2026年4月22日号 (no. 1233)
3分労働ぷちコラム バックナンバーはこちら
(
https://www.soumunomori.com/profile/uid-20903/)
採用後に日常業務を
OJTで教えるだけでは足りないものとは?
■日常業務にプラスして教える必要があることは?
人を
採用した後は、仕事のやり方を教えていくのでしょうけれども、職場では「雇入れ時の教育」というものがあります。
労働安全衛生法59条に基づいて実施する
安全衛生教育です。
短時間で働くパートタイマーや学生の方に対して、この雇入れ時の教育が行われていない場合がありますので、
労働基準監督署の調査で不備を指摘されやすいところ。
雇入れ時の教育がどのようなものか。
世間のイメージだと、入社した人に、仕事のやり方を普段通りにどうやってやっていくかを教えていく。
そういうものだと、ぼんやりとイメージしている方もいらっしゃるのでは。
日常業務ができればそれでいいんだ。 確かにそれで当面は間に合うのでしょうけれども。
安全や衛生に関して配慮して働ける、きちんと職場だと判断してもらうには、
労働安全衛生法で求められる雇入れ時の教育が必要です。
■
OJTで教えた内容は記録に残らない
入社した新入社員の人に、上司や同僚の人が仕事を教えていくとなると、特に何か基準のようなものはなく、教える側の気分や雰囲気によって教える内容が決まることも。
それだと教える内容に差が出てきますし、先日教えたことをまた伝えてしまうとか。伝えておかなければいけない、教えておかなければいけないことを忘れてしまう。
雇い入れ時の教育を何らかの基準なくやってしまうと、人によって差が出てしまって、
労働安全衛生法で必要な雇入れ時の教育になっていないということもあります。
入社時の教育をしたかどうか、いつどのような教育をしたのか、という記録を残していないものですから、記録が残っていないということは、雇入れ時の教育をやっていないと判断されてしまいます。
雇入れ時の教育の未実施や不十分が多いのは、原因は「
OJT頼み+記録不足」です。
労働契約法5条には、
使用者の
安全配慮義務違反がありますので、雇入れ時の
安全衛生教育が未実施や不十分だと、その違反となります。
■雇入れ時の教育といっても、具体的に何をするの?
労働安全衛生規則の35条に実施内容が定められていますので、これ基づいた内容でチェックリストを作ります。
リストを一つ一つ確認しながら教えていき、チェックリストの最後のところに実施者と受講者の名前を書いてもらう。
その記録を
事業者は保存しておく。
この手順できちんと安全衛生に関する雇入れ時の教育をやったと第三者に示すことができます。
労働安全衛生規則35条では、8項目、雇入れ時の教育で実施する内容が記載されています。
■雇入れ時の
安全衛生教育で実施する8項目とは?
1:機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
機械や材料の危険性、取り扱いですから、例えば、工作機械だと、作業用の機械をどのように操作するのか、安全な操作方法、こういう操作をすると危ないという内容。
他には、調理器具の使い方。刃物類の取り扱いならば、刃物の置き方、収納場所を決める。
毒性のある液体の取り扱いで、保護具をどう使うか、どこに置いているか。
職場によって個々の具体的内容は変わりますので、普段の業務からチェックリストに入れる内容を決めます。
過去に機械に挟まれて怪我をした。このような事例が職場にあったとすれば、それを伝えると説得力があります。その職場で実際に起こったことですから。
2 :安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。
保護メガネや手袋を使って作業をする。
トラブルが起こった時に、すぐに止めることができる安全装置の操作方法。
安全用のハーネス、ヘルメット、ロープの取り扱い。
安全用の道具をどこに置いているか、使い終わった後はどのように収納するのか。
3: 作業手順に関すること。
作業手順というと、仕事のやり方でしょうから、ここはどこの職場でも教えてるところ。
担当作業の流れを説明する。
作業開始・終了時の確認事項。
立入禁止区域
単独作業の可否(1人だと緊急対応できない業務のとき)
緊急時の停止方法(2と重複することも)
4:作業開始時の点検に関すること。
作業を始める際の点検ですから、作業に必要なものが揃っているか。
普段と変わったところがないか。毎日確認する箇所。
5:当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。
作業することによって怪我や病気になる可能性について説明して、それを防止するために、この職場ではこういうことをやります、といった職場ごとの内容をチェックリストに。
6:整理、整頓及び清潔の保持に関すること。
