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派遣の一般賃金通達の特例措置を適用する際の注意

先般10月22日に私が投稿した「派遣の労使協定で使う令和3年度の一般賃金通達が公表されました」に関し、通達本文の4ページの5の項目を適用するかについて若干補足しておきます。

通達を原則通り適用すれば、コロナの影響がまだ出ていない時期の統計がベースのため、全体的には時給アップとなるものの、能力・経験調整指数(以下、経験年数と略します)を見ると未経験等は上昇傾向ですが、逆に経験が長いほど低下傾向となっています。近年の人手不足の影響が出ているものと思われます。

協定における経験年数の適用方法次第ですが、もしベテランの比重が高ければ(経験年数の上位の適用が多い場合)特例措置の検討は不要となるでしょう。

特例措置を適用するか否かの大前提として、まずは原則通りの令和3年度の時給と現行の時給の比較を行わねばならず、これは職種、地域、経験年数ごとに個別に比較が必要です。その上で、有利不利を判断するわけですが、単に額の有利な方を選択できるわけではありません。

局長通達P4(2)の特例措置要件にある4つの条件をクリアせねばならず、特に②と③の要件は非常にシビアな内容です。
特に②は「職種・地域別の事業活動の指標が現にコロナによる影響を受けていて、且つ、今後も見込まれることを具体的に示して、労使で協議を行う」とされており、具体的な指標の有無と労使協議がポイントです。従って、コロナの影響がない(指標の提示ができない)職種・地域は特例措置の対象とならないわけです。

ところで、局長通達の要件を全て満たさないと特例措置は一切適用できないかというと微妙な部分があり、当局の内部取り扱いとして、「原則論としては要件を全て満たすべきだが、例示されている要件の指標はあくまでも例示であって、コロナの影響を具体的に示す指標であれば例示指標以外の選択肢もあり得る」(要旨)とされています。

さらには、「事業活動の指標がコロナの影響を受けていない職種は当然ながら原則通りであるが、事業所全体の事業の縮小状況を踏まえ、例外的な対象とする職種・地域について労使で十分協議・検討すれば、必ずしも原則通りに限らない」(要旨)との解釈もあるようです。コロナの影響がない職種・地域が一部あるが、事業所全体では縮小しているような場合は、事業所全体として特例措置も取り得るとの解釈です。

あくまでも原則は通達の要件通りだが、労使で合意すればある程度の許容範囲は認めるとのスタンスでしょうか。このあたりの実務上の実例は当局も本省と協議しつつこれから積み上げていくものと考えられ、うかつに飛びつくのは危険です。

前述の投稿でも述べましたが、コロナの影響を証明できる具体的指標、これらの扱いや解釈が労働局によって異なる可能性が否定できないこと、有利不利の比較の作業量(どのみち原則通りによる時給算定は必要)を総合的に判断すると、原則通りで行くのがベターかと思います。

なお、今後の当局の方向性ですが、労使協定の締結がキチンとされているかについて重点が置かれる模様です。局長通達と同時に公表されたQ&Aでは、労使協定の締結について今さらですがしつこいほどに過半数代表の選出について触れています。特に留意すべきは、使用者が指名した代表はアウトとなること。

実際の現場では誰も代表を希望する人がいない場合が多いですが、その場合でも社長が勝手に指名したんじゃダメです。もし指名したとしても、その後選挙(あくまでも推薦された候補者に対して賛成や否認等、挙手や回覧等各労働者の意向が表明できる方法)を行う必要があり、その経過も残しておくことが重要です。

おそらく今後の労働局の監査や指導において、協定事業所であれば過半数代表の選出方法の確認が必ず行われることになるはずです。適正な選出でないことが判明すれば厳しい指導となります。

繰り返しますが、労使協定方式を選択した場合は、とにかく過半数代表の選出をしっかり行うことを最優先すべきです。
極論ですが、協定別表の細かい数値はやっつけ仕事でも、指摘されたら修正すればいいだけ。
ところが、代表選出が不適切な協定は無効で協定が存在しないこととされ、最悪、派遣先均等均等方式の強制適用もあり得ます。このあたりは監督署と同レベルの厳しさと覚悟すべきです。

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