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【レジュメ編】 行政法(その7〔2〕)

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     ★★★ 新・行政書士試験 一発合格! Vol. ’06-26 ★★
            【レジュメ編】 行政法(その7〔2〕)

****************************************

■■■ 不服申立手続
■■■ 行政不服審査法の見直し
■■■ お願い
■■■ 編集後記

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

■■■ 不服申立手続
■ 不服申立ての方式
第九条 この法律に基づく不服申立ては、他の法律(条例に基づく処分については、条
例を含む。)に口頭ですることができる旨の定めがある場合を除き、書面を提出してし
なければならない。
2 不服申立書は、異議申立ての場合を除き、正副二通を提出しなければならない。
3 前項の規定にかかわらず、行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律
(平成十四年法律第百五十一号。第二十二条第三項において「情報通信技術利用法」と
いう。)第三条第一項 の規定により同項 に規定する電子情報処理組織を使用して不服
申立て(異議申立てを除く。次項において同じ。)がされた場合には、不服申立書の正
副二通が提出されたものとみなす。
4 前項に規定する場合において、当該不服申立てに係る電磁的記録(電子的方式、磁
気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつ
て、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。第二十二条第四項において
同じ。)については、不服申立書の正本又は副本とみなして、第十七条第二項(第五十
六条において準用する場合を含む。)、第十八条第一項、第二項及び第四項、第二十二
条第一項(第五十二条第二項において準用する場合を含む。)並びに第五十八条第三項
及び第四項の規定を適用する。

(1)書面申立主義の原則
・9条は、審査請求異議申立て再審査請求に通ずる総則規定の一つであり、これら
 の不服申立てを行う方法・方式について定めている。
・1項:「書面」による申立が原則。理由は、口頭よりも書面による方が不服内容が明
 確化し、簡易迅速な救済を図りやすいこと及び後の混乱を避けることができるからで
 ある。
・他の法律に特別の定めがある場合に限り、「口頭」による申立てが認められる。
 (例:国民健康保険法99条、国家公務員共済組合法103条等)

(2)不服申立書(2項)
・行政処分や不作為に対して不服や不満が表明される場合に、苦情の申出、請願、陳
 情、相談、単なる抗議等の不服申立以外の申出がなされても、それは不服申立とは概
 念上区別され、不服申立書が提出されたことにはならない。
・提出された文書が不服申立書か苦情の申出書等他のものであるか判然としない場合に
 は、申立人が不服申立をする意思で当該文書を提出しているかどうかが判断基準とな
 る。

●● 最高裁判例「行政行為無効確認」(民集第11巻14号2466頁)
【要旨】
土地区画整理施行規程を変更しなければならないような事項が含まれている申立であつ
ても、右申立が都市計画法施行令第一七条(昭和三〇年三月政令第四七号による削除
前)による異議の申立であるか単なる陳情書であるかは、申立人の真意に従つて判断す
べきである。

(3)処分権主義
行政不服審査法に基づく紛争解決を選択するかどうかは、当事者の自由な意思に委ねら
れている。

(4)口頭による審査請求
口頭で審査請求をする場合には、第十五条第一項から第三項までに規定する事項を陳述
しなければならない。この場合においては、陳述を受けた行政庁は、その陳述の内容を
録取し、これを陳述人に読み聞かせて誤りのないことを確認し、陳述人に、審査請求
取書に押印させなければならない(16条)。

■ 審査請求手続
第十四条 審査請求は、処分があつたことを知つた日の翌日から起算して六十日以内
(当該処分について異議申立てをしたときは、当該異議申立てについての決定があつた
ことを知つた日の翌日から起算して三十日以内)に、しなければならない。ただし、天
災その他審査請求をしなかつたことについてやむをえない理由があるときは、この限り
でない。
2 前項ただし書の場合における審査請求は、その理由がやんだ日の翌日から起算して
一週間以内にしなければならない。
3 審査請求は、処分(当該処分について異議申立てをしたときは、当該異議申立て
ついての決定)があつた日の翌日から起算して一年を経過したときは、することができ
ない。ただし、正当な理由があるときは、この限りでない。
4 審査請求書を郵便又は民間事業者による信書の送達に関する法律 (平成十四年法
律第九十九号)第二条第六項 に規定する一般信書便事業者若しくは同条第九項 に規定
する特定信書便事業者による同条第二項 に規定する信書便で提出した場合における審
査請求期間の計算については、送付に要した日数は、算入しない。

(1)審査請求期間
審査請求は14条1項で定められた主観的審査請求期間及び3項で定められた客観的審
 査請求期間内に申し立てなければならない。
・1項:処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内。異議申立てをした
 ときは、当該異議申立てについての決定があつたことを知った日の翌日から起算して
 30日以内。ただし、天災その他審査請求をしなかったことについてやむをえない理由
 があるときは、その理由がやんだ日の翌日から起算して1週間以内。
・3項:処分があった日の翌日から起算して1年を経過したときは、審査請求すること
 ができない。当該処分について異議申立てをしたときは、当該異議申立てについての
 決定があった日の翌日から起算して1年を経過したときも、審査請求することはでき
 ない。ただし、正当な理由があるときは、審査請求期間は延長される。

(2)審査請求期間の趣旨
審査請求期間を徒過して審査請求を行った場合は、不適法として却下される。
・客観的審査請求期間が定められているのは、主観的審査請求期間だけでは、行政上の
 法律関係が不安定なまま継続する可能性があるからである。
・主観的審査請求期間も客観的審査請求期間も初日不算入。

(3)処分があったことを知った日(1項)
・「処分があった日」とは、基本的には「処分がなされたことを現実に知った日」であ
 るが、一定の場合には「処分がなされたことが社会通念上了知できる状態になった
 日」であると判断している(以下の最高裁判例参照)。
・処分が告示、公示、公告された場合はどうか。判例は、処分通知と共に公告があった
 場合について、処分通知を受けて処分のあったことを知った日が「知った日」である
 とする一方、多数の関係者に告示を持って通知される場合、告示があった日が「知っ
 た日」に当たるとする場合もある。

