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★★★ 新・
行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-30 ★★
【レジュメ編】 行政法(その10〔2〕)
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■■■ 行政事件訴訟法 ■■■
■■■ その他の抗
告訴訟
■■■ 補則
■■■ 遺失物法の改正 ■■■
■■■ お願い ■■■
■■■ 編集後記 ■■■
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
■■■ 行政事件訴訟法 ■■■
■■■ その他の抗
告訴訟
■ 無効等確認の訴えの原告適格
第三十六条 無効等確認の訴えは、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるお
それのある者その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有
する者で、当該処分若しくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関
係に関する訴えによつて目的を達することができないものに限り、提起することができ
る。
(1)無効等確認の訴えの原告適格をめぐる説
(ア)一元説(制約説)と二元説(無制約説)
・一元説:「法律上の利益を有する者」という積極要件全体に、「目的を達することが
できないもの」という消極要件がかかるとする説。
・二元説:「損害を受けるおそれのある者」に認められる予防訴訟と、「法律上の利益
を有する者で」「目的を達することができないもの」に認められる補充訴訟の二元的
構成をとるとする説。
●● 最高裁判例「
所得税更正処分等取消請求」(民集第30巻3号384頁)
【理由】
納税者が、課税処分を受け、当該課税処分にかかる税金をいまだ納付していないため滞
納処分を受けるおそれがある場合において、右課税処分の無効を主張してこれを争おう
とするときは、納税者は、行政事件訴訟法三六条により、右課税処分の無効確認を求め
る訴えを提起することができるものと解するのが、相当である。
★ 最高裁は、二元説をとることを明らかにした。
(イ)還元不能説と目的達成不能説
・還元不能説:無効等確認訴訟の原告適格は、現在の法律関係に関する訴訟に還元する
ことが不可能なものに限定して認められるとする説
・目的達成不能説:現在の法律関係に還元することは可能であっても、目的を達成する
ことができない場合には、無効等確認訴訟の原告適格を肯定する説。
●● 最高裁判例「農地買収無効確認請求」(民集第24巻12号1721頁)
【要旨】
行政事件訴訟法三六条にいう「目的を達することができない」とは、処分の無効等を前
提とする現在の法律関係に関する訴の形態を法律上とることができないことをいい、具
体的に勝訴の見込みがないことまでをもいうものではない。
★ 最高裁は、還元不能説を採ったと解されている。
(ウ)直截・適切基準説(最近の考え方)
無効等確認訴訟を認めるか、現在の法律関係に関する訴え(民事訴訟)により争うべき
かは、いずれが紛争解決のためにより直截的で適切かにより決定されるべきであるとす
る説。
●● 最高裁判例「換地無効確認」(民集第41巻3号286頁)
【理由】
土地改良法に基づく換地処分は、土地改良事業の性質上必要があるときに当該土地改良
事業の施行に係る地域につき換地計画を定めて行われるものであり、右施行地域内の土
地所有者等多数の権利者に対して行われる換地処分は通常相互に連鎖し関連し合つてい
るとみられるのであるから、このような換地処分の効力をめぐる紛争を私人間の法律関
係に関する個別の訴えによつて解決しなければならないとするのは右処分の性質に照ら
して必ずしも適当とはいい難く、むしろ当該換地処分の無効確認を求める訴えのほうが
より直截的で適切な争訟形態というべきであり、結局、右のような場合には、当該換地
処分の無効を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつてはその目的を達すること
ができないものとして、行政事件訴訟法三六条所定の無効確認の訴えの原告適格を肯認
すべき場合に当たると解されるからである。
★ この場合の「現在の法律関係に関する訴え」とは、換地処分の効力をめぐる紛争で
ある。
●● 最高裁判例「原子炉設置許可処分無効確認等」(民集第46巻6号1090頁)
【要旨】
行政事件訴訟法三六条にいう「その効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴
えによって目的を達することができない」とは、当該処分に基づいて生ずる法律関係に
関し、処分の無効を前提とする当事者訴訟又は民事訴訟によっては、その処分のため被
