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子会社への融資と取締役の責任

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1 今回の判例 子会社への融資と取締役の責任
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福岡高裁平成24年4月13日判決

<以下事案の性質上事実関係の説明が長くなります。時間のない方
は読み飛ばしてください。>

 A社の代表取締役であるY1、取締役であるY2とY3は、A社
完全子会社であるB社の取締役を兼務していました。

 B社では、不明瞭な商品在庫の存在が問題となり、平成11年4
月の取締役会において、不良在庫の調査報告に基づきその処分等の
対応を図りましたが、その後も在庫は増加し続け、その結果として
銀行からの短期借入金残高も増加していきました。

 B社の取締役は、A社との間で平成9年から平成10年ころに「
ダム取引」(仕入業者に一定期間在庫を抱えてもらう取引)をはじ
め、不良在庫の存在を認識した平成14年春ころから不良在庫を一
時的に解消するため「グルグル回し取引」を始め、後に他の会社と
も同様の取引を行うようになりました。

 なおこの「グルグル回し取引」とは、「ダム取引」により生じた
期間満了時の在庫商品をいったん買い取り、その上で同じ仕入業者
又は他の仕入に買い取ってもらい、一定期間後に同様の買取を繰り
返す、というものでした。

 その後、A社はB社に対し、平成16年、B社の再建のために約
19億円を貸し付け、平成17年2月には15億5000万円の債
権放棄を行い、さらにその後、3億3000万円の貸付を行いまし
た。

 A社の株主であるX氏は、子会社B社に対する監視義務違反、子
会社B社に対する貸付に関する善管注意義務違反等を主張し、Y1
らのA社に対する損害賠償責任を追及する訴えを提起しました。



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2 判決の内容
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裁判所は以下のように判断しました。

● 「ダム取引」ないし「グルグル回し取引」は、営業上の必要な
いし短期間の資金繰りの必要等からのやむを得ない経営上の事情等
があるときに、後にそれに対する適正な回復処理が行われることを
前提に、例外的な場合に限って行われたものでない限り、会社経営
上において違法、不当なものであることは明らかである。

● B社の再建にはその経営困難に陥った原因解明が必要不可欠で
あったのに、それをなさないで、そして現実の経営回復の裏付けが
ないため回収不能による多大な損失が出ることが当然予測されるこ
とが認識できたのに、貸付などの支援をB社に行ったことは、A社
取締役としての経営判断として合理性はなく、正当なものであっ
たとはいえない。



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3 解説
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(1)子会社の援助・救済と取締役の判断

 親会社が、経営不振・経営危機に陥った子会社の援助・救済を行
うことは珍しいことではありません。しかしこの点、法的には、親
会社と子会社は別法人であるという点を考える必要があります。つ
まり、倒産の危機に瀕している子会社に対し親会社が資金援助を行
うことを判断することは、場合によっては、自社よりも第三者の利
益を図る行為となり、取締役の責任が問題となるということです。

 それで、子会社等に対する資金援助をするという親会社の取締役
の決定が違法・不当と判断されないためには、その援助が親会社の
利益に合致している必要があります。例えば、以下のような事情が
ある場合、親会社の利益に合致していると判断される可能性がある
と考えられます(以下は例示です)。

 a)子会社の倒産によって貸付金等が回収不能となったり、子会
  社への出資が無価値となることによる損害が甚大な場合
 b)親会社が子会社の債務保証を行っており、子会社の倒産によ
  る親会社の保証債務履行が親会社に甚大な損失をもたらす場合
 c)子会社の倒産が親会社や企業グループ全体の甚大な信用低下
  に繋がる場合

 それで、親会社の取締役としては、子会社だからといって安易か
つ漫然と援助をすることは避ける必要があります。


(2)援助の判断において実務上留意すべき点

 先に述べたとおり、子会社への援助の判断の際も、経営判断原則
を考慮に入れた平時からの対応を考える必要があります。

 この点、本件のようにいわゆる株主代表訴訟において株主が取締
役の責任を追求する場合、「経営判断の原則」が適用されます。す
なわち、取締役の決定に関する責任の判断にあたっては、後知恵の
結果論ではなく、「判断時」の状況を前提とし、不注意で判断の前
提たる事実認識で誤ったか、又は、事実に基づく判断が著しく不合
理であった場合でなければ、取締役の責任を問わない、という考え
方が取られています。

 それで、子会社等の再建の可能性と援助の合理性を判断するにあ
たっては、「決定当時」、合理的な方法で情報収集、調査及び検討
を行い、具体的な情報に基づき支援先の経営状況を把握するととも
に、支援を行う場合と行わない場合の親会社に与える影響等を考慮
して合理的な支援の方法や程度を決定したということを立証すれば
よいということになります。

 したがって、この点で「経営判断の過程・内容」が合理的であっ
たということを示すため、取締役会議事録取締役会や経営会議で
用いた会議資料などが重要な意味を持つことになります。それで、
この点について日頃からしっかりとした資料の準備を怠らないこと
が、いざという場合にものをいうことになるかもしれません。


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