも、飽
   くまで被害者が不法行為による損害の発生及び加害者を現実に認識しながら3年
   間も放置していた場合に加害者の法的地位の安定を図ろうとしているものにすぎ
   ず、それ以上に加害者を保護しようという趣旨ではないというべきである。
   ★ 本件は、自己に関する新聞社の報道について、名誉毀損に基づく損害賠償
     求をした者が、記事掲載時から継続して拘留されていた場合の消滅時効の起
     算点についての事案である。

(2)消滅時効の起算点
●● 最高裁判例「損害賠償請求」(民集第21巻6号1559頁)
【裁判要旨】
不法行為によつて受傷した被害者が、その受傷について、相当期間経過後に、受傷当時
には医学的に通常予想しえなかつた治療が必要となり、右治療のため費用を支出するこ
とを余儀なくされるに至った等の事実関係のもとにおいては、後日その治療を受けるま
では、右治療に要した費用について民法第七二四条の消滅時効は進行しない。
【理由】
(ア)被害者が不法行為に基づく損害の発生を知つた以上、その損害と牽連一体をなす
   損害であつて当時においてその発生を予見することが可能であつたものについて
   は、すべて被害者においてその認識があつたものとして、民法七二四条所定の時
   効は前記損害の発生を知つた時から進行を始めるものと解すべきではあるが、本
   件の場合のように、受傷時から相当期間経過後に原判示の経緯で後遺症が現わ
   れ、そのため受傷時においては医学的にも通常予想しえなかつたような治療方法
   が必要とされ、右治療のため費用を支出することを余儀なくされるに至った等の
   事実関係のもとにおいては、後日その治療を受けるようになるまでは、右治療に
   要した費用すなわち損害については、同条所定の時効は進行しないものと解する
   のが相当である。
(イ)けだし、このように解しなければ、被害者としては、たとい不法行為による受傷
   の事実を知つたとしても、当時においては未だ必要性の判明しない治療のための
   費用について、これを損害としてその賠償を請求するに由なく、ために損害賠償
   請求権の行使が事実上不可能なうちにその消滅時効が開始することとなつて、時
   効の起算点に関する特則である民法七二四条を設けた趣旨に反する結果を招来す
   るにいたるからである。
   ★ 損害発生時には予想し得なかった後遺症等が生じた場合には、当初の損害に
     対する判決確定後であっても、治療費等の損害を請求することができ、その
     部分については時効も別個に進行する。

●● 最高裁判例「損害賠償」(民集第48巻2号441頁)
【裁判要旨】
雇用者の安全配慮義務違反によりじん肺にかかったことを理由とする損害賠償請求権の
消滅時効は、じん肺法所定の管理区分についての最終の行政上の決定を受けた時から進
行する。
【理由】
(ア)じん肺による病変は不可逆的であり、現在の医学では治療は不可能である。ま
   た、肺内に粉じんが存在する限り右反応が継続するところ、肺の線維増殖性変化
   は、粉じんの量に対応する進行であり、無限の進行ではないが、気管支変化、肺
   気腫は進行し続ける。そのため、粉じんを発散する職場を離れた後、長年月を経
   て初めてじん肺の所見が発現することも少なくない。
(イ)重い決定に相当する病状に基づく損害は、その決定を受けた時に発生し、その時
   点からその損害賠償請求権を行使することが法律上可能となるものというべきで
   あり、最初の軽い行政上の決定を受けた時点で、その後の重い決定に相当する病
   状に基づく損害を含む全損害が発生していたとみることは、じん肺という疾病の
   実態に反するものとして是認し得ない。これを要するに、雇用者の安全配慮義務
   違反によりじん肺に罹患したことを理由とする損害賠償請求権の消滅時効は、最
   終の行政上の決定を受けた時から進行するものと解するのが相当である。
   ★ じん肺は、相当の年限が経過してから発病し、かつ、当初の行政のじん肺の
     決定後に病状が悪化し、より重い決定を受けることがある。こうした場合の
     消滅時効の起算点に関する判例である。

(3)除斥期間
●● 最高裁判例「国家賠償」(民集第43巻12号2209頁)
【裁判要旨】
民法七二四条後段の規定は、不法行為による損害賠償請求権の除斥期間を定めたもので
ある