りている不利益を排除することができない場合はもとより、当該処分に起因する紛争を
解決するための争訟形態として、右の当事者訴訟又は民事訴訟との比較において、当該
処分の無効確認を求める訴えの方がより直截的で適切な争訟形態であるとみるべき場合
をも意味する。
★ 最高裁は、無効等確認訴訟と民事訴訟の二者択一ではなく、両者とも認められるこ
とを明らかにした。
(2)法律上の利益
●● 最高裁判例「原子炉設置許可処分無効確認等」(民集第46巻6号1090頁)
【理由】
行政事件訴訟法三六条は、無効等確認の訴えの原告適格について規定するが、同条にい
う当該処分の無効等の確認を求めるにつき「法律上の利益を有する者」の意義について
も、右の取消訴訟の原告適格の場合と同義に解するのが相当である。
〔参考〕
行政事件訴訟法九条にいう当該処分の取消しを求めるにつき「法律上の利益を有する者
」とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然
的に侵害されるおそれのある者をいうのであり、当該処分を定めた行政法規が、不特定
多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させるにとどめず、それが帰属す
る個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合
には、かかる利益も右にいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵
害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適
格を有するものというべきである(民集32巻2号211頁)。
■ 不作為の違法確認の訴えの原告適格
第三十七条 不作為の違法確認の訴えは、処分又は裁決についての申請をした者に限
り、提起することができる。
・「申請をした者」とは、実際に申請をした者であり、申請が適法であったかどうかは
問わない。たとえ不適法であっても、行政庁には申請に応答すべき義務があるためで
ある(ただし、この場合には、却下)。
→ 申請が認容された場合や却下された場合には、不作為の違法確認の訴えの利益がな
くなるため、訴えは却下されることになる。
・出訴期間:不作為状態が継続する限り、いつでも提起することができる(出訴期間は
存在しない。)。
■ 義務付けの訴えの要件等(1)
第三十七条の二 第三条第六項第一号に掲げる場合において、義務付けの訴えは、一定
の処分がされないことにより重大な損害を生ずるおそれがあり、かつ、その損害を避け
るため他に適当な方法がないときに限り、提起することができる。
2 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損
害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び
性質をも勘案するものとする。
3 第一項の義務付けの訴えは、行政庁が一定の処分をすべき旨を命ずることを求める
につき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。
4 前項に規定する法律上の利益の有無の判断については、第九条第二項の規定を準用
する。
5 義務付けの訴えが第一項及び第三項に規定する要件に該当する場合において、その
義務付けの訴えに係る処分につき、行政庁がその処分をすべきであることがその処分の
根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分をしないこと
がその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、行
政庁がその処分をすべき旨を命ずる判決をする。
〔第三条第六項第一号に掲げる場合〕
行政庁が一定の処分をすべきであるにかかわらずこれがされないとき(次号に掲げる場
合を除く。)に、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟。
・「重大な損害を生ずるおそれ」という損害要件と「他に適当な方法がない」という補
充性要件が求められる。
・「重大な損害」:執行停止(25条3項)、差止訴訟(37条の4第2項)の場合と同
じ。
・原告適格:「法律上の利益を有する者」に限られる(取消訴訟の原告適格(9条1
項)と同じ)。
→ 9条2項の規定が準用される(4項)。
■ 義務付けの訴えの要件等(2)
第三十七条の三 第三条第六項第二号に掲げる場合において、義務付けの訴えは、次の
各号に掲げる要件のいずれかに該当するときに限り、提起することができる。
一 当該法令に基づく申請又は
審査請求に対し相当の期間内に何らの処分又は裁決がさ
れないこと
二 当該法令に基づく申請又は
審査請求を却下し又は棄却する旨の処分又は裁決がされ