●● 最高裁判例「権利変換処分取消」(民集第47巻10号5530頁)
【理由】
市町村がした権利変換に関する処分の取消しを求める訴えは、都道府県知事に対する審
査請求についてその裁決を経た後でなければ提起することができないものとされ、右審
査請求は処分があったことを知った日の翌日から起算して六〇日以内にしなければなら
ないものとされている(行政不服審査法一四条一項本文)。そして、処分の名宛人以外
の第三者の場合については、諸般の事情から、右第三者が処分があったことを了知した
ものと推認することができるときは、その日を右にいう「処分があったことを知った
日」としてその翌日を右第三者の審査請求期間の起算日とすることができるものという
べきである。

●● 最高裁判例「裁決取消請求事件」(民集第56巻8号1903頁)
【要旨】
行政処分が個別の通知ではなく告示をもって多数の関係権利者等に画一的に告知される
場合には,行政不服審査法14条1項にいう「処分があったことを知った日」とは,告
示があった日をいう。

(4)やむをえない理由(1項)
・やむをえない理由とは、審査請求人が通常の注意を払っても避けることのできない客
 観的な事情をいい、単に主観的な事情では足りない。
・処分庁が審査請求期間に関する教示をしなかったとしても、誤った審査請求期間を教
 示した場合と異なり、審査請求期間を徒過したことは法の不知に起因するものという
 べきであり、行政不服審査法58条が審査請求期間の進行を止めるわけではない。

●● 昭和45. 5.27 東京地裁 「裁決取消請求並びに審査請求棄却処分取消請求併合事
   件」
【理由】
行政不服審査請求法一四条一項但書にいう審査請求期間徒過についての「やむをえない
理由」とは、同条項がその事由として「天災その他」を例示していることからみても、
また、同条項が審査請求期間徒過に対する行政救済につき右のごとき基準を定めたの
は、とかく行政庁の恣意に流れる傾向のあつた旧訴願法八条三項の宥恕の制度を改め、
その救済を可及的に画一化せんとする法意に出たものであることにかんがみても、審査
請求人が審査の請求をするにつき通常用いられると期待される注意をもつてしても避け
ることのできない客観的な事由を意味するものと解するのが相当である。

(5)正当な理由(3項)
・正当な理由は、第1項但書の「やむをえない理由」より広い概念であり、天災等の客
 観的事情に限られる訳ではない。

(6)不服申立ての拡張
不服申立期間中であれば、他の部分に対する不服申立てを行ったり、不服申立ての趣旨
を変更することもできる。しかしながら、不服申立期間を経過した後では、その時まで
に争っていなかった部分を争うことはできなくなる(不可争力)。

■ 誤った教示をした場合の救済
第十八条 審査請求をすることができる処分(異議申立てをすることもできる処分を除
く。)につき、処分庁が誤つて審査庁でない行政庁を審査庁として教示した場合におい
て、その教示された行政庁に書面で審査請求がされたときは、当該行政庁は、すみやか
に、審査請求書の正本及び副本を処分庁又は審査庁に送付し、かつ、その旨を審査請求
人に通知しなければならない。
2 前項の規定により処分庁に審査請求書の正本及び副本が送付されたときは、処分庁
は、すみやかに、その正本を審査庁に送付し、かつ、その旨を審査請求人に通知しなけ
ればならない。
3 第一項の処分につき、処分庁が誤つて異議申立てをすることができる旨を教示した
場合において、当該処分庁に異議申立てがされたときは、処分庁は、すみやかに、異議
申立書又は異議申立録取書(第四十八条において準用する第十六条後段の規定により陳
述の内容を録取した書面をいう。以下同じ。)を審査庁に送付し、かつ、その旨を異議
申立人に通知しなければならない。
4 前三項の規定により審査請求書の正本又は異議申立書若しくは異議申立録取書が審
査庁に送付されたときは、はじめから審査庁に審査請求がされたものとみなす。

(1)教示義務と誤った教示
・57条1項:不服申立て人の便宜のため、行政庁は、どの行政機関に、いつまでに、
 どのような不服申立てができるのかについて情報提供することになっている。
・18条及び19条はこのような教示が間違っていた場合について、教示を受けた者を
 救済することを意図している。

(2)誤った審査庁を教示した場合
・1項:異議申し立てはできないが審査請求ができる処分について、正規の審査庁では
 ない行政庁を誤って審査庁として教示した場合、審査請求人が教示された当該行政庁
 に審査請求書を提出したとき、当該行政庁は速やかに処分庁若しくは正規の審査庁に
 これを送付しなければならない。
・2項:誤った教示により審査庁とされた行政庁から処分庁に審査請求書が送付された
 ときは、処分庁は速やかにそれを正規の審査庁に送付し、同時にその旨を審査請求
 に通知しなければならない。

(3)不服申立ての種類を誤って教示した場合(3項)
・異議申し立てはできないが審査請求ができる処分について、審査請求ができると教示
 すべきであるにもかかわらず、処分庁が誤つて異議申立てをすることができる旨を教
 示した場合、不服申立て人が処分庁に異議申立てをしたときは、処分庁は、速やか
 に、異議申立書又は異議申立録取書を審査庁に送付し、同時に、その旨を異議申立人
 に通知しなければならない。

(4)誤った教示に従った場合の救済
・誤って教示された行政庁に審査請求異議申立てをしたが、18条1項、3項の規定によ
 り審査請求書や異議申立書が最終的に正規の審査庁に送付されたとき、はじめから適
 法な審査請求が正規の審査庁に対してなされたとして扱われる。

●● 昭和49. 6.19 千葉地裁「仮換地指定処分取消請求事件」
【理由】
出訴期間との関係においては、行政事件訴訟法一四条四項「出訴期間は処分又は裁決に
つき審査請求をすることが出来る場合において審査請求があつたときは、審査請求をし
た者についてはこれに対する裁決があつたことを知つた日から起算される。」に準じて
考え、本件のように行政不服審査法一八条三項による送付義務を負う処分庁が同義務不
履行のため、同条四項による擬制を受けられないペンデイング(未決定)な状態にある
場合には出訴期間は進行しないものと解するのが相当である。

