相談の広場
法人の減価償却の計上は任意償却とありますが、
例えば
耐用年数3年の資産で
毎年の償却限度額が1万だとしたら
5期決算期があったとして
1期目 減価償却あり 1万
2期目 減価償却なし
3期目 減価償却あり 1万
4期目 減価償却なし
5期目 減価償却あり 1万
と通算5年で耐用年数3年のものを償却することになっても構わないのでしょうか?
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eenen様
こんにちは。
hakotan2と申します。
以前に同じご質問を受けましたので、ご紹介します。
少し大げさで、長文ですが、ご一読のうえご検討ください。
技術的には、可能といえます。
ひとつの選択肢ではあると思います。
そういうことをする目的は何でしょうか。
しかし、
「減価償却費、損金を控えたく、今期は、償却をしないで。
来期にまわしたり、したりしなかったりと」
という経理をしてしまうと本当の経営成績や財務状態が
わからなくなってしまいませんか。
(損益計算書、貸借対照表等)
それに、毎年違う方法をしていたら事務処理も申告書も
面倒になりませんか。(事務処理はたいした問題では
ありませんが)
税理士も公認会計士もいなければ何も言われないと
思います。
「毎期決算期の減価償却の義務付けについて」
昭和49年に株式会社や一般企業に毎決算期に相当の減価償却を
義務付けることとなりました。(旧商法34条)
「義務化までの経緯」
昭和37年以前は、「償却前利益」という言葉が実務上
広く用いられていました。
減価償却というものは、利益の充分に挙がる時期に纏めて
行っても良いとと考えられ、このため「償却前利益」を
みて減価償却をするのに充分な額であれば、その事業年度
に纏めて減価償却を実施するという企業が多かった。
・・・・・・・・・・・
しかし、このような決算態度では、近代企業の体裁を
備えていないとされ、「企業会計原則」の主唱するように
毎期、規則的な減価償却をすべきである、ということになり
昭和37年に株式会社から毎期、相当な減価償却を義務
づけることになったものである。
その後、一般企業にも昭和49年毎期、相当な減価償却を
義務づけることとなりました。
(出展:商法会計法 居林次雄著)
当時は、減価償却前に利益が出ればいいと考えられていたようです。
現在でも考え方だけは業界によってはあるみたいですね。
私の関連会社でもそういわれるかたがいらっしゃいます。
でも、減価償却は毎期していますよ赤字ですけど。
相当の償却ですから、すぐ浮かぶのは法人税法による減価償却ですね。
いづれにしても、毎期の減価償却は義務付けられています。
法人税法も公正妥当な会計処理が前提となっていますね。
現在、固定資産の減価償却が0までできることとなりましたね。
(備忘価額は別にして)
御社の場合
減価償却をやったり、やらなかったりは、技術的には可能です。
そういうことをするということは、何か目的があるのではないでしょうか。
利益が出たときは、計上し、利益がでないときはしない。
ある税理士さんは、毎期、「相当の償却を継続してすべき」から、
減価償却をまったくしなかったケースがありました。
途中引き継いだ経理の方から除却時に除却損が多額に出て困ったという
質問を受けたことがあります。
補足します。
「税法と企業会計原則との調整に関する意見書第一の一」
減価償却は、減価償却資産の取得価額を費用配分の原則に
基づいて、その耐用年数の及ぶ期間内の各事業年度に一定の
計算方式で配分するものです。
とあります。
また、この旧商法第34条を引き継いだ会社法も
すべての会社はこの法律に従うことになります。
「旧商法」
第三十四条
二 固定資産ニ付テハ其ノ取得価額又ハ製作価額ヲ附シ毎年一回一定ノ時期、
会社ニ在リテハ毎決算期ニ相当ノ償却ヲ為シ
予測スルコト能ハザル減損ガ生ジタルトキハ相当ノ減額ヲ為スコトヲ要ス
「会社法計算規則」
第五条
2 償却すべき資産については、事業年度の末日
において、相当の償却をしなければならない。
任意規定ではなく、強制規定です。( しなければならない。)
株式会社の減価償却費の毎期末に相当の償却を
することを義務付けしたのは、もう46年前半世紀にもなります。
現在の会社法は、強制しています。
「中小企業の会計に関する指針」
では、もっと明確に記載されています。
「固定資産の減価償却は、経営状況により任意に行うことなく、
定率法、定額法その他の方法に従い、毎期継続して規則的な
償却を行う。ただし、法人税法の規定による償却限度額を
もって償却額とすることができる。」
「中小企業の会計に関する指針」下記サイトの18ページです。
http://www.nichizeiren.or.jp/taxpayer/chusyo/chusyo080502.pdf
「減価償却については、行うか否かは会社の自由である」ような
記述のある書籍がありました。次回改定本から、記述を訂正する旨回答を
得ました。また、Q&Aのサイトでも節税といって同じような記述がありましたが
それも訂正してもらいました。
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下記書籍がわかり易いので紹介させていただきます。
「中小企業の会計に関する指針」ガイドブック
日本税理士連合会、清文社(定価2,500円+税)20.7.10発行
ここには、左欄に処理の方法、右欄に企業会計原則、会社法、
法人税法等の関連法規が記載されております。
「民法・商法と税務の接点」
民・商法と税法研究会 税務研究会出版局(定価4,800円+税)
初版15.7.25 第1版17.7.30
ここには、
・「減価償却の計上を巡る商法と法人税法の差異]
・商法の「相当の償却」と法人税法の「償却限度額」
その期の業績が悪かったことなどにより減価償却を計上しない決
算は商法上は違法なこと、償却限度内で減価償却を行うことは法
人の自主的判断に任されていること。裁判例はほとんどないこと。
・償却不足を用いた繰越欠損金控除の可否
・貸借対照表の不実記載に関する商法の罰則規定
などが掲載されております。
もっと詳細まで勉強されたい方は
「税法学」558
日本税法学会 清文社 2007 November
ここには、法人税法
22条の4項と会社法についたの論説が掲載されています。
hakotan2様
ご回答有難うございます。
私もhakotan2様と同感です。
実は私も毎年減価償却は計上するべきものという認識がありまして、そういう処理を今までしてました。
ただ乱暴な言いまわしですが『赤字のときはしない黒字になったらする』という意見や文献、HPでも調べたらあって今までの自分の認識が違うのか戸惑いこちらで質問させて頂きました。
また任意という言葉にも躊躇しました。
事業の供に用した時に資産計上したものをその耐用年数で償却しなければ企業の正しい損益は出てこないと考えます。
耐用年数なんて意味がないではないかと。
でも税法上は許されることなの?それをしてる企業があるの?という気持ちが正直なところです。
でも今回ご回答を熟読させて頂き今までの自分がしてきた会計処理が正しいと痛感しました。
どうも有難うございました。
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