た場合において、当該処分又は裁決が取り消されるべきものであり、又は無効若しくは
不存在であること
2 前項の義務付けの訴えは、同項各号に規定する法令に基づく申請又は
審査請求をし
た者に限り、提起することができる。
3 第一項の義務付けの訴えを提起するときは、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞ
れ当該各号に定める訴えをその義務付けの訴えに併合して提起しなければならない。こ
の場合において、当該各号に定める訴えに係る訴訟の管轄について他の法律に特別の定
めがあるときは、当該義務付けの訴えに係る訴訟の管轄は、第三十八条第一項において
準用する第十二条の規定にかかわらず、その定めに従う。
一 第一項第一号に掲げる要件に該当する場合 同号に規定する処分又は裁決に係る不
作為の違法確認の訴え
二 第一項第二号に掲げる要件に該当する場合 同号に規定する処分又は裁決に係る取
消訴訟又は無効等確認の訴え
4 前項の規定により併合して提起された義務付けの訴え及び同項各号に定める訴えに
係る弁論及び裁判は、分離しないでしなければならない。
5 義務付けの訴えが第一項から第三項までに規定する要件に該当する場合において、
同項各号に定める訴えに係る請求に理由があると認められ、かつ、その義務付けの訴え
に係る処分又は裁決につき、行政庁がその処分若しくは裁決をすべきであることがその
処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がそ
の処分若しくは裁決をしないことがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると
認められるときは、裁判所は、その義務付けの訴えに係る処分又は裁決をすべき旨を命
ずる判決をする。
6 第四項の規定にかかわらず、裁判所は、審理の状況その他の事情を考慮して、第三
項各号に定める訴えについてのみ終局判決をすることがより迅速な争訟の解決に資する
と認めるときは、当該訴えについてのみ終局判決をすることができる。この場合におい
て、裁判所は、当該訴えについてのみ終局判決をしたときは、当事者の意見を聴いて、
当該訴えに係る訴訟手続が完結するまでの間、義務付けの訴えに係る訴訟手続を中止す
ることができる。
7 第一項の義務付けの訴えのうち、行政庁が一定の裁決をすべき旨を命ずることを求
めるものは、処分についての
審査請求がされた場合において、当該処分に係る処分の取
消しの訴え又は無効等確認の訴えを提起することができないときに限り、提起すること
ができる。
〔第三条第六項第二号に掲げる場合〕
行政庁に対し一定の処分又は裁決を求める旨の法令に基づく申請又は
審査請求がされた
場合において、当該行政庁がその処分又は裁決をすべきであるにかかわらずこれがされ
ないときに、行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずることを求める訴訟
・本条1項1号は、不作為の状態が継続している場合。1項2号は、すでに申請や審査
請求に対する却下または棄却の判断が示されている場合。
→ 前条の場合と異なり、「重大な損害を生ずるおそれ」という損害要件と「他に適当
な方法がない」という補充性要件は求められていない。
・「相当の期間内」(1項)については、3条5項の「相当の期間内」を参照のこと。
・裁決に関する義務付け訴訟(7項):処分の取消訴訟又は無効等確認訴訟を提起する
ことができる場合には、認められない(例えば、不作為の場合、裁決に関する義務付
け訴訟よりも、処分の取消訴訟や無効等確認訴訟を提起する方が直截的な紛争解決に
つながるため)。
→ 裁決主義(裁決に係る取消訴訟で、原処分の違法性を主張すべきとする考え方)の
場合に限定される。
■ 差止めの訴えの要件
第三十七条の四 差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害
を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避ける
ため他に適当な方法があるときは、この限りでない。
2 裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損
害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分又は裁決の
内容及び性質をも勘案するものとする。
3 差止めの訴えは、行政庁が一定の処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを
求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。
4 前項に規定する法律上の利益の有無の判断については、第九条第二項の規定を準用
する。
