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【考察】医師の判断なら、健康管理上、テレビ局は悪くない

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 弊社が、働く人の健康管理の事業を開始して、約10年が経過しました。
 その中で、身体的・精神的健康を優先するあまり、社会的健康がおろそかになっている事例を多数見ることになりました。
 身体的健康を優先するあまり、精神的・社会的に不健康になった社会的新型コロナウイルス禍という事例を、皆様も多く実感されたことでしょう。
 WHO憲章にあるように、健康とは、身体的・精神的・社会的に健康であることです。さらに、職域では企業と労働者の双方を健康にすることが必要です。
 『企業利益をわかりやすく向上させる新規サービス』を用意しています。
 是非、弊社を利用し、健康の向上を図ってください。
https://www.kenpomerit.com/
 さらに、文末のように「令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法」及び「産業保健ストラテジーシリーズ第3版 第1巻 産業医ストラテジー(分担執筆者)」を成しています。是非、ご覧ください。

 今回は、「【考察】医師の判断なら、健康管理上、テレビ局は悪くない」について作成しました。
 企業利益の向上という、精神的・社会的健康を向上させるために、弊社をご活用ください。
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【考察】医師の判断なら、健康管理上、テレビ局は悪くない
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 令和7年1月27日、テレビ局が受けた疑惑について、10時間におよぶ記者会見が行われました。
 この中で、女子アナウンサーの健康障害について、医師(産業医)同席の元面談を行い、医師の判断等を受けて対応を行ったと、回答がされていました。
この点が真実であれば、テレビ局に健康障害については、法的な責任は発生しないと考えられます。
 その点について、以下の様に考察をいたします。
 ただし、令和7年1月29日時点の情報ですので、第三者委員会報告書等が出た後は、適応されない可能性があるので、その場合は、ご理解ください。

事業者の責任は専門家に任すまで
 事業者の責任は、専門家に任すまでという最高裁判例を紹介します。
 業務上過失致死判例(渋谷温泉施設爆発事件)※より
 平成19年6月東京都渋谷区の温泉施設において、温泉に含まれるメタンガスを分離排出する装置が設置されていたが、排出管が結露水で塞がれたことによりメタンガスが逆流し、蓄積したメタンガスが爆発を引き起こした事故であり、温泉施設の労働者3人が死亡、2人が負傷し、その他近隣の通行者1人が負傷しました。
 温泉施設の取締役と排出管等の空調設計担当者が、業務上過失致死傷で起訴されました。空調設計担当者は、温泉施設から発注を受けた建設会社に所属する空調設計の専門家であったが、排出管から結露水を排除する意義や必要性について明示的な説明をしていなかったことから、同罪が問われることになりました。
 平成25年に温泉施設の取締役は無罪の判断となったが、空調設計担当者は注意義務を負うべき立場であり、その注意を怠ったということで過失が認められました。さらに、平成28年に最高裁で有罪が確定しました。
 本判例は、事業者と外部専門家が業務上過失致死で起訴され、外部専門家に過失責任が認められました。特に、事業者は専門家に適切に依頼を行っていた時点で、危険回避の責任を果たしていると認められた点は重要です。空調設計専門家と医師は異なりますが、専門家という点では一致します。
 なお、本判例において、過失犯については,結果の予見可能性,回避可能性という大枠によって成否を判断するのがこれまでの確立した考え方であるということが、改めて示されることになりました。
 従って、テレビ局は産業医及び臨床医に任せていたと主張していることから、健康の専門家でないテレビ局が、医師の意見に基づいて、対応を行ったことは法令上も倫理上も問題ないと認められます。
 テレビ局はテレビ放送等の専門家であり、健康の専門家でないため、健康については専門家である医師が負うのは当然と言えます
※産業保健ストラテジーシリーズ第3版 産業医ストラテジー P59。