■ 誤った審査請求期間を教示した場合とその救済
第十九条 処分庁が誤つて法定の期間よりも長い期間を審査請求期間として教示した場
合において、その教示された期間内に審査請求がされたときは、当該審査請求は、法定
審査請求期間内にされたものとみなす。

・法定の審査請求期間より長い期間を誤って教示したとき、審査請求人がその教示され
 た期間内に審査請求を行ったとき、当該審査請求は、法定の審査請求期間内にされた
 ものとみなされる。
・法定の審査請求期間が徒過した後に、誤った審査請求期間の教示を受け、この期間内
 に審査請求を行った場合は、既に法定の審査請求期間が徒過しているので、本条によ
 る救済はない(判例)。

■ 異議申立前置主義の原則
第二十条 審査請求は、当該処分につき異議申立てをすることができるときは、異議申
立てについての決定を経た後でなければ、することができない。ただし、次の各号の一
に該当するときは、この限りでない。
一 処分庁が、当該処分につき異議申立てをすることができる旨を教示しなかつたと
き。
二 当該処分につき異議申立てをした日の翌日から起算して三箇月を経過しても、処分
庁が当該異議申立てにつき決定をしないとき。
三 その他異議申立てについての決定を経ないことにつき正当な理由があるとき。

・処分についての不服申立ては、通常、審査請求異議申立てのどちらか一方を提起で
 きるのみであるが、法律に特別の定めがある場合、これら双方を提起することが出来
 る。このような場合、原則として、異議申立ての決定を経た後でなければ審査請求
 ることができない(異議申立前置主義)。
→ 異議申立てが棄却された場合、審査請求することができるのは、原処分(異議申立
  ての対象になった処分)についてであって、棄却された異議申立てに対する決定に
  ついて審査請求することはできない。
★ その点で、異議申立て審査請求の関係は、訴訟の一審、二審の関係にはない。

(1)異議申立てについての決定を経た後
異議申立てについての決定:適法な異議申立てについての決定であり、異議申立期間
 を徒過した不適法な異議申立てについての却下決定は、これには当たらない。

●● 昭和56. 2. 4 名古屋高裁金沢支部「裁決取消請求控訴事件」
【理由】
行政不服審査法二〇条によれば、審査請求は、原処分につき異議申立てをすることがで
きるときは、原則として異議申立てについての決定を経た後でなければすることができ
ないとされ、この場合の異議申立てについての決定とは本案に関する決定であることを
要し、異議申立ての適法要件を欠くためこれを却下した決定は含まれないと解されると
ころ、本件においては、原処分についての異議申立てが不適法として却下されたことか
ら、控訴人においてさらに審査請求に及んだものであることは当事者間に争いがなく、
かつ、右却下の理由が異議申立て期間の徒過という補正のできない適法要件の欠如であ
ることが一見して明らかな場合であつたこと前記のとおりであるから、本件審査請求
ついてはその適法要件の一つである異議申立て前置を欠きかつその補正ができないこと
が一見して明らかな場合であつたということができる。

(2)異議申立てをした日の翌日から起算して三箇月を経過しても、処分庁が当該異議
   申立てにつき決定をしないとき(2号)
異議申立てをしてから3ヶ月経たないうちに審査請求をした場合、この審査請求は不
 適法であるが、審査請求について不適法却下裁決が下されないまま、3ヶ月が過ぎれ
 ば、審査請求は適法となる。
審査請求期間の起算点は、3ヶ月経過した時点からであるとする説と、異議申立決定
 が下された時点からであるとする説があるが、審査請求人の権利保護のために、より
 長い審査請求期間を確保する後説を支持すべきである。

(3)正当な理由があるとき(3号)
・1号、2号には当てはまらないが、なお異議申立前置主義をとらなくてよい正当な理
 由がある場合を指している。具体的には、処分庁の対応から異議申立が棄却される結
 論がかなりの確度で推測できる場合などである。

●● 最高裁判例「行政処分取消請求」(民集第12巻9号1431頁)
【理由】
事態が推移したものであれば上告人らとしては前記和解調書謄本の提出によつて本件買
収計画の取消さるることを期待するのは当然であり、従つて法定の期間内に異議の申立
をしなかつたのも無理からぬ次第と認めざるを得ないから本件の場合は特段な事情の認
められない限り上告人らに本件訴願について前示にいわゆる正当な事由があつたものと
認めるを相当とする。

■ 補正の意義
第二十一条 審査請求が不適法であつて補正することができるものであるときは、審査
庁は、相当の期間を定めて、その補正を命じなければならない。

審査請求が不適法であるが、補正が可能であるとき、一定の期間を定めてその期間内
 に補正を行うよう、審査庁は審査請求人に命じなければならない。
・補正命令を受けて所定の期間内に補正がなされた場合は、当初から適法な審査請求
 なされたものと扱われる。
・補正命令に応じない場合及び「相当の期間」経過しても補正がなされない場合は、通
 常、却下裁決が下されることになる。
・審査庁が補正命令を出すべきであるにもかかわらず、いきなり却下裁決を下した場
 合、この却下裁決は本条に違反する違法な裁決であり、取り消されることがある。

●● 昭和51. 4. 8 津地裁「行政処分取消請求事件」
【理由】
本件昭和四八年九月一八日付却下決定には、本件不服申立に関する原告の意思表示の解
釈を誤り、形式的な不備を補正し、又は補正を命じなかつた点において瑕疵があるもの
というべきであり、右却下決定はこの点において取消を免れない。