5 差止めの訴えが第一項及び第三項に規定する要件に該当する場合において、その差
止めの訴えに係る処分又は裁決につき、行政庁がその処分若しくは裁決をすべきでない
ことがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は
行政庁がその処分若しくは裁決をすることがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用
となると認められるときは、裁判所は、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨
を命ずる判決をする。
・「重大な損害を生ずるおそれ」という積極要件と「他に適当な方法がない」という消
極要件が求められる。
・第2項:執行停止(25条3項)、義務付け訴訟(37条の3第1項)と同じ。
・原告適格:「法律上の利益を有する者」に限られる(取消訴訟の原告適格(9条1
項)と同じ)。
→ 9条2項の規定が準用される(4項)。義務付けの訴えの要件(37条の2)と同
じ。
■ 仮の義務付け及び仮の差止め
第三十七条の五 義務付けの訴えの提起があつた場合において、その義務付けの訴えに
係る処分又は裁決がされないことにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊
急の必要があり、かつ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てに
より、決定をもつて、仮に行政庁がその処分又は裁決をすべき旨を命ずること(以下こ
の条において「仮の義務付け」という。)ができる。
2 差止めの訴えの提起があつた場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決
がされることにより生ずる償うことのできない損害を避けるため緊急の必要があり、か
つ、本案について理由があるとみえるときは、裁判所は、申立てにより、決定をもつ
て、仮に行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずること(以下この条にお
いて「仮の差止め」という。)ができる。
3 仮の義務付け又は仮の差止めは、公共の福祉に重大な影響を及ぼすおそれがあると
きは、することができない。
4 第二十五条第五項から第八項まで、第二十六条から第二十八条まで及び第三十三条
第一項の規定は、仮の義務付け又は仮の差止めに関する事項について準用する。
5 前項において準用する第二十五条第七項の即時抗告についての裁判又は前項におい
て準用する第二十六条第一項の決定により仮の義務付けの決定が取り消されたときは、
当該行政庁は、当該仮の義務付けの決定に基づいてした処分又は裁決を取り消さなけれ
ばならない。
・仮の義務付けおよび仮の差止め:申立てによる場合のみ可(職権ではできない。)。
・「本案について理由があるとみえるとき」(1項、2項):積極要件
→ その主張や証明責任は申立人にある。
(注)執行停止の場合は「本案について理由がないとみえるとき」(25条4項):消極
要件
→ その主張や証明責任は被申立人にある。
・「償うことのできない損害」(1項、2項):「重大な損害」よりも加重された損
害。
・27条の準用:内閣総理大臣による異議の制度も、仮の義務付けおよび仮の差止めに準
用される。
■ 取消訴訟に関する規定の準用
第三十八条 第十一条から第十三条まで、第十六条から第十九条まで、第二十一条から
第二十三条まで、第二十四条、第三十三条及び第三十五条の規定は、取消訴訟以外の抗
告訴訟について準用する。
・釈明処分の特則(23条の2)は準用されていない。
→ 無効等確認訴訟にのみ準用されている。
■■■ 補則
■ 仮処分の排除
第四十四条 行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為については、民事保全法
(平成元年法律第九十一号)に規定する仮処分をすることができない
(1)行政事件訴訟法に定められた仮の救済
・執行停止:取消訴訟、無効等確認訴訟、民衆訴訟、機関訴訟
→ 当事者訴訟と争点訴訟については、執行停止に係る規定が準用されていない。ま
た、仮処分もすることができない。
・仮の義務付け:義務付け訴訟
・仮の差止め:差止訴訟
→ どのような訴訟類型であっても、また、行政事件であるかどうかを問わず、民事保
全法に規定する仮処分はすることができない。
■ 処分の効力等を争点とする訴訟
第四十五条 私法上の法律関係に関する訴訟において、処分若しくは裁決の存否又はそ
の効力の有無が争われている場合には、第二十三条第一項及び第二項並びに第三十九条
の規定を準用する。
2 前項の規定により行政庁が訴訟に参加した場合には、民事訴訟法第四十五条第一項
及び第二項の規定を準用する。ただし、攻撃又は防御の方法は、当該処分若しくは裁決
の存否又はその効力の有無に関するものに限り、提出することができる。