作業場の道具を収納する場所、方法。
不要になったものを整理するための基準。
更衣室を清潔に保つ清掃。
7:事故時等における応急措置及び退避に関すること。
避難訓練の実施時期。
床に油がこぼれた時の対処方法。
AEDを設置している場所。
事故発生時の連絡先。
初期対応(応急処置・報告手順)の内容。
職場の近くの病院の連絡先を掲示している場所
消化器 がどこに設置されているのか。
8 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項
他の7項目以外の事柄で、安全や衛生に関わる内容が他にあればここでリストに加えます。
飲食だと、包丁・火気・油跳ね、油で床がヌルヌルして滑って点灯する可能性、熱いお湯で火傷する可能性。
運送業ならば、バック事故・荷崩れ 荷卸しする時の扉の開閉によって指が挟まれる。
建設業は、墜落・足場での移動、動いている重機の後ろに立つことでの接触事故。
上記8項目の内容は、職場ごと、業種ごと、それぞれの担当ごとによって違いますから、普段の仕事で安全や衛生に関わると判断した事柄をチェックリストに加えて、雇入れ時の教育で伝える。
チェックが終わった後に、教育者と受講者の名前を書いてもらって、記録として残しておく。
8項目を見出しにして、それぞれに具体的な教育内容を職場ごとに決めて、雇入れ時に実施します。
見出しから推測される内容でチェックリストを作ります。
左側にチェックボックスを置いておき、ペンでチェックしながら教えることができます。
チェック用紙の最後に、教育者と受講者の名前を書いてもらう欄を作って、「
労働安全衛生法に基づく雇入れ時の教育を受講しました」、との記載をチェック用紙に入れておくといいですね。
■気持ちや感情で働く職場を選ぶ
チェックリストを作っておいて、これを見ながら、漏れがないように雇い入れ時の教育、
労働安全衛生規則35条の内容を実施します。
チェックリストを見ながら実施できるので、教える方も、教えられる方も取り組みやすいです。
何も手順が定まっていないところで、人に教えるのは負担ですからね。
雇い入れ時の
安全衛生教育がきちんとされている職場だと、入ってきた人にはイメージが良くなります。
すでに働いている人たちにとっても、ちゃんとしている職場なんだなと再認識してもらえます。
人の気持ちで職場に対する評価は決まるものですから、安全や衛生に関する教育をちゃんとやってる職場だなと感じてもらえると、職場に対する評価が上がります。
新たにそこで働きたいと思ってくれる人が増えて、すでに働いてくれる人も働き続けたいと思ってくれるようになります。
いかに人の気持ちにあった職場にしていくか。そのための工夫を続けるのが面白いところですね。
■救急救命講習を受けるのも安全教育になる
休みの日に、消防署などで実施される救急救命講習を2年ごとに1回受講すると、2000円の手当を支払う。
これも安全教育の一環として位置づけられますよね。
その救命救急講習を受けた人が、もしどこかで誰かを助けるような場面になったとしたら、そのような講習を受講することを推奨している職場の評価もプラスになります。
■雇入れた後も継続的に安全衛生に関する教育を続けることができる
労働安全衛生規則35条では、雇い入れ時の教育について定めをしていますが、雇入れ後の安全衛生の教育については書かれていません。
そのため、雇入れ後の継続した
安全衛生教育は、各事業所ごとに自主的に実施していく仕組みが必要です。
例えば、朝礼の時に、3分、安全や衛生に関する話を入れる。
消火器の使い方を話してみる。ガス調理器具が減って、IHで調理する家庭が増えてきたので、なかなか消化器を使う場面に遭遇しないのですけれども、職場に置いている消火器をどのように使ったらいいのか、どういう時に躊躇なく使っていいのかを安全教育として伝えます。
そういったことをさりげなく朝礼で数分間話す。これも安全教育です。
話した後は、きちんといつどのような安全教育をしたのか記録に残しておきます。言うだけではなく、安全教育の記録も大事。
消毒の仕方でも、アルコールの消毒剤と次亜塩素酸ナトリウムの消毒剤では役割が違います。
消毒と言うとアルコールタイプのものをイメージしやすいのですけれども、冬の時期に流行する感染性胃腸炎に効果があるのは次亜塩素酸ナトリウム。そのスプレーを使って、手が触れるところやトイレ周りを除菌するというのが効果があります。
このような消毒剤の話は、衛生教育として記録できます。
普段の日常業務の中で、探すと安全や衛生に関する事柄があります。それを
安全衛生教育の具体的な内容として入れる。
法律に基づいて行うというと、難しそうなイメージがありますけれども、具体的な内容は普段からやれそうなことが多々あります。
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採用後に日常業務をOJTで教えるだけでは足りないものとは?