●● 最高裁判例「損害賠償請求事件(通称三井鉱山じん肺)」(民集第58巻4号1032
   頁)
【裁判要旨】
民法724条後段所定の除斥期間は、不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が
終了してから相当の期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部又は
一部が発生した時から進行する。
【理由】
(ア)民法724条後段所定の除斥期間の起算点は、「不法行為ノ時」と規定されてお
   り、加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には、加害行為の時
   がその起算点となると考えられる。
   しかし、身体に蓄積した場合に人の健康を害することとなる物質による損害や、
   一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる損害のように、当該不法行為により
   発生する損害の性質上、加害行為が終了してから相当の期間が経過した後に損害
   が発生する場合には、当該損害の全部又は一部が発生した時が除斥期間の起算点
   となると解すべきである。なぜなら、このような場合に損害の発生を待たずに除
   斥期間の進行を認めることは、被害者にとって著しく酷であるし、また、加害者
   としても、自己の行為により生じ得る損害の性質からみて、相当の期間が経過し
   た後に被害者が現れて、損害賠償の請求を受けることを予期すべきであると考え
   られるからである。
(イ)これを本件についてみるに、じん肺は、肺胞内に取り込まれた粉じんが、長期間
   にわたり線維増殖性変化を進行させ、じん肺結節等の病変を生じさせるものであ
   って、粉じんへの暴露が終わった後、相当長期間経過後に発症することも少なく
   ないのであるから、じん肺被害を理由とする損害賠償請求権については、その損
   害発生の時が除斥期間の起算点となるというべきである。これと同旨の原審の判
   断は、正当として是認することができる。

●● 最高裁判例「損害賠償請求事件」(平成18年06月16日)
【裁判要旨】
乳幼児期に受けた集団予防接種等によってB型肝炎ウイルスに感染しB型肝炎を発症し
たことによる損害につきB型肝炎を発症した時が民法724条後段所定の除斥期間の起
算点となるとされた事例
【理由】
(ア)本件集団予防接種等は、被告の伝染病予防行政の重要な施策として、被告からの
   細部にまでわたる指導に基づいて、各自治体により実施されたことが明らかであ
   り、本件集団予防接種等が強制接種であったか勧奨接種であったかにかかわら
   ず、被告の伝染病予防行政上の公権力の行使に当たるから、被告は、本件集団予
   防接種等によって生じた損害について、国家賠償法1条1項に基づく賠償責任を
   負う。
(イ)民法724条後段は、期間20年間の除斥期間を定めたものと解される。原告ら
   については、B型肝炎ウイルスに感染した接種行為を特定することはできないと
   ころ、本件のようにいずれも乳幼児期に接種され、かつ、その最初から最後まで
   のいずれについても感染の可能性が肯定され得る場合には、その最後の接種の時
   を除斥期間の始期とするのが相当である。
(ウ)訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、
   経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した
   関係を是認し得る高度の蓋然性を証明することであり、その判定は、通常人が疑
   いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ち得るものであることを必要とし、か
   つ、それで足りるものと解すべきである。
(エ)民法724条後段所定の除斥期間の起算点は、「不法行為の時」と規定されてお
   り、加害行為が行われた時に損害が発生する不法行為の場合には、加害行為の時
   がその起算点となると考えられる。しかし、身体に蓄積する物質が原因で人の健
   康が害されることによる損害や、一定の潜伏期間が経過した後に症状が現れる疾
   病による損害のように、当該不法行為により発生する損害の性質上、加害行為が
   終了してから相当期間が経過した後に損害が発生する場合には、当該損害の全部
   又は一部が発生した時が除斥期間の起算点となると解すべきである。
   ★ この17日付新聞各紙に大きく報道された事案です。


■■■ お願い  ■■■ 
継続して発刊するためには読者の皆様のご支援が何よりの活力になります。ご意見、ア
ドバイス、ご批判その他何でも結構です。内容、頻度、対象の追加や変更等について
も、どうぞ何なりと e-mail@ohta-shoshi.com までお寄せください。

質問は、このメールマガジンの趣旨の範囲内のものであれば、大歓迎です。ただし、多
少時間を要する場合があります。


■■■ 編集後記  ■■■
今回は、判決の趣旨や理由を理解して頂くため、少々長い「理由」を付記しました。こ
うした(やや難解で、法律用語に充ちた)長文に今の段階から慣れておくことは、行政
書士試験対策のみならず、行政書士の実務においても、有益であると思います。分かり
にくい場合には、何度も繰り返して読んでください。

最近『ドキュメント裁判官 人が人をどう裁くのか』(読売新聞社会部著、中公新書)
を読みました。平成14年12月に刊行されていますが、裁判官の考え方等が分かり、興味
深い本でした。行政書士試験の受験生であれば、誰でも知っているような著名裁判の背
景についても知ることができ、また、新しい判決の流れを感じることができ(今回取上
げた除斥期間についても触れられています。)、気分転換にぜひお勧めしたいと思いま
す。

次回から、行政法が再開します。国家賠償法、損失補償法、情報公開法、個人情報保護
法と続く予定です。


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 マガジンタイトル:新・行政書士試験 一発合格!
 発行者:行政書士 太田誠   東京都行政書士会所属(府中支部)
 発行者Web:http://www.ohta-shoshi.com
 発行者メールアドレス:e-mail@ohta-shoshi.com
 発行協力「まぐまぐ」:http://www.mag2.com/
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