3 第一項の規定により行政庁が訴訟に参加した後において、処分若しくは裁決の存否
又はその効力の有無に関する争いがなくなつたときは、裁判所は、参加の決定を取り消
すことができる。
4 第一項の場合には、当該争点について第二十三条の二及び第二十四条の規定を、訴
訟
費用の裁判について第三十五条の規定を準用する。
・争点訴訟:処分もしくは裁決の存否または効力の有無が争われる民事訴訟
■ 取消訴訟等の提起に関する事項の教示
第四十六条 行政庁は、取消訴訟を提起することができる処分又は裁決をする場合に
は、当該処分又は裁決の相手方に対し、次に掲げる事項を書面で教示しなければならな
い。ただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでない。
一 当該処分又は裁決に係る取消訴訟の被告とすべき者
二 当該処分又は裁決に係る取消訴訟の出訴期間
三 法律に当該処分についての
審査請求に対する裁決を経た後でなければ処分の取消し
の訴えを提起することができない旨の定めがあるときは、その旨
2 行政庁は、法律に処分についての
審査請求に対する裁決に対してのみ取消訴訟を提
起することができる旨の定めがある場合において、当該処分をするときは、当該処分の
相手方に対し、法律にその定めがある旨を書面で教示しなければならない。ただし、当
該処分を口頭でする場合は、この限りでない。
3 行政庁は、当事者間の法律関係を確認し又は形成する処分又は裁決に関する訴訟で
法令の規定によりその法律関係の当事者の一方を被告とするものを提起することができ
る処分又は裁決をする場合には、当該処分又は裁決の相手方に対し、次に掲げる事項を
書面で教示しなければならない。ただし、当該処分を口頭でする場合は、この限りでな
い。
一 当該訴訟の被告とすべき者
二 当該訴訟の出訴期間
(1)教示の対象
「処分又は裁決の相手方」(1項)、「処分の相手方」(2項)、「処分又は裁決の相
手方」(3項)のみ
→ 利害関係人から求められた場合にも、法的義務はない。
→
行政不服審査法の場合、行政庁には教示を求められた事項を教示する義務がある
(57条2項)。
(2)原則書面。口頭で処分をする場合には不要。
→
行政不服審査法の「審査庁等の教示」(57条1項)の場合と同じ。
(3)誤った場合の救済規定
行政不服審査法の場合と異なり、誤った教示をした場合(
行政不服審査法18条、19条、
46条)や教示をしなかった場合(同20条、58条)にも、救済規定はない。
■■■ 遺失物法の改正 ■■■
行政書士の業務に直接には関係ありませんが、遺失物法が全部改正され、6月15日に公
布されました。明治32年制定のカタカナ混じりの法律でしたが、現代語化され、スッキ
リしました。なお、施行は、「公布の日から起算して一年六月を超えない範囲内におい
て政令で定める日」(附則1条)とされています。
この遺失物法で、いつも注目されるのは、報労金に関する規定です。現行法では、「物
件ノ返還ヲ受クル者ハ物件ノ価格百分ノ五ヨリ少カラス二十ヨリ多カラサル報労金ヲ拾
得者ニ給スヘシ但シ」(4条1項)と規定されています。一方、改正法では、「物件
(誤って占有した他人の物を除く。)の返還を受ける遺失者は、当該物件の価格(第九
条第一項若しくは第二項又は第二十条第一項若しくは第二項の規定により売却された物
件にあっては、当該売却による代金の額)の百分の五以上百分の二十以下に相当する額
の報労金を拾得者に支払わなければならない。」(28条1項)と規定されています。こ
の点については、実質的な変更はありません。
一方、同法附則により、
民法が一部改正され、保管期間が6カ月から3ヶ月に短縮され
ます。現在は、「遺失物は、遺失物法(明治三十二年法律第八十七号)の定めるところ
に従い公告をした後六箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者が
その
所有権を取得する。」(
民法240条)と規定されていますが、これが、「遺失物
は、遺失物法(平成十八年法律第七十三号)の定めるところに従い公告をした後三箇月
以内にその所有者が判明しないときは、これを拾得した者がその
所有権を取得する。」
と改正されます。
この改正の背景には、拾得物が約1070万点(平成16年)あるにもかかわらず、傘、衣類
等は返還率が極端に低く(5%以下。なお、携帯電話、財布類の返還率は60%以上)、
相当の保管
費用を要することがあるためです。
一方、「動物の愛護及び管理に関する法律に規定する犬又はねこ」については、遺失物
法は適用されません。これは、同法で「都道府県等(都道府県及び指定都市、地方自治
法第二百五十二条の二十二第一項の中核市その他政令で定める市(特別区を含む。)を
いう。)は、犬又はねこの引取りをその所有者から求められたときは、これを引き取ら
なければならない。」(35条1項。現行18条1項)と規定され、これが「所有者の判明
