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法人クラフトマン 第266号 2023-11-21
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1 今回の判例
特許製品の納入と
特許発明の新規性の喪失
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大阪地裁令和5年1月31日判決
A社は、発明の名称を「シュープレス用ベルト」とする
特許権を持っており、他社に対して
特許権の侵害を主張しました。争点の一つとなったのは、この
特許を実施する製品について、出願前にA社が取引先B社に納品して取引先が使用していたことから、「公然実施」として新規性がないといえるか否かでした。
この点、前記発明は、ベルトの構造や構成する硬化剤に特徴があるところ、A社は、取引先B社が、A社から納品された製品をわざわざ分析して構成や硬化剤を特定できたとはいえない、と主張しました。
裁判所は、納品された製品が取引先B社によって自由に解析等がなされ得る状態におかれた
こと、解析等によりベルトの構造等を特定することは可能であること等から、前記
特許発明は、出願前に日本国内において公然実施された発明であって新規性を欠くと判断しました。
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2 解説
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1)
特許発明における新規性と公然実施
特許を受けることができる発明の要件の一つに「新規性」があります。それは、発明の一部に、世の中になかった「新しいもの」が含まれているという要件です。
ある発明について、新規性がないと判断される理由としては、過去に公開された
特許明細書、頒布された論文、公表されたウェブサイトに記載されたいたといったもののほか、「公然実施」というものがあります。
それは、
特許出願前に、当該発明が、日本国内又は外国で、公然に実施されたという場合です(
特許法29条1項2号)。
2)「公然」の考え方と実務上の留意点
ではこの「公然」とは何を意味するのでしょうか。それは、他者に現実に知られたか否かは問わず、「知られ得る状況」にあれば足りると考えられています。
そのため、分解しないと分からない内部機構や分析しないと分からない組成についての発明を実施した製品であっても、
特許出願前に第三者に販売してしまった場合、購入者が分解しようと思えば分解できる以上(通常は購入者が当該商品を分解することはないとしても)、「公然」と判断されます。今回の事例もその考え方に沿ったものであるといえます。
他方、過去の号(262号)でご紹介した例のように、展示会では商品を展示したものの内部のメカニズムは秘匿していたといった場合には、展示会の訪問者は製品を自由に分解や分析ができないことから、内部機構、製品の成分・組成や製造方法についての発明は公然実施されたとは判断されないことがと多いと考えられます。
また、
特許出願前に取引先にサンプルを提供することがあるかもしれません。この場合には、公然実施とされるリスクを軽減するため、サンプル提供先との間で秘密保持
契約を締結して、知り得た秘密を特定の目的以外に使用しないこと、分析や解析をしないこと、いかなる第三者にも開示漏洩しないことといった点を義務づけること等が重要になると思います。
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3 弊所代表弁護士が執筆に参加した書籍の出版のお知らせ
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この度、弊所代表の石下弁護士が執筆に参加した「重要判例分析×ブランド戦略推進
商標の法律実務」(中央経済社刊)が発刊されました。
学術的、実務的の両側面から
商標法とその周辺法の解釈・運用のポイントを解説し、30の重要判例についても事案の概要とその要点を解説する、企業のブランド戦略の一助となる実務書です。
弊所代表の石下弁護士は、重要判例の解説の一つを担当しています。
ご関心のある方は以下のサイトをぜひご覧ください。
https://www.biz-book.jp/isbn/978-4-502-43391-7
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本稿の無断複製、転載はご遠慮ください。
ただし、本稿の内容を社内研修用資料等に使用したいといったお申出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原則として無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアドレス宛、メールでお申出ください。
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【執筆・編集・発行】
弁護士・弁理士 石下雅樹(いしおろし まさき)
東京事務所
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新丸の内ビルディング11階
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1 今回の判例 特許製品の納入と特許発明の新規性の喪失
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大阪地裁令和5年1月31日判決
A社は、発明の名称を「シュープレス用ベルト」とする特許権を持っており、他社に対して特許権の侵害を主張しました。争点の一つとなったのは、この特許を実施する製品について、出願前にA社が取引先B社に納品して取引先が使用していたことから、「公然実施」として新規性がないといえるか否かでした。
この点、前記発明は、ベルトの構造や構成する硬化剤に特徴があるところ、A社は、取引先B社が、A社から納品された製品をわざわざ分析して構成や硬化剤を特定できたとはいえない、と主張しました。
裁判所は、納品された製品が取引先B社によって自由に解析等がなされ得る状態におかれた
こと、解析等によりベルトの構造等を特定することは可能であること等から、前記特許発明は、出願前に日本国内において公然実施された発明であって新規性を欠くと判断しました。
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2 解説
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1)特許発明における新規性と公然実施
特許を受けることができる発明の要件の一つに「新規性」があります。それは、発明の一部に、世の中になかった「新しいもの」が含まれているという要件です。
ある発明について、新規性がないと判断される理由としては、過去に公開された特許明細書、頒布された論文、公表されたウェブサイトに記載されたいたといったもののほか、「公然実施」というものがあります。
それは、特許出願前に、当該発明が、日本国内又は外国で、公然に実施されたという場合です(特許法29条1項2号)。
2)「公然」の考え方と実務上の留意点
ではこの「公然」とは何を意味するのでしょうか。それは、他者に現実に知られたか否かは問わず、「知られ得る状況」にあれば足りると考えられています。
そのため、分解しないと分からない内部機構や分析しないと分からない組成についての発明を実施した製品であっても、特許出願前に第三者に販売してしまった場合、購入者が分解しようと思えば分解できる以上(通常は購入者が当該商品を分解することはないとしても)、「公然」と判断されます。今回の事例もその考え方に沿ったものであるといえます。
他方、過去の号(262号)でご紹介した例のように、展示会では商品を展示したものの内部のメカニズムは秘匿していたといった場合には、展示会の訪問者は製品を自由に分解や分析ができないことから、内部機構、製品の成分・組成や製造方法についての発明は公然実施されたとは判断されないことがと多いと考えられます。
また、特許出願前に取引先にサンプルを提供することがあるかもしれません。この場合には、公然実施とされるリスクを軽減するため、サンプル提供先との間で秘密保持契約を締結して、知り得た秘密を特定の目的以外に使用しないこと、分析や解析をしないこと、いかなる第三者にも開示漏洩しないことといった点を義務づけること等が重要になると思います。
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3 弊所代表弁護士が執筆に参加した書籍の出版のお知らせ
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この度、弊所代表の石下弁護士が執筆に参加した「重要判例分析×ブランド戦略推進 商標の法律実務」(中央経済社刊)が発刊されました。
学術的、実務的の両側面から商標法とその周辺法の解釈・運用のポイントを解説し、30の重要判例についても事案の概要とその要点を解説する、企業のブランド戦略の一助となる実務書です。
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