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ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
石下雅樹法律・
特許事務所 第76号 2012-01-06
http://www.ishioroshi.com/
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弊所取扱分野紹介(
契約書作成・
契約書チェック・英文
契約)
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1 今回の判例 「全品半額」広告と景表法
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
H23.7.26 消費者庁措置命令
本年最初の発行となる本稿では、消費者庁による措置命令を取り
上げます。
大手紳士服販売会社5社は、平成21年から平成22年の間、テ
レビコマーシャルや新聞折り込みチラシにおいて、目立つ大きな文
字で「全品半額」と表示しました。
しかし、実際には、半額で購入できる商品が一定金額以上の商品
に限られていたり、半額で購入できる商品が1点のみであったり、
チラシに印刷された割引券を持参した場合に限られていたり、特設
コーナーにある商品が半額の対象になっていたりという状況で、セ
ール対象店舗における半額対象商品の割合(種類ベース)は、事業
者ごとに異なりますが、26%~82%というものでした。
また、各
事業者のテレビCMやチラシには、半額となる条件が注
意書きとして表示されていましたが、その文字は表示時間が短かっ
たり、「全品半額」の文字に比べて著しく小さいなど、明瞭に記載
されていたとはいえないものでした。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 消費者庁の判断
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
消費者庁は、上のような事実を認定し、以下のように判断しまし
た。
大手紳士服販売会社5社は、商品の取引条件について、「実際の
ものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認さ
れるため、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理
的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示をしていたもの
であり、この表示は、
景品表示法第4条第1項第2号に該当するもので
あって、かかる行為は、同項の規定に違反する」。
そして、当該
事業者に対し、「全品半額」という表示が実際のも
のよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認され
る表示であり、景表法に違反するものであることを一般消費者に周
知徹底しなければならないといいった内容を含めた命令を出しまし
た。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3 解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
(1)有利誤認表示とは
景品表示法(景表法)4条1項2号は、
事業者が、自己の供給す
る商品・サービスの取引において、価格その他の取引条件について
、一般消費者に対して
(ア)実際のものよりも著しく取引の相手方に著しく有利であ
ると一般消費者に誤認されるもの
(イ)競争
事業者にかかるものよりも取引の相手方に著しく有
利である一般消費者に誤認されるもの
であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理
的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を禁止していま
す。これをいわゆる有利誤認表示の禁止といいます。
そして、景表法に違反する不当な表示がなされているという疑い
がある場合、消費者庁は、調査を実施し、その結果違反行為が認め
られた場合、当該行為を行っている
事業者に対し「措置命令」をし
ます。
また、調査の結果違反の事実が認められない場合でも、違反のお
それのある行為について「警告」がされたり、違反につながるおそ
れのある行為について「注意」の措置がとられることがあります。
(2) 広告表示と前提条件
他社との競争に打ち勝つためにも、広告において、自社の商品や
サービスが他社よりも魅力的であることを消費者に訴求すること、
そしてその一部として、低価格や割引が広告で強調して表示される
場合があるのは理解できます。
しかし、上のとおり、価格や割引について一定の前提条件がある
場合には、その一定の前提条件を表示する必要があり、かつそれは
はっきりと分かりやすく表示される必要があります。
他方、そのような表示が見にくかったり、分かりにくいものであ
る場合、本件のように、景表法に違反する行為として処分の対象と
なる場合が生じます。特に、措置命令を受け、これが公表されたと
いった場合には、企業としての信用に無視できないダメージが及び、
かえって顧客が離れていく可能性も否定できません。
このようなリスクを考えると無闇に訴求効果を追求するのみなら
ず、前提条件についてもきちんと分かりやすく伝えることは、コン
プライアンスのみならず、長期的視点から企業の利益になるのでは
