━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士
法人クラフトマン 第143号 2015-02-24
-------------------------------------------------------
法律相談ご案内
http://www.ishioroshi.com/btob/soudan_firstb.html
顧問弁護士
契約(
顧問料)についての詳細
http://www.ishioroshi.com/btob/komon_feeb.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1 今回の判例 会社と
取締役との
利益相反取引
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
東京高裁平成26年5月22日
A社が振り出した、受取人B社とする
額面金額約3億6000万
円の
約束手形の第1裏書人欄にはB社(
代表取締役C氏)名義の記
名押印がありました。
そして、この手形を受け取ったD社が、満期に手形金の支払を受
けられなかったため、裏書人であるB社に対して支払を求め仮差押
を行いましたが、同仮差押は取り消されました。
そこで、B社は、D社に対し、B社名義の裏書が
取締役会の承認
を欠くことや、C氏の代表権の濫用である等と主張し、手形
債務の
不存在等の確認を求める訴訟を提起しました。なお本件は他に多数
の争点がありますが、本稿では上の争点に絞って解説します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 裁判所の判断
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
裁判所は、以下のとおり判断し、手形
債務の不存在を認めました。
● 本件の裏書は、C氏個人がD社に負っていた
債務をB社が保証
する趣旨で、C氏がB社の
代表取締役として行ったものであり、会
社と
取締役の
利益相反取引に該当する。
● したがって、当該裏書についてB社の
取締役会の承認が必要で
あるところ、
取締役会の承認はない。
● また、当該裏書は、C氏が自己ないし第三者の利益を図って代
表
取締役としての権限を濫用した行為である。
● 本件の裏書が正常な取引とはいえない背景があり、D社は、取
締役会の決議がないことや、権限濫用の事実について知っていたか
知りうべきであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3 解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)会社と
取締役との
利益相反取引
会社の
取締役が負う基本的な義務の一つに、「自己又は第三者の
利益を優先させて会社の利益を犠牲にするようなことをしない」、
つまり、会社と
取締役の利益相反行為を行わないという義務があり
ます。
この利益相反行為の一つとして、会社と
取締役の取引があります。
例えば、
取締役が会社に自分の商品を売る(逆も同様)、会社が取
締役に金銭を貸し付ける、といった例が該当します(
会社法356
条1項2号)。
前者であれば不当に安い価格で
取締役が会社の商品を購入できれ
ば、会社に損害が生じます。後者であれば、
取締役の地位を利用し
て返済見込が薄くても会社から資金が融通されれば、後に会社が損
害を受ける可能性があります。
それで、
会社法は、会社と
取締役との
利益相反取引については、
会社の損害を防止するため、
取締役会または
株主総会(
取締役会非
設置会社の場合)の承認を要すると定めているわけです。
加えて、会社と
取締役の取引のほか、以下のような行為も、会社
と
取締役の利益が相反する行為として、同様の制限に置いています。
● 会社が、
取締役の第三者に対する
債務を保証する行為(本件
の例)
●
取締役の第三者に対する
債務を
担保するため、会社の
資産に
担保を設定する行為
(2)ビジネス上の留意点
上で申し上げたような典型例のほか、実務上、利益相反行為に該
当するか否かについての判断が難しい場合があります。
例えば、
取締役から会社に金銭を貸し付ける場合があります。こ
の場合、一見会社に損害が生じるおそれはないように見えるかもし
れませんが、
利息が発生する貸付であれば、利益相反に該当します。
また、会社間の取引であっても会社と
取締役の
利益相反取引とな
ることがあります。例えば、A氏が、X社の
取締役であり、かつY
社の
代表取締役である、というケースで、X社とY社間で取引を行
う場合、X社においては
利益相反取引となって承認が必要と解され
ています。それで、同一の人物が
取締役を兼任している会社間の取
引については留意が必要です。
以上のように、利益相反該当性はしばしば難しい判断が求められ
ます。それで、慎重を期するとすれば、念のため承認を得ておいた
り、法律の専門家の意見を求めることはリスク回避としてありうる
方法であると考えられます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4 弊所ウェブサイト紹介~
会社法 ポイント解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・
企業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。
例えば本稿のテーマに関連した
会社法・会社
役員の法律については
http://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/kaishahou/index/
において解説しています。必要に応じてぜひご活用ください。
なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイ
トにおいて解説に加えることを希望される項目がありましたらメー
ルでご一報くだされば幸いです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本稿の無断複製、転載はご遠慮ください。
ただし、本稿の内容を社内研修用資料等に使用したいといったお申
出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原則とし
て無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアドレス宛、
メールでお申出ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【編集発行】
弁護士
法人クラフトマン
代表弁護士・弁理士 石下雅樹
新宿事務所
〒160-0022 東京都新宿区新宿4-2-16
パシフィックマークス新宿サウスゲート 9階
弁護士
法人クラフトマン新宿
特許法律事務所
TEL 03-6388-9679 FAX 03-6388-9766
横浜主事務所
〒221-0835 横浜市神奈川区鶴屋町3-32-14 新港ビル4階
クラフトマン法律事務所
TEL 045-276-1394(代表) 045-620-0794 FAX 045-276-1470
mailto:
info@ishioroshi.com
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
弊所取扱分野紹介(
契約書作成・
契約書チェック・英文
契約)
http://www.ishioroshi.com/btob/jisseki_keiyakub.html
(弁護士
費用オンライン自動見積もあります)
弊所取扱分野紹介(英文
契約書翻訳・英語法律文書和訳)
http://www.ishioroshi.com/btob/jisseki_honyakub.htm
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本稿に対するご意見、ご感想は mailto:
info@ishioroshi.comまで
