◆事例:
退職金制度の改定-3
適格退職年金からの移行にあたり種々の制度があるようですが、どれに移行
したらいいのでしょうか。
◇回答----------------------------------------------------------------
企業規模や業績見込みにより方向性は異なってきます。
退職給付制度を存続
させる場合、一定規模以下の中小企業であれば、まず中退共への移行がベター
です。その間に制度そのものをどうするかを考えることとなるでしょう。
■解説----------------------------------------------------------------
適格退職年金制度は平成24年3月末で否応なしに廃止されます。現在はそ
の移行期間となっており、それまでに
退職給付をやめてしまうか又は
退職給付
は残すものの他の制度への移行をするかの選択をしなければなりません。
また、
適格退職年金の問題点は前回述べたような積立不足の他、高齢者の増
加に伴う
退職給付額の増加、年功制による制度の硬直化等の制度内部の問題も
山積しており、早急に別な制度への検討をしなければなりません。
その中で、検討の方向としては二つあります。
一つは
退職給付そのものを完全に廃止してしまうことです。これにより、既
に確定している
退職金等の額は保障しなければならないものの、将来の増加分
はなくなることとなります。但しデメリットとして、
退職給付制度廃止という
不利益変更をどうクリアするか、
従業員の
モチベーションのダウン、将来への
不安感の増大等が懸念されます。
二つ目は他の
退職給付制度へ移行することです。これによれば前述の方法と
逆に、直接的な
不利益変更の問題や
モチベーション、将来への不安は大幅に解
消されますが、将来への会社の
債務は継続して発生し、移行手続も複雑で手間
がかかる等の問題は残りますが、最も現実的な選択であると考えられます。
では、どのような制度に移行したらいいかということですが、
適格退職年金
制度からの移行対象となる制度は次のいくつかがあります。
1 中退共(中小企業
退職金共済)
適格退職年金からの移行として最も高い候補となります。中小企業
退職金共
済事業団が運営しているため国からの助成制度もあり安全性も高いとされます。
もちろん一時金だけでなく分割(年金)としての受給も可能です。但し一定規
模以上の企業は加入できない制約があります。
2 特退共(特定
退職金共済)
中退共と類似の制度ですが、運営は商工会議所、商工会、中小企業団体中央
会等の各種経済団体が行っています。制度の内容は団体毎に多少異なるため単
純な比較はできませんが、金利の面で概ね中退共より劣ります。ただ、最低一
人月額千円の掛け金で加入できるため、掛け金の負担がきついという事業主に
はお勧めです。また、この制度の
資産運用は生保会社が行っているので万全の
保障があるとは言い切れないようです。なお、中退共とのダブり加入は可能で
す。
3
確定拠出型年金(401K)
その名のとおり拠出額だけが確定している
退職年金制度です。給付額は運用
実績により変動するため、将来の
退職給付額は確定したものではありません。
以前、報道等で脚光を浴びたことから多くの企業で移行中ですが、導入初期に
従業員に対して投資教育を行わなければならず、このための手間や
経費が結構
かかることや、制度的に60歳以後しか給付されないこともあり、現実的には中
小企業には必ずしも適合するとは言えません。一定規模以上の企業で、かつ他
の
退職給付制度が整備されている場合のみお勧めできます。
4 確定給付年金
給付額が確定し、拠出額は運用により大幅に変動します。金利情勢の最悪な
現在、ある意味
適格退職年金より多くの負担増となり得ます。小規模~中小企
業の規模では全く検討の余地なしです。
5 生保会社の各種年金積立プラン
生保会社が独自に組んだ年金積立プラン。従来からの保険商品を
退職給付に
特化した商品のようです。もちろん生保会社により運用実績は異なりますし、
生保会社が破綻した場合、このプランだけ特別な保障がされるわけではありま
せん。ただ、事業資金の一時貸付も可能とする商品もあるようなので、経営者
サイドとしては便利な方式と言えます。
6 社内積立
いわゆるタンス
預金のようなものですが、
退職給与引当金が廃止されたため、
社内で
退職金を積み立てた場合は課税対象となり目減りしてしまいます。余程
の事情がない限りお勧めできません。
これらの内、どの制度に移行するかですが、ごく一般的な中小企業の場合、
最も安全で金利も高めである中退共へ移行する方法をお勧めします。その後あ
るいは並行して
退職一時金や
退職年金の規程を見直すことが必要です。もちろ
ん
不利益変更とならないよう留意しなければなりません。
さらに、黒字の企業であれば、生保会社の各種プランへの加入も検討すべき
です。基本的に種々の制約がなく、ある意味で資金のシフトとしての面もあり
ます。
なお、赤字が今後も継続する見込みであれば、やはり将来的に
退職給付をな
くす方向で考えなければならないでしょう。
いずれの方法をとるにせよ、事業主自らが勉強し将来を見据え明確な方向性
を持っておくことが肝心です。この方面に強い有能な専門家に相談してみるの
も一方法です。そうでないと、あやふやな制度となったり、保険屋の餌食にな
ったりしますのでご注意を。
中退共の制度についての詳細は下記URLにあります。
http://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/top/