■ 弁明書提出要求権
第二十二条 審査庁は、審査請求を受理したときは、審査請求書の副本又は審査請求
取書の写しを処分庁に送付し、相当の期間を定めて、弁明書の提出を求めることができ
る。
2 弁明書は、正副二通を提出しなければならない。
3 前項の規定にかかわらず、情報通信技術利用法第三条第一項の規定により同項に規
定する電子情報処理組織を使用して弁明がされた場合には、弁明書の正副二通が提出さ
れたものとみなす。
4 前項に規定する場合において、当該弁明に係る電磁的記録については、弁明書の正
本又は副本とみなして、次項及び第二十三条の規定を適用する。
5 処分庁から弁明書の提出があつたときは、審査庁は、その副本を審査請求人に送付
しなければならない。ただし、審査請求の全部を容認すべきときは、この限りでない。

・審査庁が「審査請求書」の副本又は「審査請求録取書」の写しを処分庁に送付し、処
 分庁に「弁明書」を提出するよう求めることができる。
→ 弁明書の提出を求める権限はあるが、提出を求めるべき義務まではない。
・また、審査請求人から、弁明書の提出を求めるべきであるとの要求があった場合、審
 査庁は弁明書の提出を要求するべく義務づけられるかについての判断は分かれている
 が、裁判例の多数は否定している。
・弁明書の提出期限についての制限はない(→ 出さなければ、それまで)。

●● 昭和44. 6.26 大阪地裁 「裁決取消請求事件」
【理由】
殊に本件審査請求事件のように、審査請求人である原告より弁明書副本の送付につき請
求があつた場合には、審査庁は必ず処分庁より弁明書の提出を受けた上、その副本を審
査請求人に送付すべきである。

■ 反論書提出権
第二十三条 審査請求人は、弁明書の副本の送付を受けたときは、これに対する反論書
を提出することができる。この場合において、審査庁が、反論書を提出すべき相当の期
間を定めたときは、その期間内にこれを提出しなければならない。

審査請求人と処分庁の手続的地位の対等性を確保すること及び弁明書と反論書の相互
 応酬によって十分な主張・立証を尽くさせて審査庁が適正な判断を下せるようにする
 ことが目的である。
・反論書の提出権は、反論の内容について審査庁に考慮してもらえる地位を含むため、
 反論書の内容を無視して下した裁決は違法となる。

■ 参加人
第二十四条 利害関係人は、審査庁の許可を得て、参加人として当該審査請求に参加す
ることができる。

・参加人となった者は、審査請求の審理手続において審査請求人と同等の手続的権利を
 保障される。(例:口頭意見陳述申立権、証拠書類等提出権等)
・ただし、参加人は審査請求人とは異なり、執行停止の申立てや審査請求の取り下げは
 できない(34条・39条参照)。

■ 利害関係人の範囲
二十四条
2 審査庁は、必要があると認めるときは、利害関係人に対し、参加人として当該審査
請求に参加することを求めることができる。

・利害関係人は、審査請求人と同一の利害を有する者だけではなく、審査請求人と反対
 の利害を有する者も含まれる。
・事実上不利益が及ぶ者まで広く利害関係人に含まれるわけではないが、係争処分につ
 いて不服申立適格や原告適格をもつ第三者は、本条の利害関係人に当たる。

●● 昭和54. 5.22 静岡地裁 「裁決取消請求事件」
【理由】
原告は建築主事の違法な確認処分によつて国民が道路から受ける反射的利益である通行
権を阻害されたから、原告には参加について利害関係がある旨主張するが、建築主事は
建築確認に際して当該建物の敷地の所有権、利用権の有無等の実体的権利関係につき審
査することは要件とされていないものと解されるから、原告のいう付近の住民の通行権
も建築確認の審査対象に含まれるものではないと解すべきである。

■ 書面審理主義の原則
第二十五条 審査請求の審理は、書面による。ただし、審査請求人又は参加人の申立て
があつたときは、審査庁は、申立人に口頭で意見を述べる機会を与えなければならな
い。
2 前項ただし書の場合には、審査請求人又は参加人は、審査庁の許可を得て、補佐人
とともに出頭することができる。

・書面審理主義を原則とするが、申立てがあれば口頭審理も許容する。
・補佐人:専門知識をもって審査請求人や参加人をサポートするが、代理人と異なり、
 単独では出頭できない。

(1)口頭で意見を述べる機会(1項)
審査請求人と処分庁が対峙して相互に応酬する当事者主義的構造を取り入れたものと
 する説と、処分庁の出席を認めていないので単に審査請求人が意見を述べる手続でし
 かないとする説があり、争いがある。
→ 非対審構造:審査請求人と処分庁が、審査庁で、攻撃防御を行うという対審構造ま
  では予定していない。
・口頭意見陳述を公開で行うかどうかについて明文の規定はない。
→ 審査請求人や参加人に公開審理請求権までを付与するものではない。

(2)口頭意見陳述機会提供義務
審査請求人が口頭審理を申し立てたにもかかわらず、口頭審理を行わずに採決を下し
 たとき、この裁決は違法である。
審査請求が不適法で補正ができないことが明らかな場合は、申立てがあっても口頭審
 理を行わずに採決を下すことが許される。

●● 昭和56. 2. 4 名古屋高裁金沢支部「裁決取消請求控訴事件」
【理由】
審査請求についても、異議申立てにつき前述したところと同じく、それが不適法であつ
てかつその補正ができないことが一見明白である場合には、口頭審理の申立てに対しそ
の機会を与えなくても違法ではないと解される。

●● 昭和45. 2.24 東京地裁「行政処分ならびに裁決取消請求事件」
【理由】
行政不服審査法第四八条、第二五条第一項は、異議申立ての審理方式について、書面審
理主義を採用しながら、ただし書きを設け、異議申立人または参加人の申立てがあつた
ときは、その申立人に口頭による意見陳述の機会を与うべきこととしているが、同法に
よる行政不服審査制度が「行政庁の違法又は不当な処分」から「国民の権利利益の救済
を図る」ことを直接の目的とし(同法第一条参照)、(略)処分について不服申立て
した国民または利害関係人の審理手続への関与を広範囲に認めていること、しかるに行
政不服審査法第二五条第一項ただし書きによる口述機会付与の申立てが審査庁によつて
正当な理由もなく拒否し得るものとすると、同法による審査制度の右のような基本的建
前が全く骨抜きになるものと解されることから・・・(略)・・・右に示した口述機会
付与の申立ては、不服申立ての当事者たる国民および利害関係人に権利として保障され
、審査庁において、既に処分を正当とする実体的心証を得ているというような理由によ
つて、これを拒否し得るものではないと解するのが相当である。

