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ピンクレディーdeダイエット事件とパブリシティ権

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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報

石下雅樹法律・特許事務所 第44号 2010-03-08
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1 今回の判例  ピンクレディーdeダイエット事件とパブリシティ権
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知財高裁 平成21年8月27日判決

ある女性週刊誌が掲載した「ピンク・レディーdeダイエット」と題する記事において「
ピンク・レディー」の写真を無断で使用したことについて、ピンク・レディのメンバーで
あった歌手2名(AB)が、この記事についてパブリシティ権(肖像権)の侵害を主張し
、出版社C社に対し、損害賠償請求をしました。

この記事は、ピンク・レディーが歌唱し演じた楽曲の振り付けを利用してダイエットを行
うという記事で、振り付けを実質的に説明する部分が約3分の2を占め、ピンク・レディ
ーの写真は誌面の3分の1程度でした。

また、使用された写真は、かつてC社がABを取材したときにABの許可を得て撮影した
写真でした。ただし、写真を今回の記事に使用することについては許可は得ていませんで
した。

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2 裁判所の判断
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裁判所は、ピンク・レディー側の請求を認めませんでした。つまり、パブリシティ権の侵
害を否定しました。その理由は以下のとおりです。

● 写真の使用は、ピンク・レディーの楽曲に合わせて踊ってダイエットをするという記
事に関心を持ってもらうため、また、社会的に著名な存在であったピンク・レディーの振
り付けを記憶喚起のための手段として利用されているにすぎない。

● 写真は、C社が保管していたものを再利用したものではないかとうかがわれる。

● 以上を考慮すると、当該記事における写真の使用は、ABが社会的に顕著な存在に至
る過程で許容することが予定されていた負担を超えて、自らの氏名・肖像を排他的に支配
する権利が害されているものということはできない。

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3 解説
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1)パブリシティ権とは

 CMなどの宣伝に著名人が起用されるのはなぜでしょうか。それは、有名人の肖像や名
前を使って商品やサービスを宣伝すると、販売が促進されると考えられているからです。
また、同様の理由で、商品やサービスに著名人の写真や名前が使用されることも珍しくあ
りません。

 このように、著名人の氏名や肖像は、それ自体が顧客吸引力を備えますので、一つの経
済的利益又は価値を有するようになります。この、自己の氏名・肖像から生じる経済的利
益ないし価値を排他的に支配する権利(つまり無断で第三者に使わせない権利)を、パブ
リシティ権といいます。

 したがって、第三者が、ある著名人の肖像や名前を使って商品やサービスを宣伝したり
、肖像や名前を商品に使用したりすることは、その著名人の許諾(ライセンス)を受けな
い限りこのパブリシティ権を侵害することになり、原則として許されないわけです。


2)パブリシティ権とビジネス上の留意点

 今回の判例では、著名人にパブリシティ権の成立が認められる場合であっても、一定の
場合には、その氏名や肖像の他者による使用を一定の限度で甘受しなければならない場合
がどういう場合か、その範囲を明らかにしたものでした。

 この判例は、何らかの商品・サービスにおいて著名人の氏名や肖像を使用しなければな
らないような事業者にとって、許諾を受けずに行えるのか否かを判断するに当たって、一
定の参考になると思われます。

 例えば、著名人の写真を使うのであれば、まず自ら撮影したり合法的に入手した写真を
使うのは当然であり、他のウェブサイトから無断で使用するなどは問題でしょう。また、
著名人の写真や氏名の使用が、あくまでも商品やビジネスの主たる目的に必要な範囲の副
次的・付随的な用途である必要もあり、著名人の写真や氏名の顧客吸引力を利用すること
が目的・用途の一つと考えられるような使用は避けるべきでしょう。また、写真について
いえば、写真自体が鑑賞の対象になるような写真の使い方も避けるべきでしょう。

 この点、今回の週刊誌の記事の場合は、「写真の使用は、ピンク・レディーの楽曲に合
わせて踊ってダイエットをするという本件記事に関心を持ってもらい、あるいは、その振
り付けの記憶喚起のために利用している」とされ、パブリシティ権の侵害は認められない
とされました。

 しかし、実際のところ、上記のような、許諾を受けずに著名人の氏名・写真を商品やビ
ジネスに使えるケースは、さほど多くはないと思われます。というのは、例えばカレンダ
ーなどに写真を使えば著名人の肖像の顧客吸引力の利用がその主たる用途といえるのが通
常でしょうし、他の一般的な商品でも、著名人の写真を、顧客吸引力の利用が主たる目的
の一つとはいえないような用途で商品に使用するケースは稀だからです。

 また、実際のところ、今回の判例の判断に立っても、ケースバイケースで事実関係によ
っては結論(ある使用がパブリシティ権の侵害になるか否か)は変わり得ますので、いず
れにせよ、許諾を受けることが最も安全であることは間違いありません。許諾を受けずに
使用することを検討する場合には、判例の正確な理解と実際の事案への当てはめ等に関し、
「素人判断」をするよりは、弁護士の意見を聞きながら慎重に進めることが望ましいと思
われます。

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