◆事例:
退職金制度の改定-2
当社は
退職金を
適格退職年金で運用しています。今後この制度が廃止される
ようですが、
退職金は継続したいので、いわゆる401Kに移行した方が良いので
しょうか。
◇回答----------------------------------------------------------------
401K(
確定拠出年金)は会社の拠出額が決まっているメリットはありますが、
運用に大変な手間やコストがかかり、小規模企業には不適です。一定規模以下
の場合、最も手っ取り早いのは中退共です。コストも少なくて済み、国からの
助成もあります。いずれにせよ
適格退職年金からの何らかの制度への移行は至
上命題です。
■解説----------------------------------------------------------------
適格退職年金は主に中小規模の企業で
採用している
企業年金制度であり、生
命保険会社や信託銀行が資金の管理、運用を行っています。この制度は正式に
は「税制適格年金」と称され、年金が主目的ではなく、税法上企業が支払う拠
出金を
損金算入できるというだけの制度です。しかも本来は年金支給が原則で
すが一時金を選択できるので、実質的には
退職金として運用されているのが一
般的です。
なお、これに対比される代表的な制度として「
厚生年金基金」があります。
比較的大規模の企業で多く
採用されており、これは
厚生年金保険法に基づき設
立された、れっきとした事業体の扱いを受けます。
ところで、適格年金等には積立不足という重大な課題が存在します。
これらの制度は、将来の
退職金に充てるための原資を毎月拠出しますが、退
職金全額を拠出するわけではありません。拠出した額に金利が付くものとして
制度全体を設計しています。例えば、銀行の1年満期で12万円戻る積立貯蓄は、
毎月1万円未満を払い込むのと同じ理屈です。
この金利は予定利率と言い、過去の金利の高い時代に定めたため少し前まで
は5.5%という高率になっていました。もちろん今でもこの率で制度設計してい
る企業も多く存在します。
ところが現在のゼロ金利のもとでは、お金をいくら運用してもこんな
利息は
付きません。しかも制度上、ヤバい運用は禁止されているので、株式投資が精
一杯です。
結局、予定した運用実績が伴わず積立不足に陥ります。少なくとも5年毎に
行われる
財政再計算において積立不足分を上乗せした新たな拠出金が決定され
ます。この中身には運用不足だけでなく、過去勤務
債務(PSL)という部分
も含まれ、予定利率と運用実績の差の累計が過去の入社時点に遡って再計算さ
れるため、会社としては長期にわたり予想外の出費が続くこととなります。
この解消法としては、予定利率を実際の運用利率に合わせれば一発で済みま
すが、この方法がとれないところに悩みがあります。なぜなら、そうすると積
立額が大幅に圧縮されてしまい、将来の
退職金(年金)の原資が不足するから
です。ならば
退職金もダウンさせればいいのでしょうが、
退職金も
賃金の範疇
であり基準法上、勝手に引き下げることはできません。結局、その差額は会社
が負担するハメになります。とどのつまりは、今負担するか、将来負担するか
の違いと言えます。
いずれにせよ適格年金は廃止される運命なので、別な制度へ移行するか、い
っそのこと
退職金を一括して支払い、
退職金制度そのものを廃止することを検
討する時期にきています。
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http://blog.mag2.com/m/log/0000102365
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◆事例:退職金制度の改定-2
当社は退職金を適格退職年金で運用しています。今後この制度が廃止される
ようですが、退職金は継続したいので、いわゆる401Kに移行した方が良いので
しょうか。
◇回答----------------------------------------------------------------
401K(確定拠出年金)は会社の拠出額が決まっているメリットはありますが、
運用に大変な手間やコストがかかり、小規模企業には不適です。一定規模以下
の場合、最も手っ取り早いのは中退共です。コストも少なくて済み、国からの
助成もあります。いずれにせよ適格退職年金からの何らかの制度への移行は至
上命題です。
■解説----------------------------------------------------------------
適格退職年金は主に中小規模の企業で採用している企業年金制度であり、生
命保険会社や信託銀行が資金の管理、運用を行っています。この制度は正式に
は「税制適格年金」と称され、年金が主目的ではなく、税法上企業が支払う拠
出金を損金算入できるというだけの制度です。しかも本来は年金支給が原則で
すが一時金を選択できるので、実質的には退職金として運用されているのが一
般的です。
なお、これに対比される代表的な制度として「厚生年金基金」があります。
比較的大規模の企業で多く採用されており、これは厚生年金保険法に基づき設
立された、れっきとした事業体の扱いを受けます。
ところで、適格年金等には積立不足という重大な課題が存在します。
これらの制度は、将来の退職金に充てるための原資を毎月拠出しますが、退
職金全額を拠出するわけではありません。拠出した額に金利が付くものとして
制度全体を設計しています。例えば、銀行の1年満期で12万円戻る積立貯蓄は、
毎月1万円未満を払い込むのと同じ理屈です。
この金利は予定利率と言い、過去の金利の高い時代に定めたため少し前まで
は5.5%という高率になっていました。もちろん今でもこの率で制度設計してい
る企業も多く存在します。
ところが現在のゼロ金利のもとでは、お金をいくら運用してもこんな利息は
付きません。しかも制度上、ヤバい運用は禁止されているので、株式投資が精
一杯です。
結局、予定した運用実績が伴わず積立不足に陥ります。少なくとも5年毎に
行われる財政再計算において積立不足分を上乗せした新たな拠出金が決定され
ます。この中身には運用不足だけでなく、過去勤務債務(PSL)という部分
も含まれ、予定利率と運用実績の差の累計が過去の入社時点に遡って再計算さ
れるため、会社としては長期にわたり予想外の出費が続くこととなります。
この解消法としては、予定利率を実際の運用利率に合わせれば一発で済みま
すが、この方法がとれないところに悩みがあります。なぜなら、そうすると積
立額が大幅に圧縮されてしまい、将来の退職金(年金)の原資が不足するから
です。ならば退職金もダウンさせればいいのでしょうが、退職金も賃金の範疇
であり基準法上、勝手に引き下げることはできません。結局、その差額は会社
が負担するハメになります。とどのつまりは、今負担するか、将来負担するか
の違いと言えます。
いずれにせよ適格年金は廃止される運命なので、別な制度へ移行するか、い
っそのこと退職金を一括して支払い、退職金制度そのものを廃止することを検
討する時期にきています。
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