(3)口頭審理手続と口頭審理外の職権調査
審査請求は職権主義的手続であり、審査庁は職権で各種の調査を行うことができる。
・例:参考人に対する陳述、鑑定要求(27条)、物件の提出要求(28条)、検証
 (29条)、審査請求人等に対する審尋(30条)
・審査庁が口頭審理外で入手した資料や情報は、口頭審理に上程する必要があるかにつ
 いて、判例はその必要はない旨判断している。

(4)職権探知
行政不服審査法に明文の規定はないが、通説は可能であるとしている。
→ ただし、審査庁が職権探知の権限を有していても、職権探知を行うことは義務では
  ない。

●● 最高裁判例「固定資産税審査決定取消」(民集第44巻1号253頁)
【要旨】
固定資産評価審査委員会が口頭審理を行う場合において、口頭審理外で行つた職権調査
の結果を判断の基礎として採用し、審査の申出を棄却するときでも、右職権調査の結果
を口頭審理に上程する手続を経ることは要しない。
【理由】
固定資産評価審査委員会は、当該市町村の条例の定めるところによって、審査の議事及
び決定に関する記録を作成し、地方税法四三〇条の規定によって提出させた資料又は右
の記録を関係者の閲覧に供しなければならないとされているのであって(法四三三条四
項、五項・・・(略))、審査申出人は、右資料及び右条例によって作成される事実の
調査に関する記録を閲覧し、これに関する反論、証拠を提出することができるのである
から、委員会が口頭審理外で行った調査の結果や収集した資料を判断の基礎として採用
し、審査の申出を棄却する場合でも、右調査の結果等を口頭審理に上程するなどの手続
を経ることは要しないものと解すべきである。

■ 証拠書類等提出権
第二十六条 審査請求人又は参加人は、証拠書類又は証拠物を提出することができる。
ただし、審査庁が、証拠書類又は証拠物を提出すべき相当の期間を定めたときは、その
期間内にこれを提出しなければならない。

審査請求人は、証拠書類等を、審査請求書提出時も含めて、いつ提出してもよい。
・ただし、審査請求の審理の最終段階で、初めて証拠書類を提出して審理を遅らせる事
 態が生じる可能性があるため、審査庁は証拠書類の提出期限を定めることができる。

審査請求人や参加人の申立てまたは職権で行うことができるもの:
参考人に陳述、鑑定の要求(27条)、物件の提出要求(28条)、検証(29条)、審査請
求人や参加人の審尋(30条)
→ 申立権は保障されているが、この申立てを認めるかどうかは、審査庁の判断に委ね
  られている。

■ 処分庁の証拠書類等提出権
第三十三条 処分庁は、当該処分の理由となつた事実を証する書類その他の物件を審査
庁に提出することができる。
2 審査請求人又は参加人は、審査庁に対し、処分庁から提出された書類その他の物件
の閲覧を求めることができる。この場合において、審査庁は、第三者の利益を害するお
それがあると認めるとき、その他正当な理由があるときでなければ、その閲覧を拒むこ
とができない。
3 審査庁は、前項の規定による閲覧について、日時及び場所を指定することができ
る。

・26条:審査請求人等に証拠書類等の提出権を付与
・28条:審査庁は、審査請求人若しくは参加人の申立てにより又は職権で、書類その
 他の物件の所持人に対し、その物件の提出を求めることができる。
→ 処分庁は、この物件提出要求に応じる義務はない。
・33条:処分庁に証拠書類提出権を付与
→ 処分庁は審査庁からの提出要求がなくても、自由に証拠書類等を提出することがで
  きる。

(1)審査請求人の証拠書類等閲覧請求権(2項)
審査請求人等は、処分庁から提出された証拠書類その他の物件について閲覧請求でき
 る。
・閲覧請求が拒否されたとき、審査請求人は閲覧請求の拒否自体を対象としてその取り
 消しを求めるのではなく、最終的な裁決を対象にしてその手続的瑕疵を主張して取り
 消しを求めることができる。

●● 昭和56. 9.30 大阪高裁 「所得税更正処分等取消請求控訴事件」
【理由】
閲覧請求権は審査請求人に有利な裁決を得るための手続的利益を保障したものであるか
ら、裁決がその取消事由に該当する程の違法性を帯びるのは、審査請求人が閲覧請求拒
否にかかる書類その他の物件に対し適切な主張や反証を提出することによつて、当該裁
決の結論に影響を及ぼす可能性のある場合に限られるものと解するのが相当である。

(2)正当な理由(2項)
・例えば、閲覧を許すと個人のプライバシーを侵害する場合や、行政運営に多大な支障
 が生ずる場合等を指す。

●● 昭和44. 6.26 大阪地裁 「裁決取消請求事件」
【理由】
閲覧拒否理由としての「正当な理由」には、その例示的文言から明らかなように、書類
開示により第三者の秘密保持の利益を害する場合、即ち閲覧請求権と第三者の利益との
衝突の調整、および書類開示により行政上の秘密を害する場合、即ち閲覧請求権と公益
との衝突の調整が含まれる。そしてこれらの正当理由の根底にあるものの一つには公務
員の守秘義務があると解される。

(3)処分庁から提出された書類その他の物件
・処分庁関係の書類であるが、処分庁が任意に提出したのではないものも閲覧請求の対
 象となるかについては、争いがある。
・審査庁の職員が処分庁に赴いて作成した調査メモが閲覧対象となるかについて、裁判
 例は分かれているが、多数は調査メモを閲覧対象外であるとしている。