■日常業務にプラスして教える必要があることは?
人を採用した後は、仕事のやり方を教えていくのでしょうけれども、職場では「雇入れ時の教育」というものがあります。
労働安全衛生法59条に基づいて実施する安全衛生教育です。
短時間で働くパートタイマーや学生の方に対して、この雇入れ時の教育が行われていない場合がありますので、労働基準監督署の調査で不備を指摘されやすいところ。
雇入れ時の教育がどのようなものか。
世間のイメージだと、入社した人に、仕事のやり方を普段通りにどうやってやっていくかを教えていく。
そういうものだと、ぼんやりとイメージしている方もいらっしゃるのでは。
日常業務ができればそれでいいんだ。 確かにそれで当面は間に合うのでしょうけれども。
安全や衛生に関して配慮して働ける、きちんと職場だと判断してもらうには、労働安全衛生法で求められる雇入れ時の教育が必要です。
■OJTで教えた内容は記録に残らない
入社した新入社員の人に、上司や同僚の人が仕事を教えていくとなると、特に何か基準のようなものはなく、教える側の気分や雰囲気によって教える内容が決まることも。
それだと教える内容に差が出てきますし、先日教えたことをまた伝えてしまうとか。伝えておかなければいけない、教えておかなければいけないことを忘れてしまう。
雇い入れ時の教育を何らかの基準なくやってしまうと、人によって差が出てしまって、労働安全衛生法で必要な雇入れ時の教育になっていないということもあります。
入社時の教育をしたかどうか、いつどのような教育をしたのか、という記録を残していないものですから、記録が残っていないということは、雇入れ時の教育をやっていないと判断されてしまいます。
雇入れ時の教育の未実施や不十分が多いのは、原因は「OJT頼み+記録不足」です。
労働契約法5条には、使用者の安全配慮義務違反がありますので、雇入れ時の安全衛生教育が未実施や不十分だと、その違反となります。
■雇入れ時の教育といっても、具体的に何をするの?
労働安全衛生規則の35条に実施内容が定められていますので、これ基づいた内容でチェックリストを作ります。
リストを一つ一つ確認しながら教えていき、チェックリストの最後のところに実施者と受講者の名前を書いてもらう。
その記録を事業者は保存しておく。
この手順できちんと安全衛生に関する雇入れ時の教育をやったと第三者に示すことができます。
労働安全衛生規則35条では、8項目、雇入れ時の教育で実施する内容が記載されています。
■雇入れ時の安全衛生教育で実施する8項目とは?
1:機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
機械や材料の危険性、取り扱いですから、例えば、工作機械だと、作業用の機械をどのように操作するのか、安全な操作方法、こういう操作をすると危ないという内容。
他には、調理器具の使い方。刃物類の取り扱いならば、刃物の置き方、収納場所を決める。
毒性のある液体の取り扱いで、保護具をどう使うか、どこに置いているか。
職場によって個々の具体的内容は変わりますので、普段の業務からチェックリストに入れる内容を決めます。
過去に機械に挟まれて怪我をした。このような事例が職場にあったとすれば、それを伝えると説得力があります。その職場で実際に起こったことですから。
2 :安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。
保護メガネや手袋を使って作業をする。
トラブルが起こった時に、すぐに止めることができる安全装置の操作方法。
安全用のハーネス、ヘルメット、ロープの取り扱い。
安全用の道具をどこに置いているか、使い終わった後はどのように収納するのか。
3: 作業手順に関すること。
作業手順というと、仕事のやり方でしょうから、ここはどこの職場でも教えてるところ。
担当作業の流れを説明する。
作業開始・終了時の確認事項。
立入禁止区域
単独作業の可否(1人だと緊急対応できない業務のとき)
緊急時の停止方法(2と重複することも)
4:作業開始時の点検に関すること。
作業を始める際の点検ですから、作業に必要なものが揃っているか。
普段と変わったところがないか。毎日確認する箇所。
5:当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。
作業することによって怪我や病気になる可能性について説明して、それを防止するために、この職場ではこういうことをやります、といった職場ごとの内容をチェックリストに。
6:整理、整頓及び清潔の保持に関すること。
作業場の道具を収納する場所、方法。
不要になったものを整理するための基準。
更衣室を清潔に保つ清掃。
