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映画の著作物の保護期間とパブリックドメイン

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報

石下雅樹法律・特許事務所 第28号 2007-09-30
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お詫びとご挨拶
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本メールマガジンのご愛読誠にありがとうございます。発行者
の都合(多忙等)により,1年余り発行が中断しておりました
が,この度再開の運びとなりました。皆様にご迷惑をおかけし
たことをお詫びするとともに,今後ともよろしくお願いいたし
ます。

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映画の著作物の保護期間とパブリックドメイン
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平成19年8月29日 東京地裁判決

チャールズ・チャップリンの映画9作品の著作権を保有管理す
ると主張するリヒテンシュタイン公国の法人が,格安DVDの
製作・販売事業者に対し,DVDの複製・頒布の差止,在庫D
VDの廃棄,損害賠償を求めた事案です。

対象となった作品は以下のものでした。

「サニーサイド」(1919年公開)
「偽牧師」(1923年公開)
「巴里の女性」(1923年公開)
「黄金狂時代」(1923年公開)
「街の灯」(1931年公開)
「モダン・タイムス」(1936年公開)
「独裁者」(1940年公開)
「殺人狂時代」(1947年公開)
「ライムライト」(1952年公開)

争点は,これらの映画の著作権の存続期間でした。
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2 判決の概要
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【結論】
原告側の差止・損害賠償請求が認容されました。

裁判所が認定した各作品の著作権の存続期間は以下のとおりで
す。

           公開      存続期間
「サニーサイド」  1919年 2015年12月31日
「偽牧師」     1923年 2015年12月31日 
「巴里の女性」   1923年 2015年12月31日
「黄金狂時代」   1923年 2015年12月31日
「街の灯」     1931年 2015年12月31日
「モダン・タイムス」1936年 2015年12月31日
「独裁者」     1940年 2015年12月31日
「殺人狂時代」   1947年 2017年12月31日
「ライムライト」  1952年 2022年12月31日

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3 解説
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【古い映画作品の著作権の存続期間】
映画の著作権は公表後50年で消滅していました(平成15年改
正前著作権法54条1項)。平成15年改正によって保護期間が
延長されましたが,1953年以前の作品は保護期間の延長の適
がなく,すでに著作権は消滅しているという解釈がなされていま
した。

実際「ローマの休日」などの1953年作品がこの保護期間の延
長を受けるか否かが争われ,映画の著作権者側が敗訴した事件は
記憶に新しいところです。

本件の9作品は,1952年という一番遅い公開「ライムライト」
も2002年に権利が消滅しているという解釈も成り立ちうるも
のであり,被告もこれに基づき,DVDの販売を行なっていまし
た。

【本件での判断の手法~なぜ古い作品の存続期間が延びたのか】
ところが,本件では,原告は,著作者の認定の問題を取り上げて,
著作権の存続期間の再構成を図りました。以下,やや複雑な法適
用の問題ですがご勘弁ください。

簡単にまとめると,著作権の存続期間の認定過程は,以下のとお
りです。

1)チャップリンが著作者であると認定(*1)

2)旧法と現行法の適用結果の比較

 旧著作権法(*2)           |平成15年改正前法
  ↓                |    ↓
 著作者の生存間及びその死後38年間 |公表後50年
  ↓                |    ↓
 チャップリン没後38年の2015年 |遅くとも2002年

 著作権法附則第7条(*3)により,長い方を適用→2015年

3)平成15年改正後著作権法54条1項の適用(*4)
   ↓
  公表後70年経過した期間が2015年より長い場合,そち
  らを適用→「殺人狂時代」「ライムライト」についてはさら
  に延長

(*1)本件では,クレジットの表示や,映画作品の全体的形成への
関与から,チャップリン個人が著作者であることが明らかとされ
ました。

(*2)旧法3条及び52条1項は,当該著作物の著作権存続期間に
ついて,著作者の生存間及びその死後38年間と定めていました。
そして,昭和46年改正前の著作権法では,映画の著作物の著作
権存続期間について「旧法22条ノ3により,活動写真術又はこ
れと類似の方法により製作した著作物として,独創性を有するも
のについては,旧法3条ないし6条及び9条の規定が適用され」
るとされていました。

(*3)著作権法附則第7条は,「この法律の施行前に公表された著
作物の著作権の存続期間については,当該著作物の旧法による著
作権の存続期間が新法第2章第4節の規定による期間より長いと
きは,なお従前の例による。」としていました。

(*4)平成15年改正法が施行された平成16年1月1日において
著作権が存する著作物には,著作権法附則2条によって平成15
年改正後著作権法54条1項が適用され,存続期間は「公表後7
0年」となります。


【ビジネス上の留意点】

裁判所は,格安DVD販売業者の過失の有無を認定する部分で
「パブリックドメインとなった映画の複製,頒布を業として行っ
ている……事業を行う者としては,自らが取り扱う映画の著作権
の存続期間が満了したものであるかについて,十分調査する義務
を負っているものと解するのが相当であるところ,……被告らは,
そのような調査をせず,本件9作品の著作権の存続期間が満了し
たものと軽信し,本件商品及DVD等……の複製及び頒布を行っ
たものと認められ」としました。

本判例は,単に古い作品だからといって映画作品を商品化するこ
とのリスクを明らかにしました。保護期間を終えた著作物を利用
しようとする際には,単なる公表年だけの調査では足りない場合
があるということになります。この点,何にせよ知的財産権等が
からむ問題では,場合によっては専門家の手を借りるなどした十
分な調査が必要となるでしょう。

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