●● 昭和44. 6.26 大阪地裁 「裁決取消請求事件」
【理由】
審査法三三条二項前段は、「審査請求人または参加人は、審査庁に対し処分庁から提出
された書類その他の物件の閲覧を求めることができる。」と規定しているが、右規定
は、前示のとおり、審査請求人等に処分庁の処分理由を根拠づける証拠資料を検討する
機会を与えるという重要な意味を有していることを考慮すれば、右規定にいう「処分庁
から提出された書類その他の物件」とは、当該処分の理由となつた事実に対する処分庁
の証拠資料で、審査庁に現に存在するもの(全部、一部もしくはその抜萃たるとを問わ
ない。)をいうと解するのが相当であつて、正式の提出手続を経て提出された書類その
他の物件に限らないと解すべきである。

●● 昭和46. 5.24 大阪地裁「裁決取消請求事件」
【理由】
本件調査メモは本件審査請求の審理に当たつた審査庁の協議官が自ら蒐集した証拠資料
であり、処分庁から提出された証拠資料でないことは明らかで、これはもとより閲覧の
対象とはならないから、被告国税局長がこれが閲覧を拒否したのは何ら違法ではなく原
告のこの点の主張は失当である。

■ 執行停止
第三十四条 審査請求は、処分の効力、処分の執行又は手続の続行を妨げない。
2 処分庁の上級行政庁である審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申
立てにより又は職権で、処分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止
その他の措置(以下「執行停止」という。)をすることができる。
3 処分庁の上級行政庁以外の審査庁は、必要があると認めるときは、審査請求人の申
立てにより、処分庁の意見を聴取したうえ、執行停止をすることができる。ただし、処
分の効力、処分の執行又は手続の続行の全部又は一部の停止以外の措置をすることはで
きない。
4 前二項の規定による審査請求人の申立てがあつた場合において、処分、処分の執行
又は手続の続行により生ずる重大な損害を避けるため緊急の必要があると認めるとき
は、審査庁は、執行停止をしなければならない。ただし、公共の福祉に重大な影響を及
ぼすおそれがあるとき、処分の執行若しくは手続の続行ができなくなるおそれがあると
き、又は本案について理由がないとみえるときは、この限りでない。
5 審査庁は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損
害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分の内容及び
性質をも勘案するものとする。
6 第二項から第四項までの場合において、処分の効力の停止は、処分の効力の停止以
外の措置によつて目的を達することができるときは、することができない。
7 執行停止の申立てがあつたときは、審査庁は、すみやかに、執行停止をするかどう
かを決定しなければならない。

第三十五条 執行停止をした後において、執行停止が公共の福祉に重大な影響を及ぼ
し、又は処分の執行若しくは手続の続行を不可能とすることが明らかとなつたとき、そ
の他事情が変更したときは、審査庁は、その執行停止を取り消すことができる。

(1)執行不停止の原則:審査請求異議申立ての場合とも同じ。
(2)処分庁の上級行政庁である審査庁:職権で執行停止ができる。
(3)処分庁の上級行政庁以外の審査庁:職権での執行停止はできず、審査請求人の申
   立てにより、執行停止をすることができる。
(4)執行停止の要件:必要があると認めるとき(2項、3項)。
(5)執行停止の中止義務(4項但書の場合):執行停止の中止義務までは生じない。
   執行停止してはならないということではない。
(6)違憲立法審査権:行政機関には、違憲立法審査権はないと解されているので、不
   服申立ての審理は、当該法令の合憲性を前提として行われる。

■ 取下げ
第三十九条 審査請求人は、裁決があるまでは、いつでも審査請求を取り下げることが
できる。
2 審査請求の取下げは、書面でしなければならない。

・処分権主義(ただし、取下げができるのは、審査請求人、異議申立人のみ。参加人
 はできない。)
・ 処分についての異議申立て(48条)、不作為についての審査請求異議申立て(52
  条)にも準用。
→ 適法に取り下げられた場合、取下げの撤回はできない。審査請求異議申立てに対
  する最終判断(裁決、決定)が行われた後も、取下げはできない。

■ 裁決の種類
第四十条 審査請求が法定の期間経過後にされたものであるとき、その他不適法である
ときは、審査庁は、裁決で、当該審査請求を却下する。
2 審査請求が理由がないときは、審査庁は、裁決で、当該審査請求を棄却する。
3 処分(事実行為を除く。)についての審査請求が理由があるときは、審査庁は、裁
決で、当該処分の全部又は一部を取り消す。
4 事実行為についての審査請求が理由があるときは、審査庁は、処分庁に対し当該事
実行為の全部又は一部を撤廃すべきことを命ずるとともに、裁決で、その旨を宣言す
る。
5 前二項の場合において、審査庁が処分庁の上級行政庁であるときは、審査庁は、裁
決で当該処分を変更し、又は処分庁に対し当該事実行為を変更すべきことを命ずるとと
もに裁決でその旨を宣言することもできる。ただし、審査請求人の不利益に当該処分を
変更し、又は当該事実行為を変更すべきことを命ずることはできない。
6 処分が違法又は不当ではあるが、これを取り消し又は撤廃することにより公の利益
に著しい障害を生ずる場合において、審査請求人の受ける損害の程度、その損害の賠償
又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分を取り消し又は撤廃す
ることが公共の福祉に適合しないと認めるときは、審査庁は、裁決で、当該審査請求
棄却することができる。この場合には、審査庁は、裁決で、当該処分が違法又は不当で
あることを宣言しなければならない。

・裁決:審査請求に対する審査庁の最終判断(行政行為)
→ 不服申立てから裁決までの期間について、明文の規定はない。裁決が遅れて、不作
  為が違法と判断されても、当該裁決自体は当然には無効とはならない。

〔参考・行政書士法〕
(登録を拒否された場合等の審査請求
第六条の三 
2 前条第一項の規定による登録の申請をした者は、当該申請をした日から三月を経過
しても当該申請に対して何らの処分がされない場合には、当該登録を拒否されたものと
して、総務大臣に対して前項の審査請求をすることができる。この場合においては、審
査請求があつた日に日本行政書士会連合会が同条第二項の規定により当該登録を拒否し
たものとみなす。