しない犬又はねこの引取りをその拾得者その他の者から求められた場合に準用する」
(35条2項。現行18条1項)と規定されているためです。
また、
個人情報保護等の観点から、重要な条文の追加がされています。具体的には、つ
ぎの物件については、拾得者は
所有権を取得することができません(35条)。ある意
味、当然の規定ですが、現行法では、拾得者が請求した場合に、警察署長はこれを拒絶
できる旨の明文の規定がないために、厄介でした。
一 法令の規定によりその所持が禁止されている物
二 個人の身分若しくは地位又は個人の一身に専属する権利を証する文書、図画又は電
磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない
方式で作られた記録をいう。)
三 個人の秘密に属する事項が記録された文書、図画又は
電磁的記録
四 遺失者又はその関係者と認められる個人の住所又は連絡先が記録された文書、図画
又は
電磁的記録
五
個人情報データベース等(
個人情報の保護に関する法律に規定する
個人情報データ
ベース等をいう。)が記録された文書、図画又は
電磁的記録(広く一般に流通している
文書、図画及び
電磁的記録を除く。)
このほか、現在、拾得物は、警察署単位で取り扱われていることから、遺失場所が不明
の場合や遺失と拾得の届出先が異なる場合には発見が困難であるため、都道府県内の拾
得物に関する情報を集約し、インターネット等により住民に公表することが予定されて
います。
遺失物法案の概要については
http://www.npa.go.jp/safetylife/chiiki16/20060417.pdf をご参照ください。また、
遺失物法案については、衆議院のHPから立法情報→議案→第164回国会→議案の一覧
→閣法の一覧→番号55、で探せます。また、改正法の基となった遺失物行政研究会の
「遺失物行政の在り方に関する提言」については、つぎのURLからご覧ください。
http://www.npa.go.jp/safetylife/chiiki15/20060214.pdf
■■■ お願い ■■■
継続して発刊するためには読者の皆様のご支援が何よりの活力になります。ご意見、ア
ドバイス、ご批判その他何でも結構です。内容、頻度、対象の追加や変更等について
も、どうぞ何なりと
e-mail@ohta-shoshi.com までお寄せください。
質問は、このメールマガジンの趣旨の範囲内のものであれば、大歓迎です。ただし、多
少時間を要する場合があります。
■■■ 編集後記 ■■■
今回で行政事件訴訟法が終わります。これで、行政法中の主要な
行政手続法、行政不服
審査法および行政事件訴訟法が終わったことになります。そして、
国家賠償法、損失補
償法、情報公開法と続く予定です。
これまでの
行政書士試験では行政法の出来不出来が合否を大きく左右してきましたが、
この傾向は今年も変わらないと思われます。むしろ、より法学試験化すると思われる今
年の
行政書士試験では、その重要度がより高まるのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、行政法では、
行政手続法、
行政不服審査法および行政事件訴訟
法の「横」比較をしっかり行っておくことが重要です。こうした基礎力の養成を経ない
まま、(答練や公開模試等も含めて)
行政書士試験を受験することは、時間の無駄であ
り、大変に危険です。
ところで、私は、今年は、日本
行政書士会連合会研修センターが開講した専修大学大学
院の司法研修「法律学応用特論・
民法の親族と
相続」に参加しています(6月から7月
の土曜日の計5日に、毎回3コマ(1コマは90分)、計15コマ)。これは、
行政書士が
行政手続法や
行政不服審査法に基づく
代理人や家裁事件の
代理人として活躍することが
できるようにするための能力
担保を目指しており、その一環として開講されたものです
。むろん、正規の授業として行われ、単位の認定もありますので、出席や成績等が問わ
れることになります(体力的にも、結構大変です。)。
このように
行政書士を取り巻く環境は大きく変化し、かつ、さらに変化することが見込
まれています。周囲を見渡せば、ロースクールを経た新司法試験が始まり、数年後に
は、大量の弁護士が社会に供給されます。こうした(近い)将来の大きな変革を見据え
て、受験段階の今のうちから必要な基礎体力(受験能力および業務能力。特に、後者の
潜在的遂行能力)を養成しておくことが必要ではないでしょうか。
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マガジンタイトル:新・
行政書士試験 一発合格!
発行者:
行政書士 太田誠 東京都
行政書士会所属(府中支部)
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