ないかと思われます。
(3)
公正取引委員会のガイドライン
この点で、
公正取引委員会の「見にくい表示に関する実態調査報
告書-打消し表示の在り方を中心に-」というガイドラインは参考
になるかもしれません。このようなガイドラインを参考にしつつ、
法の趣旨に沿った適正な広告を行なうよう留意することは重要では
ないかと考えられます。
http://www.jftc.go.jp/pressrelease/08.june/08061303hontai.pdf
このガイドラインでは、ある取引条件を広告で強調するとともに
打消し表示を行う場合、「当該打消し表示を明りょうに表示するこ
とにより、強調表示と打消し表示とを合わせた表示物全体として、
その内容又は取引条件が一般消費者に正確に理解されるようなもの
でなければならない」と述べ、具体的には以下に例示されるような
点に留意するようにと述べています(なお、すべてを網羅的に述べ
ているわけではありませんので、詳細は上記ガイドラインをご覧く
ださい)。
(ア) 打消し表示の配置箇所
打消し表示は、強調表示に近接した箇所に併記することが
最も望ましいとされています。
(イ)強調表示の文字と打消し表示の文字の大きさのバランス
強調表示の文字の大きさとのバランスの上で表示すること
が重要であるとされています。
例えば、強調表示と同一の大きさにする、強調表示と著し
く異ならない程度の文字の大きさとすることがその一例であ
るとされています。
(ウ) 打消し表示の文字の大きさ
文字の大きさが著しく小さい場合には一般消費者が打消し
表示を見落としてしまう可能性が残るため、最低でも8ポイ
ント以上の大きさで表示することが必要であるとされていま
す。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4 少しだけむだ話~執筆者のご紹介
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拙稿をご愛読賜り、誠にありがとうございます。
以下のURLから、拙稿の執筆者である石下雅樹法律・
特許事務所代
表の石下雅樹弁護士についての「100問100答」が掲載されています
。
http://www.ishioroshi.com/btob/lawyer_ishioroshi_QA.html
執筆者のキャラクターが手に取るように分かる??(かもしれま
せん??)。ご関心のある方、お手すきの際ご笑覧くだされば幸い
です。
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本マガジンの無断複製、転載はご遠慮ください。
ただし、本マガジンの内容を社内研修用資料等に使用したいといっ
たお申出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原
則として無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアド
レス宛、メールでお申出ください。
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【編集発行】石下雅樹法律・
特許事務所
〒220-0011 神奈川県横浜市西区高島2-10-13
横浜東口ビル4階
mailto:
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本年最初の発行となる本稿では、消費者庁による措置命令を取り
上げます。
大手紳士服販売会社5社は、平成21年から平成22年の間、テ
レビコマーシャルや新聞折り込みチラシにおいて、目立つ大きな文
字で「全品半額」と表示しました。
しかし、実際には、半額で購入できる商品が一定金額以上の商品
に限られていたり、半額で購入できる商品が1点のみであったり、
チラシに印刷された割引券を持参した場合に限られていたり、特設
コーナーにある商品が半額の対象になっていたりという状況で、セ
ール対象店舗における半額対象商品の割合(種類ベース)は、事業
者ごとに異なりますが、26%~82%というものでした。
また、各事業者のテレビCMやチラシには、半額となる条件が注
意書きとして表示されていましたが、その文字は表示時間が短かっ
たり、「全品半額」の文字に比べて著しく小さいなど、明瞭に記載
されていたとはいえないものでした。
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2 消費者庁の判断
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消費者庁は、上のような事実を認定し、以下のように判断しまし
た。
大手紳士服販売会社5社は、商品の取引条件について、「実際の
ものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認さ
れるため、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理
的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示をしていたもの
であり、この表示は、景品表示法第4条第1項第2号に該当するもので
あって、かかる行為は、同項の規定に違反する」。
そして、当該事業者に対し、「全品半額」という表示が実際のも
のよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認され
る表示であり、景表法に違反するものであることを一般消費者に周
