• HOME
  • コラムの泉

コラムの泉

このエントリーをはてなブックマークに追加

専門家が発信する最新トピックスをご紹介(投稿ガイドはこちら

譲渡制限株式の売却の方法

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
ビジネスに直結する実践的判例・法律・知的財産情報
弁護士法人クラフトマン 第114号 2013-11-26
(旧 石下雅樹法律・特許事務所)

-------------------------------------------------------
弊所取扱分野紹介(契約書作成・契約書チェック・英文契約
http://www.ishioroshi.com/btob/jisseki_keiyakub.html
(弁護士費用オンライン自動見積もあります)

弊所取扱分野紹介(英文契約書翻訳・英語法律文書和訳)
http://www.ishioroshi.com/btob/jisseki_honyakub.htm
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
1 今回の判例     譲渡制限株式の売却の方法
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

大阪地裁 平成25年1月31日判決

 A社は、株式の譲渡制限の定めがある不動産賃貸等を営む株式会
社です。A社の株主であるB氏は、A社の普通株式36万2900
株につきC氏との売買契約を締結し、A社に対して、同株式の譲渡
の承認を求め、譲渡を承認しないときは、A社又はA社の指定買取
人による買取を請求しました。

 これに対しA社は、B社に対し、譲渡を承認せず、同株式のうち
半分をA社が、残りの指定買取人にD社を指定する旨を通知しまし
た。

 以上を含めた経緯を経て、その後A氏は、会社法144条2項に
基づき、当該株式の売買価格の決定を裁判所に申し立てました。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
2 裁判所の判断
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 裁判所は、同株式の売買価格については提出されていた鑑定書、
裁判所の選任した専門家による鑑定書の合理性を判断し、収益還元
法による価格を80%、配当還元法による価格を20%の割合で加
重平均した2460円をもって、1株あたりの売買価格と判断しま
した。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
3 解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


(1)株式の譲渡制限と譲渡の方法

 株式会社が発行する株式は、本来は自由に譲渡できます。しかし、
ほとんどの中小企業では、株式の譲渡を制限し、取締役会株主
会の承認を要するものと定めています(会社法第139条)。

 それは、中小規模の会社においては、株主間の関係が通常は密接
な場合が多いため、会社にとって好ましくない人物が株主となるこ
とを望まないという考えにも合理性があると考えられているからで
す。

 しかし、この譲渡制限の規定を貫くと、いったん会社に投下した
資金の回収の途が閉ざされてしまい妥当ではありません。それで、
会社法は、所定の手続によって売却を実現する方法を規定していま
す。


(2)譲渡の手続のアウトライン

 以下、取締役会設置会社を前提に譲渡の手続のアウトラインを申
し上げます。なお、全部の手続を正確に網羅しているわけではない
点、ご留意ください。

 a)会社への承認請求・買取人の指定の請求

   株主が、会社に対して、譲渡の相手方・譲渡株式の種類と数
  を記載し、譲渡の承認を請求し、会社が承認しない場合、会社
  又は指定買受人による買取を請求します(会社法第136条、
  138条1号)。

 b)取締役会決議と承認不承認の通知

   請求を受けた会社は、取締役会の決議で、譲渡を承認するか
  否か、不承認でかつ会社が買い取らない場合の買受人の指定に
  つき決定します(会社法139条1項本文、140条4項)。

   この場合、譲渡承認請求の日から2週間以内に承認するか否
  かの通知をしなかったときは、株式の譲渡を承認したものとみ
  なされますので、注意が必要です(会社法145条)。

 c)買取に関する通知・供託

   会社が株式を買い取るとき、また、買受人を指定する場合に
  は承認請求者に通知をする必要があります。それぞれ通知の期
  限がありますから注意が必要です。

   また、会社・指定買取人が、上記通知に先立ち、会社法施行
  規則によって算定された株式の金額を供託し、その書面を承認
  請求者に交付します。

 d) 売買価格の決定

   会社又は指定買取人が買い取る場合、その売買価格について
  は、通知から20日以内に、承認請求者との協議により定めま
  す(144条1項)。

   また、承認請求者、又は会社・指定買取人が、前記20日の
  期間内に、裁判所に対し、株式の売買価格の決定の申立をする
  こともできます(144条2項)。本件は、この申立に対して
  裁判所が示した判断です。