〇誠実な産業医の対応について
 誠実な産業医の対応としては、従業員から身体的、精神的健康が害されたとの訴えがあった場合、まずは、従業員の主観的情報を傾聴することから始まります。
 主観的情報は、従業員の感情も多く含まれていますが、最初は、丁寧に傾聴を行い、内容を確認する必要があります。
 しかし、主観的情報だけで対応を行うことは大変危険です。そこで、主観的情報に基づき客観的情報を収集することになります。具体的には、従業員の関係者から事情確認、作業環境の確認、作業内容の確認、健康診断結果、ストレスチェック結果等を行います。また、必要な場合は、診療情報提供依頼書(紹介状)を発行し、専門医から診察結果を取得します。
 主観的情報と客観的情報が得られた後に、産業医としての評価を行います。具体的には、対策が必要か、経過観察するべきか、対策を要しないかを判断することになります。
 もし、対策を必要とする場合は、改善計画を立てることになります。この際、従業員の上司や社内専門家と協議する必要があります。万が一、法令違反に該当するおそれがある場合は、法務担当やコンプライアンス担当と改善計画を協議する必要があります。
 改善計画が立案出来た後は、実施の前に、従業員とその関係者に説明と合意形成を行う必要があります。当該従業員にとっては良い改善計画でも、それが原因で、その他の従業員の身体的、精神的健康が害されることは許されません。しっかりと説明を行い、必要な点は修正し、理解と合意を得ることが必要になります。
 理解と合意が得られた後は、改善計画の実施になります。産業医としては、定期的に実施内容の経過観察を行い、修正が必要な場合は、関係者のコンセンサスを得ながら、適切に対応することが必要です。
 さらに、産業医は、それぞれの対応において、記録を残すことが重要になります。記録には、主語、副詞、目的語、動詞を明確にし、起承転結が分かる内容であることが求められます。後から分かるように記録を残すことが、誠実な産業医の責任になります。

〇テレビ局としての対応
 テレビ局としては、この中で、女子アナウンサーの健康障害について、医師(産業医)同席の元面談を行い、医師の診察を受けて対応を行ったと、回答していることから、業務上過失致死判例(渋谷温泉施設爆発事件)に基づき、必要十分に医師に健康管理を任せていた場合、健康上のトラブルについては、特に問題は無いと考えられます。
 しかし、医師の意見に基づいたにもかかわらずテレビ局が不利益を受けたと認められた場合は、医師に対して、「医事に関し犯罪又は不正の行為のあつた者」として医道審議会に申し出ることが必要になると考えます。もし、医事に関して不正が認められた場合は、医師法第7条第1項に基づき、医師免許の取消等が行われます。
 特に、労働安全衛生法第13条第3項に、産業医には誠実義務が課されていることから、産業医が不誠実であったとテレビ局側が証明することができれば、テレビ局としては、医師に責任を負わすことが見込めるので、テレビ局の対応としては適切であったと主張できると見込めます。
 誠実な産業医であれば、記録を残し、専門医から必要な診断書を得ているはずなので、医道審議会において、医師として適切な対応であったと証明することができるので、テレビ局としても、安心して申請することができると見込めます。
 もちろん、テレビ局が女子アナウンサーの健康障害について、医師(産業医)同席の元面談を行い、医師の診察を受けて対応を行ったと、回答した事実が真実であることが前提です。

事業者としての注意点
 誠実に業務を行っている産業医であれば、文献に基づいた適切な対応を行います。
 しかし、名義貸し等の不誠実な産業医は、健康障害の隠蔽や記録の不記載・改ざんを行っているおそれがあります。こういった、産業医は性根が不誠実であるので、事業者側と合意形成があったとしても、自らが不利になると医師免許を守るために、事業者を裏切るおそれがあります。
 事業者側としては、産業医が誠実に業務を行っているかを確認し、医道審議会や裁判になった際でも、武器となる証拠を得ておくことが重要になります。

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令和の働き方 部下がいる全ての人のための 働き方改革を資産形成につなげる方法
http://miraipub.jp/books/%E3%80%8C%E4%BB%A4%E5%92%8C%E3%80%8D%E3%81%AE%E5%83%8D%E3%81%8D%E6%96%B9-%E9%83%A8%E4%B8%8B%E3%81%8C%E3%81%84%E3%82%8B%E5%85%A8%E3%81%A6%E3%81%AE%E4%BA%BA%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E3%81%AE-%E5%83%8D/

産業保健ストラテジーシリーズ第3版 第1巻 産業医ストラテジー(分担執筆者)
https://www.e-bio.co.jp/publication/book01.html

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