知徹底しなければならないといいった内容を含めた命令を出しまし
た。
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3 解説
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(1)有利誤認表示とは
景品表示法(景表法)4条1項2号は、事業者が、自己の供給す
る商品・サービスの取引において、価格その他の取引条件について
、一般消費者に対して
(ア)実際のものよりも著しく取引の相手方に著しく有利であ
ると一般消費者に誤認されるもの
(イ)競争事業者にかかるものよりも取引の相手方に著しく有
利である一般消費者に誤認されるもの
であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理
的な選択を阻害するおそれがあると認められる表示を禁止していま
す。これをいわゆる有利誤認表示の禁止といいます。
そして、景表法に違反する不当な表示がなされているという疑い
がある場合、消費者庁は、調査を実施し、その結果違反行為が認め
られた場合、当該行為を行っている事業者に対し「措置命令」をし
ます。
また、調査の結果違反の事実が認められない場合でも、違反のお
それのある行為について「警告」がされたり、違反につながるおそ
れのある行為について「注意」の措置がとられることがあります。
(2) 広告表示と前提条件
他社との競争に打ち勝つためにも、広告において、自社の商品や
サービスが他社よりも魅力的であることを消費者に訴求すること、
そしてその一部として、低価格や割引が広告で強調して表示される
場合があるのは理解できます。
しかし、上のとおり、価格や割引について一定の前提条件がある
場合には、その一定の前提条件を表示する必要があり、かつそれは
はっきりと分かりやすく表示される必要があります。
他方、そのような表示が見にくかったり、分かりにくいものであ
る場合、本件のように、景表法に違反する行為として処分の対象と
なる場合が生じます。特に、措置命令を受け、これが公表されたと
いった場合には、企業としての信用に無視できないダメージが及び、
かえって顧客が離れていく可能性も否定できません。
このようなリスクを考えると無闇に訴求効果を追求するのみなら
ず、前提条件についてもきちんと分かりやすく伝えることは、コン
プライアンスのみならず、長期的視点から企業の利益になるのでは
ないかと思われます。
(3)公正取引委員会のガイドライン
この点で、公正取引委員会の「見にくい表示に関する実態調査報
告書-打消し表示の在り方を中心に-」というガイドラインは参考
になるかもしれません。このようなガイドラインを参考にしつつ、
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ないかと考えられます。
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このガイドラインでは、ある取引条件を広告で強調するとともに
打消し表示を行う場合、「当該打消し表示を明りょうに表示するこ
とにより、強調表示と打消し表示とを合わせた表示物全体として、
その内容又は取引条件が一般消費者に正確に理解されるようなもの
でなければならない」と述べ、具体的には以下に例示されるような
点に留意するようにと述べています(なお、すべてを網羅的に述べ
ているわけではありませんので、詳細は上記ガイドラインをご覧く
ださい)。
(ア) 打消し表示の配置箇所
打消し表示は、強調表示に近接した箇所に併記することが
最も望ましいとされています。
(イ)強調表示の文字と打消し表示の文字の大きさのバランス
強調表示の文字の大きさとのバランスの上で表示すること
が重要であるとされています。
例えば、強調表示と同一の大きさにする、強調表示と著し
く異ならない程度の文字の大きさとすることがその一例であ
るとされています。
(ウ) 打消し表示の文字の大きさ
文字の大きさが著しく小さい場合には一般消費者が打消し
表示を見落としてしまう可能性が残るため、最低でも8ポイ
ント以上の大きさで表示することが必要であるとされていま
す。
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4 少しだけむだ話~執筆者のご紹介
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拙稿をご愛読賜り、誠にありがとうございます。
以下のURLから、拙稿の執筆者である石下雅樹法律・特許事務所代
表の石下雅樹弁護士についての「100問100答」が掲載されています
。
http://www.ishioroshi.com/btob/lawyer_ishioroshi_QA.html
執筆者のキャラクターが手に取るように分かる??(かもしれま
せん??)。ご関心のある方、お手すきの際ご笑覧くだされば幸い
です。
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本マガジンの無断複製、転載はご遠慮ください。
ただし、本マガジンの内容を社内研修用資料等に使用したいといっ
たお申出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原
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【編集発行】石下雅樹法律・特許事務所
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