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士法人クラフトマン 第143号 2015-02-24
-------------------------------------------------------
法律相談ご案内
http://www.ishioroshi.com/btob/soudan_firstb.html
顧問弁護士契約(顧問料)についての詳細
http://www.ishioroshi.com/btob/komon_feeb.html
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1 今回の判例 会社と取締役との利益相反取引
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
東京高裁平成26年5月22日
A社が振り出した、受取人B社とする額面金額約3億6000万
円の約束手形の第1裏書人欄にはB社(代表取締役C氏)名義の記
名押印がありました。
そして、この手形を受け取ったD社が、満期に手形金の支払を受
けられなかったため、裏書人であるB社に対して支払を求め仮差押
を行いましたが、同仮差押は取り消されました。
そこで、B社は、D社に対し、B社名義の裏書が取締役会の承認
を欠くことや、C氏の代表権の濫用である等と主張し、手形債務の
不存在等の確認を求める訴訟を提起しました。なお本件は他に多数
の争点がありますが、本稿では上の争点に絞って解説します。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 裁判所の判断
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
裁判所は、以下のとおり判断し、手形債務の不存在を認めました。
● 本件の裏書は、C氏個人がD社に負っていた債務をB社が保証
する趣旨で、C氏がB社の代表取締役として行ったものであり、会
社と取締役の利益相反取引に該当する。
● したがって、当該裏書についてB社の取締役会の承認が必要で
あるところ、取締役会の承認はない。
● また、当該裏書は、C氏が自己ないし第三者の利益を図って代
表取締役としての権限を濫用した行為である。
● 本件の裏書が正常な取引とはいえない背景があり、D社は、取
締役会の決議がないことや、権限濫用の事実について知っていたか
知りうべきであった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3 解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)会社と取締役との利益相反取引
会社の取締役が負う基本的な義務の一つに、「自己又は第三者の
利益を優先させて会社の利益を犠牲にするようなことをしない」、
つまり、会社と取締役の利益相反行為を行わないという義務があり
ます。
この利益相反行為の一つとして、会社と取締役の取引があります。
例えば、取締役が会社に自分の商品を売る(逆も同様)、会社が取
締役に金銭を貸し付ける、といった例が該当します(会社法356
条1項2号)。
前者であれば不当に安い価格で取締役が会社の商品を購入できれ
ば、会社に損害が生じます。後者であれば、取締役の地位を利用し
て返済見込が薄くても会社から資金が融通されれば、後に会社が損
害を受ける可能性があります。
それで、会社法は、会社と取締役との利益相反取引については、
会社の損害を防止するため、取締役会または株主総会(取締役会非
設置会社の場合)の承認を要すると定めているわけです。
加えて、会社と取締役の取引のほか、以下のような行為も、会社
と取締役の利益が相反する行為として、同様の制限に置いています。
● 会社が、取締役の第三者に対する債務を保証する行為(本件
の例)
● 取締役の第三者に対する債務を担保するため、会社の資産に
担保を設定する行為
(2)ビジネス上の留意点
上で申し上げたような典型例のほか、実務上、利益相反行為に該
当するか否かについての判断が難しい場合があります。
例えば、取締役から会社に金銭を貸し付ける場合があります。こ
の場合、一見会社に損害が生じるおそれはないように見えるかもし
れませんが、利息が発生する貸付であれば、利益相反に該当します。
また、会社間の取引であっても会社と取締役の利益相反取引とな
ることがあります。例えば、A氏が、X社の取締役であり、かつY
社の代表取締役である、というケースで、X社とY社間で取引を行
う場合、X社においては利益相反取引となって承認が必要と解され
ています。それで、同一の人物が取締役を兼任している会社間の取
引については留意が必要です。
以上のように、利益相反該当性はしばしば難しい判断が求められ
ます。それで、慎重を期するとすれば、念のため承認を得ておいた
り、法律の専門家の意見を求めることはリスク回避としてありうる
方法であると考えられます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4 弊所ウェブサイト紹介~会社法 ポイント解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・
企業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。
例えば本稿のテーマに関連した会社法・会社役員の法律については
http://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/kaishahou/index/
において解説しています。必要に応じてぜひご活用ください。
なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイ
トにおいて解説に加えることを希望される項目がありましたらメー
ルでご一報くだされば幸いです。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本稿の無断複製、転載はご遠慮ください。
ただし、本稿の内容を社内研修用資料等に使用したいといったお申
出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原則とし
て無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアドレス宛、
メールでお申出ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【編集発行】
弁護士法人クラフトマン
代表弁護士・弁理士 石下雅樹
新宿事務所
〒160-0022 東京都新宿区新宿4-2-16
パシフィックマークス新宿サウスゲート 9階
弁護士法人クラフトマン新宿特許法律事務所
TEL 03-6388-9679 FAX 03-6388-9766
横浜主事務所
〒221-0835 横浜市神奈川区鶴屋町3-32-14 新港ビル4階
クラフトマン法律事務所
TEL 045-276-1394(代表) 045-620-0794 FAX 045-276-1470
mailto:
info@ishioroshi.com
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
弊所取扱分野紹介(契約書作成・契約書チェック・英文契約)
http://www.ishioroshi.com/btob/jisseki_keiyakub.html
(弁護士費用オンライン自動見積もあります)
弊所取扱分野紹介(英文契約書翻訳・英語法律文書和訳)
http://www.ishioroshi.com/btob/jisseki_honyakub.htm
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本稿に対するご意見、ご感想は mailto:
info@ishioroshi.comまで
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━