相談の広場
ODA分野でコンサルタント業をしている者です。
我国の国際協力の実施機関である独立行政法人は、昨年度総額616億8,600万円で1,263件のODA業務をコンサルタント企業に発注ました。しかし、その独法は国の公的機関でありながら、コンサルタントの調達、契約業務履行の監督、業務完了検査及び支払い手続きが違法で、偽装請負になるのではと思い、相談して確認したいと思います。以下では、発注者(注文主)は上記の独法、受注者(請負人)はコンサルタント法人企業を指します。
発注者はプロポーザル方式企画競争でコンサルタント法人企業を選定し、業務実施契約を締結しています。これは「企画随契」と呼ばれる公契約で、複数の企業からプロポーザル(企画提案書)を提出させ、提案内容を審査し、企画内容や業務遂行能力が最も優れた企業と随意契約する方式です。業務実施契約の契約約款第1条には「受注者は成果品の完成を約し、発注者は受注者に対しその対価を支払う」とあるので、業務実施契約は明らかに仕事の結果に対して報酬を支払う契約、すなわち請負契約です。また業務実施契約では、業務に従事する請負労働者を「業務従事者」と呼びます。業務実施契約には、複数の業務従事者がチームを構成して請負業を履行する契約と業務従事者が1名で履行する契約(単独型)があります。
以下に業務実施契約の実態を書きますが、発注者の行為が偽装請負に該当するか否かご教示頂ければ幸甚です。
まず受注者の選定方法についてです。
(1) 発注者は、応札企業に対して、業務従事者となる社員を特定し、その社員の経歴書(学歴、職務経験)、語学力証明書(TOEICスコアなど)、その他の資格証明書の提出をプロポーザルで義務付け、プロポーザル100点のうち80~90点がこれらに配分されています。その他の10~20点は業務の実施方針と業務に対する会社のバックアップ体制です。つまり実態としては、発注者は受注者との請負契約締結を前提としながら、発注者が受注者に雇用されている業務従事予定者を直接評価し選定しています。また、発注者は、契約書に業務従事者の氏名を明記し、受注者の自由裁量で業務従事者を変更することを禁止しています。このように、請負契約で発注者が請負労働者の経験・能力を直接評価し、契約書で請負労働者を指名し、受注者が請負労働者を交代させるには発注者の承認を絶対条件とする行為は法的に許されるのですか?
(2) 発注者は、受注者選定の一環として、各応札企業の業務従事予定者を呼び出して発注者側職員に対して企画・提案内容をプレゼンテーションさせる事があります。これは事実上の面接試験です。請負契約を前提としながら、発注者がこのような請負労働者(予定)の事前面接をすることは、法的に許されるのですか?
(3) 発注者が公示時に受注者に交付する業務指示書には、業務従事者の人数と各業務従事者の担当業務および人月が参考として示されています。「参考」とは言え、発注者が自らの予算を念頭に想定したものであり、異なる人数、人月を提案すれば受注可能性が大きく減少します。従って、実態は「指示」です。
特に、業務従事者の人数が1名の場合は、「単独の業務従事者の提案を求めている制度ですので、複数の業務従事者によるプロポーザルは無効とさせて頂きます。」と業務指示書に明記しています。このように、発注者が、受注者との請負契約を前提としながら、請負労働者の人数を指定し、各請負労働者の担当作業および人月を指定することは法的に許されるのですか?
(4) 業務従事者が1名の単独型業務では、発注者が受注者を通さずに業務従事者に直接航空賃(或いは航空券)、日当、宿泊費を支払う場合があります。これは、発注者が自己都合で一方的に決定して公示に明記します。更に、公示には「プローザルに添付する見積書の航空賃及び日当・宿泊料等欄には0円と記載下さい」と指示します。このような、発注者が請負労働者に経費を直接支給する行為が請負契約業務で法的に許されるのですか?
(5)契約締結時に、発注者は業務従事者に「公用旅券」で渡航することを強制することがあります。公用旅券を使用するか否かは、契約書に記載されているのではなく、発注者の内部規定に則って決められます。業務従事者は、民間企業の社員で、請負業務を履行するために社命で渡航するのであり、公務ではありません。このように、発注者が、自らの内部規定を根拠に、公用旅券で渡航することを民間人である請負労働者に強制する行為は法的に許されるのですか?
次に契約の履行段階です。
(6)契約締結直後に、発注者は受注者に対して、契約に基づき業務実施の管理責任者を届け出るように要求します。業務従事者が複数の場合、そのうちの一人を管理責任者(業務主任者)として届け出ることは特に問題ありません。しかし、業務従事者が一人の単独型業務の場合に、発注者は「業務従事者を管理責任者(業務管理者)にすることができる」としています。単独型業務の場合、発注者は業務従事者以外の人件費や航空賃、宿泊費、日当等の経費を積算計上することを認めていません。つまり、業務従事者を業務管理者にしなければ、受注者は業務管理者に係る人件費及び経費を全て自社負担して業務を実施することになります。従って、全ての単独型業務で「業務従事者=業務管理者」即ち「請負労働者=管理責任者」になっています。これは偽装請負ではないでしょうか?
(7) 業務実施契約の契約約款第1条第4項では「(前略)特別の定めがある場合を除き、成果品を完成するために必要な方法、手段、手順については、受注者の責任において定める」としています。その一方で、発注者は受注者向けの契約管理ガイドラインに「契約で発注されている『発注者が意図する業務のイメージの全体』を特記仕様書のみで受注者に伝えることは困難です。このため、業務実施過程において、発注者が『このようにやってほしい』というイメージを受注者に伝える必要があり、また、受注者も、『具体的に業務を行う際このようなイメージとなるがよいか?』について、発注者に確認することが必要です。」と記載しています。つまり、発注者は請負契約を締結することにより成果品を完成させるための方法、手段、手順について受注者に全責任を負わせる一方で、実際は業務実施方法に関して受注者に自由裁量を与えず、受注者に対して具体的な作業方法を発注者に説明して承認を得ることを要求しています。発注者はこれを「共同管理」と呼んでいます。請負契約の入札は成果品を安く完成させる方法を競うので、成果品の詳細な仕様を公示段階で応札予定者に示すのが当然です。上記のように、契約締結後に発注者が成果品を完成させる方法を許可制にしたり受注者に指示することが、請負契約で許されるはずがありません。また、完了するまで仕様を確定することができない業務を請負契約にすることが、そもそもおかしいのです。これは偽装請負ではないですか?
文字数制限の為、以降は「独立行政法人の業務実施契約に係る偽装請負について(その2)」へ続く。
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