   そして、前記期間内に協議が調わず、価格決定の申立がない
  ときは、会社法施行規則によって算定された株式の金額をもっ
  て株式の売買価格とされます(144条5項)。


(4)実務上の留意点

 今回の解説は、やや細かい手続的な面に及んだものですが、これ
らを覚えておく必要はありません。押さえておく必要があるのは、
会社が株式の譲渡承認の請求を受けた場合、承認不承認の決定や、
種々の通知をする期間が定められている上、その期間は意外と短い
ものである、という点です。

 また、譲渡を承認しない場合、供託等の複雑な手続が必要な上、
供託すべき金額も法令で算定する必要があります。

 それで、会社としては、これらの手続を誤ると承認したものとみ
なされてしまうリスクを踏まえれば、迅速な対応が重要となる、と
いう点は覚えておくとよいと思われます。

 また、この点で、会社法の手続に通じた弁護士などの専門家の助
言を速やかに得ることも、大きな怪我を負わないために考えるべき
ことと思われます。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
4 弊所ウェブサイト紹介~会社法会社法) ポイント解説
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

弊所のウェブサイトの法律情報の解説のページには、ビジネス・企
業に関係した法律情報に関する豊富な情報があります。

例えば本稿のテーマに関連した会社法関連の情報については

http://www.ishioroshi.com/biz/kaisetu/kaishahou/index/

において、取締役取締役会といった役員をめぐる諸問題について
実務的観点から解説しています。必要に応じてぜひご活用ください。

なお、同サイトは今後も随時加筆していく予定ですので、同サイト
において解説に加えてほしい項目がありましたら、メールでご一報
くだされば幸いです。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本マガジンの無断複製、転載はご遠慮ください。

ただし、本マガジンの内容を社内研修用資料等に使用したいといっ
たお申出については、弊所を出典として明示するなどの条件で、原
則として無償でお受けしています。この場合、遠慮なく下記のアド
レス宛、メールでお申出ください。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━


【編集発行】
弁護士法人クラフトマン (旧 石下雅樹法律・特許事務所)

横浜主事務所
〒221-0835 横浜市神奈川区鶴屋町3-32-14 新港ビル4階
クラフトマン法律事務所
TEL 045-276-1394(代表) 045-620-0794 FAX 045-276-1470

新宿オフィス
〒160-0022 東京都新宿区新宿4-2-16
パシフィックマークス新宿サウスゲート 9階
弁護士法人クラフトマン新宿特許法律事務所
TEL 03-6388-9679 FAX 03-6388-9766

mailto:info@ishioroshi.com

弊所取扱分野紹介(リーガルリサーチ・法律調査)
http://www.ishioroshi.com/btob/jisseki_legalresearchb.html

顧問弁護士契約顧問料)についての詳細
http://www.ishioroshi.com/btob/komon_feeb.html

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
本稿に対するご意見、ご感想は mailto:info@ishioroshi.comまで
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

絞り込み検索!

現在22,378コラム

カテゴリ

労務管理

税務経理

企業法務

その他

≪表示順≫

※ハイライトされているキーワードをクリックすると、絞込みが解除されます。
※リセットを押すと、すべての絞り込みが解除されます。

スポンサーリンク

経営ノウハウの泉より最新記事

スポンサーリンク

労働実務事例集

労働新聞社 監修提供

法解釈から実務処理までのQ&Aを分類収録

注目のコラム

注目の相談スレッド

スポンサーリンク

PAGE TOP