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ドロップシッピングと特定商取引法

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石下雅樹法律・特許事務所 第86号 2012-09-04
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1 今回の判例 ドロップシッピングと特定商取引法
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大阪地裁 平成23年3月23日判決

 今回は、インターネットショッピングの運営支援会社Y社と、ネ
ットショップのオーナーX氏らとの訴訟です。

 Y社は、同社の運営するネットショップ運営サポートサービスに
つき、商品の販売サイト、仕入れ、在庫管理および商品の配送を全
てY社が代行し、オーナーは顧客対応や仕入れ代金の支払いなどを
行うだけでよいという簡単なシステムであり、未経験者でも運営可
能とうたい、ネットショップのオーナーを募集しました。

 X氏らは、上記広告を見てY社との契約を締結し、契約金を支払
いましたが、実際の運営方法が広告とは違っており、特商法に定め
る「不実告知」があったとして、Y社に対し、同法に基づく契約
除(クーリング・オフ)と契約金の返還を求めました。

 本件では、上記サービスの利用契約特定商取引法(特商法)に
定める「業務提供誘引販売取引」といえるどうかという点が主な争
点となりました。


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2 裁判所の判断
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裁判所は、以下のとおり判断し、X氏らの請求をすべて認めました


(1)実際にはX氏らに商品選択や価格決定等の自由がなかったこ
とを考えると、ネットショップの実質的な運営主体はY社であり、
X氏はY社の指示のもとY社に従属して運営業務の一部を行ってい
たから、X氏らの業務は、Y社から提供された「業務」であった。

(2)相手方の利益保護や取引の適正化という特商法51条の趣旨
から考えると、特商法上の「業務」とは、いわゆる「内職仕事」や
「モニター仕事」のような仕事に限られず、X氏らが行うような単
純な事務手続作業もこれに該当する。

(3)上記の点から、利用契約は特商法に定める「業務提供誘引販
売取引」に該当するから、クーリング・オフが認められる。


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3 解説
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(1) 特商法上の「業務提供誘引販売」

 特商法51条は、もともと「内職商法」と「モニター商法」等を
規制するために定められたものであり、以下の3つの要件を満たす
取引を「業務提供誘引販売」として規制しています。
 A 物品の販売または役務の提供(そのあっせんを含む)の事
  業であって
 B 業務提供利益(内職報酬やモニター料等)が得られると相
  手方を誘引し
 C その者と、特定負担(商品代金・契約金等の金銭的負担)
  を伴う取引をするもの

 従来の代表的な例としては、指定されたパソコンと教材を購入し
て勉強し、これらを使用して行う在宅ワークや、健康寝具のモニタ
ー業務、購入したチラシのポスティング等が挙げられていました。
しかし、今回の判決では、ドロップシッピングサービスもこれに該
当し得ると判断されたわけです。


(2) 実務上の留意点

 ドロップシッピングとは、通信販売・ネット販売において、小売
事業者が商品在庫を持たずに、卸売業者などから直接、商品を顧客
に出荷・配送する小売形態であり、ドロップシッピング参加者は在
庫リスクなしに販売事業を営むことができ、他方商品提供者は販路
を拡大することができるという点にメリットがあると考えられてき
ました。

 この点、ドロップシッピングの参加者は、本来的には、ショップ
オーナー(事業者)として、自己の責任でリスクを負って投資を行
い、商品の価格の決定などの裁量があるはずが、前記判例の事例等
多くのケースでは、ドロップシッピングへの参加を勧誘する事業者
が、高額な費用の支払と引換にウェブサイトの制作から運営をすべ
て引き受け、他方参加者は単純な事務作業を行うに過ぎず、ショッ
プオーナーとしての実態を備えているとはいい難いという実態となっ
ていました。

 このように、法形式上は取引相手が「事業者」であっても、その
取引の実質を見た場合に事業者とはいいがたいというケースでは、
特定取引法といった消費者保護の法令が適用されるリスクがある、
という点は事業者にとって十分に留意すべき点ではないかと考えら
れます。

 実際、Y社は、民事訴訟においてX氏らに敗訴しただけでなく、
消費者庁から6ヶ月の業務停止処分が課されてしまいましたが、こ
れがY社にとって相当なダメージであったことは想像に難くありま
せん。

 フランチャイズビジネスも含め、自社の販売拡大や販路開拓にあ
たり、一般消費者や、もともとサラリーマンなどの一般消費者であ
った人と手を組む方法は珍しいものではありません。しかし、その
目的が、一般市場からの売上ではなく当該手を組む相手から得られ
る金銭になってしまうようなケースや、提携する相手方に、リスク
を負う事業者であるという認識よりも、簡単に利益が得られるとい
う認識を与えてしまう勧誘・宣伝をするようなケースは、消費者保
護法令との抵触というリスクが高くなるといわざるをえないように
思われます。

 このような点を考えて、新しいビジネスの設計に取り組む場合、
ビジネス全体のデザイン、収益構造、取引の実態、宣伝広告の方法
、収支モデル等を総合的に見た場合に考えられる法的リスクをしっ
かり検討すべきでしょう。この点で、特商法といった消費者保護法
令だけでなく、ビジネス全般に理解を持ち、バランスの取れた見方
のできる弁護士等の法律の専門家に早い段階から相談し、アドバイ
スを受けることは非常に有益といえるでしょう。

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