審査請求の要件を満たしていない場合に下される「却下裁決」(いわゆる門前払い)
 と、要件を満たし本案について判断する裁決との2種類の裁決がある。
・後者の裁決には、本案について理由がないときに下される「棄却裁決」と、本案につ
 いて理由があるときに下される「認容裁決」、さらに処分が違法又は不当であるが取
 消又は撤廃により公の利益に著しい障害を生ずる場合に下される「事情裁決」があ
 る。

【1】却下裁決
審査請求の要件が満たされていない場合に下される。
・以下の類型がある。
(1)審査請求期間を徒過している場合
(2)処分ではない行為を審査請求の対象としている場合
(3)審査請求を申し立てる資格を欠いている場合

【2】棄却裁決(2項)
・係争処分が違法でも不当でもないときに下される。
審査請求人が主張した違法事由または不当事由が存在しないことが認定されたとき、
 審査庁が直ちに棄却裁決を下してよいかについては争いがある。
審査請求人が主張しなかった違法・不当事由を審査庁が認定して棄却裁決を下すこと
 については、これを肯定する判決がある。

【3】認容裁決(3項・4項)
・認容裁決には、一部認容裁決と全部認容裁決がある。
・事実行為を除く処分についての認容裁決は、当該処分を取り消し又は変更する。
・ 事実行為についての認容裁決は、処分庁に当該事実行為の撤廃又は変更を命じ、同
  時にその旨を宣言する。
→ 撤廃は、事実行為の場合に行われる。
→ 審査庁や再審査庁は、自ら撤廃することはできないので、処分庁に撤廃を命じ、そ
  の旨を裁決で宣言する。これを受けて、処分庁は、自ら撤廃し、決定でその旨を宣
  言する。

【4】変更裁決(5項)
・認容裁決の一つであり、審査庁が処分庁の上級行政庁である場合にのみ発することが
 できる。
・例:免許取消処分を免許停止処分に変更、免許申請棄却処分を免許処分に変更
・変更裁決は、審査請求人にとって不利益に変更するものであってはならない。

【5】事情裁決(6項)
・事情判決と同種の制度。
・係争処分が違法又は不当である場合に、これを取り消すことでかえって関係する第三
 者の重大な利益あるいは多数人の共通利益を害することがある。このような場合に、
 事情裁決が下され、係争処分は取り消さないが、係争処分が違法または不当であるこ
 とを裁決主文で宣言する。
・係争処分が違法だが事情裁決が下された時は、通常は、損害賠償によって救済され
 る。
・係争処分が不当な場合、損害賠償による救済が無理な場合に、損害防止措置又は代償
 措置がどのようにとられるのかが問題となる。

【6】不利益変更禁止の原則
・ 審査請求(40条5項但書)
・ 異議申立て(47条3項但書、4項但書)
・ 再審査請求(56条)

■ 裁決と理由付記・教示
第四十一条 裁決は、書面で行ない、かつ、理由を附し、審査庁がこれに記名押印をし
なければならない。
2 審査庁は、再審査請求をすることができる裁決をする場合には、裁決書に再審査請
求をすることができる旨並びに再審査庁及び再審査請求期間を記載して、これを教示し
なければならない。

・審査庁の恣意的判断を抑制し公正妥当な判断を確保すると共に、後の争訟に付き便宜
 を与えるものである。

(1)理由の程度
・付記される理由は、一般的抽象的なものでは足りず、考慮の結果である結論を示した
 だけでは理由として不十分であり、審査請求の結論に至る論理的な判断過程が明確に
 されることが重要である。

●● 最高裁判例「青色申告承認取消処分取消請求」(民集第16巻12号2557
   頁)
【要旨】
審査決定の通知書に「貴社の審査請求の趣旨、経営の状況、その他を勘案して審査しま
すと、芝税務署長の行つた青色申告届出承認の取消処分は誤りがないと認められますの
で、審査の請求には理由がありません」と記載しただけでは、理由附記としては不備で
あつて、審査決定は違法として取り消すべきである。
【理由】
法人税法三五条五項(昭和三七年法律六七号による削除前)が、審査決定の書面に理由
を附記すべきものとしているのは、訴願法や行政不服審査法による裁決の理由附記と同
様に、決定機関の判断を慎重ならしめるとともに、審査決定が審査機関の恣意に流れる
ことのないように、その公正を保障するためと解されるから、その理由としては、請求
人の不服の事由に対応してその結論に到達した過程を明らかにしなければならない。こ
とに本件のように、当初税務署長がした処分に理由の附記がない場合に、請求人の請求
を排斥するについては、審査請求書記載の不服の事由が簡単であつても、原処分を正当
とする理由を明らかにしなければならない。

■ 裁決の効力発生
第四十二条 裁決は、審査請求人(当該審査請求が処分の相手方以外の者のしたもので
ある場合における第四十条第三項から第五項までの規定による裁決にあつては、審査請
求人及び処分の相手方)に送達することによつて、その効力を生ずる。
2 裁決の送達は、送達を受けるべき者に裁決書の謄本を送付することによつて行な
う。ただし、送達を受けるべき者の所在が知れないとき、その他裁決書の謄本を送付す
ることができないときは、公示の方法によつてすることができる。

■ 拘束力
第四十三条 裁決は、関係行政庁を拘束する。
2 申請に基づいてした処分が手続の違法若しくは不当を理由として裁決で取り消さ
れ、又は申請を却下し若しくは棄却した処分が裁決で取り消されたときは、処分庁は、
裁決の趣旨に従い、改めて申請に対する処分をしなければならない。
3 法令の規定により公示された処分が裁決で取り消され、又は変更されたときは、処
分庁は、当該処分が取り消され、又は変更された旨を公示しなければならない。
4 法令の規定により処分の相手方以外の利害関係人に通知された処分が裁決で取り消
され、又は変更されたときは、処分庁は、その通知を受けた者(審査請求人及び参加人
を除く。)に、当該処分が取り消され、又は変更された旨を通知しなければならない。