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◆事例:退職金制度の改定-3
適格退職年金からの移行にあたり種々の制度があるようですが、どれに移行
したらいいのでしょうか。
◇回答----------------------------------------------------------------
企業規模や業績見込みにより方向性は異なってきます。退職給付制度を存続
させる場合、一定規模以下の中小企業であれば、まず中退共への移行がベター
です。その間に制度そのものをどうするかを考えることとなるでしょう。
■解説----------------------------------------------------------------
適格退職年金制度は平成24年3月末で否応なしに廃止されます。現在はそ
の移行期間となっており、それまでに退職給付をやめてしまうか又は退職給付
は残すものの他の制度への移行をするかの選択をしなければなりません。
また、適格退職年金の問題点は前回述べたような積立不足の他、高齢者の増
加に伴う退職給付額の増加、年功制による制度の硬直化等の制度内部の問題も
山積しており、早急に別な制度への検討をしなければなりません。
その中で、検討の方向としては二つあります。
一つは退職給付そのものを完全に廃止してしまうことです。これにより、既
に確定している退職金等の額は保障しなければならないものの、将来の増加分
はなくなることとなります。但しデメリットとして、退職給付制度廃止という
不利益変更をどうクリアするか、従業員のモチベーションのダウン、将来への
不安感の増大等が懸念されます。
二つ目は他の退職給付制度へ移行することです。これによれば前述の方法と
逆に、直接的な不利益変更の問題やモチベーション、将来への不安は大幅に解
消されますが、将来への会社の債務は継続して発生し、移行手続も複雑で手間
がかかる等の問題は残りますが、最も現実的な選択であると考えられます。
では、どのような制度に移行したらいいかということですが、適格退職年金
制度からの移行対象となる制度は次のいくつかがあります。
1 中退共(中小企業退職金共済)
適格退職年金からの移行として最も高い候補となります。中小企業退職金共
済事業団が運営しているため国からの助成制度もあり安全性も高いとされます。
もちろん一時金だけでなく分割(年金)としての受給も可能です。但し一定規
模以上の企業は加入できない制約があります。
2 特退共(特定退職金共済)
中退共と類似の制度ですが、運営は商工会議所、商工会、中小企業団体中央
会等の各種経済団体が行っています。制度の内容は団体毎に多少異なるため単
純な比較はできませんが、金利の面で概ね中退共より劣ります。ただ、最低一
人月額千円の掛け金で加入できるため、掛け金の負担がきついという事業主に
はお勧めです。また、この制度の資産運用は生保会社が行っているので万全の
保障があるとは言い切れないようです。なお、中退共とのダブり加入は可能で
す。
3 確定拠出型年金(401K)
その名のとおり拠出額だけが確定している退職年金制度です。給付額は運用
実績により変動するため、将来の退職給付額は確定したものではありません。
以前、報道等で脚光を浴びたことから多くの企業で移行中ですが、導入初期に
従業員に対して投資教育を行わなければならず、このための手間や経費が結構
かかることや、制度的に60歳以後しか給付されないこともあり、現実的には中
小企業には必ずしも適合するとは言えません。一定規模以上の企業で、かつ他
の退職給付制度が整備されている場合のみお勧めできます。
4 確定給付年金
給付額が確定し、拠出額は運用により大幅に変動します。金利情勢の最悪な
現在、ある意味適格退職年金より多くの負担増となり得ます。小規模~中小企
業の規模では全く検討の余地なしです。
5 生保会社の各種年金積立プラン
生保会社が独自に組んだ年金積立プラン。従来からの保険商品を退職給付に
特化した商品のようです。もちろん生保会社により運用実績は異なりますし、
生保会社が破綻した場合、このプランだけ特別な保障がされるわけではありま
せん。ただ、事業資金の一時貸付も可能とする商品もあるようなので、経営者
サイドとしては便利な方式と言えます。
6 社内積立
いわゆるタンス預金のようなものですが、退職給与引当金が廃止されたため、
社内で退職金を積み立てた場合は課税対象となり目減りしてしまいます。余程
の事情がない限りお勧めできません。
これらの内、どの制度に移行するかですが、ごく一般的な中小企業の場合、
最も安全で金利も高めである中退共へ移行する方法をお勧めします。その後あ
るいは並行して退職一時金や退職年金の規程を見直すことが必要です。もちろ
ん不利益変更とならないよう留意しなければなりません。
さらに、黒字の企業であれば、生保会社の各種プランへの加入も検討すべき
です。基本的に種々の制約がなく、ある意味で資金のシフトとしての面もあり
ます。
なお、赤字が今後も継続する見込みであれば、やはり将来的に退職給付をな
くす方向で考えなければならないでしょう。
いずれの方法をとるにせよ、事業主自らが勉強し将来を見据え明確な方向性
を持っておくことが肝心です。この方面に強い有能な専門家に相談してみるの
も一方法です。そうでないと、あやふやな制度となったり、保険屋の餌食にな
ったりしますのでご注意を。
中退共の制度についての詳細は下記URLにあります。
http://chutaikyo.taisyokukin.go.jp/top/
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