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【熊本県職員自殺】現場の危機を救えない産業医Q&A

 こんにちは、産業医・労働衛生コンサルタントの朝長健太です。
 従業員の健康問題(従業員主治医の診断書が起因)が企業の経営に直結し、時には社長・役員の辞任、売上減少、株主代表訴訟にまで発展するケースが顕在化しています。また、従業員の健康を第一に守るという目的により、企業ガバナンスの逆転現象が起き、結果的に健康を守りきれなかったという矛盾も生じています。
 健康管理は、ケガからハラスメントまで、対策の範囲が広いです。そこで、企業ガバナンスを経営者主体という本来の形にすることで、会社と経営者を第一に守り、その結果、従業員の健康を守るという目的で、下記の日本規格協会規格(JSA 規格)「JSA-S1025 ヒューマンリソースマネジメント-組織(企業)が⾏う健康管理-職域健康専⾨家の活⽤の指針」を開発しました。
 また、認証機関も立ち上げております。
なお、日本規格協会は、経済産業省による認定産業標準作成機関であり、唯一のマネジメントシステム作成機関です。
 企業主体の健康管理体制の構築について、ぜひJSA-S1025をご活用ください。

 今回は、「【熊本県職員自殺】現場の危機を救えない産業医Q&A」について作成しました。
 企業利益の向上という、精神的・社会的健康を向上させるために、弊社をご活用ください。
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【熊本県職員自殺】現場の危機を救えない産業医Q&A
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 次のコラムについて、大きな反響をいただきありがとうございます。
 産業医の助言を放置することが、致死的な事故を引き起こし、県の行政機構レベルで問題が顕在化する時代です。
 医師と連携している社長について、対応の正当性が、次世代の争点になると考えられます。
 【熊本県職員自殺】産業医の助言はなぜ届かなかったのか?について、問い合わせがありましたので、Q&A形式で回答させていただきます。

【熊本県職員自殺】産業医の助言はなぜ届かなかったのか?
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-177764/

Q
 そもそも産業医のフィーは月1万円~5万円程度で、単に登録に必要なだけと見なされ、企業では「腫れ物」扱いです。そんな産業医から口出しされると現場は混乱します。熊本県の対応は、実態として多くの企業がやっていることではないですか?産業医が、現場の危機を救えるとは思えません。

A
(注)熊本県職員の自殺事件については、報道では一部が公表されているのみで、その詳細は不明であることから、一般的な形で回答いたします。

〇なぜ産業医が、「現場の危機を救えない」状況に陥るのか
 質問の指摘の様に、産業医の設置は法律上の義務ですが、その役割が「法令遵守のための形式的な手続き」に終わっている企業は少なくありません。
 これが、実態として「現場の危機を救えない」に近い状態を生み出す温床です。実際、産業医の関与があったにもかかわらず最悪の結果を招いている事案は存在します。

産業医側の「実行力」と「危機感伝達」の欠如
 産業医は、「企業の健康管理体制の専門家」として招かれているにもかかわらず、単に医学的なアドバイスをするに留まり、その助言を現場で実行させるための「実行力」と「危機感の言語化」が不足しているケースがあります。この場合、質問の「産業医が、現場の危機を救えるとは思えません。」という意見は、もっともであると言えます。

・職場に適応した危機回避措置の欠如
 産業医は職域の健康管理体制の専門家であって、医学の解説者ではありません。日ごろから職場巡視をし、従業員の業務を把握し、現場に合った危機回避措置を行う必要があります。
・「緊急性」の伝達不足
 臨床医療において、救急医療とそれ以外が明確に区別されている様に、従業員の健康についても、同様に緊急性を要する場合があります。その場合、産業医は書面だけでなく、企業側に対し労働安全衛生法第13条第5項に基づく強い「勧告レベルの口頭助言」を行うなどして、事態の深刻さを直ちに伝えることが必要です。

 実行力と危機感の言語化が不足している場合は、アリバイ作りの様な「産業医は、形式的な手続きは行った」という、実効性のない産業医業務となってしまいます。こうした産業医業務では、現場の危機を救うことはできません。
 企業は、産業医が「医学の専門家」に加えて、「企業の健康管理の専門家」としての役割を果たしているかどうかを精査することが重要です。また、産業医が緊急と判断した場合の情報伝達ラインを定め、産業医に「緊急性の判断責任」と「情報共有責任」とを課すべきです。

〇経営層による助言の「経営課題」としての軽視
 企業側が産業医の助言を「書類上の形式的な手続き」として扱い、「経営上の優先課題」として扱わない場合、その責任は企業側に課されることになり、社長が引責辞任した事例もあります。

・リスク認識の甘さ
 産業医の明確な警告を「組織的リスク」として捉え直さず、業務の改善につなげないことは、早期発見・早期改善できたリスクを放置してしまう可能性があります。
・代替案検討の放棄
 助言された対策(例:人員増加)の実行が困難な場合、産業医に相談して代替可能な改善案(例:一時的な業務制限、他部署からの応援)を模索できれば、緊急的なリスクを低減し、数か月後に根本的な改善が見込めます。

 リスク認識の甘さ、代替案検討の放棄の両観点において、産業医の助言を無視することは、単なる社内手続き上のミスではなく、企業が負う安全配慮義務の決定的な不履行です。その責任は、高額な解決金の支払いに留まらず、社長の引責辞任という形で明確に示されます。
 企業は、産業医に対して、初手から「実現可能性の高い業務改善案」を提示する様に課すことが重要です。さらに、緊急性がある場合は、業務改善について経過観察の周期を短くし、企業側の改善が産業医の意図と異なる場合は、代替案を提示するなど、の職責を課すことが重要です。
 企業側は、健康の専門家ではありません。健康の責任については、全責任を産業医に負わせるべく、適切に職責を課すことが重要です。

〇企業が産業医に責任を課すためのガバナンス構築
 「現場の危機を救えない産業医」を放置した責任は、企業側が負うことになります。
 この点を改善するためには、「健康の責任について、全責任を産業医に負わせるべく、適切に職責を課す」ことが最も重要になります。当然、熊本県職員の自殺事案の様に、最悪の事態が発生した責任も産業医に負わせるべきです。
 具体的な手法としては、産業医に課した責任を、企業側が負わないためのルールも必要になります。特に、指揮監督責任を産業医に負わせ、企業側は産業医の指示に従属的に対応しただけという定めと記録方法の整備が必要です。これが、産業医側のアリバイ作りの様な業務を、抑止することにつながります。
 企業側は、産業医に対して「だから言ったでしょ」と責任逃れさせない、明確な職責を課すことが必要です。
 「だから言ったでしょ」の発言の裏には、『産業医はリスクを確認していた』という事実が潜んでいます。であるならば、そのリスクを改善する責任、改善できずに最悪の事態を引き起こした時は、医師免許をかけて司法の場で自らの正当性を主張する準備を、産業医側に課すべきです。
 熊本県職員の自殺事案では、産業医の責任を問わず、熊本県が全責任を負いました。この事例を反省点とし、「企業が産業医に責任を課すためのガバナンス構築」の重要性が示されます。

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JSA-S1025 ヒューマンリソースマネジメント-組織(企業)が⾏う健康管理-職域健康専⾨家の活⽤の指針

JSA-S1025ページ
https://webdesk.jsa.or.jp/books/W11M0090/index/?bunsyo_id=JSA-S1025%3A2025

JSA-S1025紹介
https://webdesk.jsa.or.jp/pdf/jsa/pdf_jsa_372.pdf

【JSA-S1025】開発の解説
https://www.soumunomori.com/column/article/atc-177724/

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