・3項:事実行為ではなに処分に関する審査請求の認容裁決について定め、審査庁は、
 裁決で、当該処分の全部又は一部を取り消すとする。
→ この認容裁決は、係争処分の法的効果を取り消す効力がある。
・1項:関係行政庁が裁決の趣旨に沿った行動を取るよう義務づけられる。
・関係行政庁とは、処分庁だけではなく、係争処分に関係する行政庁を広く含んでい
 る。
・拘束力を有するのは認容裁決に限ると解され、却下裁決、棄却裁決には拘束力は働か
 ない。
・不服審査は争訟裁断行為であるから、その結論である裁決は、不可変更力を有し、審
 査庁は一旦下した裁決を変更することはできない。

●● 最高裁判例「異議申立棄却決定取消請求」(民集第28巻5号759頁)
【要旨】
税務署長がした処分につき適法な理由附記のある審査請求棄却の裁決があつても、右処
分に対する異議申立棄却決定につき理由附記の不備を主張してその取消を求める訴の利
益は失われない。
【理由】
原処分を取消し又は変更する裁決は、異議決定庁を拘束するが(旧法七五条、行政不服
審査法四三条、新法一〇二条)、原処分を適法と認めて審査請求を棄却する裁決があつ
ても、異議決定庁は独自の審理判断に基づいて自ら原処分を取消し又は変更することを
妨げないものと解すべきであつて、その可能性が残されているかぎり、異議申立人は異
議決定庁に対し、更に原処分の取消し又は変更を求める利益を依然として保有している
ものといわなければならない。


■■■ 行政不服審査法の見直し
先日の日本経済新聞に、総務省が行政不服審査制度の抜本的見直しを行う方針を固めた
との記事が掲載されていました。再来年の通常国会に、行政不服審査法の改正案を提出
する方針とのことなので、平成21年頃に施行されるのではないでしょうか。

この背景には、行政手続法が平成6年10月に施行されたのに対して、行政不服審査法
昭和37年10月に施行されたことに伴う時間軸の差が、現実問題として無視できないほど
に大きくなってしまったということがにあるようです。すなわち、行政救済法の一角を
担うべき行政不服審査法が、本来の目的や機能を十分に果たせなくなっているという現
実問題の存在があるようです。

主な改正点としては、標準的な審査期間の設定(標準処理期間に対応。行政手続法
条)、異議申立て審査請求の一本化、行政庁の担当者への質問権を認めること、処分
に関係する書類全般の閲覧請求権を認めること等が挙げられていました。これらの点
は、行政不服審査法のポイントでもあるので、ご注意ください。

私が思ったポイントは、つぎのとおりです。
(ア)行政不服審査法が現実には機能していないということは、今後、行政不服審査法
   を国民が活用する機会が増えるのではないか。そうなった場合、行政書士の出番
   は増加するのではないか。ただし、法律上の争訟やこれに類似する事案の場合に
   は、弁護士法72条の問題があることについては、ご承知のことと思います。
(イ)一方、行政不服審査法の目的は、「行政庁の違法又は不当な処分その他公権力の
   行使に当たる行為に関し、国民に対して広く行政庁に対する不服申立てのみちを
   開くこと」(1条)にあるので、行政書士は、ますます行政手続に関するプロと
   しての能力を求められるようになるのではないか。すなわち、申請手続そのもの
   を熟知するだけでは不十分で(これだけでは、単なる申請代行業で終わりま
   す。)、行政サイドの担当者等と十分に渡り合えるだけの行政に関する法理論が
   求められるのではないか。
(ウ)同様に、街の法律家として、「簡易迅速な手続による国民の権利利益の救済を図
   る」(1条)ことに寄与できる能力も、求められることになるのではないか。

ところで、新しい法令が制定された時や法令の改正時期が、行政書士試験のみならず、
行政書士の実務においても重要であることはいうまでもありません。現実の問題を踏ま
えた近い将来に予想される改正でもあり、当面の行政書士試験には直接関係ないにせ
よ、開業後の実務を見据えた場合には、到底無視できる内容のものではありません。ま
だ何か具体的な決定が正式になされたわけではありませんが、行政法、特に行政不服審
査法の重要性についてはご理解頂けたでしょうか。

★ なお、このメルマガ〔1〕の「■■■総則」、「■趣旨」の「問題点」も参照して
  ください。

■■■ お願い  
継続して発刊するためには読者の皆様のご支援が何よりの活力になります。ご意見、ア
ドバイス、ご批判その他何でも結構です。内容、頻度、対象の追加や変更等について
も、どうぞ何なりと e-mail@ohta-shoshi.com までお寄せください。

質問は、このメールマガジンの趣旨の範囲内のものであれば、大歓迎です。ただし、多
少時間を要する場合があります。


■■■ 編集後記 
行政手続法に続き、今回と次回は行政不服審査法です。以下、行政事件訴訟法、国家賠
償法、損失補償法と続く予定です。行政不服審査法のポイントは、行政手続法との比較
(今回の問題編を参照してください。)と(行政手続法の場合と同じですが、)行政不
服審査法内の「横」比較です。

行政手続法と同様に、行政不服審査法も条文数が少ないので(全部で58条)、全条文を
通読することをお勧めします。また、準用規定については、どの条文の、どの部分が、
どのように準用されているのかを条文一つずつ確認することが重要です(いわゆる
「横」比較の視点です。)。行政不服審査法では、審査請求に関する規定の異議申立て
についての準用(48条)、処分についての審査請求に関する規定の不作為についての不
服申立てへの準用(22条3項)、再審査請求(56条)および教示をしなかった場合の不
服申立て(58条1項)に準用規定があります。

さらに、判例六法に掲載された判例については、最高裁判決ではなくても、目を通して
おくべきです。なお、判例六法は、大判の判例六法ではなく、コンサイス版の判例六法
で十分です。


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 マガジンタイトル:新・行政書士試験 一発合格!
 発行者:行政書士 太田誠   東京都行政書士会所属(府中支部)
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