7:事故時等における応急措置及び退避に関すること。
避難訓練の実施時期。
床に油がこぼれた時の対処方法。
AEDを設置している場所。
事故発生時の連絡先。
初期対応(応急処置・報告手順)の内容。
職場の近くの病院の連絡先を掲示している場所
消化器 がどこに設置されているのか。
8 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項
他の7項目以外の事柄で、安全や衛生に関わる内容が他にあればここでリストに加えます。
飲食だと、包丁・火気・油跳ね、油で床がヌルヌルして滑って点灯する可能性、熱いお湯で火傷する可能性。
運送業ならば、バック事故・荷崩れ 荷卸しする時の扉の開閉によって指が挟まれる。
建設業は、墜落・足場での移動、動いている重機の後ろに立つことでの接触事故。
上記8項目の内容は、職場ごと、業種ごと、それぞれの担当ごとによって違いますから、普段の仕事で安全や衛生に関わると判断した事柄をチェックリストに加えて、雇入れ時の教育で伝える。
チェックが終わった後に、教育者と受講者の名前を書いてもらって、記録として残しておく。
8項目を見出しにして、それぞれに具体的な教育内容を職場ごとに決めて、雇入れ時に実施します。
見出しから推測される内容でチェックリストを作ります。
左側にチェックボックスを置いておき、ペンでチェックしながら教えることができます。
チェック用紙の最後に、教育者と受講者の名前を書いてもらう欄を作って、「労働安全衛生法に基づく雇入れ時の教育を受講しました」、との記載をチェック用紙に入れておくといいですね。
■気持ちや感情で働く職場を選ぶ
チェックリストを作っておいて、これを見ながら、漏れがないように雇い入れ時の教育、労働安全衛生規則35条の内容を実施します。
チェックリストを見ながら実施できるので、教える方も、教えられる方も取り組みやすいです。
何も手順が定まっていないところで、人に教えるのは負担ですからね。
雇い入れ時の安全衛生教育がきちんとされている職場だと、入ってきた人にはイメージが良くなります。
すでに働いている人たちにとっても、ちゃんとしている職場なんだなと再認識してもらえます。
人の気持ちで職場に対する評価は決まるものですから、安全や衛生に関する教育をちゃんとやってる職場だなと感じてもらえると、職場に対する評価が上がります。
新たにそこで働きたいと思ってくれる人が増えて、すでに働いてくれる人も働き続けたいと思ってくれるようになります。
いかに人の気持ちにあった職場にしていくか。そのための工夫を続けるのが面白いところですね。
■救急救命講習を受けるのも安全教育になる
休みの日に、消防署などで実施される救急救命講習を2年ごとに1回受講すると、2000円の手当を支払う。
これも安全教育の一環として位置づけられますよね。
その救命救急講習を受けた人が、もしどこかで誰かを助けるような場面になったとしたら、そのような講習を受講することを推奨している職場の評価もプラスになります。
■雇入れた後も継続的に安全衛生に関する教育を続けることができる
労働安全衛生規則35条では、雇い入れ時の教育について定めをしていますが、雇入れ後の安全衛生の教育については書かれていません。
そのため、雇入れ後の継続した安全衛生教育は、各事業所ごとに自主的に実施していく仕組みが必要です。
例えば、朝礼の時に、3分、安全や衛生に関する話を入れる。
消火器の使い方を話してみる。ガス調理器具が減って、IHで調理する家庭が増えてきたので、なかなか消化器を使う場面に遭遇しないのですけれども、職場に置いている消火器をどのように使ったらいいのか、どういう時に躊躇なく使っていいのかを安全教育として伝えます。
そういったことをさりげなく朝礼で数分間話す。これも安全教育です。
話した後は、きちんといつどのような安全教育をしたのか記録に残しておきます。言うだけではなく、安全教育の記録も大事。
消毒の仕方でも、アルコールの消毒剤と次亜塩素酸ナトリウムの消毒剤では役割が違います。
消毒と言うとアルコールタイプのものをイメージしやすいのですけれども、冬の時期に流行する感染性胃腸炎に効果があるのは次亜塩素酸ナトリウム。そのスプレーを使って、手が触れるところやトイレ周りを除菌するというのが効果があります。
このような消毒剤の話は、衛生教育として記録できます。
普段の日常業務の中で、探すと安全や衛生に関する事柄があります。それを安全衛生教育の具体的な内容として入れる。
法律に基づいて行うというと、難しそうなイメージがありますけれども、具体的な内容は普段からやれそうなことが多々あります。
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